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神獣ぬーちゃん

「あー疲れたっ」


餅つきして楽しく雑煮とおせちを楽しむ予定が屋台をさせられてぐったりのセイ。


「お疲れ様」


「アーパスも大変だったな」


「多分明日から外に出ると今日と同じ目に合う」


「だろうな」


「だからおんぶしてて。そうしたら話し掛けられない」


「そうかな?」


「拝まれるとは想うけど」


「ならいっそのことぬーちゃんに元の姿に戻って貰ってそれに乗ろう。怖いのと恐れ多くて近づけなくなるからな」


「わかった」


「あの、本当の女神様だとは思っていなくて申し訳ありませんでした」


オルティアは恐る恐るそう言う。


「本当の女神じゃない女神ってなに?」


「男の人の想い人のことを女神と言うんです」


は?


「てっきり皆さんはセイさんとそういう関係なのかと」


「俺がハーレムでも作ってるとか思ってたの?」


「はい。なので私もそこに加えてくれたのかと・・・」


「あのなぁ、娼館に行くのは嫌だったんだろ?なんでハーレムならいいんだよっ」


「だ、大事にしてもらえそうです。皆さん幸せそうですし・・・」


「はぁー、全く。他力本願で生きて行こうとするな」


「はい・・・」


こいつはそんな風に思ってたのか。傍から見ていたらお守りではなくそう見えるのだろうか?解せぬ。



セイはおせちの残りを食べて日本酒を飲む。はぁー落ち着くわ。


「お肉とかないの?」


「お前は昼前からさっきまで散々飲み食いしただろうが」


「新年早々怒んないでっ」


それはそうだけど・・・


「ここで焼いたら煙だらけになるから我慢しろ」


「じゃ、お菓子」


もう食い尽くしてお菓子もないのか。外に食べに行くのも宿に今からケーキを頼むのも何だしなぁ。


「なら一緒に作るか?」


「自分で作るの?」


「嫌ならパンにハチミツとかならすぐに出来るぞ」


「ちゃんとしたの食べたいのっ」


「なら作れ」


ということでみんなでプリンでも作ることに。あれならすぐに出来る。


ぬーちゃんを呼んで卵と牛乳、砂糖でプリンを作っていくのであった。出来たプリンを見ているだけで気持ち悪くなるほど女神ズが食ったのは言うまでもない。蒸すのはウンディーネがやってくれるからこれから自分たちで作れ。



ーアクア王室ー


「陛下」


「おぉ、ランバールか。久しいな。息災であったか?」


「はっ」


「今回は何用だ?」


「陛下、王室の誰かわかりませぬが宿の受付にあった宝石を無理矢理献上させたと伺いましたが本当でございますか?」


「確か、バーバラが素晴らしい宝石を見付けたとか申しておったな」


「王妃様でございましたか。それは大変な事をされましたな」


「何がだ?」


「あれは我が国アクアを守護する神、アーパス様が直々にあの宿に与えたもうたもの。それを無理矢理献上させた事は重大な過失にございますぞ」


「あれは宣伝であろう」


「いえ、アーパス様は顕現なさっております」


「ランバールも老いて戯言を申すようになったのか?」


「戯言と申されるなら結構。アーパス様は呆れてこの国を出てお行きになられました。神の加護が無くなったアクアはしばらくすると近辺に強い魔物が増えるそうにございます。私めはそれに備えて騎士団の指導に復帰いたしますゆえ」


「貴様は腰が悪くて引退したのであろう。無理をするな」


「いえ、神の慈悲により完治致しました。我が孫娘が生死の境にいたのを救って下さったのもアーパス様の慈悲によるものだと知りました。私はアーパス様がお戻りになられるまで国を守らなければなりません。王妃様には次はありませぬぞとお伝えくださいませ」


「次はないだと?」


「アーパス様の使者殿は無理矢理献上させた事を知り、大変お怒りでございました。次に同じ事をしたらアーパス様がバチを当てると」


「ハッハッハッハ。戯言にしては面白い」


「ご忠告は致しましたゆえ、ではこれにて」


セイは騎士団を統率していると聞かされてもあまりピンと来ていなかったが、ランバール・アクール。アクール家は王家に連なる家で王族並びに王城を守護する貴族であった。


セイが皆の振る舞いを終えた後に色々と話を聞き、王室が無理矢理宿の宝石を献上させた話を聞いてすぐに王妃だろうと検討が付いた。アーパスが遊びたいから国を離れると聞かされていたが我儘王妃を諫める為にアーパスが国を出て行くのは王妃のせいに仕立てあげたのだった。


