ネズミーランド
ルークと別れた後、フェンリル達に今のように避難する人が襲われて勝てそうにないならヘルプをしろと命じ、夜に屋敷に来るように言っておいた。
ギルドに移動してギルマスと話をする。
「おう、ネズミの魔物が出始めたぜ」
「やばいよね」
「すばしっこいが強くねぇからなんとかなるぞ」
「いや、強さじゃなくて病気をばら撒きそうなんだよね。そのうち普通のネズミが大量に魔物に追われて出てくるよ」
「マジかよ」
「ギルドにも結界張っておくよ。でも普通のネズミは防げないからね。食べ物とか食われないように管理をちゃんとするように言っておいて。俺は今から教会に行ってくる。晩御飯をうちで食べながら打ち合わせしよう」
そう伝えた後に教会にいく。
「ネズミですか?」
「そう。魔物のネズミは入って来れないけど普通のネズミは防げないから食べ物は絶対に外に放置しないでね。あと油や石鹸とかも」
「石鹸なんて食べるんですか?」
「元は油だからね。ネズミは病気をばらまくからそのうち病人がたくさん出るかもしれない。ポーションを追加で持ってくるから」
そう伝えた後に快速空馬でポーションダンジョンへ。
「魔物は順調に入ってるか?」
そう聞くと少しパクパクと入り口を動かすので魔寄せの鈴の効果は出でいるようだ。
「薬が大量に必要になるかもしれないからもらえるかな」
と、受ける準備をしてから妖力を流すとザラザラザラザラと出してくれる。
暫く出し続けて貰って妖力を流すのを止めた。
「ありがとうね。また来るよ」
と伝えて屋敷に戻った。
夕暮れになりギルマスとグリンディルがやってきたのと同時にフェンリルとシルフィードがやってきた。
「ギルマス、ウェンディの眷属のフェンリルとシルフィード」
「あれ?グリンディルですって?」
「そうよ。初めましてシルフィード。私は人間になったのよ」
「なんで人間なんかになったの」
「ふふふっ、なんでかなぁ?」
と、マモンに腕を組むグリンディル。
「物好きね・・・」
「あら、私も人間になろうかなぁなんて」
と、ウンディーネ。
「ダメよ。そんなことをしたら怒るから」
「うわぁぁぁっ。アーパス、来るなら予告してから来てくれよ」
いつの間にか隣にいたアーパス。そしてセイの肩に乗ってるヘスティア。
「へへっ、コイツらまた眷属になりやがったのかよ」
「だからヘスティア、はしたないって言ってんだろうが。降りて座れ」
いいじゃんかよとブツブツ言いながら椅子に座った。
「ヘスティア様とアーパス様が来たのか?」
「そうだよ」
全員見えているがギルマスだけ見えていないのだ。
鉄板焼を食べながらこれからの話をしていく事に。
「フェンリル、シルフィード、お前らも食っていいぞ」
フェンリルとシルフィードは肉の焼ける匂いにヨダレをジュルジュルしていた。やっぱり飼い主に似るんだな。
フェンリルには皿に入れてやり、シルフィードは小さいので細かく切って爪楊枝刺してやると角あり肉を旨そうに食っていた。
セイは自分も食べながら顔の横でチョロチョロ飛ぶシルフィードにも食べさせ、フェンリルの皿にも入れていきながら話をする。
「病気か。今までそんなに病気が大流行したことはなかったぞ」
「下水には病原菌が含まれてるからね。もし井戸とかでネズミを見かけたら生で飲まずに煮沸しないとダメだよ。それか水は魔導具から出た物を飲むかだね。ギルマスには俺の水筒渡しておくよ。これ浄化機能付きだから」
「お、悪いな。これ冷たくなるやつだよな?」
「そう。アネモスは蒸し暑いから冷たい水を飲みたくなるでしょ」
屋敷の中は魔導エアコンが効いているので暑くは無いが外は蒸し蒸ししているのだ。
ギルド用に万能薬をたくさん渡しておき、明日は教会に持っていくことに。
「で、騎士達もこっちに寝返ったわけか」
「王に新生アネモスの為にと説得したみたいでね」
「新生アネモスってお前が作るんだろ?」
「そう。でも王は裏切った貴族や領主達を粛清した後の国の事と思っているみたいだよ」
「騎士達も頭が回るもんだな。上手く勘違いさせたわけだ。しかし避難先が王派なら魔物や食料とかどうすんだろうな?」
「魔物は兵士が倒しにいっているらしい。食料はどうだろうね。他の土地はあまり野菜も育ってないみたいだし小麦とかの備蓄でなんとか凌ぐつもりなのかな?」
「このまま夏野菜も秋野菜も無理なら冬越せねぇんじゃねぇのか?」
