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ごめん、バレた

「いらっしゃい」


「早く帰って来てくれてよかったわ。大変だったのよ」


玄関から入るなりグリンディルはそういう。ギルマスのマモンは機嫌が悪そうだ。


「それは誰だ?」


ぐったりしているオルティアを紹介する。


「他国の駆け出しを拾ってくるならアネモスの冒険者共をなんとかしてよね」


「もしかしてグリンディルは復帰してんの?」


「そうよ。手が足りないから駆り出されて指導してるし、水不足だからって国から水魔法を使える者が駆り出されてとかね」


「へぇ、大活躍で何よりだね」


「お前、なんか他人事だな」


「だって予告しておいたじゃん。想定より早いけど、対策を打たない国が悪いんだよ。用水路とかどうなってんの?」


「まぁ、それは全部説明する。ウェンディはいないのか?」


「もう風呂から出てくると思うよ」


と、いったしりからモコモコパジャマのウェンディとアーパス。ヘスティアは半裸で出て来た。


「なっ、なっ、なっ」×ギルマス達とアーパス


ギルマスはぎょっとしているし、リタも目を見張っている。グリンディルとアーパスはお互いにガン見しあっていた。


「あんたなんでここにいるのよっ」


「それはこっちのセリフ。裏切り者がどうしてここにいるの」


「セイ、誰だ?」


と、ギルマス。


「ヘスティアとアーパス。半裸美人がヘスティアだよ。力を落として皆から見えるようにしてるんだよ。エロい目で見たらバチ当たるからね。ヘスティア、服を着ろ」


「えーっ、今までに何回も会ってるだろうが」


「ギルマスには見えてなかったろうが。お前の姿は目に毒だ」


「じゃあ着せてくれよ」


と言うのでヘスティアのシャツを着せてスカートを渡す。


「グリンディル、アーパス様と顔見知りなのか?」


あっ、しまった。


「グリンディルは私の眷属になるのを断ってどこかに行った裏切り者」


「眷属?」


やべぇ、グリンディルが元妖精だと言うことは秘密だったの忘れてたよ。どうしよう・・・・


「マモン、後で話すわよ」


ごめんグリンディル。


「クスクス、相変わらずねグリンディル」


「ウンディーネ、あんたも一緒に来てたの?セイ、ちゃんと訳を話してよね」


「う、うん・・・」


お通夜の様な雰囲気で始まるフグ晩餐。


ウェンディはそんなの気にせずウマウマと唐揚げを食べている。


「で、どうしてアーパスとウンディーネがセイと一緒にいるのかしら?」


「ちょっと知り合いになってそのまま・・・」


「私はセイの女になった」


「はぁっ?セイ、あんたウェンディがいるんじゃないのっ?」


「アーパス、こんな雰囲気の時にやめてくれよ。グリンディル、アクアに入る時にアーパスと知り合いになって一緒に飯食ったりするようになったんだよ。ドラゴンのウロコがあるだろ?あれは神のエネルギーを吸うことで布みたいになるんだけど、それ使ってわざと力を落として人間に近付けたんだよ」


「あんた、アクアの加護どうしてんのよ?」


「別にいい。誰もそんなの知らないから」


「アクアがここみたいに魔物が増えて強くなったらどうすんのよ」


「セイがなんとかしてくれるから大丈夫。リザードマンも頑張ってるから」


「あんたねぇ・・・」


「一応、ギルドと騎士団にはアーパスが国を離れる事と魔物が増える事は伝えてある。手に負えなくなるようなら連絡もらうようにしてあるんだよ。それにイフリートと連携をしろと言ってあるから」


「セイ、あんた眷属も自由に使ってるわけ?」


「自由にって・・・」


「ウンディーネはもうセイの眷属みたいなもの。私より仲がいいもの」


確かにそうかもしれん。


「グリンディル、お前はなぜそんなことを知っているんだ?」


「マモン、隠してたつもりじゃないけど言えなかった事があるの」


「な、なんだ・・・?」


「私は元精霊なの。アーパスの眷属になるのが嫌でアクアを出た。アーパスが裏切り者というのはそういうこと」


「お前が元精霊・・・だと?」


「そう。嫌いになっちゃった?」


「どうして人間になんかなったっ。精霊で神の眷属に選ばれるような存在がなんでちっぽけな人間になんかなったんだっ」


「それは・・・」


答えに詰まるグリンディルの代わりにセイが説明をする。


「ギルマスのためだよ」


「セイっ、余計な事を言わないでっ」


「グリンディル、ごめんね。こうなる事を考えてなかったよ。ギルマス、冒険者時代に水に溺れかけた時に助かった事は覚えている?」


「あ、ああ・・・」


「グリンディルはギルマス達を見かけてずっと見守ってたんだって。こっそり手助けしてても気付いて貰えないから人間になったんだよ」


「どういうことだ?」


「ギルマスに惚れて人間になったって事だよ」


「ちょっとセイっ。私はそんなことまで言ってないわよっ」


「グリンディルお前俺の為に・・・」


「やっ、やめてよっ。そんなんじゃないわよっ。手助けしても気付いて貰えないからムカついて人間になったのっ。そしたらマモンがいきなりプロポーズしたんじゃないっ」


そう言ったグリンディルをガバッと抱き締めるマモン。

 

