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セイの好きなように

「ウェンディ、お前も避難してろよ」


「嫌よ」


「お前になんかあったらどうすんだよ」


「セイに何かあったらどうすんのよ?わたしは神に戻れないまま消滅を待てというの?」


そうか・・・


「わかった。お前は俺が守る」


「当然でしょ。約束したんだから」


ふいっと横を向いてそういうウェンディ。お互い昨日は寝ていないが神経が昂っているので眠くはない。しかし回復はしておいた方が良いのでポーションを飲んでおいた。


ガーミウルスに見つからないように遥か上空から船団を見張り、ギルマスに連絡を入れる。


「避難はどう?」


「神官たちも連れ出したぞ。恐らく女子供はもう王都にいねぇぞ」


「了解。ガーミウルスの船団はまっすぐアネモスに向かってるから明日には到着すると思う」


「了解。無茶すんなよ」


セイは船団を見張り続けるがウェンディは後ろでグースカ寝てるのでなんか気が抜けて来た。


まぁ、ウェンディらしくていいわ。このまま見ててもしょうがないし下に降りて飯でも食べよ。


少し飛んでサカキ達の元へ。


「お疲れ。避難終わった?」 


「半分くらいじゃねーか。まぁ、死にたい奴は死ねばいい」


フェンリルとシルフィードも呼び出して状況を聞くと似たような感じだった。


肉を焼いて昼飯にするとウェンディが降ろしてっと叫んだ。


「お前、都合よく起きるよな」


「起きてたわよっ」


「嘘付け」


シルフィードに小さな肉を食べさせながら皆に明日ガーミウルスが到着することを伝えた。


「そいつらはどうすんだ?」


「どうしようね。アネモス軍が殺されるのを見てるっていうのもねぇ」


「あれだけ言っても聞く耳持たねぇんだ。戦って死んだら本望だろうよ」


「そうじゃな。兵士とはそういうものじゃ」


昔からの戦いを知っているクラマとサカキはあっさりしている。戦争を知らないセイには理解出来なかった。


サカキ達をひょうたんに戻してギルマスの所へ。


「どうすんだ?」


「皆はもう見とけって」


「そうか。俺もそう思うぞ。やれることはやった。後はケツを拭いてやることしか出来んだろうよ」


「そうよね。あれだけ逃げろと言っても聞かないから仕方がないわよね」


ギルマスとグリンディルも同じ意見か。


「ヘスティア、アーパス、テルウス。ちょっと来てくれないか」


女神達を呼び出すのは皆が天界に帰ってから初めてだ。


「おっ、寂しくなったのかよ」


と、ヘスティアがいつものように足で顔を挟んでくる。


「はしたないからやめろと言ってるだろ?」


「じゃあ、こうしててやんよ」


と、後ろにまわり首に腕を絡ませてくっついてくる。いつもならやめろというところだがなんだかちょっとホッとする。日常が帰って来た気がしたのだ。


「じゃ、私はここ」


と、アーパスが膝に座った。


ウェンディは離れなさいよっとかキーキー怒ってるけど神達にも相談する。


「別にほっときゃいいじゃねーかよ。神無し国の奴らと神を信じない奴らの戦いなんてよ」


「とは言ってもさぁ」


「セイ、こんな争いは各地であるわよ。人間は戦うのが好きなのよ。放っておきなさい」


と、テルウス。確かに争って滅びた街とかも見かけた事がある。


「セイ、あなたは自分が思うようにすればいい。加護の力も好きに使っていい」


「アーパス、それは加護の力で人を攻撃しても良いってことか?神の力は人を守るためのものなんだろ」


「そう。でもバチは別。愚かな者を導くのもまた神の力」


「アーパスは今までそんなこともしてたのか?」


「ちょっと言ってみただけ」


なんだそりゃ?


