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オーガ島

「随分と大物貴族の依頼を受けたんだな。しかし、オーガに襲われたならもう命はないだろうな。助けに行くだけ無駄じゃねーのか?」


「護衛は全滅したらしいけど、娘は拐われただけの可能性は残ってない?殺すならそこで殺してるよね?」


「そうかもしれんが・・・」


「オーガって人を喰う?」


「食うぞ」


タマモの話では殺されただけで食われてなさそうなんだけどな。

 

魔物の事はよくわからないのでギルマスに魔物図鑑というものを見せてもらう。オーガってイメージしていた鬼とはぜんぜん違うな。人っぽい形はしているけど獣だなこれは。どちらかというと類人猿みたいな見た目に角が生えている。


「知能は高い?」


「いや、魔物だからそうでもない」


「オーガ島の情報はある?」


「場所はわかるが情報は無い。奴らはあの島から出てこないから行くことも無いんだ」


ふむ。オーガ島に拐われたのとは違うのかな?しかし海岸で臭いが途絶えた以上他に手掛かりは無い。


「ありがとう。違うかもしれないけど一度見てくるよ」


「ならついでに漁師の情報がわかったら教えてくれ」


「了解」



しかし、オーガ島のオーガ退治か。まるで桃太郎だな。


クラマぬーちゃん、あとは・・・


チラッとウェンディを見る。


「なによ?」


うん、ウェンディもいるな。


「よし行くか」


昔話よりメンツはサカキが追加されているけど気にしない。


ぬーちゃんに空を駆けてもらって鬼ヶ島ならぬオーガ島へひとっ飛び。


「地図だと近いけど、思ってたより距離あるね」


ひとっ飛びでは着かず、結構遠くまで来てオーガ島を発見。そこそこ大きな島で山が二本の角の様に見える島だ。


漁師はここより遠くへ漁に行かないと魚が捕れないのか。大変だな。この世界の船は手漕ぎと帆船だからな。


注意深く島に降りたにも関わらずオーガに襲われた。


「うじゃうじゃいやがる」


サカキはぶん殴って倒す。今日はクラマも参戦しているが羽うちわは使わずに宙を舞いながら刀で倒している。拐われた娘がどこにいるかわからないから風で一気に倒せないのだ。同じ理由でぬーちゃんにも毒を撒くなと言ってあるから魔石回収に徹してくれている。


「おい、ウェンディ何してんだ?」


「このカニ食べられるかな?」


砂浜にいるちっこいカニを棒で突付いてそう抜かしたウェンディ。参戦するなとは言ったけど何をしているのだ君は?


「お前、ちょっとは戦ってる皆に気を使えよ」


「何よ。セイもなんにもしてないじゃない」


「見守ってるだろ」


「私も見守ってるわよ」


カニを見守るんじゃねぇ。


オーガを倒すと魔石になるのだが、時々肉になるやつもいる。肉になると言うことは食えるのだろうか?


