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意外な真相

ガキィィィィィーン


鬼の金棒がサカキの爪を防ぐ。


「俺様の爪を防ぐなんざいい得物持ってんじゃねぇかよっ」


ドゴンっ


金棒でサカキの爪を防いだ赤鬼はサカキに蹴り上げられて吹っ飛ぶ。


キャインキャインッ


クラマのも刀が金棒で防がれるので羽うちわで吹き飛ばした。


「ワラワラ出てきやがったな。どぉれ躾けてやるか」


サカキは爪を仕舞い、向かってくる鬼だ達をグーで殴っていく。オークやミノタウルスなら頭蓋骨が砕け散っていたパンチも鬼は耐える。サカキも全力ではないとはいえやはり鬼の耐久性は高い。


「わっ、私もっ」


「ウェンディ、いいから見てろ。まだサカキとクラマには余裕がある。おそらくあの屋敷の中に依頼者の娘がいる。お前の暴風で吹き飛んたらどうするんだ」


「うっさいわねっ。吹き飛んでも死にゃしないわよっ」


「うるさいっ。お前は鬼の注意を引くなっ。大人しく見とけ」 


セイは式神を出してサカキ達を援護する。


バサバサバサバサっと大量の式神が鬼達に纏わりつき視界を塞いだ。


「金棒振り回しても無駄無駄っ」


刀のような物で切るならともかく、金棒でペラペラの式神を防げる訳がない。


「セイー、毒撒こうかー?」


「ダメ。拐われた人間の臭いするんだろ?それまだ生きてる証拠だからな。毒で死んだら元も子もない」


視界を塞いだ事で大量の鬼との戦いが楽になったサカキ達。どんどん鬼達が倒れていく。


「やめてーーーっ!」


その時、屋敷から女の人?が飛び出してきた。


「ストーップ、ストーップ」


セイが大声を出すとサカキとクラマは倒れた鬼にとどめを刺すのをやめて止まった。


「この人達を殺さないでっ」


この人達?


サカキ達が止まった事でまだ倒れていない鬼達も金棒を下ろした。


「貴様ら何者だっ」


そう声をかけてきたのは鬼達をけしかけた奴だ。赤鬼だけど黒色に近い。


「俺達は冒険者だ。アネモス国の森で魔物に拐われた女性を救出に来た」


「それ、私の事ですね・・・」


やはりそうだったか。


「おい、話し合いに応じるならコイツらの命は助けてやる。まだやるなら猿を仕掛けるからな」


ウェンディは自分が猿役になっているのを知らないので怒り出したりはしない。


「くそっ」


「おっ、お頭。コイツら物凄く強ぇです。それに・・・」

 

「お前ら鬼だな。ならサカキに敵う訳ないぞ。こいつは鬼族の頂点にいるからな。大人しく話し合いに応じろ」

 

鬼という言葉をセイが言った事でお頭と呼ばれた男は話し合いに応じた。




「お前ら魔物じゃないだろ?違う世界からきたのか?」


「俺達の祖先が違う世界から移り住んだと伝えられている。お前達はなぜ鬼という呼び方を知っているのだ。まさかお前らも違う世界から来たのか?」


「そうだ。お前らの祖先は俺達が来た世界と同じ所から来たのかもしれんな。サカキは酒呑童子と呼ばれていてな、鬼族の頂点で唯一無二の存在だ。すなわちお前の祖先も配下だったてことだ」


「それは本当か?」


「まぁ、信じるか信じないかはお前ら次第だ。確実に言える事は俺達が本気でお前らを潰そうと思えば潰せる。信じないならもう一度挑んでこい」


「あの・・・・」


貴族の娘が口を挟んできた。


「あなたは拐われたのですよね?」


「はい」


「では連れて帰りますよ。幸い鬼達はあなたに乱暴もしてないようなので我々はあなたを救出したら依頼達成です。鬼退治は依頼を受けていませんので」


「わ、私はここに残りたいんです」


は?


「護衛達を殺されて拐われたんですよ。正気ですか?」


「護衛達には可哀想な事をしてしまいました。でも誤解なんですっ」


「誤解?」


「はい。ここの鬼たちは難破した船を返しに行ったのだそうです。そこで護衛が私を拐っているのだと勘違いして護衛達と戦闘になり、返しに行った船で私を救出したのです。元はといえばこの人達を見ていきなり斬りつけた私の護衛達が原因なのです」


そりゃ、護衛達も鬼を初めてみたら魔物だと思うわな。


「おい、黒鬼。救出とはどういうことだ?」


「仲間を救出して何が悪い。人間共はうら若き仲間を拐っていたのだ」


「お前・・・仲間って、この人は人間だぞ」


「嘘つけっ。どう見ても鬼だろうが」


あー、そうだよねぇ。この娘さん見た目は鬼みたいだねぇ。あの豪華なドレスを着ていた母親とそっくりなんだよねぇ。


遠い目をするセイ。

 

