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俺はアネモス王になるっ

「魔法部隊出撃せよっ」


小舟に乗った魔法部隊。帆ではなくカッターのような数人が力を合わせて漕ぐ船だ。それらが魔法使いを乗せてガーミウルス戦艦を待ち受ける。ヒット&ウェイ作戦。アネモス王はいくら大型船といえども甲板にいるものや操船するものを狙えば船は動けなくなると作戦を立てた者から聞いていた。城壁には鉄の盾を持った部隊が弓矢を撃つ兵士を守る。


歩兵達は海岸線沿いに鉄の盾で壁を作り上陸に備えた。後ろには槍部隊と剣部隊だ。


それを見たセイは海坊主を海中に待機させる。


「結構守りを固めているわね」  


「そうだな。よくあれだけ鉄の盾を集めたものだ」


グリンディルとマモンはそう言っているが兵器の前では紙くず同然だろう。これで対策は取ってあるとか自信満々によく言えたもんだ。


「今、兵士達に逃げろと言ったら逃げるかな?」


「上陸を防ぐだけならなんとかなりそうじゃないのか?」


「無意味だよあんなの。あの鉄の盾は魔道具じゃないよね?攻撃を跳ね返す仕掛けとかありそう?」


「そんな盾あるか」


そうだよな。どう見てもただの分厚い鉄の盾だ。槍や剣なら完全に防げるだろうけど。


そして船団が見えるところまでやってきた。


「な、何よあれ・・・」


遠くにいる時にはよく分からなかった大きさが近付くに連れて見たこともない大きさの船だと魔法部隊は気付く。


「逃げてっ 早く逃げてよっ」


魔法使いの女が叫ぶ。あんな物に魔法が効くわけがないとすぐにわかったのだ。


「ならんっ。我らは船を追い払わねば」

 

「早く逃げてっ」


魔法部隊はパニックに陥り、漕ぎ手の呼吸が合わずに上手く進めない。


「ヒィィィ」


戦艦は小舟を歯牙にも掛けず進み、その船の波でスピード重視の船はあっけなく転覆していく。


「言わんこっちゃない。ウンディーネ、海坊主、海に落ちた人を岸まで運んでくれっ」


スタンバイしていた海坊主とウンディーネはザバザバと落ちた人を運んで行く。


船団は変わった陣形を取り、そこに錨を下ろした。


上陸船であろう船の後ろが開き10人ほど乗せたボートが次々に出てくる。



「上陸を防げぇっ」 


その様子を見ていた上官は慌てて命令を出し、射程距離に入っていないにも関わらず弓部隊と魔法部隊にボートへの攻撃命令を出した。


ボートは悠々とからかうように射程距離の外で旋回し、攻撃が落ちた所で一気に岸へと向かった。


「何をしておるか撃てっ撃てっ」


残り少ない魔力と弓を撃つが想定しているよりもボートは速く攻撃が当たらない。当たった攻撃も前方に施された装甲ですべて防がれていた。


アネモス軍事が鉄の盾の後に隠れた所を見計らってバズーカタイプの魔導兵器を撃たれ、一瞬にして守りの一角が崩れた。


「たっ、退却ーーっ」



「うん、いい退却だ。下手に粘っても死人が出るからね」


「あんなに脆く崩れるのかよ・・・」


「だから言ったじゃん。絶対に敵わないって」


上陸ポイントに次々とボートが接岸していく。が、ガーミウルスの兵士達はそこから攻め込まずに待機していた。


海岸にどんどんとガーミウルスの部隊が整っていく。


「何をするつもりなんだ?」


「降伏勧告をするつもりかな?まともな王なら敵わないと悟って降伏するだろうからね」


王都を挟むようにして他の部隊もどんどんと上陸をしていった。ガーミウルスは無闇に殺戮をするような感じではないのでもう少し様子をみることに。


「全員を助けたわよ」


と、ウンディーネが報告に来てくれた。


「ありがとうね」


「海坊主の方がたくさん助けたわよ。助かった人は恐怖で動けなくなっているけど」


海坊主は溺れた人を飲み込んで運んだらしい。


そして変わった陣形を取っていた戦艦から空に向けて一斉砲撃が始まる。


ドンドンドンドンっ


これは威嚇の砲撃だろう。元の世界の砲撃とは違いこれも魔導兵器だ。


「ヒィィィ」


城壁を守る兵士達も蜘蛛の子を散らすように撤退していく。勝負ありだな。


セイはマモン達と王城へ向かった。


「入るぞ。王と話をする」


もうセイを止めようとする者はいなかった。警告されていた通りの結果になっているのだ。



「貴様ら何をしにきたっ」


「王よ、もう終わりだ。ガーミウルスは今の所無傷でアネモスを手に入れようとしている。もうすぐ降伏勧告の使者が来るだろう。その前に俺に政権を渡せ。そうすれば撃退してやる」


