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重要事項

どすぅっ×2


シーバスはツバスに、ダーツはパールフに肘鉄を食らう。テルウスに見とれたからだ。


「セ、セイ。テルウス様って美人なんだな・・・」


悶絶したダーツがそう言う。


「美女って感じだね」


大人の美女であるテルウス。こちらの世界の男性にはドンピシャなのかもしれない。個人的には小柄なウェンディ達の方がいいなと思う俺はそっち方面の趣味があるのだろうか?そういや姫様とかラーラを可愛がっているのもそのせいか?


セイは自身を分析してみるが子犬を可愛がるのと変わらんだろうと自分を納得させた。


「さ、みんなは依頼を受けに行って」


「セイはなにしてんだよ?」


「のんびり」


「ケッ、女神様達といちゃついてろってんだ。行くぞオルティアっ」


そんな捨て台詞を残したチーヌ。ガッシーはギルドに早く行きたいようだった。



「さ、テルウス。ウェンディの事を教えてもらおうか」


「いいわよ。ウェンディを元に戻すのは信仰心が重要なの」


「そんなの知ってるよ。俺たちの知らない情報を教えてくれよ」


「あら?本当に知ってるのかしら?」


「本当に知ってるとは?」


「信仰心がなくなったらどうなるか知ってるのかしら?」


「神でなくなるんだろ?」


「ブッブー」


なんかムカつくな。


「正しくは神が必要なくなるのよ」


「どういうこと?」


「天の実がエネルギー補給の役割を果たしてるのは知ってるのよね?」


「それはアーパスから聞いた」


「いまウェンディが天の実を食べてもほとんど力は回復しないはずよ」


「え?」


「人々が神を欲しない、ということは神は必要ないわけでしょ?」


「うん」


「だから加護の力の源となるエネルギーも必要なくなるのよ。つまり、エネルギーを補給する事が出来なくなるってワケ」


「一人一人の信仰心がエネルギー補給の回路みたいな役割を果してるってこと?」


「そう。ウェンディにエネルギーがほとんど入らないって言ってたでしょ?少しはウェンディを信仰してくれている人がいるからまだ良かったのよ」


確かにリーゼロイ家、鬼達、漁師は今は信仰してくれているはずだ。


「それが0になってたらどうなってたの?」


「外界にいたらそのうちエネルギーが0になって消えてたわよ」


マジかよ・・・。これは教会に残ってくれていた神官達がいなければヤバかったのかもしれない。


「ウェンディを信仰する人が増えたらエネルギーがもっと効率よく流せるんだな?」


「そう」


「セイ、だから初めにまずは信仰心を戻してから考えろって言ったじゃねーかよ」 


「そうだけどヘスティアはこの事を知らなかったじゃないか」


「しょうがねぇだろ。教えてくれなかったんだからよっ」


「本当は不必要な情報だったんじゃない?神が不要になる世界なんて考えられないもの」


「でも神無し国でもやっていけてる所もあるだろ?」


「神無し国は魔物がアイテムになりにくいのよ」


え?


「ウラウドって国は神無し国だけどそんな事を言ってなかったぞ」


「弱いのしかいないでしょ?」


「確かに」


「ある程度強い魔物を倒すとそのうち出なくなるの。アイテム化上限ってやつかしら。魔物は大神からのギフトなのよ。人間の成長に合わせて少しずつ強くなっていき、よりよい物を出すようになるの。神無し国は良い物が出ないのよ。魔物の力も弱いから強いのも出にくいけどね」


「それはなんとなくそうなんだろうなとは思ってたよ。豊かな土地と有用な魔物が出るところだから国が栄えていってるんだよね?」


「そう。アネモスはもうすぐ強い魔物が出るけどどれもアイテムに変わらなくなると思うわ。ま、アネモスだけじゃないけどね」


「え?どういうこと?」


「今みんなここにいるじゃない」


「そうだけど?」


「神無し国かどうかは庇護する神が天界にいるかいないかなの」


「信仰心じゃなくって?」


「そうよ。セイの言葉を借りると信仰心は神のエネルギー供給回路。神が天界にいてこそ魔物の強くなるスピードを人の強くなるスピードに自動的に合わせられるの。アネモスはウェンディが外界に降りてから魔物が強くなっていくの早いでしょ?」


「加護の力を発動させないからじゃないの?」


「あれは魔物の異常進化とか人が倒せるはずまで強くなったはずなのにそれが崩れた時にやるものなの。アーパスとウェンディはこまめに加護を出してたから人が強くなるスピードもゆっくりだったんじゃない?」