「あのな、この人は鬼じゃない。角もないだろ?」


「つ、角が無い鬼もいるかもしれないではないかっ」


「そんな鬼はいない。大きい小さい、1本角や2本角の違いはあれど鬼には必ず角がある。それがないと鬼力きりょくが使えんだろが」


「違うっ。折れてしまっただけだ。お前もそう言っただろう?それに鬼力きりょくが使えなくても俺が・・・」


「止めとけ。鬼と人間は寿命が違う。お前らの感覚だと人間の一生なんて一瞬だ」 


黒鬼はこの貴族の娘に惚れたのか。


「こいつの言うことは本当か・・・?」


黒鬼は涙を溜めて娘にそう聞く。


「ご、ごめんなさい。騙すつもりは無かったの」


どうやらこの娘さん、鬼達に優しくされて人間だと言い出せずにここにいたのか。


「おい、黒鬼よ。一旦この人を家に戻せ。親御さんが心配している。そして一週間後にもう一度来てやる。その時にこの人が一緒に来るかどうかはわからんがな」


「信用していいのか?」


「鬼はサカキの配下だからな。それぐらいはしてやる。あと船に乗ってた奴はどうなった?」


「船だけが砂浜に残っていた。中に日記や出発地が記された地図があったから届けに行ったのだ。船は作るのにはとても手間暇が掛かる大切なものだからな」


船だけが砂浜にか。ならもうオーガに食われてるな。


「お前らも船作れるんだな」


「この辺では魚が捕れなくなったから仕方がなくだ。どういう訳か海をかき混ぜる風が吹かなくなって海が死にかけている。この島の森もそのうち魔物の支配下になるだろう」


「海をかき混ぜる風?」


「そうだ。暴風が吹くと海が荒れてかき混ぜられる。そうすることで海は生き返る」 


「それは鬼の知識か?」


「人魚に聞いた。魚が多く捕れていた時は時々入江に遊びに来ていたのだ。その時にそう聞いた」


海をかき混ぜるか。海ぼうずもこれを伝えたかったのだろうか?


「わかった。海をかき混ぜる件についてはなんとかしてやれるかもしれない。その返答も一週間後にしてやる。この娘さんを一度連れて帰るのが条件だけどな」


「私、ここに帰って来るわ。鬼じゃないからすぐに死んじゃうかもしれないけど・・・。それでも受け入れてくれる?」 

 

見つめ合う二人(黒鬼と娘)


「セイといったな」


「ああ」


「本当に海をかき混ぜるのもなんとか出来るのか?」


「それをやってた張本人がコイツだ。コイツは風の神ウェンディ。訳あって今は俺達と一緒にいる。加護の暴風が家を飛ばしたりして人々を苦しめたみたいで今は暴風を吹かせるのやめてるんだよ」 

 

神を降格させられたことは隠しておく。貴族の娘には聞かせられない。


「人間は何も解っていない。暴風が奪うものより与える物の方がはるかに多いということをな」


この話を聞いてウェンディは感動している。生まれて初めて褒められたのだ。


「あっ、あなたなかなか解ってるじゃない。いいわよ。今からやってあげる」


「やめろ」


「なんでよぉーーっ。聞いたでしょ?ねぇっ、今の聞いてたでしょっ。私の風を求められてんのっ。求められてんのよっ」



必死だなウェンディ


「今やったら人間からまた恨まれるだろうが。漁に出ている船が沈むかもしれないし魚が戻ってきてもお前のおかげだとは気付かん。いいから俺に任せろ」


「なんか意地悪するつもりなんでしょ」


「俺がいつお前に意地悪をしたんだっ」


セイはウェンディの口をむにぃっとつまむ。


「やめへよっ。やめへよっ」


まったく。お前の為に皆協力してんだろうが。


「海をかき混ぜる風も日にちを決めて皆を退避させてからだ。あと、なぜやるかを漁師たちに説明をする。海をかき混ぜた事で魚が戻って来ることを言っておかないと勝手に戻って来たことになるだろうが」

 

ウェンディにそう説明してやってるのに俺の手をガジガジ噛みやがる。躾の悪い猿だ。


鬼達に船がある場所へと案内させると海から繋がる入江が洞窟というか鬼の住処内にある。これは海からは見えないな。


「人魚もここに来ていたのか?」


「そうだ。ここは俺達しかいないからな」


元の世界と同じなら人魚は人間に狙われているかもしれない。ここなら人目に付かないから人魚にとっても安全なのだな。


そして皆で船に乗り込みセイは黒鬼達に操船させて自分の屋敷へと向かうのであった。


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