ちょっと違う意味
翌朝、ヘスティアの服を選んでいく。
「本当に着るのかよ?」
「別にそのままでも構わんけど、お前が神様だとボッケーノの住民にはバレる。その時に裸の神様として認識されて男共からエロい目で見られるからな」
「ヤキモチか?」
「違うわバカ。エロ神とか呼ばれていいならそのままでいけ。そのうちヘスティア像は裸の像に作り変えられるからな」
「やめろよっ。ちゃんと今は神服を着てるだろうがっ」
今は?と皆がキョトンとする。
「いいから早く着ろ。長いスカートかスボンを履け。それにボッケーノでは肩車とかしないからな」
「なんでだよ?」
「顔見知りも多いし、これからもよく来るからに決まってんだろうが」
「ウェンディやアーパスは顔見知りがいてもするだろうがよ」
「二人は子供をあやしているようにしか見えんがヘスティアは違うだろうが」
「どういう意味だ?」
「お前は胸があるだろうが。周りからもちゃんと女性として見られるからだ」
「ちょっとぉ、わたしは女性に見えないっていうの?」
「そうだ。お前とアーパスは子供にも見えるんだ」
「わたしは問題ないのね。じゃあ抱っこして」
「歩ける時は歩きなさい」
「でも知らないところだから手を繋いで。不安」
仕方がないのでアーパスと手を繋ぐ。本当に子連れに見られるかもしれん。
「オルティアはなんか疲れてるけどどうした?」
「夜中起きないからチーヌに怒られて朝までスクワットさせられてたのよ」
とパールフが呆れて言った。爆睡してたから知らなかったわ。
「酷いんですぅ。もう足がパンパンです」
「じっとしてたらすぐにウトウトするからだろうが」
「ウトウトなんてしてませんっ」
「嘘つけっ。スクワットしながらでも寝てコケただろうが」
確かに防具とかにドロ付いてんな。
足がパンパンで歩けませんと言ったオルティアにヘスティアは火の玉を近付けて門まで先に走らせたのであった。
「な、チーヌ。あいつのもう無理ですは嘘なんだよ」
「了解。短剣の稽古はみっちりやってやる」
オルティアは俺達に慣れて甘えているのかもしれん。なんやかんやで皆が構うからな。それが嬉しいのかもしれんな。
貴族用の門から並ばずに入国。
「特別ランクとSがいると楽チンだな」
と、アンジェラは関心する。冬だと言うのに結構な人が並んでいたのだ。
「まずビビデとバビデの所に行くね。その前に姫様に会えるかどうか聞きに寄っていいかな?」
「末っ子姫様だっけ?そんなに簡単に会えるものなのか?」
「一応、城への入門許可は持ってるんだけどね、勝手に入るのもなんでしょ」
「は?城への入門許可証?」
「姫様邸へ直接来ていいとは言われてるんだよ。でも小さいのにもう公務に就いてるみたいだから忙しかったら悪いし」
「お前なぁ、姫様邸に直接行けるってボッケーノでどんな身分もってるんだよ」
とシーバスに呆れられるけどそんなものは無い。というか身分は冒険者しかないのだ。
拭いて達に街の建物とか色々と聞かれるけど何も知らない。そういやボッケーノに来ても観光とかしたことないよな。
ぞろぞろと王城前に来て門番に許可証を見せてマリー姫様に会える日があるか聞いてきてもらう。
「本当にあんな簡単な聞き方で予約取りに行ってくれるんだな」
「初めての時は大揉めしてね、騎士団と乱闘になったからぬーちゃんの毒で痺れさせて、護衛隊長にはヘスティアにバチ当ててもらったんだよ」
「は?何をやってるんだテメーは。よく死罪にならなかったな」
「まぁ、その後は仲良くなってね。今に至るわけだよ」
と、これまでの経緯を話していると伝令の者が馬で帰って来た。
「どうぞ、姫様がお待ちでございます」
「え?こんなにぞろぞろいるから後日で良かったのに」
「いえ、ぜひ皆様でお越し下さいとの事でございます」
「だってさ、みんな付き合えよ」
「マジかよ・・・」
「私は一介の防具職人だぞ」
「アワワワ、私なんてただの貧乏冒険者ですよぉ」
「本当に全員で行っていいの?」
「はい」
ということで皆で姫様に会いに行くことになってしまった。ホタルノヒカリを渡すだけなんだけどな。
皆キョロっキョロしている。オルティアはカチコチになってチーヌの腕にしがみついている。下水道と同じパターンだ。チーヌがオルティアを捨てていったら面白いのに。
「どうぞ」
と、姫様の部屋の扉を開けられた。皆は平服する準備をしているなか、
「セイーっ!早かったではないかっーー」
と、ビスクマリーがセイの胸に飛び込んで来た。
「姫様、お久しぶり。元気だったか?」
「マリーと呼べと行っておるじゃろうが。今回はこんなにたくさん連れて来てくれたんじゃな。ではあちらに行こう」
と、手を引いて応接室に連れて行く。護衛騎士達も咎めもせずに見ているだけだ。
(おい、姫様って本当に子供じゃねぇか)
(うん、セイはやっぱりあれぐらいの娘が)
ダーツ、パールフ、聞こえてんぞ。
爺もすぐさま挨拶に来てくれた。
「よくご無事にお戻りなさいました」
「ごめんね、突然の上にこんなにたくさんで来ちゃって」
「いえいえ、姫様は大変お喜びになられております。今夜のご予定はお決まりですか?」
「まだ正式には決めてないけど」
「それでは皆様の部屋をご準備させて頂きますので」
ということで全員で姫様邸に泊まることになってしまった。
応接室でお茶を入れてもらいながら皆を紹介していく。
まずは女神ズから。
「ウェンディ、ヘスティア、アーパス。名前の通り3人は神様だ。こちらはフィッシャーズ、アクアのSランク冒険者。同じくアクアの防具職人のアンジェラと、駆け出し冒険者のオルティア。皆でボッケーノとアネモスに来たんだよ」
「セイ、神様とは?」
「ん?神様は神様だよ。ヘスティアはボッケーノの神様だ。美人だろ?あのアクセサリーもしているじゃん」
「やめろよぉ〜。人前で美人とか言うなよぉ。セイが俺様の事を好きなのがバレるじゃんかよぉ」
いつそんな話をしたのだ?