あー、テルウスの話を聞いて今までの疑問がサーッと解けていく。


「テルウス、ボッケーノももうすぐ強い魔物がどんどん出て来んのかよ?」


「ヘスティア、もうその兆候はでてる。ワイバーンが一度にたくさん出て来たとかそのせいだよ」


と、セイはテルウスが答える前に答えた。


「マジかよ・・・」


「だからあなた達もそろそろ天界に戻ったほうがいいわよ。人の進化が魔物の進化に追いつかなくなるから。私はアクセサリーとドレスを見せびらかせたら帰らせてもらうけど」


「いっ、嫌だっ。俺様は帰りたくねぇっ」


「このまま外界にいて、ヘスティアを信仰する人が魔物に滅ぼされたらあなたは天界に帰る術を無くす。で、そのうち消えるわよ」


アネモス、ボッケーノ、アクアと同時に魔物が強くなって増えたらいくらサカキ達がいても対応は不可能・・・


俺がこの世界に来てから一年程でアネモスの魔物の進化は早くなった。最近ではそれが加速している。この流れはボッケーノ、アクアと続くのか。


「テルウス、貴重な情報をありがとう」


「ふふふ。私が一番役に立ったわよね。だから私を一番にしてよね」


「きっ、汚ねぇぞっ」


誰が一番とかそんなことよりまずはヘスティアとアーパスを神に戻さなければならない。俺が生きている間は好きに遊ばせてやれたらとか思ってたけどそれも無理だ。神は神であらねばならないのか・・・


「テルウス、情報ありがとう」


セイはそう呟いたあと黙ってしまったのであった。



そして結論が出ないまま時は過ぎていき、マーメイ達の結婚式になった。


ウェンディはまたガチガチに緊張していたが式は無事に進み、リタの祝福の舞と巫女衣装にガッシーは見とれていたのであった。


コウヨウカクでの宴会料理は前回より豪華だ。お魚ダンジョンから出してもらった魚介類の種類が大幅に増えたのだ。


マーメイは真珠とサンゴで飾り付けをしている。手作り感あふれるが人魚にはよく似合っている。


「テルウス様めっちゃ綺麗」


女性陣から褒められまくれ、男性陣からはほぉ~っとため息を付かれるテルウスは満足気だ。


「オーッホッホッホッ。そうでしょそうでしょ?」


テルウスは神服も白だった為、アクアで購入したドレスも白のロングドレス。アクセサリーも総ダイヤモンドにプラチナだからまるで花嫁だ。見なかった事にしよう。



「サム、マーメイ。おめでとう」


「セイ、本当に世話になった」 


「ちょっとは寂しがって泣いてもいいわけっ」


「お前が他のやつのものになるなんて残念だ」


「えっ?あの、その、それってどういうわけ・・・」


「こんなふうに言われてみたかったんだろ?」


「きぃーーっ」


セイはマーメイをからかって尻尾でビッタンビッタンいかれたのであった。こんなやり取りも今日で終わりだ。幸せになってくれよマーメイ。



「もうお義兄ちゃんって呼べないね」


「マーリン、別にそのままでもいいぞ。お前は妹みたいな感じがするからな」


「ほんとっ?じゃ、お兄ちゃんて呼ぶね」


漢字で書かないとわからない違いだな。


鬼達も祝福するなか、セイは若い人魚達にご飯を食べさせていく。魚人に食べさせるのは怖いので目の前に置くだけにした。


「セイ、結婚するのが人魚とか驚いたわ」


とシーバス達。


「バタバタしてて事前に紹介してなかったからね。人魚ってみな美人だろ?」


「おぉ、みんなよく似てるよな」


「見慣れると違いもわかってくるよ。ちなみに男達は魚人というんだ」


「へえっ。サム、マーメイ。今度俺達の村にも遊びに来いよ。漁村だから魚も多いぞ」


「どこなわけ?」


「アクアだ」


「遠いわけっ」


「あっはっはっは。そりゃそうだな」


「海坊主、あんた遠いところまで行ける?」


コクコク


「時間掛かるけどそのうち行ってあげるわけ」


と、そのうち新婚旅行代わりに行くかもしれんな。



ウェンディ達はドレス自慢をしたりして楽しみ、男どもは鬼達を交えてサムにめちゃくちゃ酒を飲ませたりと賑やかな披露宴になったのであった。


オーガ島で一泊して屋敷に戻る。ギルマス達もセイの屋敷でもう一泊してから帰ることに。


皆が露天風呂に入りたいと言うので女性陣を先に入らせて、その後男連中で一緒入った。


「セイ、なんか元気ねぇな。マーメイが嫁に行ったのが寂しいのか?」


とギルマスに聞かれる。


「まぁ、そんなとこ。別に会えなくなるわけでもなんでもないけどなんか離れて行ったなぁとか思ってね」


「そうか。なんとなくわかるような気がせんでもねぇが人に別れは付きもんだ」


「そうだね」


セイはマーメイが結婚して新たな生活を始める事に寂しさを覚えたのではなく、近々ヘスティアとアーパスを神に戻して天界に帰らさないといけないことを考えていたのであった。






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