リタ達はアクアで働くことに
翌日フィッシャーズとリタ家族を連れてアクア王都に出向く。
「うわぁ、素敵な国ですねぇ」
大国の中で一番カラフルで綺麗な街だからな。初めて見ると感度するよな。観光がてらゴンドラに乗って遊覧する。
カフェでお茶したり、夕方に美術館に行きステンドグラスに感動したりと十分に楽しんだ。
晩飯はいつもの店で食べることに。サカキも出て来てまたもや樽酒だ。
「リタ、どうする?ここならギルドでも働けるし」
「んー、どうしましょうか。村もいい雰囲気だし、王都は素敵だし」
「リタ、村の仕事はまだ開発段階だからな。王都の方がいいんじゃないか?」
とガッシー。
「ご両親は働かれますか?避難している間は生活費は自分が出しますよ」
「いやいや、そんな訳には」
「家は我々のを使ってくれればいいですし、食費程度なら全く問題ありませんよ。セイのお陰で一生遊んで暮らせるぐらい稼げましたし」
と言われても気が引ける両親は何か仕事を探すと言った。リタには当面の生活費としてこっそりと金貨3枚渡しておいた。
宿泊はせっかくだからといつもの宿にリタの家族と泊まる事に。
「なんですかこの宿・・・」
「アーパス御用達の宿でこの部屋は専用に空けてくれてあるんだよ。家族全員で寝られるからそっちの部屋を使って」
「セイさんて姉ちゃんの彼氏?」
「こらっ、カミュ、余計な事を言わないのっ」
「残念ながら違うぞ。俺は神様の面倒を見なきゃならんからな」
「そうなのか。残念だったな姉ちゃん」
「うるさいっ。ごめんなさいセイさん」
「いいよ別に。弟としては姉ちゃんがどんな男と付き合うか気になるよな?」
「いや、飯も作れないしこんな姉ちゃん嫁に貰ったら大変だろうなと思って」
「カミュっ!あんたって子はっ」
と、弟を追っかけ回すリタ。素だとこんな感じなんだな。
「申し訳ございません。こら、二人共やめなさい」
とお父さん。
「いえ、いつも引っ張り回してて申し訳ありません。とてもよくしてくれるものでつい甘えてしまいまして」
「いえ、こちらこそ娘に本当に良くして頂いておりまして申し訳なく思っていたのです。あんな宝石やら服やら」
「宝石とかはダンジョンで手に入れたものなのでお気になさらずに。まだたくさんありますからお母さんもいります?」
いえいえいえと手を横に振る奥さん。
「お父さんはどんな仕事をされていたんですかね?」
「私はしがない職人でございまして、建具屋をしておりました」
「ドアとか作る職人さん?」
「はい、そうです」
「それはありがたい。昨日の村はこれから宿とか教会とか色々と建物を作る予定にしていましてね、そういう職人さんが手伝って下さるととても助かります」
「私に出来る事であればなんでもさせて頂きます」
「なら、住むのは村の方がいいかな?」
「お前は好きな方を選びなさい。父さん達は村で出来る仕事を手伝いたいと思うがリタは王都で働くのもいいと思うぞ」
弟のカミュは来年成人らしく、冒険者になるつもりのようだった。
「ならリタとカミュは王都の方がいいかな。フィッシャーズ達も行ったり来たりしてるから。オルティアと一緒に鍛えて貰えばいいと思うぞ」
ということで親子は別々に住むことになったのである。
翌日はフィッシャーズ達とギルドに行きリタを紹介する。
「シーバス、俺とチーヌは王都に残ってオルティアとカミュを見習い冒険者として面倒見るわ」
「おう、なら親父さん達はこっちで手伝ってもらうわ。そろそろ手を付けられそうな建物からやり始めるからよ」
フィッシャーズも二手に分かれて活動をしていくことなるようだ。
「リタ、いつから来る?」
「では明日からお願いします」
ということで今日はフィッシャーズ達の家でリタ家族は泊まる事になり、明日両親を村に送っていくことになったのである。
リタとカミュはガッシー達に任せてシーバス達と両親を村に送り、セイは快速空馬に乗り換えてアネモスに戻ったのであった。
アネモスはネズミの魔物が増え、それに連れてネズミが街中に溢れ出していた。
