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自分では気付いていなかったけど

「ここで結界を張る所は終わりだね」


「そうみてぇだな」


ぬーちゃんに乗って夏野菜の育成具合を見て回る。雨を降らせた事で乾いた土地も結構復活してなんとかこの夏は乗り越えられそうだ。


王都に戻り、ギルドに行く。ギルマスとグリンディルはここに残っているのだ。


「お疲れ様」


「おう、終わったのか」


「まぁ一応。王都には結構人は残ってる?」


「そりゃあな。家も家財道具も王都にあるし踏ん切り付かない奴も大勢いるだろうよ」


「食料とかどうしてんのかな?」 


「避難先とか往復してる奴らが運んでるぞ。なんとかやっていけてるから心配すんな」 


「それなら良かったけど」


「で、これからどうすんだ?」


「ちょっとアクアに行ってくるよ」


「そうか。息抜きしてこい」


「うん、そうさせて貰う。ギルマス達はどうすんの?」


「俺達はここにいる。冒険者共もここが連絡先になってるからな」


「了解。酒置いて行くから好きに飲んで貰って。また向こうで仕入れて来るよ」


と、残ってる酒樽を出していく。


「お、喜びやがんぜ。酒の在庫も減ってきてやがるからな」


王都は人が減り、物の流通も滞り始めている。生活をするのも大変になって行くだろう。



なんかあったら連絡してと電話を渡しておく。ギルマスにはまだ渡してなかったのをすっかり忘れていたのだ。



快速空馬を飛ばして漁村に到着。


「セイが来たのじゃーっ」


「姫様、元気だったか?真っ黒じゃないか」


色白の姫様が南国の姫様みたいになっている。モリーナも日焼けをして健康そうに見えた。


「ヒリヒリしていたのも収まったからの。皮がたくさん剥けたのじゃ」


と、記念に取ってあった大きな皮を見せてくれた。


「脱皮して大きくなったんじゃないのか?」


「人も脱皮すると大きくなるのか?」


「姫様、セイ様の冗談でございます」


「びっくりさせるでない。妾は蛇と同じかと思ったではないか」


と、姫様がほっとした事で皆が笑う。セイもそれにつられて笑っていたのであった。


「セイ、明日泳がねーか?」


「泳ぐ?」


「夏の海なんだから泳ぐのは当たり前だろ?水着とかもってるか?」


「いや持ってないな」


「なら明日買って来いよ。ここにもあるっちゃあるが布きれみたいなのしかねーから王都で買って来いよ」


「水着か・・・。シーバス達はもってんの?」


「あるぞ」


「オルティア、お前水着持ってるか?」


「ありません」


「なら一緒に買いに行くか」


「えーっ、ずっるーい」


「ならツバスもパールフも買えばいいじゃん」


「お前ら持ってるだろうが」


「何年前の事を言ってんのよっ」


と、フィッシャーズ達は揉めるが女性陣に押し切られて全員で買いに行くことになった。明日はお買い物で明後日海に行くことに。


久々にビーチでバーベキュー。海鮮と焼肉だ。


「セイ、俺様はその塊をくれ」


「わっ、いきなり出て来んなよ」


「いいだろうがよ。今日は遊びなんだろ?」


「私はその大きなエビが食べたい」


「わぁァァァっ。アーパス、いきなり横に現れんなよ」


今日はテルウスは来ていないようだがヘスティアとアーパスが食べに来た。シーバス達には見えていないけど


セイの様子からヘスティアとアーパスが来たことを理解するシーバス達。自分達には見えないがセイのピリピリしたような雰囲気が解けていくのは感じ取れたのであった。



「アネモスはそのような事になっておるのですな」


「うん、ずっと結界張りとかしてたからサカキ達から休めって言われてね。後はアクアとガイヤとボッケーノでテントを買い占めて帰ろうかと思って」


「確かに避難先で簡易住宅を作るのも時間が掛かるでしょうからな」


「そうなんだよね。とりあえず広場に屋根だけ作ってとかそんなんなんだよ。寒くなる前になんとかしないと」


「まだまだまだやることはたくさんあるのですな」


「そう。でも姫様達はここの事を頑張ってね。アネモスのことは俺たちがなんとかするから」


「うむ、人の事を気にするのはまず自分が成すべき事を成してからじゃ。のう?シーバス」


「ハイハイ、姫様のおっしゃる通りです」


シーバス達はセイに手伝うと言いかけたのだ。それを察した姫様は今のセリフを言ったのであった。



その夜、ヘスティアとアーパスは帰らず泊まっていきウェンディとセイの取り合いをしていたのであった。


空馬でアクア王都に移動。水着選びはタマモにお願いしてセイ達はフィッシャーズの男連中と手分けしてノーマルテントと魔導テントを買っていく。ついでに寝具や庶民向けの服もだ。手が足りないとシーバスがギルドに行き、他の冒険者達にも手伝わせていた。



