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冒険者達を味方に

ギルドに戻ると大勢の冒険者達がいた。


「セイ、この上に立て」


ギルマスが机を持ってきて皆の前で演説しろと言った。


「みんな集まってくれてありがとう。これから話すことを信じるか信じないかは任せる」


「いいから早く話せよ。異常事態なのはみんなわかってるぞ」 


と、アイアン達が突っ込む。


「まずは改めて紹介をさせてもらう。ウェンディ、ヘスティア、アーパス。この3人は本当の女神だ。本来神は皆の目には見えないが、力を落として皆に見える状態になっている」


「マジか?」


「ウンディーネ、出てきてくれ。あそこのアイアンを洗ってくれるか?」


と、ウンディーネに頼むとザーっと洗ってくれる。


「そのままそこにいて」


セイはウンディーネに力を注いで皆に見えるようにした。


「うぉっ」


「アイアン、さっぱりしたろ?今ウンディーネが洗ってくれたんだよ」


「こっ、こんな美女が俺を?」


真っ赤になるアイアン。


「ウンディーネは水の神様アーパスの眷属だ。見えない者がいるというのは信じたか?」


コクコク。


「ヘスティアとアーパスは人間と一緒に飲んだり食べたりして楽しむ為にわざと力を落とした。が、ウェンディは庇護するアネモスの住人から信仰心を無くして力が落ちた。お前らが疫病神とウェンディを蔑んだ結果だ」


「だってよぉ、暴風が吹いていいことなんてねぇだろうが」 


と、他の冒険者から声が上がる。


「神あり国と言われる大国、ガイヤ、アクア、ボッケーノのそしてここアネモス。アネモス以外は元々土地が豊かで恵まれている。しかし、アネモスはウェンディの風によって豊かになったことを理解してほしい」


「暴風のお陰で豊かだと?」


「そもそも魔物とはどういうものかわかるか?」


「人間の脅威だろ?」


「違う。これは大神、すなわちこの世界を作った神からの贈り物だ。動物は狩ってもそのままの形で死ぬ。が、魔物はアイテムに変わるだろ?不思議だとは思わないか?」


「昔からそうだろうが」


確かにそれが当たり前だと疑問に思わないか。


「魔物は人間にとって有意義なアイテムに変わる。これは大神からの贈り物だ。豊かな国は魔物も豊富に出る。人々はそれを倒してお宝を得る事が出来る。そして強い魔物ほど良いアイテムに変わるんだ。オークならピンク、ブラックと強くなるに連れて旨くなるだろ?」


「それはそうだな」


「魔物の進化は人の強さの進化に合わせるようになっているんだ。これが神の加護だ。神が天界にいる事で人間が倒せない魔物が出ないようにしてくれている」


「最近はどんどん強いのが出て来るじゃねーかよ」


「ウェンディが外界にいるからだ。お前らが信仰しなくなったせいでウェンディは天界に帰れなくなった。その影響が出て来ているんだ。これからもっと強い魔物が数多く出るようになる。しかも神の加護が無くなってるから、お宝にも変わらなくなる。せっかく倒しても何も手に入らなくなるんだぞ」 


「嘘つけっ。今までに何も出なかったことなんてねぇぞ」


「これからの話だ。そして加護はもう一つある。人間の強くなるスピードより魔物の進化が早くなってどうしようもなくなった場合は神が浄化を行う。アネモスの場合はそれが暴風だ」 


「意味がわからんぞ」


「暴風が魔物の進化を止めてリセットするんだよ。ウェンディはそれを頻繁にしていたからアネモスは強い魔物がいなかったんだ」


ざわざわざわざわ


「アネモスにはまだウェンディの恩恵がある。ウェンディの風は海をかき回して豊かにし、大量の雨を降らせる。それが山を潤し水に困らない国にしていた。それが無くなって約10年。海は死に、山も枯れている。近海で魚が取れなくなり、山の木々が枯れ始めてるだろ?農作物の不作で水魔法を使える者が駆り出されたのはそのためだ。これはもっと酷くなるぞ。ウェンディの風は魔物の強さのコントロール以外に豊かな土地になる恩恵を与えていたんだよ」


「ならよぉ、そこにヘスティア様やアーパス様がいるならボッケーノとかもヤバくなってるはずだろが」


これを聞いてきたのは見たことがない奴だ。多分ボッケーノからの応援組だろう。


「そうだ。ボッケーノも魔物の数が増えだしている。去年にはワイバーンの数が増えて何匹か討伐組が逃した。そろそろそのワイバーンがここに飛んできてもおかしくない。それにアネモスはトロールが出たろ?次はサイクロプス、そしてその上位種の三つ目が出るはずだ」


「まじかよ・・・」 


「まだあるぞ。神無し国のガーミウルス帝国がそのうちアネモスに攻め込んでくる。ガーミウルスは神無し国を次々に傘下として支配している。アネモスも神無し国になったから目を付けられたんだ」


