ラーラが作ったベーコン
ヘスティアのバチは軽く当てただけなのでギルドで販売しているポーションで治りそうだ。
エロい目で見られたヘスティアはコートで前を隠している。
「お前なぁ、人前で裸になるなよ」
「裸じゃねーしっ」
「ほら、これを着とけ」
またチヤホヤされてハニーフラッシュしてもかなわんのでブラックドラゴンのシャツを脱いでヘスティアに着せる。ボタンは自分ではめろ。
「セイ、自分の服を脱いで着せるなんてなんかエッチね」
脱がすならまだしも着せてエッチと言われる意味がわからないぞサマンサ。
腕が全く見えないヘスティアに袖まくりをしてやって、スカートは自分で穿けと渡した。
「セイ、今日はこのあと何か予定あるのか?」
「ケビンとラーラにお土産渡したいなと思って来たんだよ」
「なら暇だしもう上がるか。泊まってくだろ?」
「いつも悪いね」
とカントは誘ってくれる。それに何か話をしたそうな感じだな。
ギルマスがもう行くかと言ったら皆から女神様を独り占めしようとしてズルいぞっと言われたてめっちゃ怒鳴り返していた。
「楽しいギルド」
と、アーパスがぽそっと呟く。
「ここはみんな仲がいいからな。それもギルマスのカントの力だよ」
「セイ、やめてくれ。俺まで燃えちまいそうだ」
カントのハニーフラッシュなんて見たくはない。
カントハウスに着くとケビンとラーラもリビングに居た。
「にーちゃんっ、ウェンディっ。と誰?」
「おにーちゃんっ」
ラーラは他の人に目もくれずにセイに飛びついて行くのでセイはそのまま抱っこした。
「あらぁ、セイくん。また女の人が増えたの?」
またってなんだよ奥さん。
「こちらがヘスティア。前に来たときには見えなかったけど皆は会った事があるよ。こっちは水の女神アーパス。それでこいつはオルティア。冒険者だよ」
「えっ?ヘスティア様ってこんなに美人なの?」
と、ケビンが言うと熱を発するヘスティア。子供の前でハニーフラッシュしなくてよかっ。
「アーパス様もかわいいっ」
「ありがとう。ラーラもかわいい」
「わーい」
あらよっとサカキも出て来た。こいつは奥さんと飲むの好きだからな。
夕食には少し早いので先にお土産を渡す。
「これはホタルノヒカリといってな、暗闇で光るんだよ。お日様の光に当てると光らなくなるから夜しか箱を開けちゃダメだぞ」
「えーっ、早くみたーい」
「ご飯の後にな。それと春物の服が売ってたから買って来たんだよ。サイズは合うかな?」
と、ケビンとラーラの服を出す。
「わっ、王都で買ってきてくれたのかよ?」
「そうだぞ。ウェンディ達の服を買うついでにな」
「やったーっ、王都の服だっ」
とケビンとラーラは喜んで着て見せてくれた。ケビンにはまだ少し大きいけどラーラはピッタリだ。でも今年の春に一回着たら終わりだな。来年には着れなくなってるだろう。
「セイくん、予定より随分と早く戻ってきたのね。何かあったのかしら?」
「用事が思ったより早く終わってね。詳しくは後で話すよ。ケビン、魔物討伐の話は聞きたいか?」
「おーっ、聞きたい」
アーパスはラーラを膝に乗せている。自分より小さな子供が嬉しいのかもしれない。
まずはフィッシャーズ達との出会い、虫の魔物の討伐、一角幻獣との戦いとテルウスのバチの話をした。
「ガイヤでは神様が直接バチを当てるのか」
とカントは驚く。
「ヘスティアもさっきバチ当てたじゃん」
「そりゃそうだがよ」
「ウェンディが被害者にえらく共感してしまってね、その悲しみがテルウスにも伝わったんだよ。神を悲しませたバチだと言ってたよ」
「ウェンディ、そんなに悲しかったのかよ?」
とケビンが心配そうに聞く。
「うっさいわね」
なんちゅう返事をするのだ?
