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それ君達のじゃないよ

その騒動から一ヶ月程達、秋を迎えたアネモスは豊かな実りのある地区と実りが少ない地区が明白になっていく。


「ええいっ、食料のある土地から奪ってでも良い。なんとしても食料を確保せよっ」


王派の領主達はどこも食料の備蓄が減り、冬を越せるかどうかの瀬戸際になっていた。


「陛下、それはなりませぬ・・・」


「何を申しておるかっ。王都も食料が不足してきておるのだぞっ。備蓄倉庫もネズミにやられるとは何たることじゃっ」


「豊かな土地から奪うのではなく、購入せねばなりません」 


「何を抜かすかっ。元はと言えばすべてワシの国の物ではないかっ。供出させよっ」


初めに農村から強奪した領主はセイ達のバチを当てられ慈悲を貰ったあと、奪った農村に詫びを入れてお金を払った。村人達は人を憎むなと言われた通り謝罪を受け入れ、不足している食料も追加で売っていたのであった。


「陛下、セイ様ともう一度お話を・・・」


「貴様、裏切るつもりか?」


「い、いえ。しかしながらこのままでは」


「ええい、貴様はもういらんっ。粛清対象になると覚悟せよっ」


他の領主たちも今の領主にバチが当たった事を知っていた。しかし王に歯向かえば神の加護も貰えないばかりか粛清対象になるのを目の当たりにして何も言えないのであった。


そして王の命令通り無理矢理食料を奪い、反省もしなかった領主はバチを当てられた。


ドオンっ


セイはヘスティアの加護を使い領主の屋敷を一瞬で消失させる。サカキ達は事前に屋敷にいるものを追い立て外に出していたので死傷者は出してはいない。


「神を信じないのは自由だ。だが仇なす者にはバチを与える。奪ったものはすべて元の所へ返せ。さもなくば次はお前らに直接バチを当てる」


この領地には食料も何も与えなかった。貴族達が多く避難しており、領民達にはこの領地を捨てろと伝えたのみだ。近くに加護持ち領地がありそこに避難出来るからだ。


避難していた貴族達は最後までウェンディを罵ったのでセイは見捨てることにしたのであった。


このことが見せしめとなり、同様の事件は発生しなくなる。王の供出させよとの命令を聞かずに私財を出して食料を買うようになっていったのである。



セイは各地が落ち着いたのを見計らってアクアに飛ぶ。



「おー、姫様邸が出来たのか」


「うむ。短期間で見事なものじゃ」


屋敷とは呼べないが平屋の立派な家が出来ていた。3人で住むには十分だろう。


「魔導具を設置するからな」


と、持っている魔導具を出して便利住宅にしていく。


「セイ、他の魔導具の販売どうなってんの?」


「ごめん、初めにやっただけで出来てないや。フィッシャーズ達の分は渡しておこうか?」


「いや、持っててくれ。ここが発展したら売らずに使うわ」


「権利はどうする?」


「そっちが落ち着いてからでいいぞ。俺達にゃ無理だからな」


ということでそのまま預かることに。


姫様達が空馬から引っ越したので中を元通りにする。


「リタがオーガ島に避難してるんだけど暇みたいでね、ここに来たいと言ったら連れて来ていいか?」


「おー、大歓迎だ。村が嫌なら王都でもいいぞ。家族ごとなら王都の方がいいかもな。俺たちの家を使えばいいしよ」


「なるほどね。じゃあ聞いてみるよ」


と、用事を済ませてガイヤの総本部に向かった。


「おう、今日は総長いるぞ。ちょいと話をしようか」


と、マッケンジーと総長の部屋へ。


「この度はアネモスへの支援をありがとうございます」


「いや、それには及ばん。世話になったのはこちらだからな」


「なんの世話?」


「ガーミウルス絡みの件だ。すべての証拠を掴んで泳がせている」


そのことか。


「でな、今アクアと協力体制を組んでいる」


「なんの?」


「アネモスの次の標的がアクアだからだ」


「え?」


「と言っても心配すんな。まずアネモスを落とし、そこを拠点にボッケーノへの侵攻、それとアクアに侵攻しガイヤの分家がそれに協力してガイヤとアクアを乗っ取るという計画でな」


「そんな事になってんの?」


「ガイヤはともかくアクアは軍がたいした事がないからな。ガイヤとガーミウルスが協力したらあっさり侵攻出来る」


「で、ガイヤ本家とアクアとで事前協議してるってことだね」


「そうだ。侵攻と言っても武力でなく籠絡という方法もある」


「問題無し?」


「お前のお陰だな。アクア王もアーパス様を強く信仰しているから甘言に乗る事はないだろう」


「なら良かった」


「後はセイがガーミウルスを叩きのめしてくれれば済むな」


「追い返す事はするけど殺したりはしないと思うよ」


「そうなのか?」


「まぁ、責任者にはバチ当てると思うけど一般の人はどんな人達が知らないからね。関わらずに済むならお互いに関わらない方がいいんじゃない」


セイは加護の無い領地と加護のある領地を想像していた。ガーミウルスは神無し国だ。豊かな土地では無く食料とか不足しているのかもしれない。まぁ、国民の食料が不足していても軍事にだけ力を入れている国は元の世界でもあったけど。そうだとしても俺にはどうしようもないからな。


