海水浴と日焼け薬
翌日漁村に移動して砂浜で海水浴だ。
防波堤のように突き出た岩場近くにテントを張り、そこで着替える。爺は執事服のままでよく平気だよな?
セイの水着はタマモが選んでくれたもの。流石はアクアの水着、めっちゃ派手な柄だ。魔法の絨毯をはいているような感じだ。
シーバス達のは黒い布って感じの水着。他にも泳いでいる人はいるけど地元の人は黒いスクール水着みたい感じだ。
最初に出てきたのはツバス。花柄ビキニの健康的な感じだ。パールフはワンピース。肩紐がないけど大丈夫なのだろうか?オルティアは白いビキニ。
ウェンディは・・・。あれ?ワンピース?
「ウェンディ、昨日の水着は?」
「うっさいわねっ」
モリーナもワンピース、姫様はオレンジのビキニ。顔や手足は焼けているのにそこから下は真っ白だ。なんか面白い。
「みっともないのじゃ。しかーし、今日焼ければ問題がないのじゃっ」
最後に出て来たのはタマモ。黒のビキニだ。スタイル抜群の色白美人に黒いビキニ。それまで注目を浴びていた他の女性陣を瞬殺した。せっかくツバス達はチヤホヤされて機嫌が良かったのに。
男が着替えをしていたテントを捲りあげて屋根だけにしてビーチパラソルの代わりにする。モリーナとかここで日陰に入っていればいいだろう。
「ここ、夏は海水浴場として人気が出そうだね。屋台とか出してテントとか貸し出せばいいんじゃないかな?」
「今日は仕事の話はなしだ。遊ぼうぜ。おらよっ」
ブワッシャン
「クックックッ、やりがったなシーバス。これでも喰らえっ」
ばっしゃん
お互い水を蹴り合って掛ける。それがエスカレートしていき、水バトルに発展。
「お前特別ランクだから4対1でも問題ねーだろ」
「汚ねぇぞっ」
4人から水攻撃をされるセイ。
「くそっ、それならこっちは」
ドザーっ。バチャバチャバチャバチャっ
「うぎゃーーっ。何しやがったっ」
「必殺加護の雨」
「は?なんだって?」
「アーパスが俺に加護をくれたんだよ」
「なんで加護が必殺になるんだよっ」
ぎゃーぎゃーいい歳をした男どもを呆れて見ている女性陣。
「ほら、姫様。足をバタバタさせて」
「やっておるぞっ」
ツバスとパールフは姫様に泳ぎを教えていた。姫様は泳ぐのが初めてなので手を繋いで貰ってバタ足から始めていたのだった。
「セイー、お腹すいたーっ」
一足先に海から上がったウェンディがタマモの横でそう叫ぶのでお昼にすることに。
「砂婆、トウモロコシとイカとかも持ってきて」
即席海の家だ。砂婆にトウモロコシとイカを焼いて貰っている間にセイは焼きそばを焼いていく。
ニョイン
「うわぁぁぁっ」
いきなり顔の横から足が出て来て顔を挟まれたのだ。
「ヘスティア、びっくりするだろうが」
「俺様にも焼きそばをくれよ」
「ならヘスティアのはカレー焼きそばにしてやろうか?」
「やったぜ」
むぎゅう
「足で顔を挟むな。皆からは見えてないっていってもはしたないぞ」
「いいから見ろよ。じゃーん」
と、前に浮いているヘスティアも水着だった。赤いビキニのヘスティア。
「いつもと変わらんじゃん」
「ばっか、チゲーだろうがよっ。ほらよく見てみろよっ」
そんなに胸を強調しないで欲しい。流石に照れくさいぞ。
「私はエビを焼いて」
「うわぁぁぁっ。だからアーパスいきなり横にいるのやめてくれよ」
アーパスはワンピースの水着だった。
「タマモ、昨日二人も買いに来てたの?」
「そうさね。ずるいとか言い出したから買っておいたよ」
ヘスティアはカレー焼きそばをもりもり食った後にトウモロコシをがっつき、アーパスはエビの鉄板焼をウマウマしていた。
ガーハッハッハッ。
サカキ達もいつの間にか出てきてイカ焼きとビールをシーバス達と楽しんでいる。姫様は焼けたトウモロコシやイカをモリーナの所に持って行っていた。
セイもカレー焼きそばを食べてビールを飲む。
「カレーの美味しいの?」
ノーマル焼きそばを食べているウェンディが聞いてくる。
「食ってみるか?」
と、一口カレー焼きそばを口に入れてやる。
「どっちも捨てがたいわね」
「そうだよな。どっちも旨いんだよな」
と、セイはウェンディの焼きそばを食べる。そして二人は自分のと交互に食べていくのだった。
「もう食えんのじゃ」
トウモロコシでお腹いっぱいになってしまった姫様は焼きイカを半分食べたところでギブ。焼きそばまで行きつかなかったようだ。