「馬鹿野郎っ。俺なんかの為に寿命のある人間になんかなりやがって・・・」


そう言ってポロポロと泣きだした。


「マモン・・・」


「ありがとう。俺は世界一の幸せ者だ」


ぶちゅー


・・・

・・・・

・・・・・


「えーっと、もういいかな?」


長ぇーよっ


「うふふふ、嫌いになったんじゃないの?」


「そんなことあるかっ。俺は一生お前だけを愛し続けるっ」


「本当かしら?」


「やっぱアチいわ」


と、場の空気を読まないヘスティアがポチポチとシャツのボタンを外すとチラ見したマモン。


「嘘つきっ」


ガスッ


マモンはグリンディルにグーでイカれたのであった。



「グリンディル、早く飲もうぜ。ヒレ酒ってのがあるぜ。この刺身と鍋に合うからよ」


「おっ、どれどれ」


ナイスタイミングだサカキ。


セイは伸びているギルマスにポーションを飲ませて復活させた。


「ギルマス、飯食いながら話そう」


そして今までの事を話した。


「テルウス様は人間化してねぇのか?」


「今の所はね。アクセサリーとかは今作ってる。そのうち飯食いにくるんじゃないかな?今年も温泉でカニ鍋しようと思ってるんだけどどうする?2月11日出発だからアネモスは10日出発になるよ」


「何日間だ?」


「二泊三日くらいかな?移動は飛行機を使うからすぐだよ」


「その飛行機って空を飛ぶ魔導具は公にしたのか?」


「まだ。でも神の乗り物として公にするつもり。これからアクアに行くことが増えるから」


「アネモスはどうすんだよ?」


「アネモスはウェンディへの信仰心が復活しない限り何もしない。まだまだ恨んでる人の方が多いでしょ?それにウェンディが神の力を使うには今のところエネルギーが足りないんだよね」


「エネルギーが足りない?」


「そう。ヘスティアやアーパスは俺がエネルギーを注くとどんどん入るんだけど、ウェンディだけほんの少しずつしか入らないんだよ。女神の中で一番力があるのがウェンディらしくてね、ずっとエネルギー補充はしているけど神に戻るまでどれくらい掛かるかわかんないんだよ。最悪戻してやれないかもしれないんだ」


「ど、どうすんだよっ」


「ドラゴンとか出るようになったらウェンディの代わりに手伝うよ。神の代行として。だからそれも信仰心が戻ってからだね」


「アーパス、あんた普通の雨でいいからアネモスに降らせてよ」


とグリンディルが言う。


「セイがお願いするなら降らせてもいいけど、グリンディルに言われてやるのは嫌」


「あーっ、もうっ。ウンディーネ、代わりにやってよ」


「セイがお願いするならね♪」


「セイ、どっちかに頼んでよ」


「ここはウェンディが守護する国だったからダメだよ。この国に恩恵を与えるのはウェンディでないと。アーパスがやったら水の神様を信仰するようになるじゃないか。ウェンディ、それでもいいか?」


「いっ、嫌よっ」


「だって。だからダメ」


「はぁ・・・。なら私ももうやらない。その方が早く決着がつくわ」


と、グリンディルも水撒きにいく事をやめると言い出した。


「魔物はどうすんだよ?」


「冒険者共が頑張ればいいわよ。仕事が増えて喜んだんでしょ。ずっと喜ばせてあげなさいよ。サカキ、おかわり頂戴。もう飲まないとやってられないわっ」


「お前ら、俺だけに押し付けるつもりかよっ」


「ギルマスもアクアに行く?飯も酒も旨いし、アーパス御用達の高級宿もタダで泊めてくれてんだよ。専用の部屋で住んでくれてもいいとまで言ってくれてるし」


「ここの奴らはどうすんだよ?」


「ウェンディにごめんなさいして、お祈りを捧げ続ければいいじゃん。忠告したのに言うことを聞かなかったからだよ。国もリーゼロイ家の言うことを聞かずに用水路とか災害の準備に予算回してくれなかったんだよね?」


この説明はさっき聞いたのだ。マモンもリーゼロイ家当主からセイに報告をしたいと告げに来たらしい。話によると防災に予算を回すどころか色々削った挙げ句に増税までしたらしい。何をするつもりかわからないけどもう知らん。


「アネモスを見捨てるつもりか?」


「前にも言ったと思うけどアネモスがウェンディを見捨てたんだよ。このままウェンディに信仰心が戻らなかったら俺がウェンディの面倒を見ていくから別にそれでも構わないと思っている」


「お前が死んだ後はどうすんだ?」


「サカキ達に託すしかないね。ウェンディ達にずっと付き合えるのは寿命の無い者しか無理だから。もしそうなるようなら、ウェンディ達が楽しく暮らせる場所をどっかに作るよ。妖怪の里ならぬ神の里をね」


女神ズはセイが死ぬ事を想像してしまって胸が締め付けられるような思いで今の話を聞いていたのであった。




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