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「クラマ、これで良かったのか?」


「セイは精神的にも大人になったでの。もう大丈夫じゃろ」


二人はセイがクラマの刀を抜いて魔物に向かって行ったあと寝たフリをやめてセイの戦いぶりを見ていた。



「クガァぉぉぉっ」


「大声で叫ぶなよ。皆起きるだろうが」 

 

シパパパっ


クラマの刀でオーガを斬るセイ。クラマ仕込の剣術にサカキ仕込みの武術、それに・・・


「ぐわっ!やられたっ」


セイが背中からオーガの攻撃を食らって倒れる。


「残念、そっちは式神だ」


セイを倒したと思ったオーガを背中からバッサリと殺った。




「お、海からなんか来やがったぜ。鵺、お前はそのままでいいぞ」


海から魔物の気配がしたぬーちゃんは耳をピクッとして起き上がろうとしたがウェンディがその上でスヤスヤ寝ているのでサカキは止めた。


「サカキ、カニじゃ」


「おー、あれだけデカけりゃ旨そうだ」


人ほどの大きさのあるカニが上陸してきたのでサカキは倒していく。カニの魔物はそのままひっくり返って泡を吹いて気絶する。


「大漁、大漁っ!」


嬉々としてカニの魔物を気絶させていくサカキ。



「何だよ、起きてんのかよ?」


オーガを倒したセイが戻って来た。


「セイ、カニだぜカニ。おい、ジジイ。今のうちにババァに持っていけ」


「こんな時間に砂婆になんか作れと言うたら砂掛けられるわい。仕方がない。ユキメに頼んで冷やしておいてもらうかの」


「何だよ、今食えねぇのかよ」


「明日、堪能すればいいだろ?もうすぐ夜が明けるぞ」

 