「セイ、その話は真か?」
「真だよ。今は皆と一緒に飲み食いするのに力を落として見えるようにしてあるんだよ。力を戻すと見えなくなるぞ」
ビスクマリーと爺はバッと跪き、ヘスティアに守護のお礼とお祈りを捧げた。
「いいってばよ。普通にしろ普通に。堅苦しいのは嫌いなんだよな」
「ヘスティア様、寛大なお言葉ありがとう存じます。どうぞこちらはご自身の部屋のようにお使い下さいませ」
「だってよ。セイ、俺様と一緒にここに住むか?」
「アホか。気を使ってそう言ってくれたんだ。俺にはアネモスに家があるだろうが」
「セイ、ヘスティア様とどういう関係なのじゃ?」
「こいつはな、俺様と一生一緒にいる約束をしてんだ」
「セイ、どういうことよっ。わたしにそう約束をしたんじゃないのっ」
「ウェンディもヘスティアもずっと一緒にいるだろうが。アーパスもそうだろ?」
「そうだけどっ」
「ならいちいちグジグジ言うな。嫁かお前は」
「いつ誰がセイの嫁になったのよっ」
「当たり前だ。なってないのにしょうもない事でグチグチ言うな。姫様も困ってんだろが」
「わたしはセイの女」
「アーパス、こんな時にいらんことを言うな。子供の情操教育に悪いだろうが」
「冗談」
プリプリ怒るウェンディを放っておいて姫様にお土産を渡す。
「今開けちゃダメだよ。これはホタルノヒカリといって日に当てると光らなくなるから。暗闇だと3年くらいは光って綺麗だから夜に箱を開けてね」
「ホタルノヒカリとはなんなのじゃ?」
「魔物が出したアイテムだよ。結構珍しいものみたいだからね。爺にはアクアの蒸留酒とワイン、ウラウドのトウモロコシのお酒。それにスパイス各種。ガイヤはスパイス天国でさ。コックさんにでも渡してなんかつくって貰って」
「いつも私めにまでありがとうございます」
「アクアは飯も酒も上手くてね。服とかもカラフルで色々あるしいい街だったよ」
「そうですか。やはり国が違うと色々と違うものなのですな」
爺と話していると姫様はフィッシャーズ達から冒険譚を楽しそうに聞いていた。それは夜まで続き、夕食後にホタルノヒカリを出してまた話をきくのであった。
「セイ様、明日でございますが前王妃様とご面会をしていただくことは可能でございますか?」
「姫様のおばぁちゃんて事?」
「はい。長年病に臥せっておられたのですが、セイ様に頂いたポーションを試したところ復調なさいましてただいまリハビリをされておられます」
「そうなんだ」
「姫様があまりにもセイ様のお話をされるものでモリーナ様も一度お会いしたいと申されておるのです」
「わかった。お話しするぐらいなんだよね?」
「はい。ではお伝えしておきますので宜しくお願い申し上げます」
フィッシャーズ達の話をたくさん聞いて興奮し過ぎた姫様はもうここで寝ている。フィッシャーズ達は違う部屋に寝に行き、女神ズも寝ていた。
姫様を抱っこして隣のベッドに寝かせてセイも寝ることに。
いつものようにウェンディの隣に寝転ぶ。
「わっ。脅かすなよ」
ウェンディが目を開いてこっちを見ていた。寝ていると思った人が無言で目を開けているのは怖い。
「どうしてヘスティアに一生ずっといるとか言ったのよ」
「またその話かよ。俺がウェンディを元に戻せなかったらの話だ。元の世界に帰れんくなったら必然的にそうなるだろうが」
「違うっ。わたしと先に約束をしたんじゃないのっ」
「お前とは違う約束だろ?」
「同じでしょっ」
「俺はお前を神に戻せなかったら一生守ってやると言ったんだ。何回も言わせんな恥ずかしい」
「え?」
「ヘスティアとアーパスは神に戻せる。あいつらは飽きない限りずっと一緒にいるつもりだろ?お前は神に戻してやれんかもしれん。そうしたらお前は一人で生きていけないだろうが。風も出せなかったら自分を守ることも出来ないだろ?」
「う、うん」
「だから俺がお前を守って面倒をみると約束をしたんだ。それでも不服なのかよ?」
「ううん」
「なら下らん事でいつまでもグジグジ言うな。ほら、妖力流すぞ。手の上に頭を乗せろ」
ぽすっ
手に頭を乗せろといったのにそのままくっついて来たウェンディ。セイはそのままキュっとウェンディを抱きしめて妖力を流すのであった。