「ギルマス、王都の下水道の地図とかある?」
「あるが何するんだ?」
「ネズミの駆除。このままだと病気に汚染されるからね」
「王都はほっとくんじゃなかったのか?」
「さすがにこのままスラム街みたいにするのはね」
「他の奴にも手伝わせるか?」
「邪魔だからいい。ウェンディを下水道の中に入れたくないからここで預かってて」
「わたしも行くわよ」
「来んな。お前まで臭くなるだろうが。それに下水道は滑りやすいからお前は下水にハマりそうだ」
「はまらないわよっ」
「ダメだ。ここで留守番してろ」
何で下水道なんかに付いて来たがるのだ?正直俺もやりたくないのだ。
「セイ、私が付いてってあげようか?」
「いやいいよ。ぬーちゃんに痺れ毒とか出して一気に駆除していくから」
「いやどうやるかみたいのよ」
と無理矢理グリンディルが付いて来た。
下水道はやはり凄い臭いだ。もうネズミがあちこちにいるしGも大量だ。こんなところから出てきたネズミは絶対に病原菌を持ってるだろう。
まず近くにいるネズミやGはグリンディルが水魔法で洗い流した。
「下水道に人いたりしないよね?」
「どうだろ?冒険者は駆除の依頼とかもう受けてないけど。犯罪者とかはいるかも」
「ならそれを確認してからか」
「ウンディーネに見てきて貰おうか」
というのでお願いして見てきて貰った。
「この先は誰もいないわよ」
ということなので下水道内にヘスティアの炎を出して一気に焼くことに。消毒を兼ねるのだ。
ゴウゥゥぅ
「はいこのブロック終わり」
「それヘスティア様の加護?」
「そう。強力だよね」
「本当。ネズミが焼ける臭いすらしなかったわね」
ヘスティアの炎は燃やすというより消滅させるかの如くだ。
ウンディーネにブロックごとに確認をしてもらって焼いていく。ヌルヌルしていた床とか壁、天井とかのカビや苔も消失したのでなんとなく清潔だ。所々崩れそうな箇所も発見したので焼いて溶かして固めておいた。
一日掛けて1/4程を浄化した。
下水道から出ると臭いが取れるまでウンディーネが洗ってくれる。
「どうだった?」
「セイはもう神よ神。下水道が浄化されて綺麗になったわよ」
「今日はこのブロックが完了だからあと3日は掛かるね」
「お前どんどん人じゃなくなっていってんな」
「そんな事言うなよ。しょーがないだろ、加護とか勝手に付けられたんだから」
「そうだな。まぁ、神の代行者として頑張ってくれや」
セイは翌日から下水道の浄化を続けてネズミとGを駆除したのであった。
しかし、すでに病気に感染したものがおり、教会へは人が殺到し始めていた。
今日はリーゼロイ家の屋敷で当主とお話。
「もうリーゼロイさんも避難したら?ここで出来ること残ってないでしょ?」
「うむ、王に付いた貴族や領主はもう寝返らんだろうな。忠誠を尽くしているというより引くに引けない状況になっている」
「そうだろうね。だいたい1/3ぐらいが残ったのかな?」
「そうだ。市民も同じぐらいだと思われる。もう王都から離れんだろう」
「了解。じゃオーガ島に送るよ」
と、リーゼロイ当主と息子達を送って行き、開拓された森に結界を張った。後は加護のある領地や農村に食料を支給していくだけだ。
そして主食である麦の植え付けが終わり、秋から冬へと変わっていく。王都内はゴブリンやオークが出始めているが軍が討伐していた。
「うむうむ、兵士達はよくやっておるな。魔物など恐るるに足りずじゃ」
「陛下、この冬を乗り越えガーミウルスを撃退すれば新生アネモスとしてより栄えましょう」
「フッフッフッ、疫病神に付いた愚か者どもめ、その時を楽しみにしておれ」
王都内で蔓延しかけた病気は教会のポーションで防がれ、魔物のネズミや普通のネズミと害虫をセイが駆除した事で落ち着きを取り戻していた。閑散とした王都はそれなりに生活が出来る環境となり、兵士達が魔物を討伐していることでやはり神はいなくても問題ないと錯覚していくのであった。