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時期外れだった。

「はぁ、疲れたね」


「こっちのセリフじゃ。あれから大変じゃったんじゃぞ」


「これからヘスティアが居るのが普通になるよ。というかヘスティア、そろそろ離れろ」


「だってよぉ、俺様を見る目が恐ぇんだよっ」


「もうここには知り合いしかいないだろ?」


魔物とかは怖がらないくせに人間の狂信者の目は怖いらしい。



「これからどうするんじゃ?」


「ビビデはフィッシャーズ達の武器を作るんだろ?一つ俺も作って欲しいのがあるんだよ」


「誰の武器じゃ?」


「ラーラって子供がいてね魔法の才能があるんだよ。で、こういうのを作って欲しいんだ」


それはドラゴンの涙をあしらった魔法使い様の杖というかスティック。長さは30cmほどの小さな物だ。成長して大きくなればちゃんとした杖に作り直せばいい。素材はメラウスでヘスティアにサインを入れてもらう予定にしている。火魔法の適性が無いラーラもこれがあれば火の攻撃魔法が使えるだろう。


ラーラの適性は土と水と無。奥さんは全適性だった。魔族ってすげぇわ。敵に回したら人類なんか絶対に負けるよな。


「これは飾りか?」


「いや、ドラゴンの涙は魔力を注ぐとドラゴンブレスを吐くらしいんだよ」


「えっ?マジでっ」


とツバスが驚く。


「俺も知らなかったんだけどね。ツバス達も使う?」


「ちょっと試してみていいかな」


ということなので夜に草原に行って試すことにした。


「バビデはウロコを扇に加工できる?」


「扇?」


「そう。携帯出来る盾になるかなって」


「誰に持たせるんだ?」


「姫様。誰かに襲われる可能性は低いと思うけど念の為にね」


「随分と入れ込んでるんだな」


「今回の事で姫様を悪用しようとするやつが出てくるかもしれないしね。出来る事はやっておこうかと」


骨組みはメラウスでウロコの切断はセイがやることになった。ウロコを止めるのは鬼蜘蛛の糸をドラゴンの血で染めたものだ。もし襲われても即死を防げたらポーションでなんとかなるからな。


アンジェラが姫様向きのかわいいデザインにしてやろうと言ってくれたのでラーラの杖のデザインもお願いしておいた。


そして夜になり草原に移動してドラゴンの涙を試す。やばいかもしれないのでラーラに渡した小さめのものでツバスが試す。


「いくわよっ」


ごオゥぅぅぅぅぅ


「きゃぁぁぁぁぁっ」


想像していたより遥かに大きなブレス。まるで火炎放射器だ。


「これ子供に持たせる気?それに今の一瞬で魔力めっちゃ吸われたんだけど」


「えっ、あ、うん。師匠がいるからなんとかなるかな」


ちょっと自信がないから奥さんに任せておこう。


「ツバスとパールフはこれいる?」


「危ないからやめとく。一発しか撃てないし、こんなの実践で使えないわよ」


という事でラーラの分だけ作ることになった。ラーラなら10発は撃てそうだな。ツバスは魔力を吸われたと言っていたから、吸われる量をコントロール出来たらもっと使い勝手が良くなるかも知れない。