「ちっ、しょうがねぇな」


「クラマ、刀返すわ」


「セイが持っておくか?」


「いや、それはクラマのじっちゃんの宝だからいいよ」


クラマはじっちゃんと呼ぶなと言うが子供の頃はそう呼んでいたのでついついそう呼んでしまうセイ。


「そうか。街に戻ったらこの世界の刀を見に行ってみるか。ちとワシ等のとは違うようじゃがの」


「この依頼の報酬もらえたらね。ナマクラなら無い方がマシだしね」


「そうじゃの」


クラマとそんな話をしているなか、サカキはカニが食えなかったのが不服そうで機嫌が悪い。


「天下の酒呑童子様がカニ食えなかったぐらいで拗ねんなよ」


「拗ねてなんかねぇ」


嘘つけっ。


仕方が無いので朝飯代わりに味噌とカニを一匹持ってきてもらい、カニの味噌汁を作った。カニを茹でて味噌を入れただけだけど。


ボキンっ じゅるるる


「中々に旨いじゃねーかコイツ」


サカキの言う通り味噌汁もカニの出汁が出ていて旨い。


「なに自分達だけで食べてんのよ?」


「お前、いつも中々に起きて来ないくせに旨そうな匂いがしたら起きるのな?」


「うるさいわね。これ何?」


「カニだよ。お前が昨日捕まえてた奴のデッカイやつだ」


ウェンディは殻付きのまま齧っている。面白いから黙っていよう。


ぬーちゃんが殻付きのまま食ってるからそれを真似してるのだろう。


「よっ」


ボキン


じゅるるるん


「旨っ」


「今のどうやったのよ?」


「脚を折って引抜くだけだ」


「こう?・・・・・キィィーーー」


ウェンディはやってみるが筋だけ抜けて来た。折る側が反対だ。


イライラしたウェンディはそのまま脚をガシガシ噛んでやがる。仕方が無いのでセイが身を出してやった。


「な、なんだよ?」


それを見ているサカキとクラマ。


「尻に敷かれてんな」


「違うわっ」


セイは小学校の頃、下校中に河原にいた捨て犬に給食のパンとかをあげていた。友達の居なかったセイにとって楽しみな時間だったのである。


「ウェンディ、給食のパン食うか?」


「パンなんてどこにあんのよ?」 


「いやないけど・・・」



そうこうしているうちに夜が明けた。


「あの山に洞窟の入口みたいな所があるからそこを調査しよう」


「式で調べたのか?」


「見張りがてらな。明かりが見えたからなんかあるのは確実だ」


サカキ達はひょうたんに戻り、セイとウェンディはぬーちゃんとその洞窟らしき所に向かった。


「セイ、あの場所にいた魔物と同じ臭いがするよー」


「ビンゴみたいだな」


「人間の臭いはするか?」


「するー」


「よし、中に入ろうか」


サカキとクラマが出てきて先行してくれる。オーガとは違う臭いの相手。


おそらく鬼だ。鬼は色々な種類がいたが総じて強い。世界が違うとはいえサカキに似た臭いを発する魔物が弱いわけがない。


(ぬーちゃん)

(なにー?)

(俺が逃げろと言ったらウェンディを連れて逃げてくれ)

(セイはどうすんのー?)

(俺は大丈夫だ)


セイはぬーちゃんに小声でそう伝えたのであった。


洞窟の入口を入りしばらく進むと急に開けた場所になる。まるでダンジョンだ。


「ここダンジョンかよ?」


「どうだろうね?」 


「壁殴って確かめてみるか?崩れるようならダンジョンじゃねーだろ」


「生き埋めになるわっ」


まったく脳筋の発想は恐ろしい。


「セイ、この先におるようじゃ」


広場を歩いていると下っていく道になっている。そしてその先に。


「おいおい、オーガじゃなく鬼共がいやがるぜ」


確かに赤鬼青鬼がいる。しかも集落になっている。こんな所に鬼の村があるなんて・・・


「サカキ、アイツらと意思疎通出来そうか?」


「本当に鬼ならな。角有りの事もあるから見た目が似ているだけかもしんねぇぞ」


確かに角有りのミノタウルスは牛頭ごずソックリだったからな。


「分かった。話しかけてみて意思疎通が取れそうならそれを優先。無理なら戦闘だな。気を付けてくれ。数が多そうだ」


「そうだな。ちょいと準備しておくか」


そういったサカキはジャキッと爪を伸ばした。下手な刀より強くよく切れる爪だ。


クラマも刀を抜いている。


「ウェンディ、ぬーちゃんから離れるな。このまま乗ってろ」


「な、何するつもりよ」


「いいからお前はそのまま掴まってろ」


「うん」


ウェンディは日頃ギャアギャアと反抗したりするがセイが本気で言うと逆らわない。


そのままサカキが先頭、クラマは宙に浮き、セイはウェンディを乗せたぬーちゃんの前を歩く。


こちらに気付いた鬼は大きな唸り声をあげて臨戦態勢となった。連携を取らない魔物と違って知能も高そうだ。総力戦になったらしんどいかもしれん。数は圧倒的に向こうの方が多いからな。


ほう、やる気かよ?と言ったサカキから出る闘気が目に見えるようだ。


「サカキ、ちょっと待て。先に声をかけてみる」


「向こうが攻撃を仕掛けてきたら問答無用でやるからな」


「わかった」


セイはサカキより前に出て大きく息を吸った。


「俺の名はセイ。お前達っ、俺の言葉はわかるか?話し合えるなら戦う必要はない」


大声でそう叫んだセイ。


ざわざわざわざわと鬼達が顔を見合わせている。


「おっ?言葉を理解しているようだな」


少し闘気が収まるサカキ。


「何をしにきたっ」


返答が返ってきた。


「ここを荒らしに来たわけじゃない」


ざわざわざわざわ


「騙されるなっ。人間は敵だっ。やれっ」


屋敷の中から出てきた鬼がそう言った瞬間に一気にこちらに向かって走って来た。


「セイ、止めんなよ。下手すりゃ殺られるからよ」


サカキとクラマは迎え打つように鬼達と戦闘態勢に入ったのであった。




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