ガーミウルス国民移住計画
ピリリリリっ
あ、ギルマスに電話するの忘れてた。
「もしもし。ごめん、今ガーミウルス。うんうん、そう。全然問題ないから大丈夫。あー、了解。明後日には戻る。うんうん、総本部に報告してからから帰るよ」
「ミナモトくん、それは電話か?」
俺をミナモトくんと呼ぶのは沖田だ。
「そう。ガーミウルスもなんか通信機使ってるよね?」
「無線みたいなものだ。そっちのほうが優れてるな。アネモスは魔導具が発達しているのか?」
「いや、これはガーミウルスから出たやつ。ここは魔石の充填装置作れたの?」
「ここは石油と石炭が取れる。それで発電というか発魔力装置を作って充填している。船はエンジンだがな」
「あの戦艦とヤマテだっけ?あんなのよく作れたよね。元々そういう仕事していたの?」
「いや、元々模型が好きなのもあって、月間ディアゴシェットで学んだ」
あー、初回だけ安いあれか。よくあれであんなの作れたな。
ガーミウルスは恵まれない土地なので科学の発展があった上にガイヤから横流しされた魔導具の設計図で魔導具が発展したんだな。
「自動車とかは数はないの?」
「石油がもう涸渇しかけているから魔石充填が追いつかなくなる。だから数は作っていないんだ」
「セイくん、ガーミウルスか滅びるといったのはそのことなのだよ」
「冬の暖房とかも石油?」
「そうだ」
「後何年ぐらい持ちそうなの?」
「5年といったこところだろう。備蓄分を含めればもう少しもつとは思うが」
「デイスラル、どうする?石油がなければこの土地でこれだけの人数が生活していくのは難しいんじゃないの?」
「ミナモトくん、何かいい手はあるのか?」
「全員でアネモスに移住したらとデイスラルに言ってたんだよ。ここに加護の雨とか降らせることも出来るけど俺はアネモスとアクアとかに行ったりしてるからずっとは無理だしね」
「アネモスは100万人近い人間を受け入れられるのか?」
「土地はアネモスとボッケーノの間とかでいいんじゃないかと思ってる。これからアネモスとボッケーノの流通を増やして行くつもりだから、その間に街が出来たらこっちとしてもありがたい。開発しながら移住を進めて行けばなんとかなるんじゃないかな。当面の食料はなんとかするよ。他国に支援をまたお願いしてもいいし」
「総統、この話は乗るべきではないかと思う」
「しかし、今ある船だけで全員が移動可能なのかね」
「ヤマテは転移魔法陣を使ったんだろ?あれはもう使えないの?」
「大量の魔力が必要だ。船が沈んだならもう出口側の魔法陣は起動させられん」
「完全に沈んだわけじゃないから使えるかどうか見に来てくれたらいいんじゃない」
「そういやここまでどうやって来た?」
「飛行機だよ」
「なにっ」
「他の人には神の乗り物と言ってあるけど、ガイヤから出たものなんだよ。まぁ、その辺の話も含めて飯食いながらしようか」
「では食事を用意させよう」
「ちなみにここの主食は何?」
「ジャガイモとソバ粉だ。小麦はあまり取れないから高級品だ」
「じゃ、俺が用意するよ。砂婆、ご飯を多めに炊いて。後は刺し身と」
「み、ミナモトくん、まさか刺し身とはあの刺し身か・・・」
「そう。他の人は気持ち悪いなら鉄板焼でもしようか」
と、業務用鉄板を出して準備をしていく。
「何を焼くのかね?」
「角ありのミノタウロスでいいでしょ?」
「そんな高級品をいいのかね?」
「アネモスは肉に変わる魔物が多かったからね。ブラックオークもコカトリスもあるよ。全種類焼こうか?」
と、ご飯が炊けるまで肉を食うことに。ガーミウルスの肉は犬肉らしい。寒さにも強く繁殖も簡単だからだそうだ。
「う、旨い・・・」
「牛肉のステーキなんて久しぶりだな。しかもこんなに柔らかくて旨い物はここに来てから始めてだ」
召喚された沖田は感動していた。
「次はバター醤油ね」
香ばしい匂いが部屋に充満する。
醤油に涙を流して食べている。
「アネモスには醤油があるのか・・・」
