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設計士ロレンツォ

「終わったのか?」


ギルドに行くとシーバス達はそう聞いてくる。


「うん。アーパスも天に帰ったよ」


「寂しくなるな」


「そうだね。でも落ち着いたらまた飯食いに来るよ」


「でも俺たちには見えないんだよな」


「落ち着いたらまた少しの間かもしれないけど力を落として皆にも見えるようになってもらうよ」


シーバス達も少し寂しそうにしていた。



「ギルマスとも話してたんだが結構虫の魔物の数が増えてるらしい。この時期は毎年そうだけどそれ以上みたいだ。城壁を超えて飛んで来るやつもいたみたいだしな」


「うん、それは聞いた。今アーパスが加護の雨を降らせてくれてるからすぐに元に戻ると思うよ」


「急に降り出したのはそういうことか。一緒にいてりゃ可愛い嬢ちゃんにしか見えねぇけどやっぱり神様なんだな」


「そうだよ。誰にも理解してもらえない中、ずっとこうしててくれたんだよ」


「そうだな。心から感謝しないと申し訳ねぇな」


「うん、そうしてやって。それでアーパスも報われるよ」



ギルマスに孤児たちの事を王に直訴しておいた事を伝えて出発する。アンジェラの店には張り紙をしておいた。



空馬で漁村に降りると人々に驚かれるが神の乗り物だと言うとすぐに納得してくれた。シーバス達は皆を集めてこれからやることを伝える。そして姫様とモリーナを紹介した。


「ボッケーノの元王妃と姫様・・・」


皆はその場で土下座ばりに頭を下げる。


「皆さん、頭をあげて下さい。私とマリーはこちらに社会勉強として参りました。ぜひこの村を発展させるお手伝いをさせて下さいませ」


「宜しくお願いしますっ」


と、観光地化賛成者は快く受け入れてくれた。


「爺、姫様達の住むところどうしようね?」


「そうですな。空き家などはありますかな?」


「モリーナ様と姫様にふさわしい家なんてねぇよな」


とチーヌ。俺もうっかりしていた。村の建物はどれも粗末なのだ。


「じゃ、先に姫様達の家を作らないとね。その間空馬に住んでもらおうか。トイレはあるけど風呂がないなぁ」


「バスタブ出しておいて。時間を決めてくれたら私が暫く面倒見てあげる」


「ウンディーネ、悪いけど頼める?」


「大丈夫よ」


ということで空馬の座席を外してマットレスを設置。布団と毛布も出しておく。ウンディーネが全部洗ってくれたので清潔だ。


「暫く窮屈だけど我慢してね」


「うむ、温泉旅行の時の様で楽しそうじゃ」


「セイ、お前行ったり来たりすんのに空馬をここに置いといてどうするつもりだ?」


「もうウェンディと二人だから小さい方を使うよ」


「あ、そうか。まだあったんだな」


「そう。そのうち誰か操縦出来るようになってね。ただ魔石の消費量がどれぐらいかわからないんだよね」


「どういうことだ?」


「ここに魔石が5つセットされてるんだけど俺が操縦してると魔力減らないんだよ」


「セイから勝手に補充されてんのか?」


「そうみたいだね。今度誰か操縦してみて減り具合試さないとね」


「そうだな。落ち着いたらやってみるわ」


その夜はマダラも交えて農作物と建物のスケジュールを確認していく。


海の見える教会と海の見える宿、他にも気軽に食べられる店とか何が必要か意見を出し合っていく。


「これは設計を出来るものを交えて話をしたほうがよろしいですな。アクアの街を見たところ建築技術はかなりありそうなのなのでデザインから一緒に考えて貰った方がいいでしょう」


と、爺がアドバイスをくれた。


「シーバス達はそんな人達知ってる?」


「いや、船大工ぐらいしか知らんぞ」


「了解。あの宿の支配人に紹介してもらうよ。姫様達の家ぐらいならここの大工達で作れそう?」 


「家ぐらいならな」


「じゃ、それは任せるから、宿と教会を作れる人を紹介してもらうよ」


と話しを進めて夜は宴会だ。


「あれ?セイ。どこに行くんだ?」


「王都に戻るよ。宿と教会の職人を紹介してもらうのに早めに声を掛けた方がいいだろ?姫様達も今日は王都で泊まるか?」


「いや、もうここに足を踏み入れたのじゃ。ここで寝泊まりするというのが筋じゃろ」


「そうか。シーバス、姫様達の護衛頼むな」


「おう、任せとけ。交代で空馬の前で野営するわ」


「なら、テント貸しておこうか?」


「いや、こっちも買ってあるから大丈夫だ」


「セイ様、申し訳ありませんが私に貸しておいて下さいませんか?」


「あれ?爺は中で寝ないの?」


「流石にモリーナ様と姫様と寝るわけには参りません」


ということなのでシングルのマットレス、布団、バスタブを設置しておく。拡張機能付きのは魔石の問題があるので普通のやつだ。風呂の時間を決めてウンディーネに伝えてから戦闘機を出した。名前は快速空馬だ。


