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女神

もう女神ズが本物だと皆に知れ渡っていく。次々とこちらにやってきて跪いて祈りを捧げていくようになった。


アーパスは生贄に捧げておこう。


アーパスをテーブルの上に乗せて皆の信仰心を満足させている間に雑煮を食べる。


「あれ、いいのかよ?」


「ヘスティアもボッケーノに帰ったら同じ目に合うから覚悟しとけよ」


「ゲッ、マジかよぉ」


「わたしはっ?わたしもアネモスに帰ったらあんな風にお祈りされんの?えー、どうしようぉ」


とニヤつくウェンディ。


「お前は大丈夫だからそんな心配はいらん」


「なんでよぉーーっ。アーパスなんて美術館でステンドグラスにもなってんのよっ」


「小銭恵まれるのがせいぜいだ。安心して街中をうろつけるぞ」


「キィーーーーっ」


あんこの付いた手でポカポカされるセイ。おせちと日本酒って旨いよな。と、ウェンディの攻撃をスルー。


「あの、本当に女神様達だったんですか?」 


「そうだよオルティア。ガイヤの冒険者広場でウェンディとヘスティアの炎の竜巻見たろ?こいつらが喧嘩するとあんなことになるんだよ。前にボッケーノの草原を焼き尽くしやがったからな」


「私、ずっと別の意味かと・・」


「豆のおにぃちゃん」


「なんだレベッカ?」


「私もおにぃちゃんの女神様になれる?」


「ん?女神様は人間じゃないから無理かなぁ。女神様は女神様で(世話をするのが)大変なんだぞ」


「そっかぁ、レベッカは女神様になれないのかぁ」


あまり意味のわからない会話に???となるセイ。


「セイ、味噌雑煮の餅は煮込んだ方が旨いの」 


とクラマが焼いた餅より煮込んでとろけた餅の方がいいと言う。


「そうなの?なら煮込もうか。砂婆もそうする?」

 

砂婆も煮込み餅。


「なら私もそいつをもらおうかね」


タマモもそれにするということで別鍋でクツクツ煮込んでいく。


「セイ様」


「ランバールさん、様付けはいらないって」


「ではセイ殿。いつアクアを発たれるのですかな?」


「仲間がこっちにも来てから決めるよ。フィッシャーズってパーティなんだけどね、今地元の漁村で年越ししてるんだ。フィッシャーズ達が来たら日程を決めて出発かな」


「あのSランクのパーティですかな?」


「そうそう。ここに来てからずっと行動を共にしててね。フィッシャーズ達が流行り病の素材を捕りに来てた時に知りあったんだよ」


「そうでしたか。では出発前に皆さんを当家に招待させて頂けませぬか?Sランク冒険者のフィッシャーズ達もアクアにとても貢献してくれていると聞いております」


「フィッシャーズはSに上がっても金儲けとかに走らずに国と地元の為に頑張ってたみたいだからね。そういう報告って貴族にも上がるものなの?」


「知っているものもおれば知らぬ者もおります。当家は警備というか騎士団をまとめておりましてな。そういう情報が入りやすいのです。私もその昔は先頭に立って指揮を取っていたものですが歳は取るものではありませぬな」


「ランバールさんも騎士だったんですね」


「息子のジョーンズは名ばかりの責任者でしてな。不甲斐ないものです。ハッハッハッハ」


「父上、余計なことを言わないで下さい。指揮するものが自ら剣を振るう事はありませんよ」


「国を守る騎士の方々なら一つ忠告をしておきますね」


「忠告ですか?」


「はい。アーパスは俺達と行動を共にします。神の加護は魔物を弱体化させるものなんですけど、それがしばらく降らなくなります。アクアの人々はアーパスの恵みを作物を実らせるものとしか受け取っていないみたいなので魔物を弱体化させていることを知らないんですよ。なので雨を降らせろ、やませろしか言われないのに嫌気をさしてまして、しばらく加護の雨を降らしたくないそうなんです」


「魔物の弱体化ですか」


「はい。なのでしばらくすると強い魔物や魔物の数が増えて来ると思います。冒険者だけで対応出来ない時は兵士や騎士の出番があるかもしれません」


「なんとっ」


「と言っても人間が太刀打ち出来ないくらいまでにはさせませんので。今も眷属のリザードマン達やウンディーネが代わりに強い魔物を討伐してますから」


「そうだったのですか・・・」


「一応それでも手に負えなかったりしたらこちらに連絡が入りますからヘルプに来ますよ」


「神の代わりに戦われると?」


「広範囲に魔物が出るならアーパスにやってもらいますけど、単体とかならこちらでなんとかなります。女神達はもう何百年何千年と一人でずっと頑張って来たのでこうして少しの間ぐらい遊ばせてやりたいんですよ。俺はそのお守り役なんです」


「そうだったのですか。我々は何も知らなかったのですね・・・」


「普通は神の姿は見えませんし、声も聞こえませんからね」


「今は顕現なさっておられますが」


「皆と遊べるようにわざと力を落として人間に近付けています。力を戻したらまた見えなくなりますよ」


はぁーとランバール達は感心していた。


「セイ」


とアーパスが呼ぶ。


「もうそっちに戻りたい」


と言うのでテーブルから下ろしてやる。


「抱っこ」


は?