ガイヤからまた多くの支援を貰い、もう大丈夫だからと打ち止めにしてもらった。アクアでも同じく支援を貰い打ち止めにしてもらう。




その頃のアネモス王都。


騎士部隊と冒険者達に護衛された数多くの荷馬車が到着していた。荷馬車を守るのはボッケーノの者達だった。


「陛下っ、ボッケーノより支援の食料やテント等を持って来てくれました」


「なんとっ。誰が支援要請をしたのだ?」


「そ、それが・・・」


ボッケーノの騎士達は届け先が分からずアネモスの王都に来ていたのだった。


「ウェンディ様とセイ様への支援の品だと申しておりまして・・・」


「なんじゃと?ええーい、ワシが直接話をする。案内せよっ」


と、アネモス王と宰相がボッケーノの荷馬車を守る騎士団に出向いた。


「此度は支援の品を運んでくれたそうであるな。ご苦労であった」


「ボッケーノの騎士殿、アネモス王の御前である。控えぬか」


ボッケーノの騎士団はアネモス王が直接来ても控えず。荷を守っていた。


「アネモス王、この荷はボッケーノ王よりウェンディ様並びにセイ様への支援と命令を受けて持って参ったものであります」


「いいから渡さぬかっ。セイも疫病神もアネモスの者であるっ」


「この期に及んでウェンディ様を疫病神呼ばわりされるとは愚かな。我らボッケーノはヘスティア様を信仰する国であり、支援を指示されたのは同じ神であられるウェンディ様御一行にございます」


「ええいやかましいっ」


王が手を上げると衛兵達がざっと騎士団を取り囲む。ボッケーノの騎士たちも武器を構えた。


「支援を持ってきた我らに武器を向けるとは失礼な」


「戯言を申すな。反乱軍への支援など敵対行為にしかならぬわ」


そこへアネモス騎士団が登場した。


「この者達は反乱軍に加担する者である。ひっ捕らえよっ」


しかし、騎士団はボッケーノ騎士団に頭を下げた。


「ボッケーノの騎士団殿、我が王の無礼な振る舞い誠に申し訳ございません。そちらの荷の届け先は我らがご案内致します」


「なっ、何をふざけた事を申しておるのじゃっ」


「陛下、これはボッケーノ王からの支援にございます。ガーミウルスどころかボッケーノまで敵に回すおつもりかっ」


そう王を叱責したのはルークであった。


「貴様・・・」


「陛下、我ら騎士団は国を守るのが努め。国は人、人は国であります。どうか正気にお戻り下さいませ」


「この裏切り者めがっ」


王は衛兵達に騎士団を討つように命令するが騎士団に適うはずも無い衛兵達は動く事が出来なかった。


アネモス騎士団は改めて無礼を詫びてマモンのいるギルドへとボッケーノの騎士団を案内したのであった。



「ルーク殿、王に逆らって大丈夫なのですか?」


「陛下は正気を失っておられるような気が致します。ガーミウルスの脅威にさらされ、国は神を信じる者と信じないものに二分されております。神を信じる者は救われ信じない者は窮地に陥っているのです」


「なぜアネモス王は神に縋ろうとはされないのでしょうか」


「つまらぬ矜持でございましょう。ここまで国を発展させたのは王家であるという自負がそうさせているのだと思います」


「それは神の加護があっての話でしょう」


「アネモスはご存知の通り、神の加護は風にございます。風は家屋を破壊し災害ももたらしましたから恨んでいるものも多かったのです。王自らが神を捨てると宣言され、その後は風の被害もなくなり穏やかな国になりました。国民もそれを喜んだのです」


ルークは10年ほどの前の話をしながらギルドへと案内していた。


「ボッケーノよりの支援の品をお届けに参りました」


ルークがギルドを訪ねて王との出来事を話した。


「セイ宛てなんだなこれ?」


「はい」


「ちょっと待っててくれ。セイに連絡を入れる」


ピリリリリっ


「もしもし」


「セイか、今どこにいる?は?アクアだと。今ボッケーノから騎士団が支援の品を持ってきてくれたぞ。どこに配るんだ?うんうん、わかった。」


「騎士団の皆さん、ここで酒でも飲みながら3時間程待っててくれるか?」


「酒でございますか?」


「セイは今アクアにいるらしくてな、戻って来るのに3時間程掛かるらしい。ここで待っててくれだと」


「アクアから3時間で戻って来られるですと?」


「神の乗り物があるからな。アネモスの騎士達もここで待っててくれと言われたから一緒に待っててくれ。冒険者共もな」



マモンに言われて意味が余り分からなかった皆は取り敢えず数名の見張りを荷馬車に残してギルドの酒場に座ったのだった。


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