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ピリリリリっ


「終わったから迎えにきて」


「了解。その店で待ってて」


アーパスからの電話だった。


「じゃ、皆を拾いに行くか」


思ってたより早くに終わった服選び。ワイン作りの青年にそのうち醸造所に行くことを伝えて店を出た。



「早かったな」


「まだ冬のばっかりだったの」


春物はポチポチとしか出てなかったようだ。それでもなんかいっぱい買ってあるけど。


「セイ、女神様たちが湯水のようにお金使うんだけど?」


と、節約家のパールフが言う。


「別にいいよ。お金の使い道はコイツらの買い物とサカキ達の酒とかしかないから」


「あんたはそれにしても使う金額が多すぎるわよ。セイはいつも同じ服だよね?」


「着替えてはいるけどね。別になんでもいいんだよ俺は」


「おしゃれなの買えば良いのに」


「一応、パーティ用のは作って持ってるぞ」


「そんなのに出たりするの?」


「結婚式用に作ったんだよ」


「結婚式って何?」


「神様に結婚しますから宜しくねって報告するようなやつ。ずっと愛し合いますと誓うんだよ」


「へぇっ。誰がそれをしたの?」


「結婚式をしたのは鬼の王様だよ。そいつらが住んでる島にも行くから紹介するよ」


「私が二人の結婚を認めたのよ」


フフンと無い胸を反らすウェンディ。


「ダーツとパールフも結婚式するならアーパスにやってもらったらいいよ。場所はどうするかだね」


「その人達はどこでやったの?」


「鬼達の住む島に教会というか神社ってのを作ったんだ。アクアなら教会でやってもいいとは思うけど、村に教会を作ってもいいかもしれないね。海が見える教会とかいいんじゃない?」


「教会なんて勝手に作ってもいいものなの?」


「さぁ?でもアーパスがいるから問題ないでしょ」


「あっ、そっか。神官とかは?」


「どんな決まりがあるか知らないけど誰かやれば?お祈りするだけの場所なんだから別に神官は居なくても良いと思うけど」


「そっかぁ。教会かぁ。それを建てるのも私達でお金出さないとダメね。寄付とか集まるわけないもん」


王都の教会に言って建ててもらうのも有りだけどなんか面倒くさいな。


「分かった。教会は俺がお金出すよ。儲けを出す施設じゃないしね。俺達の村の拠点として建てる事にしたら良いでしょ?」


「えっ?お金出してくれるの?」


「土地は提供してね」


「それは大丈夫だと思う」


「アーパスだけ何だよそれ、ボッケーノに俺様のも建てろよ」


「何でだよ。ボッケーノはほとんど王都とあの領主街にしか行かないだろうが」


「アーパスだけズルいじゃねぇかよ」


「お金貯まったらな」


「もちろんわたしのが先よねっ」


「ウェンディのはオーガ島にあるだろうが」


「大きなステンドグラスの付いた教会がいいのっ」


「どこに建てんだよ?」


「お城の中」


「アホか。お前はまず神に戻ってからだ」


「いつになんのよっ」


「無理かもしれん」


「キィーーーーっ」


と、冗談っぽくセイは言ったが本当に無理かもしれないのだ。アネモスは今ウェンディの風をどこまで欲してくれているだろうか? 全く欲していなかったら当分無理だろう。エネルギー充填の問題もあるし。


「私の教会建ててくれるの?」


「村の教会だから王都の教会みたいに大きくしないぞ。村の人がちょっとお祈りに来るぐらいだろうからな」


「うん、でもセイが作ってくれるなら小さくても嬉しい」



いつもの飯屋に到着するとサカキ達も出てきた。


注文をし終わった頃にギルマスもやって来たので乾杯して飲み始める。


「ギルマス、コーム頑張ってたよ」


「真面目に依頼を受けているがそうなのか?この前のネズミ討伐を見に行ったんだよな」


「うん。見られたくないかもしれないから声をかけなかったんだけどさ、息子ほどの新人と上手くやってたよ。あれならちゃんとCに上がれると思うよ」


「そうか。俺はてっきりこんなことをやってられるかと投げ出すと思ってたんだがな」


「パーティメンバーに恵まれたんじゃないかな。あれはギルマスが組ませたの?」


「まぁな。未知数だが初めからSを目指すと志がしっかりしている奴らでな。負けん気も強いし将来有望株だ。その分無茶をするだろうからコームを任せた。いい意味でのブレーキになるんじゃねぇかなと」


「ちゃんと細かい所まで見てるんだね」


「まぁな。そうしねぇとポコポコ死んでいきやがるからな」


「私はセイさんと神様に殺されかけてます」


「そいつは拾った新人か。殺されるってどういうこった?」


オルティアはギルマスに俺達の所業を説明する。


「はぁ?ポーション飲ましながら特訓しているだと」


「そうなんですっ。スピードが落ちたら燃やすぞって脅されて気絶するまで走らされて、無理矢理ポーション飲まされてまたそれを繰り返すんですっ。もう何十回ポーション飲んだかわかりませんっ」