「疲れたの」


というので仕方がなく抱っこする。拝まれ倒して疲れたようだ。


「そ、それはいったい」


「子守です」


「違う。私はセイの女」


「やめなさい」


「冗談。みたらし餅が食べたい」


「もう小さい餅が無いから大きいので作るぞ」


皆も食いそうなので残ってる餅を焼いてみたらし餡をかけた。自分用に磯辺焼きも作る。


「切って食べてね」


「当たり」


「何が?」


あ、あんころ餅も焼いたのか。アーパスとヘスティアのが当たり。他は普通の餅だった。


「いいなぁー」


「半分あげる」


いいなぁといったレベッカにアーパスは半分に切って分けてやる。お姉ちゃんだな本当に。


で、三女と四女は取り合いをしていた。ここで炎の竜巻出すなよ。


「ヘスティア、俺の磯辺焼きをやるからそれはウェンディにやれ。甘々のよりこっちの方が好きだろ?」


「へへっ、ならこれはウェンディにやるよ」


「なんでヘスティアだけなのよっ」


「お前、あんころみたらし貰っただろうが」


「それも食べたいのっ」


こいつは・・・


「砂婆、餅米残ってる?」


「今から餅米を水に浸けても夜になるわい」


「ヘスティア、違うもの作ってやるからそれもウェンディにやれ」


「何作ってくれんだよ?」


「俺が作れるものなら好きな物を作ってやるよ」


「ならドライカレーを作ってくれよ」


砂婆に聞くとご飯はあるらしいのでドライカレーを作る羽目に。おせちも良いけどカレーもね、というほど俺はおせち食ってないぞ。


「私も食べる」


アーパスも食べると言う。あー、これはみんなが食べるパターンだな。


業務用鉄板コンロを出して準備していると哀れに思った砂婆が具材を切ってくれた。今回はバターも加えて炒めて行く。辛口と甘口の両方だ。俺はテキ屋か・・・


屋台のごとくドライカレーを作るセイ。ドライカレーの屋台なんて聞いたことないぞと思いながら完成。それになぜあなた達は並んでいるのだ?貴族達も鉄板の前に並び始めていた。


まずは女神ズや仲間内に配って、並んでいる人にも振る舞っていく。途中で売り切れると泣きそうな顔をされた。確かにカレーの匂いは人を引き付けるからな。しかしご飯がもうないのだ


「支配人、キャベツとパンとソーセージあるかな?」


と、宿にも食材を提供してもらう。ソーセージを鉄板で焼いてケチャップと絡め、キャベツの千切り炒めにカレー粉で味付けてケチャップソーセージと一緒にホットドッグだ。


「ウェンディ、まだ食うのか?」

 

「当たり前でしょ?」


そしてみんな腹がはち切れるくらいにホットドッグを食べ、宿のソーセージが無くなった所で終了した。


「支配人、提供してもらった食材のお金払うよ」


「とんでもございません。あの食材は当宿で負担いたします。ちなみにあのスパイスはどちらで?」


「ガイヤのスパイス屋で調合してもらったんだよ。セイカレーって名前付いてるから商人にでも仕入れて貰って。俺の紹介だといえばわかるから」


「はい。ありがとうございます」


席に戻るとランバール達に感心される。


「いや、さすがに神の食べ物はどれも初めての味で美味しいですな」


「どれも庶民的なものだけどね。女神達はこうがっついて食べられるものが好きなんですよ」


「私は魚も好き」


「そう、アーパスは魚も好きでしてね。アクアの漁村の魚を気に入ったのでそこに魚料理を名物とした宿を建てる計画をしているんです」


「どちらの漁村でしょうか」


「ここからガイヤに行く街道から南に下った漁村です。フィッシャーズ達の出身地なんですよ。今は計画段階なので出来るのはまだ先ですけどね。ここの宿にも応援をお願いしています」


「それは楽しみでございますね。完成の暁にはぜひ遊びに行かせて頂きます」


「庶民むけですよ?」


「構いません。それもまた一興と言うものです」


上位貴族なのに偉ぶらないこの人達はなかなか感じが良くていいな。


「ランバールさんが気に入ったこの日本酒というものも村で作る予定にしていますから、この宿か漁村の宿でその内提供出来るようになりますよ」 


「それは僥倖。ワインや蒸留酒もいいですがこの日本酒というのは実に宜しい」


「そうですね。魚料理にもよく合いますから」


「レベッカはお魚あんまり好きじゃなーい」


「美味しくないか?」


「だって臭いんだもん」


レベッカは鼻が敏感なのかもしれないな。


「新鮮な魚は臭く無いぞ」


「本当?」


「豆も美味しかったろ?」


「うんっ」


「砂婆、なんか作れる?」


「セイ、あたしが作ってやるさね。洋風の方がいいだろ?」


「そうかもね」


「なら、舌平目のムニエルでもしようかね。魚は用のスパイスを出しな」


タマモが里に戻って魚を持ってくる。さばくのは砂婆だけど。


鉄板コンロにバターを溶かしてムニエルを作るタマモ。


「はい、骨は取って無いから気を付けて食べな。仕上げはこいつにしてやろうかね」


とレモンでは無くスダチをかけた。


「んーっ、美味しいーっ。パパとママも食べてみてっ」


そしてパパママ爺ちゃんも食べて驚いていた。

これはユキメが保存していた魚だ。


「こういう料理が食べられる宿になるのですか?」


「いや、網焼きや鉄板焼きをすると思いますよ。まぁ、鉄板なら今のも作れると思いますけど」


支配人はそのスパイスはどこで?と聞いて来るので同じ店の魚用スパイスですよと教えたのであった。








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