「じゃ、頼んだね」


と、始めて戦闘機に乗る事に。ウェンディをよいしょっと後ろに乗せてからセイは操縦席に座った。基本操作は空馬と同じ。それに攻撃機能が付いているのだ。


スイッチを入れると甲高い起動音がなる。


グインっ


同じように操作してもこっちの方がピーキーな感じだ。操作に対してかなりリニアというかシビアというか反応が早い。


慎重に操作をしてもバビュンと発進した。


空馬よりスピードも5倍くらい速く飛べるし高さももっと上がれるようだ。


「ウェンディ、大丈夫か?」


「気持ち悪い」


加速Gが強かったからな。


「もう着くから我慢してくれ」


あっと言う間に王都に到着し、宿の近くに着陸する。


酔ってぐったりしているウェンディを抱きかかえて下ろして宿にいく。


「ごめん、支配人と話しできる?」


「ではお部屋でお待ち下さいませ」


アーパスがいなくても同じ対応をしてくれた。



「建築家と設計士でございますね」


「そう。ごめんね、そういうの全く知らなくてさ」


「かしこまりました。明日の朝に使いを出しますのでお部屋でお待ち頂いて宜しいでしょうか?」


「お手数掛けて申し訳ないね」


「提携宿でございますので全く問題ございません」



そして寝る時間になりるとなんか緊張する。今日から二人きりなのだ。別に妖力を注ぐだけなのだがなんか緊張するのだ。


「み、皆がいなくなったからって変な事をしないでよねっ」


「すっ、するかっ」


照れ臭ささが残るので首に手を当てるだけにする。


「あっ」


前より妖力の流れる量が増えている。爆発的に増えた訳じゃないけどそれでも増えた事には違いない。


ウェンディもそれがわかったようで緊張で硬くなっていた身体から力が抜けたような感じが伝わってくる。後はこの流れる量がどれだけ増えるかと、どれぐらい流せば神に戻るかだな。ヘスティアやアーパスは人から見えるようになっても短時間なら浮いたり出来ていた。ウェンディは出会った時からそれすら出来なかった。女神の中で一番力があると言っていたからエネルギー総量の見当が付かない。


でも地道にこれを続けて行くしかないのだ。


二人は寝て意識が飛んだ後はいつものように抱き合っていたのだった。




昼前に設計士が部屋に来てくれる。


「急に来て貰って申し訳ないね」


「いえ、初めまして。ロレンツォと申します。アーパス様の宿と教会を設計させて頂く事が出来るのは誉でございます。アクアで一番の建築物にさせて頂く所存で、命を懸けて設計に望ませて頂きます」


近い近いっ。


とても丁寧で一生懸命さが伝わってくるけど圧が凄い。


「アクアでどんな建物を作ったの?」


「ハイ。美術館は私の先々代が設計したもので、他にもこの宿やペラペラペラペラ」


聞いても建物の名前はわからん。しかし美術館の設計もこの宿の設計にも関わっているなら大丈夫だな。


「現地で皆と話すことは可能?」


「はい。もちろんです」


とのことなのでぬーちゃんで漁村に移動。ロレンツォは神獣に乗せて貰えたと感激していた。



ロレンツォは村に到着する前に街道から村への導線から見たいと言ったので街道に降りて歩くことに。ウェンディはぬーちゃんに乗ったままだ。



「集客はどのようにされるおつもりですか?」


「まだそこまでちゃんと決まってないんだよ」


「宿の魅力も大切ではございますが、導線も重要なのです。出来れば王都から水路で来れるような仕組みを作れればいいのですが」


アクア王都は水の街。ゴンドラで移動出来るのは観光客にとって魅力的ではある。が、王都からここまで水路を作るとなると予算と時間がなぁ。


「予算的に無理だよ。それにガイヤからも人を呼込みたいしね」


「うーむ。国家事業として両国が予算を出してくれればいいのですが。馬車で流通を行うより水路の方が楽にたくさん運べますし」


ロレンツォが突拍子もない事を言い出した。


「水路が二本。アクアからガイヤに流れる水路とガイヤからアクアに流れる水路があれば飛躍的に流通が増えますね。街道から村までの水路は村が負担すべきかとは思いますが両国の王都を繋ぐ水路であれば国が出すべきだと思うのです」


「いや、思うのですと言ってもねぇ」


そして村に向かう道をみてブツブツと何かメモをしていくロレンツォ。


村に入り、皆に紹介したあと宿の建設候補地を見て回る。


「教会はここですね。少し登った丘の上にある教会で周りは花畑にしてペラペラペラペラ」


「教会にはアーパスが寝泊まり出来る建物も欲しいなと思ってるんだよ。教会正面はガラス張りにして中から海が見えるようにしたいんだよね。アーパス像もガラスで作って貰う事にしてあるんだよ」


「おぉっ、なんて斬新なっ。それでは入口側はこうなって、天井はこうでペラペラペラペラ」


「王都の教会みたいに大きくなくていいよ。神官も置かないし、村の人がお祈りを捧げに来たり結婚式をしたりとか」


「結婚式とは?」


という事で説明する。


「なるほど。披露パーティではなく神に結婚することを報告して愛を誓うのですね。ではペラペラペラペラ」


もう希望だけを伝えて任せてしまおう。何を説明されているのかさっぱりわからん。


宿も同じような状態になり、2日ほど掛けて希望とロレンツォの説明会が続いたのであった。


「シーバスさん、では建築士もこちらに任せて頂いて宜しいですか?」


「こっちの大工も手伝ってもらうからよ。予算があまり膨らまないようにしてくれると助かる」


「原材料費だけで結構ですよ。アーパス様に関わるお仕事なのですから」


「いやいやいや、そいつぁダメだ。アーパス様の威光は借りるがちゃんと金は払いてぇ」


「そうですか。では宿の費用は頂くことに致します。教会は材料費だけということにしてください。その代わりお願いがございます」


「何?」


「小さく、小さくでいいので私の名前を教会に記して頂くことは可能ですか?」


と、セイに聞くロレンツォ。


「それぐらいならいいよ。ガラスの碑でも作る?」


「おぉー、素晴らしい。ありがとうございますっ。ではその碑が教会の邪魔にならないように考えます」


教会と宿の話が終わり、ロレンツォをアクアに送ってからセイ達はアネモスに帰る事を伝えて出発するのであった。





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