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アクア出発

翌朝出発を告げると山程ケーキ類を用意してくれていて、担当者らしき人が挨拶に来てくれた。


「デザート担当の責任者をしておりますカヌランと申します」


「いつも美味しいケーキをありがとうございます。皆喜んでバクバク食べてますよ」


「こちらこそアーパス様と女神様に喜んで召し上がって頂けて光栄でございます。それにSランク冒険者出身地の新しい宿のお手伝いまでさせて頂けるようで」

 

「そうなんだよ。多分教えて貰う相手は素人だと思うけどお願いできるかな?」


「ハイ。少々厳しい指導になるとは思いますがやる気のあるものであれば何とかなります。宜しければパンも教えさせて頂きますので」


「それは助かるよ。パンを捏ねる魔導具とかも揃えるから」


「あれは結構なお値段しますよ」


「ダンジョンから取って持ってるから大丈夫だよ。多分市販されているものの原型となったやつだと思うんだよね」


「今お持ちでらっしゃいますか?」


「あるよ。見てみる?」


と、ぬーちゃんに頼んでパンを捏ねる機械とオーブンを出す。


「これは・・・」


「古くて使い物にならない?」


「い、いえ。文字は読めませんがかなり細かく設定が出来るようです。これはパン生地もケーキ生地も作れるのではと思います」


「なら使えるってことだね?」


「はい。十分過ぎる物です。羨ましい限りですね」


「宿のは違うの?」


「動くと止まるしかスイッチがありませんので結構手間暇はかかります。と言っても全て魔導具ではできませんので最終的には職人の感覚で調整しますから、その感覚を覚えるのには良いのですけれども」


「これいる?」


「は?」


「いくつかあるんだよ。お世話になってるからいるならあげるよ」


「そっ、そんなこんな高価な魔導具を頂く訳には参りません」


「別にいいよ、業務用とか自分で使わないし。業務用のミキサーとか泡だて器もあるからそれもあげるね」


と、魔導具を渡して、古代語を訳しておいた。


「古代語をおわかりになるのですか?」


「俺は神様のお守り役だからね」


と訳のわからない理由を言うと流石ですと納得してくれた。


「セイ、もしかして宿の指導を頼んでくれてあったのか?」


「そう。村で醤油とか酒の製造も予定してるだろ?この宿に協力してもらうからここにも卸してね。アーパス御用達宿として提携したらいいと思うんだよ。魚とかも直で卸せる交渉もしたらいいかなと思ってね。養殖が上手く行けば冬でも魚卸せるだろ?」


「養殖とは何でしょうか?」


「魚を飼うようにしようかと思ってるんだよ。そうすれば不漁の時でも安定して魚が手に入るし品質も安定するからね。お客さんが楽しみにしているのに魚はありませんとか申し訳ないから」


「こちらのコック長にも伝えておきます。ぜひ成功させて下さい」


「うん、まだ先の話だけどその時は宜しくね」


と、根回しをしておく。高級魚の売り先確保は重要なのだ。




「セイ、お前は商売人でもやってたのかよ?」


「いや。ちょっと知ってただけ」


祓い屋を始める前に結構商売の事は勉強したのだ。まさか実践を異世界でやるとは思っていなかったけど。


出発の挨拶をアンジェラにしに行く。


「おう、気を付けてな。機会があれば私もボッケーノの職人に会ってみたいものだな」


「じゃ、一緒に行く?」


「え?」


「でも店があるから無理か」


「片道1年くらい掛かるのだろ?」


コソッ


(寄り道していくけど、3日くらいで行けるよ)

(なんだとっ?)

(向こうで滞在するから帰ってくるのは半年先くらいにはなると思うけど)


「よし、今は仕事を受けていないから一緒に行こう」


「えっ?」×フィッシャーズ


こうしてアンジェラも連れて行くことになった。バビデの技術とアンジェラのデザインセンスが合わされば凄く売れる防具が出来そうだ。


そしてギルドにも挨拶に行くとコームがいた。今から依頼の仕事に向かうみたいだ。


「コームさん、ご無沙汰してます」


「貴様か」


「はい。頑張っておられるようですね」


「貴様の情けに礼は言わんぞ。Cランク冒険者になるのは自分の意地だ」


「Cランクになっても冒険者を続けるつもり?」


「それはない。自分の年齢では冒険者として大成するのは無理だ。それにもう本部へ戻る気もないしな」


「どうすんの?家族がいるんでしょ?」


「お前にそのような事を心配される筋合いはない」


「そうだね、余計なお世話だったよ。コームさん、若いパーティメンバーの教育宜しくね。これからアクアのギルドを背負って行くような人材らしいから。俺達はもう出発するからこれ餞別にあげるよ。いざというときに使ってね」


