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ヤキモチを焼いた翌日に餅つき

「もうっ、頭がクシャクシャになるでしょっ」


「そうかぁ、クシャクシャになるかぁ」


そうニコニコしながらウェンディの頭をヨシヨシし続けるセイ。ウェンディは諦めてチーズコロッケを食べていた。


ご機嫌のセイは全員分のお会計をする。


「自分の分は払うぞ」


「いいからいいから。ほとんどサカキ達の飲み代だし。ヨイショっと」


寝ていないウェンディをおぶろうとするセイ。


「やめてよっ。みんな見てるじゃない」


「ん?いつものことだろうが」


「離してっ」


しつこくウェンディをおんぶしようとするセイから逃げるウェンディ。


「代わりに私がおぶさる」 


と、アーパスがおぶさってきた。


「じゃあ、俺様は肩車だっ」


「おー、いいぞぉ」 


ご機嫌のセイはアーパスを背負い、ヘスティアを肩車する。


「お前恥ずかしくないのか?」


とアンジェラが聞くがセイはいつものことだよと答えた。酔ったセイはヘスティアの生太ももが顔に当たっているのも気にしない。


明日宿に来てねと伝えて別れた後、ご機嫌のセイとヘスティア達の後を付いて行くウェンディ。なんか取り残されたような気分になる。


「アーパス、代わりなさいよ」


「あなたは断ったから権利ない。自分で歩けばいい」


そう言われてブツブツ言うウェンディ。自分も少し酔ってて歩くのも面倒になってきた。


「足痛い」


と嘘を付く。


「しょうがないなぁ」


と、セイは抱っこ紐とおんぶ紐を出してウェンディを抱っこする。


「はっ、恥ずかしいんだけどっ」


「なら歩くか?」


「嫌」


セイは前にウェンディ、肩にヘスティア、背中にアーパスと、女神に取り憑かれたかのようにして宿に帰る。


「セイさん、重くはないんですか?」


と、オルティアが聞いてくる。


「こいつら軽いんだよ。力をもっと戻すと重みなんかほとんどないし。まぁ、今は重みあるけど」


毎日、荷物ウェンディを背負ってるセイは足腰の鍛錬にもなっていた。そして宿に戻っても誰も驚きもしないのにもオルティアは驚いていた。


部屋に入ると皆を降ろしたセイは先にご機嫌で風呂にいく。女神ズを降ろした後は身体に羽が生えたように軽くなるのだ。


ゴボゴボゴボゴボ。


ご機嫌のセイは酔っていたので気持ちよくて風呂の中で寝てしまう。


「セイの奴、いつまで風呂に入ってんだよ?」


いつもは女神ズに先に入らせるセイだが今日は先に入って出てこない。


「ちょっと見てくる。ウンディーネがいるから溺れてないと思うけど」


と、アーパスが様子を伺いにいく。


「もしかして寝てる?」


と、外から声をかけるけど返事は無い。


「ウンディーネ、セイは寝てるの?」


「寝てるわよ」


「連れて来て」


とアーパスが言うとウンディーネがセイを連れて来たのでアーパスはセイにバスローブを着せた。


「ベットに寝かせに行って」


セイはウンディーネに運ばれてベッドに連れられて行った。


「やっぱり寝てやがったのかよ?これアーパスが着せたのか?」


「そう。裸で連れて来たら可哀想」


「お前、セイが裸だったのに恥ずかしくないのかよっ」


「私はセイの女だから平気」


「マジかよ・・・」


「ヘスティアも一緒にお風呂に入った事あるんでしょ」


「あんときゃ真っ暗だったんだよっ」


「そんなの私達に関係ないでしょ。私はお風呂に入るから」


淡々とそう言ったアーパスはお風呂に入りに行ったのでみんなも入る事にした。



「オルティアはあっち」


2つあるベッドルームの違う部屋を使えと言うアーパス。女神ズはセイの寝ている部屋で寝るようだ。


「私だけ違う部屋なんですか?」


「そう。あなたは別にセイのエネルギーを必要としないもの。だから一緒に寝る必要ない」


女神ズは食料からもエネルギーを摂取しているがそれでは足りない。セイの近くにいることで自然と補充されている事をアーパスはちゃんと感じ取っている。元の力が膨大なウェンディとヘスティアは直接注がれないとわからないのだ。


ウンディーネがセイをベッドの真ん中に寝かせたはずなのに一番端に寄り小さく丸くなって眠るセイ。何かから自分を守るようしているようにも見える。


「不安みたいだから私が隣で寝てあげる」


とアーパスがいつものウェンディの位置を確保し、セイをヨシヨシする。


「そ、そこは私の場所なんだけどっ」


「早いもの勝ち。セイはもう寝ているからウェンディに直接エネルギーを注がない。だからあなたがここで寝る必要ないの」


と、アーパスは場所を譲らなかった。


ぶつくさ言いながら真ん中を位置どるウェンディ。


「何だよ、ここは俺様の場所だろっ」


ヘスティアにグイグイと反対に押されて一番端に追いやられたウェンディはなんかムカムカして眠れなかったのであった。


セイは夜明け前に喉が乾いて目が覚める。


あれ?俺はいつベッドに寝に来た?