「多分ね。どれぐらいの備蓄があるか知らないんだけど王に付いた貴族たちは上位貴族が多いしそこそこ持ってるかもね」
「しかし足りなくなりゃ、お前の支配下に下った農村とかに強奪しにくるんじゃねぇのか?」
「それもあるだろうから、農村には脅されたら素直に出せと言ってある。同じ国の人に殺されたりしたらたまんないから。まぁ、強奪した領地には後でバチ当てるから別にいいよ」
「バチか。お前が当てんのか?」
「そう。サカキ達に恐怖を振りまいてもらいながらね。別に信仰は強制しないけど逆らうとバチが当たるというのはやっとかないと」
「神様のフリも大変だな」
「まぁ、ガーミウルスが来るまでの辛抱かな。ガーミウルスが侵攻してきたら今のアネモスは滅びると思うよ」
「建物もか?」
「うん。防災都市にするには一度崩れた方がいいんじゃないかと思ってる。街は後から後から作られてるからそういうのを考えられてないだろ?」
「お前、それ何十年どころの単位じゃないだろ?」
「そうだね。新生アネモスは皆が1から作りあげた国として栄えていけばいいんじゃないかと思ってる。幸い土地は王都以外にもたくさんあるし、ここに一極集中しなくていいんじゃないかな」
水害と風害に強い街は高い建物より低い建物と整備された水路が必要だ。山から流れてくる水は持山でやったように一気に水が流れて来るのを防ぐ物を作ればなんとかなる気がする。マリー姫がまだ王をやる話はしていないけど、宿作りは国造りの予行演習みたいなものになってくれればいいな。
「エビ焼いて」
と、アーパスが言うのでエビやら魚を焼く。ヘスティアはカレースパイスの魚を希望。セイはだんだんと料理も上手になっていったのであった。
餌付けされたフェンリルとシルフィードは毎晩屋敷にご飯を食べに来るようになっていく。特にシルフィードはチョロチョロセイの周りを飛びあーんと口を開けて食べ物をねだるようになっていた。
セイはオーガ島が満員御礼になったと聞いて島へ行く。
「ヒョウエ、食料は足りてるか?」
「なんとかな。魚はダンジョンからも取れるし漁師たちもこの近辺で漁をして獲って来てくれている。野菜と肉と小麦か米がやばいかもしれん」
「了解。ならこれを置いて行くわ。オーガの森も開墾するか?」
「魔物はどうすんだ?」
「俺が結界を張ってやるから農地にしてくれ。あとダンジョンに魔寄せの鈴を付けるから毎回魔物を放りこまなくていいぞ」
「お、それは助かる」
「テントは必要か?」
「そうだな。長屋は作って寝るところには困らんが・・・」
「じゃテントも置いていくわ。開墾は一ヶ月程度で出来るか?」
「木を切り出してあるからそれぐらいでなんとかなるぞ」
「了解。じゃあ開梱が終わって結界を張ったら避難民達にも手伝わせてくれ」
「セイさん、アネモスの様子はどうですか?」
リタが心配してそう声を掛けてきた。
「王都にも魔物が出始めているよ。そのうち病気とかも蔓延するかもしれないね」
「そんな事になってるんですか」
「そうなんだよ。でもここは大丈夫だから。ここの居心地はどうだ?」
「うーん、人がたくさんいて気を使います。手伝えることも少ないので身体がなまりますね」
「アクアに行くか?シーバス達の村を再開発しているからやることいっぱいあるぞ」
「アクアにですか?」
「そう。姫様もがんばってるしな。ここに避難してきているのは漁師関係が多いから鬼達以外に知り合いほとんどいないだろ?」
「お父さん、お母さんどうする?」
「いつも娘がお世話になっております」
と、両親に挨拶をされた。そういえば会うのは始めてだな。弟もリタを少年にしたような感じだ。
「他国にですか・・・」
「アネモスは最低でも来年の春まではこういう状態が続きます。もし決心されるなら半日程で移動出来ますから考えておいてください」
「わかりました」
「セイさん。行くとなったら家族全員でもいいんですか?」
「いいよ。それかボッケーノでもいいし、ガイヤでも。住むところはなんとかするよ」
「フィッシャーズさん達はいつも漁村にいるんですよね?」
「と思うよ。依頼も受けてるみたいだから王都にも行ってるだろうけど」
「わかりました。家族で話し合っておきますね」
多分アクアに行くことになるだろうな。もうしばらくしたらアクアに行こう。まだテントとか足りてないし。
セイはまた避難地に行き、食料配布やテントを配布して雨を降らせて行くのであった。