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精神が不安定

ー冒険者ギルド総本部ー


「アネモス王は神を捨てた挙げ句にセイ達を敵に回したのか」


「馬鹿な野郎達だな全く」


総長と総務部長はマモンからの報告を受けて話し合っていた。


「なんて指示を出すんだ?」


「冒険者ギルドは元々国から独立した機関だからな。当然セイ達をバックアップする。マッケンジー、私の名前で全ギルドに伝えてくれ。冒険者ギルドは全面的にセイの行う事を支持するとな」


「アネモスだけでなく全ギルドに?」


「そうだ。ギルドは全女神を味方に付けているセイに付いた方がいいだろ?」


「そうだな」


「それにセイはガイヤ王室の恩人でもあるからな」


総長は宝物庫の魔導兵器を細かにチェックするように上申し、不正に持ち出された事を見つけ反乱の証拠を掴んでいた。表沙汰にはしていないがその時が来ればいくらでも対応出来る体制を整えられたのであった。



ーセイ達が帰ったあとのアネモス王謁見の間ー


「あれは悪魔か・・・」


「わかりませぬ。が、人ならざるものであるのは確かにございます」


「宰相、あの者の申した事は本当だと思うか?」


「神の名を語る悪魔やもしれませぬ。ウェンディ信仰は悪魔信仰とも言われておりますからな」


「えぇーい。ボッケーノからの親書なぞ信じるのではなかったわ。まったく忌々しい疫病神め。暴風で国を破壊するだけでは飽き足らず戦争まで呼び込みおって」




フィッシャーズ達と一緒に屋敷に来たギルマスとグリンディル。


「今日、総本部から全ギルドに通達があったぞ」


「なんて?」


「冒険者ギルドは全面的にセイをバックアップするだと。これでアネモスはギルドも敵に回したわけだ」


「別にアネモスと敵対したいわけじゃないよ」


「お前、これから何をするつもりなんだ?」


「ウェンディを信仰してくれる人だけ助けようと思ってる」


「は?」


「そのうちアネモスは戦火に巻き込まれるんだろ?」


「いきなり戦闘にはならんだろ?」


「ギルマス、もう何回かガーミウルスから使者はやってきているさね。あの王の口ぶりじゃ開戦は確定だろうよ」


「戦争ってのは防衛の方が有利なんじゃねぇのか?向こうは海を渡って来るしかねぇのによ」


「仕掛ける側は勝算があるから仕掛けてくるんだよ。いつの世も時代も同じさね」


「ギルマス、古代の魔導の中には魔導兵器ってのがあってね。誰でも攻撃魔法が撃てる武器があるんだよ。大昔の対魔物用の武器なんだけど、それがかなり昔からガーミウルスに流れている」 


「マジか?」


「魔石の魔力を充填出来る装置が開発されていれば脅威だね」


「そんな物があるのか?」


「古代遺跡にはあったみたいだから開発されていてもおかしくはない。船で大量の兵士を連れてきて剣で戦うというイメージは捨てた方がいいよ」


ガーミウルスは神無し国。神あり国より国土が豊かだとは思えない。それでも他国に侵攻するぐらいの力を持っているとすれば神あり国はより遥かに文明が進んでいる可能性が高い。


「ウェンディを信じる者だけ助けるってどうやって?」


「アネモスで今の状況を民衆に説明する。それで信じてくれた人を違う場所に移住させるよ。そこで新たにウェンディの為の国を作る」


「は?国を作るだと?」


「うん。元々は人間の為に神が存在するのに神の為に国を作るとか本末転倒だけどウェンディが消えるとか絶対に避けたいんだ」


セイはテルウスの話を皆にもした。


「ウェンディを信仰する人がいなくなればやがて消えるのか」


「そうらしい。天界にいればそれはないらしいんだけど、今はウェンディを天界に戻してやれないからね。だからウェンディを信仰してくれる人を守らないとダメなんだよ」


「セイ、わたしの為に国をつくってくれんの?」


と、ノーテンキなウェンディ。


「そうだ。俺はお前を守ると約束したからな」


「うふふふふっ」


「なんだよ?」


「わたしの為にお城も作りなさいよねっ」


「おまえなぁ。お前は神に戻って天界に帰るんだよっ。外界にいつまでもいようとすんなっ」


「え?」


「テルウスの話をちゃんと聞いてなかったのか?神が天界にいてこその神あり国だと言ってただろうが」


「あっ、新しい国が出来てもそこがわたしの力の恩恵を受けるとは限らないじゃないっ」


「確かにな。加護の風は吹かせられるだろうけど魔物の進化スピードは収まらんかもしれん。もしアネモスにしかその恩恵がないのならガーミウルスに乗っ取られたアネモスを取り戻す」


「どうするつもりなのよっ」


「俺が侵略してきたガーミウルスを滅ぼす」


「ひ、人を殺すつもりなのっ」


「人を殺しに来た奴らは殺される覚悟を持たないとダメなんだ」


「セイにそんなことまでさせて神に戻りたくないっ」


そう言うウェンディ。俺も人殺しや戦争に加担するのはまっぴらだがウェンディが消えてしまうのはもっと嫌だ。


「まぁ、最悪の手段だからそうならないように頑張るよ」


「本当ね?」


「あぁ」



そしてシーバス達と話をする。


「宿どころじゃねーな」


「それはちゃんとやる。ウェンディとの話とは別だ。アーパスの教会も作るし、米や醤油ももう作り始めてんだろ。教会用のアーパス像も発注済だ」


「アネモスをやりながらなんて無理だろうが」


「やるったらやるんだよっ。というかやりたいからやらしてくれよ」


セイは不滅だと思っていた女神であるウェンディが消える可能性があると知り精神が不安定になっていく。神は神であらねばならない。このままずっとぎゃーぎゃー言い合ったりしながら楽しく一緒に過ごしたい。この2つの思いが葛藤となり気付かない内にセイの精神を不安定にさせていく。