風呂に入ったところまでは記憶があるけど、その後はどうしてここに寝ているかわからない。


着た覚えも無いバスローブ。しかもなんかスースーすると思ったらパンツを履いてないし、もこもこパジャマのアーパスに腕枕をしている。


ヘスティアは布団から出て上半身は神服。ウェンディは端っこで向こうを向いて寝ているし。はて?


そっとアーパスから腕を抜き、とりあえずパンツを履くことに。


水を飲もうとするとウンディーネがムチューっと口移しで飲まそうとしてきた。


「コップから飲みたいからそこに入れて」


「せっかくお目覚めのチューで飲ませてあげようとしたのに」


「そういうのはいいから。なんか口に水を突っ込まれると溺れそうなんだよ」


「もうっ」


「あのさ、俺は昨日風呂に入ったあとどうしてた?」


「寝ちゃったからアーパスがバスローブを着せて私がベッドに運んだの」


マジか・・・


「世話かけて悪かったね」


「別にあのまま寝てても私が包んだままでも良かったのにね」


そんなことをされたら朝にはぶよぶよになってそうだ。


ウンディーネとそんな話をしているとアーパスが目を開けた。


「ごめんね、世話かけて」


アーパスには真っ裸を見られたけどアーパスは平気そうだな。


「あなたは見られてないわ・・・。私が守るもの」


なんか聞いたことあるようなセリフを言うアーパス。


「ウェンディと寝る位置を交換したのか?」


「早いもの勝ち」


そうですか。


「まだ朝まで時間あるからもう一度寝るよ」


「うん」


と、アーパスはセイの腕を引っ張って枕にして朝まで寝たのであった。



「明けましておめでとう」


ここに来てから2回目の正月だ。年越しそばは食べそこねたけど。


朝ごはんを食べた後に中庭に移動して餅つきの準備をする。


「セイさん、今から何をするんですか?」


「餅つきだよ。オルティアは餅とか知らないだろ?これは俺の国の風習でね、年明けはお正月といって餅つきをするんだよ。料理も日頃のとは違うからな」


サカキとクラマが餅をついてくれる。返し手はタマモ。砂婆はおせち料理を持ってきてからもち米を蒸していく。


雑煮も鶏ガラ、カツオ、昆布の出汁と白味噌と両方用意済。


「セイ、餅を知らぬ者も食いに来るのか?」


「多分ね」


「なら、小さい餅も用意しておけ。喉に詰まらせるとまずいのでの」


セイと砂婆は餅の丸め役。式神も出してスタンドバイOK。


「ここ、入ってもいいのか?」


と、アンジェラがやってきた。


「許可取ってるから大丈夫。今からやるからちょっと待ってて」


そして餅米が蒸し上がったので餅つきが始まった。


「よいせっ ほらせっ よいせっ ほらせっ」


3人の息はぴったりだ。


「わぁ、面白いですね」


「だろ?もうすぐ付き上がるからな」 


「はいよっ」


と、タマモが餅を台に乗せるので丸めていく。砂婆は普通サイズ、セイと式神はお団子サイズに丸めていく。


「砂婆、これ串に刺すからみたらし餡作って」


「なら普通のサイズもセイがやっておくれ。ワシにはあんころ餅も頼んだぞい」


「りょーかーい」


付きたて餅の食べ方をオルティアとアンジェラに説明する。大根おろし、きな粉、あんことか色々と用意してあるから好きに食べてくれ。


「ウェンディ、喉に詰めるなよ」


「わかってるわよっ」


「おぉ、このような催しをされておられるのですな」


支配人が様子を見に来た。


「支配人、あけましておめでとう。良かったら好きに食べていって。従業員の人にも良かったら声かけてあげて」


「はい、ありがとうございます」


そして従業員達も何だ何だと覗きにくる。宿に泊まっていたお客さんも見に来た。支配人によると年越しパーティをしていた貴族がたくさんいるらしい。通常の社交パーティと違い、純粋に家族や仲の良い者たちと楽しむパーティなのだそうだ。自宅で行う社交パーティは派閥の繋がり強化や力の大きさを見せる為のものなんだと。


餅を丸めるのは式神にやらせて、団子サイズの餅を焼いていく。もうすぐ砂婆がみたらし餡を持ってきてくれるだろうからな。


女神ズとオルティア、アンジェラと宿の人が珍しい餅をワイワイと食べていると貴族達も興味を持って近付いて来た。


「庶民の食べ物で良かったらどうぞ。まだまだたくさん作るので」


「よろしいのかな?」


と、老紳士が来たので喉に詰まらないように少しずつゆっくりと食べてねと注意をしておく。老紳士は大根おろし餅を食べて気に入ったようで、その老紳士が旨いと言った後はたくさんの人が食べに来たのだった。

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