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ガーミウルス帝国の実態

コンクリートの壁か。


門番はデイスラルが来たことにより跪く。


ガーミウルスの街の壁は石造りではなくコンクリートの壁で囲われており、道路はアスファルト、建物もコンクリートの3階建ての集合住宅が大半だった。無機質な感じだし、農地とやらも荒涼としていて緑が少ない。


「冬は雪で覆われるのか?」


「凍りつくような寒さだ。雪は余り降らん」


皆なぜデイスラルが見知らぬ者と歩いているのか疑問に思っているだろうが話しかけてくるものはいない。


暫くすると自動車?が現れた。


「総統っ!」


「ご苦労。この者たちは客人である」


「はっ、ようこうそガーミウルスへ」


自動車のドアを開けられて中に乗り込み総統邸へと進んで行った。街中の人々に太った人はいない。そして活気というものがあまり感じられなかった。


総統邸は大きくはあるが無機質で元の世界の市役所みたいな感じだった。



「さて、これから何をするのかね?」


「まずは異世界から召喚した者に会わせてくれないか。話がしたい。後は他の科学者や研究者といった人達にも」


デイスラルが指示をしたあと少し待たさせる。


「なんか寂しい国ね」


「ウェンディだったね。ガーミウルスには生きていくのに必要最小限のものしかないのだよ」


「金とか銀が取れるんでしょ。それで飾りつければいいじゃない」


「あれは食べ物に変えるものであって飾り付けるものではないのだよ」


使者はデイスラルが世界を統べるとか言ってたけど、話をしているとそんな感じはしないんだよな。アネモスに侵攻してきた時も勝利だけを目指して土地を乗っ取るならまず王都を壊滅させれば良かったのにそれをしていないからな。


「デイスラル、周りの神無し国を武力で併合したと聞いているがそれはどうなんだ?」


「似たような環境の国を武力で併合してなんの利益があるのかね?」


「いや、そう聞いてたから確認をしたんだ」


「神無し国はどこも同じ。豊かではない土地に住み、魔物の脅威にさらされている。効率的に魔物を撃退する方法を得ているのはガーミウルスのみなのだよ」


「もしかして他国への応援に行ってそのままガーミウルスに併合したのか?」


「向こうが勝手に下ったのだよ」


なるほどな。聞くと見るとでは随分と違うな。



そして科学者と召喚者がここに呼ばれてやってきた。


「皆に紹介しよう。アネモスの王セイと風の神ウェンディである」


研究者達はザワッとする。デイスラルの口から神だと紹介されたからだ。


「まず説明をしておこう。我がガーミウルス軍は敗北した。残念ながら君たちが作ってくれた魔導戦艦ヤマテも沈んだよ」


「なっ、なんですとっ。まさかヤマテが・・・」


「セイ、この者が召喚者である」


戦艦が沈んだと聞かされてボー然としているおじいさんが召喚された人か。


「初めまして、俺はセイ、ミナモト・セイだ。漢字は源氏の源と誠と書く」


「なっ、お前まさか日本人かっ」


「そうだよ。あんたは?」


「オキタ、沖田修三おきたしゅうぞうだ」


「元の世界で西暦何年に召喚された?」


「20☓☓年じゃ。ワシが25歳の時にな。ここに来てから50年近く経っておる」


「俺はその15年くらい後の世界から3年程前に来た。どうやら召喚されると時間の辻褄が合わなくなるのは確定だね」


ざわざわ


「君も召喚者だったのかね?」


「違うよ。俺はウェンディに連れて来られたから召喚と似て異なる者だと思う」


そしてデイスラルと沖田にも今までの事とと神とは何かを話した。


「この世界には本当に神が実在するというのかっ」


「元の世界にもいたぞ。みな見えないだけでな。それはこっちの世界でも同じで神を見る事の出来るやつはほとんどいない。ここにいるウェンディは厳密にいうと今は神の力を失っている。だから皆にも見えているだけで神の力を取り戻したら見えなくなる」


「信じられん・・・」


「だろうね。元の世界は神の名を語って悪どい事をするやつもいるから信じないのはわかるよ。神の恩恵もわかりにくいし」


「なぜ神あり国と神無し国があるのだ」


「神無し国は神を信仰してないからだよ。アネモスも神を信仰しなくなったから今は神無し国だ。そのせいで魔物が増えてきている。この世界の神は魔物の進化を人の強さの進化に合わせるんだよ」


「それならば魔物なぞ滅ぼしてくれればよいではないか」


「魔物は神からの贈り物なんだよ。倒すと有益な物に変わる。肉や鉱石、魔石、薬の材料とかにね」


「そんなことはない。ここらの魔物は死ぬと消えるだけだ。まるでゲームのようにな」


「ここは神無し国だからね。神が庇護する国の魔物はアイテムに変わるんだ」


「ガーミウルスも大昔はそうであったと記録は残っているのだよ」


とデイスラルは言う。神無しの土地でも魔物はアイテムに変わるがそれには上限があるとテルウスが言っていた。ガーミウルスはとっくにその上限を迎えていたのだろう。


「ガーミウルスは併合した国と合わせて100万人くらい住んでるんだろ?皆が心から神に感謝して祈る国であれば神の加護を受けられたんだ。それをしなかったからどの神の庇護下にならない神無し国になっている」