「海の向こうから来た奴らとかいくらでも撃退出来るだろうが」


「そう思うか?良いことを教えてやるからお前ら外に出ろ」


ぞろぞろと皆を外に連れ出して魔導兵器を出した。


「これは魔石さえあれば誰にでも攻撃魔法が撃てるものだ。よく見てろ」


まずは銃を出して空に向かって撃つ。


ドウッドウッドウッ


「これは一番小さい魔導兵器。次はこれだ」


ドンドンドンっ


「もう一つ大きな物がこれ」


バズーカタイプを出して撃つ。


ドォーーーン


「と、こんな感じの兵器をガーミウルスは大量に持っているはずなんだ。剣なんて役に立たんぞ。遠距離から一斉に撃たれて終わりだ。もしかしたらもっと大きな物も開発しているかもしれん。それこそ城を一撃で吹き飛ばすようなやつをな」


皆は魔導兵器を見てシーンとなった。


「アネモスの兵力ではガーミウルスには敵わない。戦争になったらこの国は占領されるのは確実だ」 


「マジで戦争になんのかよ?」


「なるぞ。アネモス王はウェンディにガーミウルスを撃退しろとか言いやがったからな」


「そ、そうだ。ウェンディが本当の神ならそいつらをやっつけてくれればいいんだっ」


「ふざんけんなっ。そもそもお前らがウェンディに感謝もせず蔑んだ結果がこれを招いたんだ。それに人間を守る為の神に人殺しなんかさせられるかっ」


「じゃあどうすんだよっ」


「ウェンディを信じて感謝を心から祈る者だけを俺がなんとかする」


「お前が?」


「そうだ。人数が少なければウェンディ信仰の者だけを他の所に逃がす」


「アネモスを見捨てるのか?」


「ウェンディを見捨て者は自業自得だ。が、これらの事は皆知らなかった事だから今までのことは許す。大事なのはこれからだ。大勢がウェンディを信仰するなら国ごと俺が守る」


「一人で何が出来るってんだよ」


「俺は特別ランクだからな。今でもアネモスを一日で滅ぼすことも出来るぞ。アネモス国民の多くがウェンディを信仰するなら国ごと俺が守ってやる」


「嘘つけっ。そんなことが出来るかよ」


「なら試せ。魔法を撃てる者、剣で斬りつける者同時でいいから俺を倒してみろ。こっちからは反撃しないから」


「殺されても文句言うなよ」


「ゴタゴタ言わずに早くしろ」


セイはマントで防御体制を取った。


魔法使い達も恐る恐る詠唱を始め、剣士達は斬りつけてくる。


が、ブラックドラゴンの装備にはキズ一つ付けられない。


「な、なんだよその防具は・・・」


「じゃ、次は攻撃能力を見せてやろう」


セイはメラウスの剣を抜き、妖力を込める。


「うおっ」


光輝く剣をセイは道路に向かって振った。


ゴウッ


ドカカカカカッ


切り裂かれる道路に皆は腰を抜かす。


「まぁ、こんな所だ。他にも俺より強い仲間がいるから相手が武装してようが関係ない。武装してようが相手が人間なら話にならん」


「セイ・・・お前はいったい」


「俺は神の使者だ。神に仇なす者は俺が滅する。さてどうする?神にすがるか?それとも信じずに破滅を選ぶか?敵国に占領されたら殺されるか奴隷みたいになるぞ」


冒険者達はウェンディに土下座をした。


「ウェンディ様。申し訳ございませんでした。我々をお救い下さい」


「しょーがないわねぇ。ちゃんと敬いなさいのよねっ」


そういう態度がダメなんだなぁ・・・



ギルド内に戻って皆に指示をする。


「ということでこれから今の事を他の人達にも伝えていって欲しいんだよね。俺達も他の街とか回っていくから」


「お前ら。冒険者ギルド総本部の総長からも命令が来ている。世界の冒険者ギルド及び冒険者達はセイの指示に従えと」


「マジかよ・・・」


「そう。出来ればアネモスの全員がウェンディを信仰してくれることを願う。そして二度とウェンディを捨てないようにするためにアネモスは俺がもらうから」


「は?」 


「アネモスの再建をするんだよ。今の体制だと無理だからね。ウェンディの加護の風に耐えられる街作りとかしないと被害が出るだろ?洪水、暴風に強い街作りをしてからウェンディに加護の暴風を吹かせてもらう。そうすれば皆もウェンディを恨むような事にはならないだろ?」


「そんなことまで考えてるのかよ」


「そう。それが終わったらボッケーノとの道を整備して流通を増やしてもっと発展させていくつもりにしている。その準備もし始めているからな。再建が終わったらアネモスはもっと豊かになるぞ」


「マジかっ」


「さ、今日は前祝いだ。好きなだけ飲み食いして明日からウェンディ信仰を広めてくれ。おごりだから遠慮しなくていいぞ」


「うぉぉぉっー!」


これで冒険者達は味方に付けた。明日からは一般市民も味方につけないとな。


ヘスティアとアーパスは人間と共に楽しめる時間を惜しむように今日は騒いで飲んだのであった。

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