「神は魔物の強さを調整するだけよ。後は人任せ。争うのも争わないのも神は関与しないわ」


「そうみたいだけどね」


「でも関与するのも自由なのよ」


「え?」


「さっきアーパスが言った加護の力を自由に使っていいと言ったのはその事。私達が加護を与えるということはそういうこと。あなたの思うようにやればいいわよ」


「テルウス・・・」


「セイ、難しく考えんなよ。ムカついたら燃しちまえばいいじゃねーかよ。お前はムカついてエンシェントドラゴンまで殺そうとしたじゃねーかよ」 


「あれは人間じゃないし」


「ばっか、エンシェントドラゴンなんて人間よりずっと上の存在だろ?あいつはあいつより強い魔物が出ないように君臨してないとダメなやつなんだからな」


「そうなんだ」


「自分勝手に戦いをしようとするやつなんか滅ぼしたって構わねぇんだよ。魔物よりタチが悪ぃだろうが。アイテムにも変わらねぇんだからよ」


「テルウス、神無し国は初めっから神無し国なの?」


「違うわよ」


「神を信じないから神無し国になったの?」


「そう。元々はガイヤ周辺にしか人はいなかったの。それがどんどん増えていって今に至るの。どこの国でも信仰心が強ければ神あり国になるわ」


「例えば一つの国がバラバラに違う神を信仰したらどうなんの?」


「それはまだないからわかんないわね。一番信仰された人が面倒みればいいんじゃないかしら?」


「どれぐらいの人が信仰してくれたら神有り国になるの?」


「さあ?なんか私達が気になるぐらいかしら」


こういうところが適当なんだよな。恐らく割合より人数ベースなのかもしれない。小さな集落全員が信仰しても神には気付いてもらえないのかもしれないな。信仰心はエネルギー回路だと言ってたから細い回路が繋がっても気付かないとかか。


「結構理不尽だね」


「そうよ。神は理不尽なの。一生懸命祈ってくれる人は可愛げがあるから見てるけどね」


とても人間臭い発想だな。たしかに知らん顔をする犬よりしっぽ振って懐いてくる犬の方が可愛いし。


「尾を振る犬は叩かれずって奴だね」


そういうとフェンリルはしっぽを振っていたのであった。


女神ズと飯を食い、お礼を言っ後に帰って行った。結局皆の結論は好きにしなさいだった。


「ウェンディはどうしたい?」


「セイの好きにすればいいでしょ。ここまで来たんだから」


「お前、俺に人を殺して欲しくないって言ったじゃないか」


「それでセイが死んだらどうすんのよ。死ななくても心が壊れたらどうすんのよっ」 


「心配してくれてんのか?」


「ちっ、違うわよっ。わたしも巻き添えになるでしょっ」


「ならお前と俺は一蓮托生だな」


「何それ?」


「運命を共にするということだ」


そういうと真っ赤になるウェンディだった。



「セイ、神様達はなんて言ってたんだ?」 


テルウス達の声が聞こえなかったギルマスは改めてセイにそう聞いてきた。ウェンディはお腹いっぱいになりセイのひざ枕で寝ている。


「好きにしろだってさ。加護の力を自由に使えだって」


「敵を殲滅するのに使ってもいいってことか?」


「そうみたいだね」


「マモン、ヘスティアなんてムカついたら殺しちまえとか物騒な事を言ってたわよ」


「ヘスティア様らしいな」


「まぁ、セイはまさに神の代行者って訳よ。思うがままにやればいいんじゃない。侵攻してくるやつらなんて賊よりタチが悪いんだから。セイも賊なら容赦しないでしょ」


「うん、まぁね。でもアネモスの兵士はさぁ、防衛するだけなんだよね。別に悪いことをしているわけでもないんだよ」


「セイはアネモスを軍に攻撃するつもり?」


「いや」


「なら別にいいじゃない。攻撃してくるのはガーミウルス、で、あなたはガーミウルスにバチを当てる。というか神を信じない者同士の戦いにバチを当てるというのは違うか。ムカつくからプチっとしてやる。これでいいわよ。何なら私がやってあげようか?こんなに面倒な思いをさせてんだからとっちめてやりたいわよ」


「グリンディルっ」


と、マモンが諌める。


「グリンディル。魔導兵器はある意味ドラゴンブレスより厄介だよ。撃って来るときに予備動作もないし、艦砲はいくつもあるから連射されるし」


「そんなに言うならどんなのか見たいわぁ。ねぇ、ぬーちゃん、私を乗せて行ってよ」


「ダメだよ。当日は俺がぬーちゃんに乗るんだから」


「あの魔導具に乗るんじゃないの?」


「あれは小回りが効かないからね」


「グリンディルよ、我が乗せてやろう」


「おっ、フェンリル、あんた気が利くじゃない」


「グリンディルっ、やめとけっ」


「いいじゃない。見るだけ」


グリンディルは見に行く気満々。マモンは絶対にダメだという。


「貴様も一緒に乗せてやる」


と、フェンリルが言った事でマモンも見に来ることになってしまった。戦艦とやらを見てみたいのだろう。フェンリルも素早さそうだし見るだけならまぁいいか。


なんとなく戦争という気分が削がれたセイは気が抜けて行くのであった。

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