伝言ゲーム
宝石屋に行ってピンクゴールドを渡す。
「こんなにたくさん宜しいのですか?」
「仕入れ額は任せるから孤児院に食べ物いれといて」
「かしこまりました。ありがとうございます」
「これ無理矢理献上させられそうならアーパスがバチ当てると言ってると伝えて」
「か、かしこまりました」
あとは服が出来上がるのを待って帰るだけだな。
ピリリリリっ
「もしもし」
「どこにいるんだ?」
「アクア」
「は?」
「ウェンディ達の服を作りに来たんだよ。明日完成したら帰るよ」
「そっちまで行ったのかよ」
「ボッケーノは出歩けなくてさ。皆アクアの服が良いって言うもんだから」
「わかった。気を付けて帰って来いよ」
と、電話はシーバスからだった。
酒とバルサミコ酢を仕入れてから宿に戻った。
「ずっとここにいるの暇」
ウェンディが退屈みたいだ。
「街中に出たらまた騒動になるだろ」
「騒がれるのアーパスだけでしょ」
「ウェンディはアネモスでも騒がれないから羨ましい」
「キィーーーっ」
「しょうがないなぁ。じゃあガイヤの城下町まで飯食いに行くか?」
「さんせーっ」
ということでぬーちゃんで城下町へ行きあの魚料理の所に行った。
「あっ、また来てくれたんだね」
「そう。フィッシャーズ達はいないけどね」
唐揚げやスパイス焼きを頼んで食べる。
「スパイス屋にあんたの名前出したら優先で売ってくれたと商人が言ってたよ。大人気なんだねあのスパイス屋」
「調合が上手だし新鮮なスパイスを扱ってるからね」
「そうみたいだね。そうだ、なんか食材持ってないかい?」
「肉系?魚系?」
「値段の張らないものがいいね」
「じゃ、コカトリスとアワビをあげようか?」
「アワビ?」
「そう。生でも食べられるけどバターで鉄板焼きにするのがお勧めかな」
と、アワビをいくつか渡した。
「アワビって貝のことだったんだね。随分と大きいねこれ」
「肝が好きな人はお酒とバターかなんかで伸ばしてソースにしてやって」
「これ高いんじゃないのかい?」
「販売してないからあげるよ。今日のお支払いはコカトリスと交換でいい?」
「もちろんさっ。こんな大きいのと交換でいいのかい?」
「いいよ。たくさんあるから。焼き鳥にすれば皆も安くで食べられるだろ?」
「わたしも焼き鳥食べたい。タレで」
とウェンディが言い出す。
そういや最近焼き鳥してなかったな。
ぬーちゃんにタレのツボを貰ってきてもらってそれで味付けして焼いてもらうことに。
「焼けたらこれに漬けて焼いてを何回か繰り返して」
「これはソースかい?」
「そう。俺たちはタレって呼んでるんだけどね。非売品だからこれだけしか分けてあげられないけど。あと何年かしたらアクアの漁村で同じようなの作れるかも」
早速試すと言って焼いてくれるとタレの香ばしい匂いが店に充満し始める。
「俺もこの匂いのするやつくれ」
焼きとりは一本銅貨1枚で販売するようだ。
ウェンディ達がウマウマしだすと飛ぶように売れていくタレの焼き鳥。
俺はいつでも食えるから魚の唐揚げ食べよう。カレイの唐揚げ旨いわ。
「黒豚さん、このソース本当にアクアで作れるようになるのかい?」
「宿のオープンに合わせて完成させたいね。原料から作らないとダメだから時間が掛かるんだよ」
「そいつぁ楽しみだね。宿は本当に出来るのかい?」
「いつに出来るかはまだ未定だけど5年以内にはなんとかしたいね」
と、話して店を後にした。
宿に帰り、翌日ドレスや下着、靴を受け取って宿からはまた大量のケーキ類をもらった。受付に飾られたアーパス三つ星プレートはライトアップされてより誇らしげに輝いていたのであった。
また7〜8時間かけての飛行。女神ズはケーキを食べてお休み中だ。テルウスも来て一緒に食べていたようだ。
「いつもあの娘達の世話大変ね」
「うわァァァっ。脅かすなよテルウス」
いつの間にか隣に座っていた長女。
「結婚式ってのは私も参加してもいいのかしら?」
「問題ないと思うよ。魚料理が中心になると思うけど」
「私だけ皆から見えないのよね」
「そうだね。元々の仲間はみんな見えるからそこに混ざってればいいよ」
「どうやったらヘスティア達みたいになれるのかしら?」
「ヘスティアが教えないから俺も言えないよ」
「ねぇ、教えてよ」
テルウスは首に手を回して色仕掛みたいな事をしてくる。
「そんなことをしてたら赤ちゃん出来てもしらんぞ」
と言ったら慌てて離れた。
「もうっ」
「その話は姉妹でなんとかしてくれよ」
「だって教えてくれないのよ」
「って言われてもなぁ」
「教えてくれたら私もいいことを教えちゃぉっかな」
「どんなこと?」
「それは秘密。神に関する情報よ」
「みんな共通で知ってるんだろ?」
「ふふふっ、そう思う?」
「ヘスティアはともかくウェンディはなんにも知らないよね。忘れてるだけじゃないの?」
「情報は伝言ゲームみたいなものなのよ」
ん?