「これ・・・」


「この前、ランバールさんとジョーンズさんからレベッカのお礼を言われたよ。そう言うことなら初めからあんなやり方せずに普通に言ってくれれば良かったのに。じゃ頑張って、メンバーが呼んでるよ」


「こっ、これは預かっておく」


「うん、本当にヤバい時はちゃんと使ってね」


と、コームを送り出した。



「セイ、コームになんかやらせるつもりか?」


「どうだろうね。まぁ先の話だよ」


とシーバスに返事をしてギルマスに挨拶をしたのであった。



アクア王都を出て街道を外れて森の奥の方へ。


「こんな道を通るのか?」


「あまり人に見られたくないからね。さ、ここら辺でいいかな」


人目のつかない場所で飛行機を出して皆で乗り込む。何だこれはと口をパクパクさせるアンジェラには後ろの座席でシーバス達に説明をしてもらうのであった。



「ウェンディ、絶対になんにも触るなよ」


「触らないって言ってるでしょっ。この小姑っ」


後ろに乗れと言うのにしつこいウェンディは副操縦席というのだろうか?隣に座りやがった。


もうウェンディが何かするんじゃないかと気になって仕方がない。操縦しながらチラチラとウェンディを見続け飛んで行く。


ウェンディは二人きりになると自分を何度も見るセイに満足気だった。



わずか数時間でウラウド近くに到着。ここからは陸路で一泊して翌日には到着するだろう。



「野営で一泊して、ウラウドで一泊してからボッケーノに行くかアネモスに行くかなんだけどどうする?時間はほとんど変わらないと思うんだけど」


「どちらでもいいぞ」


「ならアネモスに先に入っていいかな?カニを仕入れてアネモスのギルマスとか連れて温泉に行きたいんだよね」


「温泉?」


「ヘスティア温泉とでも言うのかな?湖全部が温泉になっているところがあるんだよ。そこでカニ鍋食べながらちょっとのんびりする?それとも先に試練を終わらせてから行く?」


「試練はどれくらいで終わるんだろうな?」


「前の時はダンジョンの中をぬーちゃんで走って最奥まで往くのに一週間くらいかかった。あれからダンジョンが成長しているからどれぐらいかかるかわかんないや」


「そこのダンジョンのお宝はなんだ?」


「基本は鉱石。お宝は宝石だよ」


「なら試練を先にやるか」


「アネモスの未調査ダンジョンは中がどうなってるかは知らないけど、お宝は金、プラチナ、ピンクゴールドとかだと思う」


「そんなの出るの?」


「まだ俺達とアネモスのギルマスしかしらないけどね。ちなみにオーガ島のダンジョンは魚が捕れる。魔ギョロとかもね」


「他は何がある?」


「中級者向けのは分かんないけど、初心者向けのはコカトリス、オーク全種、ミノタウロス2種だよ」


「ウハウハじゃねーか」


「やりすぎるとアネモスのダンジョンは何処も何も出さなくなるからね。程々にやらないとダメだよ」


「ミノタウロスとか狩り過ぎたらアネモスの他のダンジョンも何も出さなくなるのか?」


「そうだよ。ダンジョンは人間を識別してるんだと思う。近くにあるダンジョン同士は情報を共有してるらしいよ」


「初めて知ったぞ」


「ダンジョンの詳細は伏せろと言われているから総本部にも何も報告してないからね」


「他にもあるのか?」


「シーバス達に話していいか一応確認するけど、ヘスティアの試練のクリアと未調査ダンジョンの依頼を完了してからになるかな」


「勿体付けやがってよ」


「それだけの情報ってことだよ」


「私のアクセサリーが先」


とアーパスがボソッと言うのでボッケーノが先になってしまった。シーバス達が試練を受けている間に先にアーパスのアクセサリーとマリー姫様へのお土産渡すとか先にするか。


途中で野営をして寝る時に予定を考えるセイなのであった。




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