「いや、セイが手伝ってくれるのは大歓迎なんだがよ。大丈夫か?」


「へーき、へーき。自分で建設とかは出来ないからこうして欲しいと希望を伝えていくだけだから」


「なら頼むわ」


その夜、セイは寝ながらもウェンディを離さないのであった。


「ちょっとボッケーノに行ってくるわ」


「何しにだ?」


「ボッケーノ王からアネモス王に親書を出してくれてたみたいなんだよね。多分モリーナ様が良かれと思ってやってくれたんだと思うけど無駄にしちゃったから謝りに行ってくるよ」


「そうか。気をつけてな」


と、シーバスが意味深に言う。


「シーバス達は何すんの?」


「ギルマスに話して先に未調査ダンジョンの調査を少しやらせて貰うわ」


「了解」


セイはシーバス達が貴金属を掘りたいのだろうなと気付いた。宝石を手に入れたし次は貴金属を手に入れてプレゼントしたいのだろう。



セイ達はボッケーノに移動して王城へ向かう。


「どうぞお通り下さいませ」


と、簡単に通されて姫様邸へ。なんかちょっとはバタついている気がするけど今は気にする必要はないか。



「ようこそセイ様」


姫様邸に到着すると爺が迎え出てくれた。


「爺、モリーナ様に会える?」


「何かございましたか・・・」


爺の様子もなんか変だ。


「ん?なんかあった?」


「・・・セイ様にはお隠し出来ませぬな。実は王妃が倒れまして」


「病気?」


「原因は不明でございます」


「ポーションもっと渡そうか?」


「こっそりと飲ませてみましたが効き目がございませんでした」


ポーションが効かない?嫌な予感がする。


「爺、王妃様に会える?神が会いに来たとかなんとか言って」


「かしこまりました。すぐに手配を致します」


「姫様は?」


「王妃様の元に行かれております。まだこのことは内密に願います」



と、暫く待たされたあとに王城の本邸というか違う場所に案内された。


「ヘスティア様が王妃様にお会いに来られました」


と、扉の前にいる護衛に伝えると護衛達はヘスティアに跪いた。


ドアを開けられて中に入ると初めて見る人達がたくさんいた。水晶の腕輪をしているから王家の人たちだな。王妃は相当ヤバい状況なのだろう。王らしき人もいるし、王妃に泣きすがる青年もいる。


「セイっ、来てくれたのか」


「姫様」


と、声を掛けると駆け寄って来て抱き着いてワンワンと泣くビスクマリー。


「セイ、母様を助けて」


姫様の腕輪の水晶に違和感がある。


「姫様、ちょっと王妃様に挨拶をさせてもらうね」


天蓋付きのベッドに横たわる王妃のそばにいく。


「初めまして王妃様。セイと申します。火の神様ヘスティアと共に参りました」


「何用じゃ」


セイは爺に目配せをして人払いを頼む。




「人払いなぞして何を企んでおる?」


はぁはぁ言いながら強がる王妃。


「王妃様、姫様を呪われたのですか?」


「なんの事じゃ。妾は何も知らん」


「王妃様。姫様はあなたを案じて泣いておられました。自分に母様を助けて欲しいと願ったのです。その母を思う気持も通じませんか?」


「なんの事か解らぬ」


「王妃様、自分は呪いが見えます。あなたがかけた呪いが自分に跳ね返っているのですよ」


「知らぬ」


「ヘスティア、こっちに来い」


ヘスティアを近くに呼んで王妃の前に座らせる。


「この人は火の神様ヘスティア。この国を庇護する神です。ヘスティアの目を見ても知らぬとおっしゃいますか?ヘスティアに背くということは国の為にもなりませんよ。あなたが王にしたいと願った第二王子にもバチが当たってもいいのですか?」


「そなたは何を言うておる」


「王妃様。これが最後です。改心しもらえませんか」


「知らぬ」


くそっ


「あんたは姫様の母親だろうがっ。なんで愛してやらないんだよっ。姫様は母親のあんたを愛してるだろうがっ。自分の子を呪うとか俺がされたことより酷いじゃないかっ」


・・・

・・・・

・・・・・



「マリーはモリーナによく似ておる。第一王子は王に・・・」


「それでもあんたが産んだんだろうが。おばあちゃんに似るなんてよくある話じゃないか。なんで呪わなきなならないんだっ」


「・・・」


「くそっ。あんたがマリーをいらないのなら俺が連れて行くぞ」


「好きにしろ」


セイは王妃の反射した呪いを時間を掛けて祓った。掛けられた呪いなら祓えるが跳ね返った呪いは完全に祓えない。命は助かるだろうが元の状態にまで回復することはないだろう。


セイは祓い終わったあと無言で王妃の部屋を出たのであった。


「セイ様。ありがとうございました。姫様を連れて行かれるとは・・・」


「爺、俺を助けてくれないかな」


「どのような事でございましょうか」


「ちょっと長くなるから先に王妃の命は助かったと皆に教えてあげて。ただ今までのように過ごせるわけじゃない。車椅子生活になると思う」


「かしこまりました。いつもの部屋でお待ち頂けますでしょうか」


セイ達は姫様邸に移動したのであった。





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