「しかし、こんなシンプルなもんでも旨ぇよな」
とチーヌが言う。
「おう、セイじゃねーけどよ。こりゃ海水浴だけでも人呼び込めるぜ」
とフィッシャーズ達も仕事の話になっていた。海水浴なんて子供の遊びと思っていたが改めてこうして遊んで美味いものを飲み食いするととても楽しい。
「なぁ、この時間でもなんか釣れる?」
「キスとかなら釣れると思うぞ。ゴカイを捕りにいくか?」
河口近くの干潟みたいな所で捕れるらしいが面倒なのでイカを切り身にして使おう。
防波堤みたいな岩の先端に立って投げ釣りをする。コツコツと当たるけど釣れない。
「何やってんのよ?」
「釣り。暫く休憩だからお昼寝してろよ。ヘスティア達も一回帰っただろ?」
というのに横で見ているようだ。当たりはコツコツあるけど餌を盗られるばかりで釣れない。見かねたチーヌがもっと餌を小さくして速く巻いて留めてを繰り返せとアドバイスをしにきた。
「餌ってこんなに小さくてもいいの?」
「いいから試せって。コツコツっと当たりが来たらスーッと引っ張れ。それを繰り返すんだ」
と、言われて投げて試してみる。何度か試したときにゴゴンと当たりが大きくなった。
「わっ、釣れた。これカワハギだよね?」
「ウマヅラだな。夜に食おうぜ」
そしてコツを掴んだセイはウマヅラハギとカワハギを追加していく。夕暮れになるとキスやメゴチなんかも釣れたのだった。
夜はバーベキューと釣れた魚の料理。キスとメゴチは天ぷらに、カワハギ達は刺し身になった。
シーバス達は魚より肉を食い、他は魚をメインに食べる。ヘスティアは肉、アーパスは魚だ。ウェンディは両方がっついていた。
「キスの天ぷらは旨いのじゃ」
「本当に身がふわふわで美味しいわね」
「姫様、背中がまっかっかだけど大丈夫か?」
「うむ、ヒリヒリしておる。しかし、背中から大物が取れそうな予感じゃ」
夜寝れないんじゃないのか?と思ってたら案の定痛くて眠れないらしい。
パープルがくれたという馬脂を塗ったから大丈夫だというけどそれだけだとダメだろうな。
馬脂を貰ってポーションと混ぜる。
「ほら姫様、背中出せ」
「おー、セイすまぬ。しかしそーっとじゃぞ、そーっとな」
セイは手に馬脂ポーションをたっぷり付けて姫様の背中にべちょっと付ける。
「ふんぎゃぁっ。そーっとと言ったではないかっ」
「すぐに収まるから我慢しろ」
塗り塗りしていくとすぐに痛みが治まった姫様。ついでに顔とかにも塗り塗りしていく。
「もう痛くないだろ?」
「本当じゃ、何をしたのじゃ?」
「ポーションを混ぜて塗ったんだよ」
しかし健康的な日焼けも元の色白に戻ってしまった姫様は残念かる。背中から大物が取れると楽しみにしていたからだ。
モリーナも顔に塗るから分けて欲しいと言うので渡すと、シミ・そばかすとかも消えていく。
「ちょーだいっ、私達にもちょーだいっ」
「近い近い近いっ」
ツバスとパールフはセイにチュウするぐらいの勢いで顔を近付けて日焼け、シミ・そばかすに効く塗り薬を欲しがった。
「お前らにはポーションいっぱい渡してあるだろうが。それと馬脂と混ぜただけだよ」
「えっ?新しいポーションじゃないの?」
「俺はポーション研究者じゃないからそんなの作れないよ」
「あれこんなことに使っていいの?」
「いいよ。たくさんあるから」
ツバスとパールフはウキウキしながらポーションと馬脂と混ぜて顔に塗り塗りしていった。お肌の曲がり角だから気になっていたようだ。
「オルティアも塗る?」
「若いから平気です」
と、地雷を踏み抜いたオルティアはファイアボールを撃たれながら砂浜を走らされていた。
ふとウェンディを見ると女神ズは日焼けもしていない。やはり人とは違うのだなと思う。
「これなら売っても万能薬ってバレないんじゃない?」
「うーん、定番化商品にするなら誰かが作れるようになってからだね。というか万能薬でなくても普通のポーションでも同じような効果が出るんじゃないの?」
「マジで?」
「日焼けって火傷と同じだからね。ポーションって火傷も治るだろ?」
「あっ、そうかも。でもシミ・そばかすとかも治るかな?」
「うーん、それはわかんないね。今度試してみなよ。それで上手く行ったらここでアーパスの美容薬とかなんとか行って売ればいいんじゃない?ここに来ないと買えないとかにしてさ」
「セイ、あったまいいっ!」
仕事の事は忘れろと言われながらもセイ達はまた仕事の話をしていくのであった。