「無いよ。これはこの封印のひょうたんの中で妖怪達が作っている。もうすぐご飯も炊けてくるから。醤油はアクアで生産を始めている。ウラウドという神無し国でもそのうち作られるかもね」
「こことは随分と違うのだな」
「そうだね。女神達がずっと頑張って来てくれたお陰だよ」
そして白ごはんと刺身が出てくると沖田は何も喋らずに噛みしめるように食べたのであった。
その後、科学者と研究者達はアネモスに移住すべきだとの意見がまとまり、デイスラルは国民に対し告知をすることになったのであった。
「沖田さん、電話を一つ渡しておくから。移住する人以外にガーミウルスから持っていけそうなのも話しあっておいて。俺はガイヤによってから一度アネモスに帰るよ。あとデイスラル、畑に加護の雨を降らせておこうか?肥料的な効果もあるみたいだから」
と、生産量が少ないという小麦畑にアーパスの加護の雨を降らせにいった。畑にデイスラルが来た事に驚く住民たち。
「デイスラル、これはウェンディの慈悲だと説明しておいてくれ」
セイはウェンディと手を繋いで雨を降らせていく。
ザーーーーーッ
畑以外にもガーミウルス全体に雨を降らせておいた。これで野菜とかにもいい影響がでるだろう。
「これぐらいでいいかな。今まで肥料とか作ってたの?」
「石炭から尿素を作って使ってが他の成分は足りてないだろうな」
尿素は葉物の育成にいいんだっけな。
「加護の雨は肥料ではないけど実りを豊かにしてくれるみたいだから効いてくれることを祈るよ」
そしてセイはまた来ると言い残してガイヤへと向かったのであった。
総本部で総長とアネモスでの出来事とガーミウルスの住人をアネモスに移住させることになると伝えた。
「事実は随分と違うのだな」
「そうだね。ガーミウルスの戦艦は凄い威力だったよ」
「ガーミウルスを受け入れてアネモスは武装するのか?」
「いや隣国はボッケーノしかないから武装の必要はないよ。少し魔導具で生活を便利にするとは思うけど必要以上には魔導具は作らないと思う」
「なぜだ?」
「魔導具が発達してなんでも出来るようになったら神への感謝が薄れて行くと思うんだ。そうなればまた衰退しちゃうからね。今ぐらいの不便さがちょうどいいんだと思う」
「ちょうどいい不便さか」
「そう。取り敢えず今回来たのはこの報告。あと申し訳ないけどまた支援をお願い出来ないかな。ガーミウルスの人が約100万人くらいいるから順次移住して来る間は食料とか不足すると思うんだ。テントは援助してもらったのを使いまわして行くよ」
「わかった。アクアにはこちらから連絡をしておこう」
セイは休まずに一度アネモスに帰り、屋敷で爆睡したのであった。
翌日ギルマスの所へ。
「おう、どうなった?」
「確定じゃないけど多分移住してくる。アネモスとボッケーノの間に街を作ってもらおうと思うんだ」
「なるほどな。開発に時間かかりそうだがアネモスとボッケーノの間に街が出来ると交易が盛んになるな」
「全員移住するのは数年掛かると思うけど、転送の魔法陣が上手く使えたらなんとかなると思う」
「あれか。食料とかどうすんだ?」
「総長に支援をお願いしてきた。アクアにも連絡を入れてくれるって。肉はダンジョンから延々と出さないとダメだね。俺がダンジョンと交渉出来るのバレるけど神の力って事にしておくよ」
「もう今更だな。何をやっても神の力で通るだろ。ガーミウルスの奴ら、お前がおいていった肉を食べて感動してたぞ。向こうは何食ってんだ?」
「肉は犬、主食はじゃがいもとそば粉だって」
「犬か。そりゃミノタウロスやブラックオークの肉を食ったら感動するわな」
その後避難者を王都に戻すスケジュールを打ち合わせ。ガーミウルスが壊した城壁や壊れた家の瓦礫の撤去をガーミウルス兵にやらせる事にした。それに合わせてアネモス王都内の水路改良とかやることは山積みだ。ガーミウルス兵は5000人近くいるらしく、半分はガーミウルス国民が住む予定地の開拓を行わせることにしたのであった。