「もしかして大神からテルウス→アーパス→ヘスティア→ウェンディって情報が流れるの?」
「当たり。だから抜けたり情報が足りなかったりするのよ。1つ2つなら正確に伝わるけど情報ってたくさんあるでしょ?」
確かに。
「ウェンディを神に戻せる情報なら交渉に乗る。それ以外なら交渉に乗らない」
「どっちもあるわよ。ウェンディ以外の事も聞いといた方がいいと思うわよ」
「うーん、皆と相談する。勝手に決めたら絶対に怒るから」
「ふふふっ。じゃ、結婚式の時にみんなに見てもらえる事を期待しているわ」
と、言い残して帰って行った。
屋敷に戻り風呂に入ってぐったりする。
「お、帰ってたのかよ」
フィッシャーズ達も帰って来た。
「うん、疲れたよ。時差もあるし」
「ねえっ、ウェンディ。どんなの買ったの?私達も頼んできたんだけど」
と、ツバスとパールフが言うもんだからドレスの発表会になる。
「ゲッ、こんな高そうな服を買ったの?」
「セイは金貨15枚払ってた」
「マジ?私達も清水の舞台から飛び降りたつもりで銀貨70枚のドレスを買ったのに」
なぜそんな諺を知っているのだ?
「主役はマーメイ達だから、それでも十分だと思うよ」
ウェンディは青と白のベースで膝丈のフワフワドレス。ヘスティアは赤と黄色のAラインで胸が出てんじゃないのか?ってな感じの肩が出たデザインだ。アーパスは水色ベースだけどカラフルな模様があしらわれたプリンセスタイプのドレス。全員花嫁より目立つだろうけど神だからと勘弁してもらおう。
「シーバス達も作ったのか?」
「おう、パーティ用ってのを頼んだぞ。防御力もないくせに高かったぜ」
「オルティアはどうしたんだ?」
「かっ、買ってもらっちゃいました」
どうやらチーヌが買ってやったらしい。
「アクセサリーはどうしたの?」
「一応買ったけど」
と、ちらっとオルティアを見るツバスとパールフ。
「オルティアは持ってないんだな?」
「はい」
「アーパス、お前のアクアで買った奴を貸してやれよ」
「わかった」
「えっ?あんなすごいの貸してくれるんですか」
「えーっ、オルティアがアーパス様のアクセサリー借りるの?私達の方がショボくなるじゃん」
と言われてもツバスとパールフに貸してやるのはもうないしな。
ツバスとパールフがそんなの許せないとブー垂れる。
「あーっもうっ。ならグレードを落としたのを買ってやるよ」
「いっ、いいんですか?」
「お前だけなんにもないのは可哀想だからな」
「セイ、俺が弟子に買ってやるわ。そこまで気が回らんかったからな」
「靴とかもいるぞ」
「はぁーっ、わかったよ。オルティア、明日また買いに行け」
「すっ、すいません」
「セイ、みんなそんなにいい格好してくんのかよ?」
「前にみんなの買ったからね」
「お前が払ったのか?」
「リタとかギルドの給料でパーティ用のドレスとかアクセサリーとか買えないだろ?」
「そりゃあそうだろうよ」
「だからだよ」
「ずっるーい」
とツバスとパールフ。
「お前らは自分で稼げるだろうが。パールフは自分の結婚式の時にダーツに買ってももらえ」
「だって。ダーツ宜しくね」
「マジかよ・・・」
「高ランクは羨ましがられないとダメなんだろ?」
「金っていくらあっても足らんくなるもんだな」
「そういうこと」
お金はなかったらないなりに。あったらあるなりになるものなのだ。
ツバスはシーバスをチラチラと見ていたがスルーされて機嫌が悪くなったのである。