「俺が強くなってウェンディを悲しませないようにしてやるよっ」
ケビン、君はいい男になるぞ。でもウェンディはやめとけ。君には値しない。何かしてもらっても3歩歩いたら忘れてしまうようなやつだからな。
「何よ?」
いらぬ事を考えたセイに気付いたウェンディ。
「良かったな。お前を守ってくれる奴が増えたぞ」
「うっ、うっさいわね」
ちょっと照れたウェンディ。
「なんだよケビン、俺様には守ってやるとは言わねぇのかよ?」
「ヘスティア様には恐れ多くてそんなことは言えませんっ」
ウェンディは恐れ多くないのか。しかしどこに行ってもウェンディだけ呼び捨てにされるな。
「子供のくせにそんな話し方すんなよ。可愛くねーぞ」
「アーパス様は水の神様なんでしょー?ここに居たらアクアは雨降らないのー?」
「普通の雨は降る。加護の雨は降らない。でも大丈夫。何かあったらセイが助けてくれるから。クラーケンも倒してくれた」
「あれはフィッシャーズ達がやったんだろうが」
「セイがいなかったら無理」
そんな言い方をしてやるんじゃない。俺は何もしてないぞ。
そして晩ごはん。出てきたのはベーコンを主体とした料理だ。今冬だし俺が好きだから作ってくれたのだろう。
「どうセイくん」
「いつもながら格別に美味しいですよ」
「だって。良かったわねラーラ」
「え?」
「このベーコンはぁ、わたしが作ったの」
「えーっ、ラーラがこんなに美味しいベーコン作ったんだ。すごいじゃん」
「エヘヘへへっ」
「セイくん、ラーラをお嫁さんに貰ったら毎日でもこれが食べられるわよぉ」
「それいいですねぇ」
「でしょう。後10年もしないうちにちょうど年頃になるしぃ」
「だっ、だめよっ。セイはわたしの下僕なんだからねっ」
「ディアっ、余計な事をい言うなっ」
「セイ、俺様を差し置いて他の女を嫁にもらおうとかいい度胸してんじゃねーかよ」
「私はセイの女。ラーラは二号」
お前らはいったい何を言っているのだ?
「ラーラ、競争相手は女神様よ。頑張らなくっちゃね」
「うんっ。ラーラはハムもソーセージも上手に作れるようになるっ」
カントがめっちゃ不機嫌だからこの話題はもうやめよう。娘を持つ父親って子供の他愛もない話でもこうなるんだな。
「奥さん、忘れてた。これはアクアのお土産。バルサミコ酢ってブドウから作られたお酢なんだ。こっちにもあるかもしれないけどいい奴だから何かに使ってみて。あと調合スパイス。これはガイヤの名産ね。シチュー用とか魚も料理用とか書いてあるから試してみて。シチュー用は子供には辛いかも」
「わぁ、ありがとうーっ」
「ギルマスには後でいいお酒を渡すね。今渡すとサカキが飲んじゃうから」
「ケチケチせずに出せよ」
「トウモロコシの酒を大量に買っただろうが。お前それ気に入ってただろ?」
「ならそいつを樽ごと出せよ」
樽を全部飲むつもりかこいつは。
「あらぁ、樽ごとなの?じゃあジョッキ出すわね」
流石だよ奥さん。蒸留酒をジョッキでいく発想は俺にはない。
ベーコン料理に舌鼓を打ち、ケビンとラーラと一緒に風呂に入るとウェンディも入ると付いてきやかった。
「何するつもりだよお前?」
「ラーラと入るのと一緒なんでしょっ。試してみなさいよっ」
「アホかっ。ケビンの教育に悪いだろうがっ。後でヘスティア達と入れっ」
ケビン、その年でドキドキするんじゃない。それに俺がいつも一緒に入ってると誤解されたらどうすんだよ。
子供二人を洗うと今度は二人で背中を洗ってくれる。風呂は一人で入る派だけどこういうのもいいよな。
そして湯船に浸かるとゴボゴボしだした。
「わっ、わっ、わっ。なんだよこれっ」
「アーパスの眷属にウンディーネっていう大精霊がいてね、今ウンディーネがやってくれてんだよ」
「えっ?今大精霊がここにいるの?」
「見えるようにしてやろうか?」
「うん」
というのでウンディーネに力を注ぐと人型になったのが見えたようだ。
「はっ、はっ、裸の女の人・・・」
ケビンは鼻血を出してしまった。君、もうそんなのわかる年頃なのか?
「ウンディーネ、ロッキューになってロッキューに」
今度は髭面の男の人になるとラーラがキャーと声をあげる。俺には平気なのに。
「ウンディーネ、男でも女でもない姿になって」
性別が関係ない人形みたいな形になった事で二人は落ち着いたのであった。
風呂から出るとさっそくラーラが
「おにーちゃんが裸の女の人を見て鼻血だしたー」
とお母さんに言いつけている。
ケビンは真っ赤になって言いつけたラーラを追っかけ回した。
「セイ、うちの子供に変な事を教えんなっ」
「違うってば。大精霊のウンディーネを見ただけだよ。ウンディーネ、出てきて」
と、カントに姿を見てもらうとまた女型だったのでカントは驚いてガン見する。
「何を見とれてるのかしら?」
ドスうっ
生身で奥さんの肘鉄を食らったカントは悶絶していた。
女神ズとオルティアはサカキと奥さんに飲まされたのか酔って寝ている。こりゃ風呂は無理だな。順番に抱っこして寝かせに行き、子供達にはホタルノヒカリを見せながら寝たのであった。
「セイくん」
「はい」
「ちょっと話があるんだけど」
こういう切り出し方をされるとなんか怖いな。ウンディーネの事を怒られるんじゃなかろうか?
「ドラゴンの涙の事なんだけど」
ほっ、違ったようで良かった。
そして奥さんの話を聞いて驚くセイなのであった。