「何を言うかっ。まだ負けてはおらんっ」


「王よ、今お前が政権を俺に渡さなければお前を殺さないといけなくなる。このままガーミウルスにアネモスをくれてやる訳にはいかないんだよ」


「こ、この疫病神どもめがっ」


「まだ死者は出でいない。どうせ降伏させられたら王の命はないんだぞ。早く俺に政権を渡せ。アネモスはウェンディの加護の元救ってやるから」


「貴様ら、初めからそれが目的でガーミウルスを呼び込んだのではあるまいなっ」


「王、最後の警告だ。俺に政権を渡せ。ウェンディを信じていないものも救うから。兵士達にも家族がいるんだ。無駄死にさせてやるな」


「く、くそっ」


「最後までお前に付いてくれたやつ達まで死なせるつもりか?」



「陛下っ」


ドサッ


知らせを持ってきたであろう兵士がガーミウルスの降伏勧告部隊に蹴り飛ばされた。


「おっと、先客でしたか。それは失礼。こちらは重要な用件でね、こちらを先にさせてもらってもいいかい?」


ガーミウルスの部隊は一斉にライフルタイプの魔導兵器を向けた。


「ダメだな。俺の話が先だ。それより初対面の相手に武器を向けるとか失礼じゃないのか」


「ふむ、これを見て武器とすぐにわかるのだな。何者だ貴様?」


「王、さっさとしろ。殺されんぞ」


「・・・この国の政権はお前に託す」


ようやくそういった王。


「だそうだ。ガーミウルスの使者よ、俺が今ここの王になった。話なら俺が聞こう」


「クックック。お前面白いな。何者だ?」


「俺はセイ。神の代行者だ。アネモスは今から神有り国に復活した。何かガーミウルスが困っているなら話は聞いてやろう。まだ武器を向けるなら神に仇なす者としてバチを当てる」


セイはぬーちゃんに合図をしてウェンディを窓から逃がすように伝える。フェンリルもそれを感じ取ってギルマスとグリンディルと逃げる体制を取った。


「神だと?なら敵だな」


と、使者が言った瞬間に魔導兵器を撃つ体制に入った。


シルフィードがブォッと風をガーミウルスの兵士たちにぶつけて隙を作った瞬間にぬーちゃんとフェンリルはウェンディ達を連れて外に脱出した。


「捕縛っ」


セイはガーミウルス部隊を捕縛し無効化させた。


蹴り飛ばされた兵士にポーションを飲ませてから使者と話をする。


「さて、話をするかバチを食らうか決めろ。今の所お前らの侵攻で死者は出ていないからな。その選択権はやる。お前にその権限はあるか?」


「クックックッ。死者は出ていないだと?それはこれからだ」




「なんでセイをおいて逃げたのよっ」


ぬーちゃんの背中をポカポカ殴るウェンディ。


「うるさい。フェンリル、コイツも乗せて逃げろ。我はセイの元に戻る」


「わかった」


「フェンリルっ、あんたは私の下僕でしょっ。セイの元に戻りなさいっ。これは命令よっ」


「ウェンディ様、ウェンディ様の主であるセイ様の命令が優先されます」


「キィーーーーっ」


フェンリルはぬーちゃんからウェンディを受け取りマモンの指示する上空へと上がった。


「お、おいなんだよありゃ・・・」


マモンは上空に上がるときに船団の変わった陣形から魔法陣のような物が映し出されているのを目にしていた。



ーガーミウルス近海ー


「ワープ準備完了」

「魔導エンジン、異常なし」

「ワープ、セット・オン」

「ワープ、1分前」


「ワープ、30秒前」


「3、2、1、ワープっ」


ニョインニョインニョインニョイン



そしてマモン達が見たものは魔法陣から巨大な船が出で来るところであった。



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