「セイ、お前そんなことをしていたのか?」


「この数日間だけね。でも本当に速く長く走れるようになったよ」


「酷いですよねギルマスっ」


「ちなみにお前はあのポーションがいくらぐらいするか知っているか?」


「えっ?」


「あれはオークションに出したら一粒で金貨何十枚に、いや、100枚以上で取引されるようなものだ。世界で流通していない幻のポーションなんだぞ。それを何十粒も飲んだだと?」


「えっ?えっ?えっ?」


「オルティア、お前は幻のポーションを使って貰って神に直接特訓をしてもらっている価値がどれぐらいになると思うんだ?」


と、シーバス達も同じ意見のようだ。


「あの、その・・・」


「セイ、そんな世界中の冒険者が羨ましがるような事をして甘やかせんなと言っただろうが。明日からは俺達に任せておけ。お前は常識を知らなさすぎる」


オルティアは皆から可哀想と言って貰えると思っていたのに散々皆から怒られて、明日からと言われた特訓も今から空気椅子でやらされるのであった。


飯を食い終わり、ずっと空気椅子をさせられていたオルティアは足が言うことをきかない。


「ぽ、ポーションは・・・」


「甘えんなっ」


とフィッシャーズ達に怒られる。


「セ、セイさんおんぶ・・・」


「もう満席だ。それにお前にまた足なんて痛くないとか言われそうだしな」


「うぇ~ーんごめんなさーい。本当にもう歩けませぇん」


「シーバス達も宿に一緒に泊まる?」


「いいのか?」


「男同士で同じベッドに寝ることになるけど」


「野営の時は抱き合うぐらいの距離で寝ているからな。今更だ」


「ならチーヌかガッシーがオルティアをおぶってやれよ。本当に歩けないみたいだぞ」


「ちっ、しょうがねぇなぁ。ほらよ」


と、チーヌがオルティアをおぶる。


「私も歩けなーい」


「嘘つけっ」


ダーツに甘えたパールフもおぶれと言ってみたが照れたダーツは取り合わなかった。



宿の部屋に到着し、男連中はツバスにまず先に風呂に入れと命令されていた。


「部屋はどうする?」


「男4人にあっちの部屋を使わせるから。私達とオルティアでセイの部屋のベッド使うわね」


「了解」


ベッド一つでダブルベッド2つ分ぐらいの広さがあるから大丈夫だろう。


男連中はもう出てきたので女性達は二手に別れて入るようだ。ツバス達に先に入っていいとアーパスが言ったので次は女神ズ、最後に俺だな。


ツバス達も女神ズより先に入るのを恐縮したのか早めに出て来た。


「ウェンディ、ちゃんと着替持ったか?いつもみたいに真っ裸で出てきたらみんなに見られるぞ」


「誰が真っ裸で出て来た事があるのよっ」


とプリプリ怒って風呂に行く。こう言っとかないと着替をすぐに忘れるからな。


「セイ、ウェンディはいつも裸で出て来んのか?」


「いや、さすがにそれはないけど着替をよく忘れるからヘスティアとアーパスに迷惑をかけるんだよ」


「神様達は姉妹なのか?」


「人間とはことわりが違うからね。でも姉妹みたいなものなんだと思うよ。長女テルウスと三女ヘスティア、次女アーパスと末っ子ウェンディ。容姿はこういうふうに分かれているよね。テルウスだけ身長は普通サイズになるのかな?ここにいる3人は小柄だね」


「確かにウェンディは末っ子感溢れてるよな」


「一緒に育ったわけじゃないのに不思議だね」


「神様たちは子供の頃は一緒だったんじゃないのか?」


「いや、生まれたというより創られたと言ってたから、いきなりあの姿だったんだと思う。初めから一人きりだったらしいし」


「それが生まれた時からずっとなのよね?」


「そうだね。眷属とは話すことあったみたいだけど」


「だから皆、今セイに甘えるのかぁ」


「多分そうだと思うよ。子供時代がなかったから今子供時代をやってんじゃないのかな?」


「なるほどねぇ。半裸のヘスティア様が抱きついたり肩車で太ももを顔に押し付けたりするのってちょっとエッチだなとか思ってだけど、そうじゃないのね」


そんな目で見てたのかお前ら。


「あいつからがベタベタしてくるのはそういうのじゃないよ。エネルギー補充と寂しいのを取り返しに来てるだけなんだよ。特にヘスティアは寂しがりやだからな」


「セイはそれがわかってるから嫌がらずに甘えてさせているのね?」


「俺も子供の頃は寂しかったからね。タマモや砂婆が甘やかせてくれたから歪まずに済んだんだと思うよ」


「ふーん、オルティアはそういうの無かったのよね?」


「はい」


「でもセイには甘えちゃダメよ。女神様たちで手一杯何だから」


「わかってますよぉ」


パールフはオルティアがこれ以上セイに惹かれないように釘を刺しておくのであった。

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