「元の世界でも神に祈っても何もしてくれなかったではないか」


「してくれてても気付かないだけだよ。元の世界もこの世界も神がなんでもしてくれるわけじゃない。してくれていることに気付かず、勝手なお願いをして聞いてくれなかったと恨んだり信じなかったりするんだ」


「そんな・・・」


「沖田さん、妖怪は知ってるだろ?」


「あぁ。昔からあるお伽噺だ」


「姿は違うけど、他国と繋がりが無かった時代から神や妖怪とか似たようなお伽噺が世界各地であるのは不思議とか思ったことはない?」


「それは確かに」


「それはね大昔は皆見えてたんだよ。だから伝承やお伽噺として残っているんだ。それが文明が発達し、神がしてくれてきたことを自分達の力でやってると勘違いしていくことで神を信じなくなり見えなくなっていった。妖怪もそうだよ。沖田さん達には見えてなかっただけで存在してたよ。俺は生まれながらそういうものが見えるタチでね。誰も信じなかったから気味悪がられて育った」


「霊が見えるとか神と話せるとか詐欺師のすることだ」


「確かにそういう人も多い。金儲けの為に悪用する人がいるのは否定しない。だがこの世界は不思議でね、みな妖怪は見えるんだよ」


「なに?」


「ぬーちゃん、元の姿に戻って」


と、襟巻きのように見えていたぬーちゃんが元の鵺に戻る。


「ヒィィィ、魔物がっ」


「ぬーちゃんは魔物じゃない。沖田さん、鵺って妖怪を聞いたことはないか?」


「厄災をばら撒く極悪の妖怪だ」


「そう、それが鵺。ここにいるぬーちゃんだよ。俺の腰に付いてるひょうたんに封印されていたのを俺が封印を解いた。今は厄災の妖怪ではなく俺の仲間だ」


「まさか・・・」


「この世界には妖精もいる。ウンディーネ、隣に出て来て」


と呼び出して妖力を流していく。


「す、スライムか」


「違う。ウンディーネは水の大精霊。水の神様の眷属だ」


「はーいっ!あなたはセイと同じ世界から来た人なのね」


ウンディーネは美女の姿に変身して挨拶をした。


「まだ信じられないなら、炎の精霊や風の精霊とかも呼び出せるぞ」


「なぜ異世界のお前がこの世界の事にそんなに詳しいんだ」


「神々に直接聞いたからだよ。この世界に加護を与えているのは土の神テルウス、水の神アーパス、火の神ヘスティア、そしてこいつ風の神ウェンディだ。元々は大神と呼ばれるウェンディ達のお父さんみたいな神がこの世界を作り、その後に4人の女神にそれぞれの国を託した。ガーミウルスは神を信じていないから誰も担当をしなかったそうだ」


「セイ、その話は本当かね」


「信じるか信じないかは任す。信じている国は大国と呼ばれる神あり国になっているけどね」


「ガーミウルスも神を信仰すれば同じように神あり国になるのであるか?」


「デイスラル、今まで神を信じなかった人が心から神を信じで感謝の祈りをするとか無理でしょ?表面的に信仰しても神の力には繋がらないから神には届かない。心からの感謝の祈りが神の力となり加護を受ける事が出来るんだよ」


「心からの感謝の祈り・・・」


「アネモスは風の被害を受け、ウェンディを恨み蔑んだ。ウェンディがしてきてくれた事を説明しても信じなかったよ。元々神有り国だったアネモスですらそうなんだ。神はいないと思い続けた国民がそうやすやすと信じて心から感謝するのは神の恩恵を目の当たりにしてみないと無理だろうね」


「だから移住であるのか」


「アネモス周辺はここより土地そのものが恵まれているのは確かだ。今はその恵みがなくなりつつあるけどウェンディの力が戻って神に戻れば豊かな土地になる。それまでは俺が代行して持ちこたえさせる予定だ」


「ミナモトくん」


「セイでいいよ」


「なぜそんな力を得ることが出来だのだ。神の代行など出来るほどに」


「女神達の世話を焼いてたからだよ。皆寂しがり屋でね。神は天界でずっと一人で人間に加護を与え続けて来た。俺は人間だけど神が見え神と話せる。だからこの前まで一緒に飯食ったりして遊んでたんだ。けど、神は天界にいないとダメな事がわかってみな天界に帰らせたんだ」


「神と遊ぶ?」


「女神達は神の力を持ってるけど人とそんなに変わらないんだよ。旨いものを食えば喜ぶし酒を飲んだら酔う。ゲームに負けたらキーキー怒るし寂しくなったらくっついてくる。そんな存在だよ」


そして暫くセイは神たちの事を皆に話していったのであった。


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