バビデの家に戻ってご飯食べる。明日からは皆が武器と防具作りをするので俺たちは魚介類を探す事にしたのであった。



「どこに行くのよ?」


「北の海。食べたい魚があるからそれを探しに行こう」


行った事が無い北方面に向かって飛んでいく。半日程飛んで雪深い森の中で野営をすることに。


「寒いねぇ」


「鼻がツンツンするっ」


ウェンディが鼻を押さえている。確かに鼻毛が凍ってしまいそうだ。


寒いので晩ごはんはテントの中で鍋にした。ヘスティアが熱を発してくれているので助かる。


もう一つテントを出して男風呂、女風呂に分けようとするけど外に出ると死にそうだ。


「ごめん、もう一個テント出すの無理。吹雪いて来たし寒すぎる」


「えーっ、しょうがねぇなぁ。覗くなよ」


「布団に包まってるから早く入って」


と、女神ズに先に入らせる。風呂の湯気がテントの中に充満してテントに付いた水滴が凍っていく。


「セイ、女神達が横で風呂に入っているのはどんな気持ちだよ?」


「どうとも思わんから話しかけんな」


「ちぇっ、面白くもねぇ。ちょっとは恥ずかしがれよ」


「そんなに見て欲しいなら今ここで立ち上がって見てやろうか」


「ばっ、バカ。やめろよなっ。今全部脱いでんだからよっ」


自分が恥ずかしいならちょっかい掛けてくんな。


ウェンディとアーパスがホコホコになったから出ると言って皆は着替えたようだ。


「お前らも覗くなよな」


と釘を刺してから風呂に浸かる。ゴボゴボゴボゴボ。


「いっつもセイだけそんなことをしてもらいやがってよ」


「うわァァァっ。覗くなって言ったろうがっ」


「ゴボゴボしてるから見えねえよ」


「あのなぁ、そういう問題じゃないんだよっ。そんなとこで見られてたら落ち着かんだろうがっ」


「一緒に入ってやろうか?」


「いらんっつってんだろうがっ。もう出るからあっち向いとけ」


ヘスティアはちょくちょくこうやってからかってくる。風呂ぐらいゆっくり入らせろってんだ。


ウンディーネがお湯を片付けてくれたのでバスタブをしまい布団の中へ。


皆がホコホコなので温かい。が、夜中になるに連れてどんどん寒くなってくる。


寝ているウェンディも寒いのがギュッとくっついてきた。


「うひゃっ」


ウェンディが冷たい足先をくっつけてきやがった。こいつこんなに冷たくなってんのか。


仕方がないのでウェンディの足先を足の間に挟んでやる。するとヘスティアももそもそとこっちの布団に入って来て上に乗る。めっちゃ温い。一人取り残されたアーパスも寒くなったのかこちらに来たのでダブルの掛け布団を2枚重ねにして四人でくっついて寝たのであった。


朝はより冷え込んでいるし吹雪いているから天候回復を待つことに。布団の中でヘスティアに熱を発してもらいながらぬくぬくとしている。


「ごはんは?」


「寒くて作れんから砂婆に頼むか。砂婆、なんか温かいもの作って。外がめちゃくちゃ寒いんだよ」


と、お願いすると肉まんを出してくれた。それと豚汁。


豚汁が身体を温めてくれる。


「ふう、一息付いたね」


「いつまでここにいるのよ?」


「吹雪が止むまでかな。こんな時に飛んだら危ないだろ?」


「だって暇じゃない」


「そうは言われてもなぁ」


と、吹雪が止むまで2日程このままなのであった。



ようやく晴れ間が見えたので出発。雪に埋もれたテントから脱出するのにヘスティアは便利だった。


そしてようやく見えた海。しかし北に来すぎたのか流氷で覆われているので飛びながら南下していく。


大きな河がいくつも海に流れ込んでいる場所を発見したのでこの近くで探してみることに。といってもウンディーネに頼むのだが。


見つけて来てくれたのはバフンウニだろうか?めちゃデカい。砂婆に見てもらうとやはりバフンウニだった。いくつか取ってきてもらって試食する。


「これめっちゃ甘いよ」


味は濃厚で甘みも強い。これはキープ。そしてアワビはバター焼きにしてみた。これもキープする。


「昆布とかあるけど採取時期っていつ?」


「夏頃じゃ」


「わかめは?」


「ちと早いが今からじゃったと思うぞ」


とのことなのでワカメを採取。海苔はもう時期が過ぎているらしいのでまた来年だな。


ゲット出来たのはウニとワカメ。数の子はまだ少し早いらしく、イクラは秋との事だが紅鮭とキングサーモンとサンマをゲット。更に南下していって牡蠣を採取。これもギリギリセーフだったようだ。



そのままオーガ島に行き、ダンジョンに食べさせてからたくさん出してもらう。ワカメはここで干しておいて、ヒョウエ達とウニとアワビ三昧の飯にしたのであった。紅鮭とキングサーモンは砂婆が塩漬けにしておいてくれるとのこと。スモークサーモンも食べたいな。




「久しぶりなワケ」


「マーメイ、久しぶりだね」


入江にいくとマーメイが来ていた。


「何してたのよ?」


と、聞かれたので今までの話をする。


「で、そのネックレスどうしたんだ?」


マーメイは真珠のネックレスをしていた。


「さ、サムからもらったわけ」


と、気まずそうに横を向く。


「おねぇちゃんはサムにプロポーズされたのよ」


「そうだっんだ。良かったね」


「なっ、なんとも思わないわけ?私が他の奴と結婚してもっ」


「前にも言っただろ?同じ種族の奴と一緒になるほうがいいんだよ。俺は海の中で暮らせないだろうが」


「ちょっとはヤキモチ焼くとかしないわけっ」


「そうだね。ちょっとは寂しいかな。でもおめでとうの気持ちの方が強いよ」


「ちょっとは寂しいわけね?」


「だね」


「ならいいわけっ。サム、セイは良いって」


「そうか。それは良かった」


と、サムも入江から出て来た。


「サム、お前、女の子に言わせずに自分で言いに来いよ」


「マーメイが自分で言いたいと言ったからからな。スマン」


「まぁ、いいよ。それよりちゃんと真珠を見つけられたんだな」


「散々探したぜ。だがようやくアクセサリーにするまで集められたんだ」


「頑張ったな」


「お前のおかげだ。これは礼に取っておいてくれ」


と、サムはいくつか真珠をくれた。


「おぅ、ありがたくもらっておくよ」


「それでな、俺たちも結婚式ってのをやりたいんだがウェンディ様に頼めるだろうか?」


「いいわよっ。ここでやるんでしょ?」


「あぁそのつもりだ」


「今から?」


ウェンディ、流石にそれはないだろう。


「春にでもするか?人間の仲間も近くに来ててな、宴会に誘ってやりたいんだよ」


「セイの仲間なら喜んで」


「了解。なら、4月にやるか」


「おうっ」


妹のマーリンも他の魚人に言い寄られているようで、なんかでかい海の魔物が持つお宝を取ってこれたらと条件を出していた。その内マーリンも嫁に行くのだな。


まだ冬だけど、もうオーガ島には春が訪れていたのであった。



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