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アネモスで暫く滞在することに

フィッシャーズ達の武器ができ、姫様のウロコの扇とラーラの杖も完成したのは春の訪れと共にだった。


その間にあちこちに行って魚介類をゲットしていたセイ達だった。


姫様にウロコの扇を渡しに王城へ行くとすぐに通されて姫様に会うより先に別室へ。


「セイ様、色々とご尽力ありがとうございました」


「呪いの件は解決したの?」


「術者は拘束しております。王妃にはすべての企ての証拠を掴んだ事を伝え、改心を促しております。知らぬ存ぜぬを通されてはおりますが」


「そう。他の誰かにはバレてる?」


「いえ、バレれば騒動になりますゆえ」


「改心してくれるといいんだけどね」


「そうですな」


「庭師って仲間?」


「・・・・」


「ごめん、余計なことだったね。今日はね姫様にこれを持ってきたんだよ」


「扇ですか?不思議な素材ですな」


「ドラゴンのウロコだよ。金属部分はメラウス、糸は鬼蜘蛛の糸をドラゴンの血で染めてある。万が一攻撃されてもこれなら物理攻撃も魔法攻撃も弾くから致命傷には至らないと思う。即死を免れたらポーションでなんとかなるから」


「セイ様は姫様が狙われるとお思いですか?」


「念の為だよ。姫様は王を目指している?」


「いえ、姫様に野心はございませんが、孤児院の見学をさせて頂いてからより民の立場に立って物事をお考えになるようになられました」


「疎まれたりしている?」


「そうですな。表立って非難するような意見は出ませんが子供の浅い考えだと取られているようです」


「大事な事だとは思うけど反発を招かないようにしてあげてね。利権を持っている人ほどそういうことをうっとおしがるだろうから」


姫様は孤児院への視察及び神に愛された姫様として国民から爆発的人気を得るようになっていた。見た目も愛くるしいので当然といえば当然かもしれない。


「セイ様、本当にありがとうございます」


「爺にこれを渡しておくよ。なんかあったら連絡して」


と、電話を渡して使い方を教える。


「これは魔導具ですかな?」


「そう。式神だと俺からしか連絡が取れないからこれを使えば爺からも連絡が取れるから」


「かしこまりました。ありがたくお預かり致します」


その後姫様と謁見し、一緒におやつを食べたのであった。


次はカントハウスへ。



「え?これをラーラに?」


「渡すかどうは奥さんが決めて。大人になったらちゃんとした杖にするけど今はこの方がいいかなって」


「うふふふっ。私も試していいかしら?」


「はい。どこかで存分に試して下さい。あとケビンとラーラに魔物討伐の訓練をするならこれもあげますね」


「これは何かしら?」


「魔寄せの鈴。これを鳴らすと近くにいる魔物が寄ってくるから。剣や魔法の実践練習するには便利でしょ」


「あらぁ、それはいいわね」


「俺たちはこれを使って巣穴の前で鳴らして魔石狩りをしてたんだよ。魔物って種類毎に攻撃パターンがあるから、慣れるのにもちょうどいいよ」


ケビンとラーラは学校、カントも仕事に行っているので今は奥さん一人だ。


「セイくんは面白いものを見つけてくるわね」


「これはガイヤで普通に売ってるんだよ。またなんか面白いものを見つけたら持ってくるね」


「セイくん」


「はい」


「お礼にいいことを教えてあげる」


「なんでしょう?」


「魔力ってね、増やせるのよ」


「え?」


「元々持ってる魔力は人それぞれだけど、訓練次第で増やせるのよ。一つは倒れるまで使い切ること。もう一つは過剰回復させること。増え方は元の魔力量に左右されると思うけどね」


「ありがとう。魔力を増やせるなんて知らなかったよ」


「ふふふっ、これは内緒ね」


魔族は生まれながらにして魔力量が多いのもあるが、小さな頃からぶっ倒れるまで魔力を使って増やして行くそうだ。成長と共にも魔力は増えるそうだが、小さな頃に底上げすると後々の伸びしろも大きくなるらしい。成長期が終わってからだと効果は低くなるとのこと。ドラゴンの涙は手っ取り早く魔力を使い切れるのでラーラは自分と同じぐらい伸びるかもねだって。


「あら?もう帰っちゃうの?」


「はい。また来ます。知り合いが結婚式をするので準備を手伝わないとダメなんですよ」


「じゃあ落ち着いたらまた来てね」


「はい。魚介類をお土産にもってきますね」


と、ここでの用事も終わりバビデの家に戻った。



「じゃ、アネモスに移動しようか」


「おうっ」


ということでアネモスの屋敷に移動した。結婚式にはビビデバビデ達も呼ぶ予定だ。アネモスの魔物も気にはなるのでフィッシャーズ達もギルマスの所に顔を出すことになったのだった。