捨てるのももったいないので一応とっておく。


「あらかた片付いたな」


ワラワラ出てきてたオーガもぱたっと出なくなった。


「飯にするか」


「これ食べてみる?」


ということでオーガを試食。焼いて食べてみよう。


サカキは鬼火で焼いていき、セイは狐火でじっくりと焼いていく。


サカキがまず食ったけど味は悪くないみたいだ。が、硬いらしい。セイも焼けた肉を食べてみる。


「こりゃダメだわ。歯ごたえがありすぎる」


オーガ肉は硬いゴムを噛んでいるような歯ごたえ。いつまでたっても噛み切れない。


「ベッ」


「ウェンディ、汚いだろうが」


「じゃ、どうしろっていうのよ?」


確かに噛み切れないし飲み込めないから吐き出すしかないけど。


「ワシもこれはいらんの。どれ、そこのカニを餌に釣りでもしてみるか」


ひょうたんに戻って竹竿を持ってきたクラマ。カニを捕まえて岩場で釣りをするようだ。



「おっ、タコが釣れおったぞ」


「うわ、きっしょ・・・」


クラマの釣ったタコを見て顔をしかめるウェンディ。


「なんじゃとーっ。貴様には食わしてやらんからなっ。おい、砂婆。ちょっと来てくれ」


「なんじゃ騒々しい」


「こいつを使って何か作ってくれ」


「おや生きたタコかい。珍しいね。先に絞めておくれ」


クラマからタコを受け取ったサカキは岩場にベシャっと投げつけた。哀れなタコは一撃で真っ白に変わりお陀仏だ。


「ほらよ」


「セイや、何か作って欲しいものはあるかの?」


「酢ダコ以外。煮物か唐揚げかな」


「これ、クラマ。もう少し数を釣っておくれ。1ハイじゃ足らんじゃろ」


「わっ、私はそんな気持ち悪いの食べないからねっ」


「ならそこらにいるカニでも食っておれ」


そう言われたウェンディはブゥと膨れてカニを捕まえだした。ハサミに挟まれてキーキー怒るウェンディ。桃太郎のお供のくせにサルカニ合戦を始めやがった。。


「お前、そんな小さいカニなんて食うところないぞ。捕まえるならもっと大きくないと」


「だってこれぐらいのばっかりじゃない」


「サワガニなら揚げたら食えるけどコイツらはどうなのかなぁ?食中毒を起こすやつもいるらしいし」


「食中毒?こいつら毒をあんの?」


「俺も海育ちじゃないからよく知らないんだよ。まぁ、お前は毒耐性ついたらしいし大丈夫じゃないか?」


そう言うと捕まえたカニをベッと投げたウェンディ。神の所業とは思えない。


「なんか捕ってきてよ」


「ヤダよ。俺はタコを食うんだから。オーガの肉ならあるぞ」


「いらないわよ」


「ならタコ食ってみろよ。唐揚げとかお前ガツガツ食うと思うぞ」


「美味しいの?」


「食えばわかる。オーガの肉やそこらにいるカニよりは確実に旨いから」


ウェンディとそんなやり取りをしている間にタコは数ハイ釣れたようで砂婆は里で調理に入ったようだった。


しばし待つとまず唐揚げを持ってきてくれた。サカキ達は日本酒と茹でダコから始めるようだ。


「本当に美味しいのね?」


「砂婆が作ってくれたもので不味かったものあるか?」


「な、ないけど」


「なら黙って食え」


恐る恐るタコの唐揚を口に入れるウェンディ。


俺も食おう。お、結構な歯ごたえがあるけしっかり味が濃くて旨い。


ガツガツガツガツ


ウェンディは一口齧った後、がっつきだした。


「おかふぁりっ!」


その唐揚げサカキ達の分もあったんだぞ。


「カッカッカッカッ、どうじゃワシの釣ったタコは旨かろう」


「うふふぁいわね。もっほ釣りなふぁいよ」


「まだ他のも出てくるからそれを食えばいいじゃろ」


「セイ、ダイコンと煮てやったぞ。タコの桜煮じゃ」


「これこれ。歯ごたえがあるのも旨いけど、砂婆が煮た奴は特別に旨いよね」


「そうじゃろうそうじゃろう」


むちむちで柔らかくて甘いタコ。めちゃくちゃ旨い。


「ほれ、タコ飯じゃ。これで足りるかの?」


ウェンディは桜煮もタコ飯もがっついているがまだ食いそうだな。


「砂婆、じゃがいもでも揚げてやってくれる?串切りの簡単なやつでいいから」


「セイは小娘に甘いのぅ。今から尻に敷かれているようじゃ先が思いやられるわい」


誰が尻に敷かれてるんだ。子供の面倒見ているようなもんだぞ。


サカキ達は焼酎に切り替えて桜煮をつまみに楽しそうに飲んでいる。ここだけを見ていると拐われた娘を探しにきた一行とは思えないな。ぬーちゃんは小さなカニをバリバリと食っている。意外と旨いのかもしれん。


「セイ、夜も探すのか?」


「いや、知らない場所だし夜明けからにしよう。今更慌ててもしょうがないしね」


到着した時に襲いかかってきたオーガに拐われたのならもう手遅れだ。とっくに食われているだろう。オーガには知性の欠片も感じなかったからな。


それにぬーちゃんが臭いが違うと行っていたから拐われたとしたら別の魔物だ。夜明けに島を探索して他に手掛かりがないか調べるしかない。


飯を食い終わったあとサカキとクラマはひょうたんに戻らなかったもののガーゴーと寝やがった。オーガに襲われたらどうすうんだまったく。


ぬーちゃんの上でウェンディも寝てるし俺が見張りか?


セイは式神を出して見張りと島の探索に飛ばしてぬーちゃんにもたれかかり、ベタ凪の海に映る月を眺めた。


暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものだ。先日までの暑さが嘘のように涼しくなり半袖だと少し肌寒いぐらいだ。


ちっ、見張りの式神に魔物の反応か。


サカキとクラマを起こそうかと思ったけど、明日も戦ってたもらわにゃならんしな。


「クラマのじっちゃん。ちょっと借りるわ」


セイはガーゴーと寝ているクラマの刀を抜き近付いてくる魔物に向かっていったのであった。



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