「わっ、こんなに集めてくれたの?」


「おう、水臭ぇぞ。ギルドは今お前の支配下にあるんだ。ちゃんと指示して使え。自分1人でなんとかしようとして出来る量じゃねぇだろ?」


と、ギルマスに怒られた。シーバス達の話を聞き、買いに行くのではなく各店に持って来させていたのだ。ついでに魔導テント用の魔石もくれた。


「支払いはどうしたの?建て替えてくれてんの?」


「アクア持ちだそうだ」


「え?」


「アクア国からの支援だそうだ」


「いつ国に連絡なんて入れてくれたの?」


「ランバール氏が何か支援出来る方法がないか前に相談に来られてな、セイからの要請があれば全部王室へ請求することになっている」


そんな手配までしてくれてたのか・・・


「テントやら寝具は増産体制に入っているからまだ追加が入荷してくる。足りなくなったら取りに来てくれ」


そしてこの事は総本部にも連絡が入っているから顔を出せと言われた。



いつもの宿に皆と待ち合わせしてあるので合流してフィッシャーズ達行きつけの店で飯。姫様達は宿を別に取ってそこで食事も済ませるとのことでこちらには参加しなかった。飲み会になるだろうと気を効かせたのかもしれないな。



「セイ、ごめんね。タマモにいいって言ったんだけど私達の分まで払ってもらっちゃった」


とパールフが恐縮している。


「そうなの?まぁ、水着ぐらいいいんじゃない」


「セイ、ならここの飲み代は俺が払うわ。嫁さんの服を買わせっぱなしてのもなんだかな」


とダーツが言うと、


「おっ、お前の奢りか。なら遠慮はいらねぇな」


と、サカキが出て来た。


「ゲッ、サカキがいなかったから奢ると言ったんだよっ」


「男に二言はねぇよなぁ?」


と、ダーツの肩を組んでほっぺをウリウリするサカキは樽で頼んでいた。


結構な支払いになったのでフィッシャーズ男性陣で割り勘となったのだった。


皆は自分達の家に帰り、また広い宿の部屋でウェンディと二人。



「なんかこう広いと寂しいよな」


「別にいいじゃない」


「そうだな。じゃ風呂入ってくるわ。もう寝てろよ」


ウェンディが風呂から出て来たので代わりに入りにいくセイ。今日はウンディーネはリザードマンの所に行って来てないので1人風呂だ。ゴボゴボはないけど完全に1人きりとか随分と久しぶりなのだ。


ビール飲んじゃお。


冷えたビールをバスタブに浸かって飲む。


「かぁーっ。こういうのを旨いと感じるとか思わなったなぁ」


「なら私にも頂戴よ」


「うわぁぁぁぁあっ。何入って来てんだてめぇわよっ」


「水着着てるからいいじゃない」


と、ウェンディは水着を着て入って来た。


「俺はマッパだろうがっ」


「タオルで隠しなさいよ。どうせ男物の水着もそんなんじゃない」


ウェンディは水着姿で横を向いてモジモジしている。フリフリ付きのビキニみたいな水着だ。もしかしたら一番に見せに来たのか?



「なっ、何よっ」


「いや、こうして見ると全くないわけじゃないんだな」


「どこ見てんのよっ」


「フリフリ」


「すっ、スケベっ」


と言うと真っ赤になったウェンディはタオルを巻いて湯船にじゃぶんと飛び込んで来た。


「あのなぁ、明日は皆水着なんだろ?」


「そっ、そうよ」


「みんなにもその姿を見られるぞ」


「シャツ着るわよ。それにヘスティアもこんなんだったでしょっ」


恥ずかしいならなぜもっと布面積の多い水着を買わなかったのだろうか?


「ビール頂戴よ」


と反対側を向いて言うウェンディにビールを注いで渡してやる。


ゴッゴッゴッ


とても女の子の飲み方とは思えない飲み方をして一気するウェンディ。


「もう出る」


と、すぐに上がって行った。


これは水着を褒めてやらねばいけなかったのだろうか?



セイは暑いのでパジャマに着替える前にバスローブを来て部屋に行くとウェンディが水着姿のままで寝ている。


どうすんだよこれ?


「起きろウェンディ。水着のままで寝るなよ。それまだ濡れてんだろ?」


風呂でビールを一気飲みしたからか酔ったのかもしれない。話しかけても無反応だ。濡れた水着を脱がすわけにもいかないのでバスタオルで包んで寝室へ。


あ、アーパスの加護って水の操作出来るんじゃないのか?


と、ふと気付いたセイはウェンディの水着から水分を蒸発させるイメージで妖力を込めたらちゃんと乾いた。これは便利だ。アーパス、ありがとう。


そしてセイはバスローブを脱いでパジャマに着替えようとしたらウェンディが後ろからくっついて来た。


「起きてるなら着替えろっ」


「このままでいい」


「はっ、はっ、恥ずかしいだろうが」


「このほうがエネルギーたくさん流れるんでしょ」


「そりゃそうだけど」


「だから恥ずかしいの我慢する。私が神に戻れるかずっと不安なんでしょ」


ウェンディも気にしてたのか。


「お前の力は底なしみたいな感じだからな」


「だったら早く流して」


薄暗くて顔色まではわからないけどウェンディも真っ赤なのだろう。


セイは後ろを向いてウェンディに後ろを向かせくっつき妖力を流していった。服を着たままより遥かに流れる量が増える。それでもアーパスに手を繋いで流せる量よりも少ないけれど。


セイは皆に気を使わせてたんだなと改めて気付くのであった。

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