「あっ、セイさんっ」


「オッス。フィッシャーズを連れて来たよ」


「リタさん、お久しぶりです」


「ガッシーさんお久しぶりです」


と、リタにちゃんと覚えてもらっていたガッシーは嬉しそうだった。


「セイ、手伝ってくれよぉ」


と声を掛けて来たのはアイアン達だった。


「疲れてんなぁ」


「おう、冬も休まず働かせられてんだよ」


「依頼を受けるの自由なんじゃないの?」


「ギルマスの奥さんがよぉ」


「アイアン、あんたらこれ受けな。ほら行った行った」


「グリンディル、無理矢理受けさせてんの?」


「当たり前でしょ。仕事が増えて喜んでたやつらなんだから。もっと喜ばせてやらないとね」


ここにいる冒険者達でやれる依頼は強制的にもやらせて無理そうならヘルプに入っているとのこと。


「おっ、フッシャーズ達にいいのがあるのよ。これ討伐してきてね」


「トロール?こんなの出るようになったの?」


「そう。未調査ダンジョンの近くにね。あんた達なら余裕でしょ?」


「まぁ、トロール系はな。一つ目とか三つ目は出てないのか?」


「トロールの次はそいつら?」


「そうだ。ガイヤで魔石狩りで散々やったからな。ここにいる冒険者達はトロールを倒せるのか?」


「どうだろうねぇ。人数集めてなんとかってところじゃない」


「ヤバいね。アイアン、そのオーク討伐キャンセル。フィッシャーズ達と臨時パーティ組んで」


「そいつらは誰だ?」


「アクアのSランク冒険者。トロール系の討伐の仕方を学んで来てよ。そのうち上位種が出ると思うからトロールぐらいは簡単に倒せるようになってないとヤバいぞ」


「Sっ?Sランクと臨時パーティを組むのか?」


「セイ、こいつらは?」


「俺がアネモスに来たときに世話になった人達。アイアン達がいなかったら餓死してたよ」


「お、セイの恩人か。なら喜んで組ませてもらおう。俺はシーバスだ」


と、メンバー紹介をお互いにした。


「じゃ、頑張っておいで」


とグリンディルがニコニコと送り出したのだった。



「セイ、マモンから話があるから部屋に行くよ」


と、ガラッと表情が変わったグリンディル。なんかあったのだろうか?


ギルマスの部屋に入るとギルマスも渋い顔をしていた。


「なんかあったの?」


「お前、アネモスの王室となんかあったか?」


「いや、全く繋がりはないけど?」


「内々でお前に会えるか打診がギルド本部にあった」


「そうなの?」


「空いてる時間はあるか?」


「今日はフィッシャーズ達がギルドに顔を出すのと、マーメイの結婚式の誘いに来たんだよ」


「おー、マーメイが結婚すんのか?誰とだ」


「魚人のサムってやつ。4月に入ってすぐにオーガ島でやるから。ギルマス達も来るでしょ?」


「何事も無ければな」


「未調査ダンジョン近くでトロールが出たんだってね。そのうち一つ目と三つ目が出るよ」


「トロールの上位種はあいつらなのか。三つ目が出たら厄介だな。ここの奴らじゃ太刀打ち出来んぞ」


「だろうね。フィッシャーズ達も初めは苦労してたよ」


「あいつらいつまでいてくれんだ?」


「ここには未調査ダンジョンの調査をするだけのつもりだったんだけどね。トロール退治から帰って来たら交渉してみて。あと、ボッケーノで何匹かワイバーンを取り逃がして行方不明になってるからこっちに飛んで来るかも」


「マジかよ。お前らはいつまでいるんだよ?」


「決めてないけど、世界中に魚介類を探しに行くつもりにはしてるよ」


「はぁ?そんなもん後回しだっ」


「時期を逃すと一年待たなきゃなんないんだぞ」


「待てばいいじゃねーかよ」


「アクアでもやることあんだよ」


「お前はアネモスの人間だろうが」


「アネモスの人達がウェンディを敬うならね。もうボッケーノとか今すごいんだよ。ヘスティアを連れて歩けないから」


「早くウェンディを敬ってもらうようにしろよ」


「どうやってしろってんだよ?」


「とりあえず王室からの謁見の承諾をしろ」


まぁ、一度会っておいてもいいか。直接警告しておくのも悪くはないな。


「わかった。ゴタゴタに巻き込まれて予定が狂うのは勘弁だからマーメイ達の結婚式が終わってからね」


「4月の半ばでいいか?」


「いいよ」


ということでアネモス王との謁見予定を組まれてしまった。



ーアネモス王室ー


「これはこれは使者殿。遠くからご苦労である」


「早速ながらお返事をお聞かせ願いたい。同じ神なし国同士、ぜひ良いお付き合いをさせて頂きたいものと総督も仰っておられます」


「此度の話は誠に申し訳ないがお断りをさせて頂く。同盟とは名ばかりの条約は承服しかねる」


「ほう、アネモスはガーミウルスと事を構えるおつもりで?」


「我々はガーミウルスに対して敵対するつもりはない。が、この条約には同意しかねると申しておる。この内容はまるで降伏勧告ではないかっ」


アネモス王は使者に激昂していた。条約の内容はアネモスをガーミウルスの一都市として位置づけ、総督がアネモスに本部を置き、アネモス王家はその指示に従うというものであった。その代わりにガーミウルスが魔物や他国からも守るというものだ。


「宜しいのですか?アネモスは神無し国。自ら神を捨てた決断を称え平和的に併合して差し上げようと申し上げているのですよ?他の神無し国がどのように併合されたかご存知ではないとは思えませんが」


「ええぃ、くどい。アネモスは他国とも揉めてはおらんし、魔物にも対応出来ておるわっ」


「では、そのように総督にお伝え致しますゆえ。次にお会いするときは首だけになられていないことをお祈り致します」


と、使者は魔導兵器で武装された護衛と共に王城を後にしたのだった。




「陛下、ボッケーノ王よりの親書はこのことを伝えるものであったのでしょうか」


「いや、ボッケーノに神が顕現したとの報告を受けておる。その鍵を握るのはセイという冒険者であるということだ。すでに謁見させるように指示はしてある。宰相、その返事はどうなっておるっ」


「はっ、アネモスにはおらぬようでして、まだでございます」


「さっとと探せっ」


「はっ」



これらセイが謁見の申し込みをする少し前の話であった。

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