これはセイ達がアクアを出た後のお話。



「今日はギルドに顔出しに行くからな」


鵺のぬーちゃんに乗って街中を歩く。すでにアーパスが本当に神だと分かった者も多いようでやはり拝まれた。


皆はぬーちゃんの事を勝手に神獣と思い込んで行く。



「こんにちはー」


「あっ、お待ち下さい。ギルマスを呼んで来ます」


とすぐに呼びに行ってくれる。


「おう、戻ったか」


「総本部にもお世話になってきたよ」


「ちゃんと行ってくれたんだな」


「総長と総務部長、後はファーブって人にもあってきたよ」


「変人ファーブか」


「そうそう。フィッシャーズが王都に来たら一緒にボッケーノとアネモスに連れて行くよ」


「帰っては来るんだろうな?」


「もちろん。その間よろしくね。魔物が増えると思うけど、一応騎士団を統率している貴族にも魔物が増えるよ伝えておいた。そこの娘があのポーションが必要だった子なんだね」


「会ったのか?」


「たまたま宿が同じでね。俺を探してるのはお礼を言うためだったと聞かされたよ。それなら秘密にしておく必要もなかったかなとか思って」


「礼をしたいだけだったのか」


「そうみたい。あのクビになりかけた本部長はいる?」


「いや、復帰するために依頼を受けて出てるぞ」


「この時期に虫の魔物は居ないんでしょ?」


「街中のネズミ退治だ。まだEランクだからそういう仕事がメインになるぞ」


はぁー、ギルド本部で偉そうにしていた人がネズミ退治か。


「もしかして下水道とか潜ってんの?」


「そうだぞ」


プライドが高そうだったのに汚れ仕事でも頑張ってんだな。


「夜には戻るかな?」


「死んでなきゃな」


「そんな危険なの?ネズミって」


「いや、下水道の中は滑りやすくてな。落っこちて死ぬ奴が結構いるんだ」


「あの人魔法は使えないよね?」


「剣もろくに使えねぇぞ。新人に毛が生えたようなやつとパーティ組んでるから苦戦してるだろうな。ランクが同じとはいえ若い奴らの方が体力、スピードもあるしよ。それに話も合わねぇだろうし」


辛い仕事環境だな。 


「どこらへんでやってるかわかる?」


と、アクアの地図と下水道の地図を見せてもらう。


「今受けてんのはここだな。もしかして行くのか?」


「ちょっと様子見にね」


「ありゃ罰の一種だから気にかけることねぇぞ」


「それでも気になるから。もしかして落っこちてたら嫌だし」


「はぁー、お前は甘すぎるぞ」


と言われたけど気になるから仕方がない。


まずはアンジェラの店に行ってウェンディ達を預ける。


「ここで待ってろ。下水道は臭いからな。アンジェラ、悪いけどここで預かってて。お金置いとくからなんか食べに連れてってやってくれない?」


「わかったよ。昨日はごちそうさま。美味しかったよあのおせち料理とか」


「口に合ったようで何より。ぬーちゃん、護衛を頼む」


「セイ一人でいくのー?」


「なんかあったらサカキ達を呼ぶから大丈夫だよ」


と、セイは一人で行こうとするとオルティアが一緒に行くと言う。


「ん?危ないぞ」


「私は修行中の身の駆け出しですからこういう仕事も覚えておいた方がいいと思うんです」


「分かった。アンジェラ、こいつに今渡せる防具はある?」


「あるよ。でも高いよ」


「いくらぐらい?」


「帽子、胸当てアームガード、脛当てのセットで銀貨70枚だよ」


「じゃ、はい。お釣りは飯やお菓子に使って。ぬーちゃんも食べるから」


と、金貨1枚渡して防具をオルティアに買った。


「こ、こんな防具を買って貰っていいんですか」


「稼げるようになったら返せよ」


「はい」


「身体で払うとかはなしだからな」


「はひ」


安いと思ってしまったのは7千円くらいの感覚だからだ。実際には70万円。結構な金額である。考えないようにしよう。



そして下水道の入り口には門番みたいな人がいるので冒険者証を見せる。


「特別ランクの方が下水道に入られるのですか?」


「新人教育だ」


「はっ、かしこまりました。滑りやすくなっておりますのでお気を付けて」


と、言われて中に入るとやはりすごい臭いだ。


「オルティアは平気そうだな?」


「はい。家のトイレもこんな臭いでした」


田舎に行くとポットントイレというか穴を掘ってあるだけなのかもしれん。


これ、狐火出したらガスに引火しそうだな?と思ってランタンを出して歩くのであった。



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