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テッサテッチリ

「よぉ、弟が世話になってんな」


「あ、シオ」


話し掛けて来たのはシーバスのお兄さんのシオだ。


「シーバスのやつ随分と景気のいい話してやがるがあんなこと本当にできんのか?それに網元まで敵に回しやがって」


「敵に回ったかどうかわかんないけどね。シオのところみたいに個人でやってる漁師ってあんまり儲からないんだろ?」


「まぁ、網元に雇われている奴らも儲かっちゃいねぇよ。儲かってるのは網元だけだ」


「シーバスはそういうのをなんとかしたくて冒険者で稼いでたからね。今回ガイヤでドカンと稼げたからなんとかなると思うよ」


「そんなに稼ぎやがったのか?」


「宿を建設出来るぐらいにはね。フィッシャーズ達だけならはもう一生贅沢して暮らせるだろうけど、故郷をなんとかしようとするのにお金を使うみたいだよ」


「そうなのか・・・」


「ま、やりたいように任せておけば?何もやらずにずっとこのままよりいいじゃない」


「まぁな」


「あっ、そうだ。シオはフグ捕って来れる?」


「ん?毒魚なんかどうすんだ?」


「食べるんだよ。フグは身には毒がなくて内臓に毒があるから上手にさばけは美味しい魚として食べられるよ」


「本当か?」


「うん。明日捕れるなら食べたいなと思って」


「よし、明日船を借りて連れてってやる。結構近くで釣れるからな」


「朝から?」 


「そうだ。夜明け前に出るから寝坊すんなよ。うちの前で寝るのか?」


「いや、ここで寝るよ」


「了解だ。夜明け前に呼びに来るから起きてろよ」


と、明日はフグ釣りになった。


翌朝、宿の賛同者達は遅くまで飲んであれやこれやを話していたようで周りに屍と化している。寒空の中で死んでるんじゃないだろうな?



「お前達はここで寝てるか?」


と、まだテントで寝ている女神ズに聞いてみる。


「んー、そうするぅ」


と珍しくウェンディが返事をした。


ぬーちゃんに留守番を頼み、お菓子とか肉とか食材と鉄板コンロを渡しておいたので自分たちで飯を食ってもらおう。オルティアも今日はゆっくりと休ませるのに置いていく。


釣りをするのは俺とクラマだ。、


クラマはシオの言われた方向に船を進ませる。


「クラマが居てくれりゃいくらでも魚が捕れるポイントに行けるな」


「本当に釣れるんじゃろな?」


「任せとけ。いつもは捨てるフグを釣りに行くのは不思議な気分だがよ」


餌は小エビ。商品にはならないけど餌はとしては優秀だそうだ。


「随分と太い針を使うんだね」 


「普通の針だと食いちぎりやがるんだ。釣れても口に手をやるなよ。指とかなくなるからな」


フグの歯は危ないらしい。


ポイントに到着して明るくなってくるのを待って釣り開始。


底につくや否やグーンっと持っていかれる。


「思いっきり合わせろ」


そう言われたので竿を大きく煽ると物凄い引きだ。ゴンゴンゴンと暴れるのが伝わってくる。


「げっ、こんなにデカいの?」


5キロくらいありそうなトラフグ。こんなの見たことないや。


クラマも同じサイズのフグを釣る。


「時合だ。もうすぐ釣れなくなるから今のうちにたくさん釣れ」


そこから入れ食いになり、二人共10匹ほど釣った所であたりが止まった。


「次に食い出すのは昼すぎだろうな。まだ必要か?」


「いや、俺たちだけなら十分だよ」


ということで納竿。あっという間の時間だったが、クラマも強烈な引きを堪能したようで満足気だ。


シオは舟を返しに行ったのでテントに戻ると大量のお菓子はなくなっていた。



「お菓子ばっかりこんなに食べたのか?」


「だってよぉ、自分で作るの面倒じゃんかよ」


まぁ、神が自分で飯作るとか想像がつかないのは確かだ。串肉焼いたりしたことはあるけど。


「昼飯は食えそうか?」


「甘ったるくて口の中が気持ち悪りいぞ」


ヘスティア以外はお菓子だけでも平気そうだ。


「ぬーちゃん、砂婆にご飯と玉ねぎとヘラを貰って来て。俺は飯を食いたいから作るよ。それとあとでフグをさばいてって言っておいて。たくさんあるから」


ぬーちゃんにお使いをしてもらっている間にテントの外で準備を始める。


ヘスティアが後ろから抱きつくように首に手を回してくっついて来て何作るんだ?と聞いてくる。


「ん?ヘスティアが甘い物で口の中が気持ち悪いと言うから辛い飯でも作ろうかと思って。言っとくけど俺が作る飯だから単純なやつだぞ」


「俺様の為に作ってくれんのか?」


「俺も食いたいからね」


「へへへっ」


と嬉しそうに顔を近づけてくるヘスティア。


「あー、神様とイチャイチャしてる」


とパールフとダーツがやってきた。


「イチャイチャなんてしてねぇしっ」


バッと離れるヘスティア。他の人から見たらそう見えるんだろうな。今のは父親に甘えに来た娘みたいなものだ。


「鉄板コンロなんて出して何つくんの?」


「ん?昼飯だよ。パールフ達も食う?」


「食べてきちゃった、魚のパスタ」


トラウマが消えたのかパールフは家でさんざん食わされていた飯を食ったらしい。


「ダーツは?」


「俺もパールフの家で食ってきた。こいつが作ったからな」


「自分で作ったの?」


「しょうがないでしょっ。私のレパートリーなんて知れてるんだから」


俺が食わされて続けて嫌だったんじゃないのか?という疑問を感じ取ったパールフはプリプリ怒る。


「なら3人分でいいか」


と、黒豚の脂身をじゅうぅぅぅと溶かせてから細かく切った身を焼いていく。そこに刻んだ玉ねぎ投入。飴色になったらご飯と混ぜていく。よく炒まったらカレー粉をふりかけて唐辛子もマシマシに。塩胡椒で味見をして完成。


皿に取り分けてヘスティアに渡した。


ゴクッ


「セイ、なんだよそれ?」


「ドライカレー。炒飯のカレー味ってところかな」


「ひ、一口くれ」


「食ってきたって言ったじゃん」


「いいからくれよ」


と、皿に移す前にダーツとパールフが味見をしたあとに目の前に座る。


「何?」


「それ食ってからでいいからよ、俺達の分も宜しく」


食ってきたくせに・・・


ぬーちゃんには大盛り盛り盛りぐらいに入れて自分の分もよそうとウェンディ達も出てきた。


「もう出来たの?」


「お前らお菓子でいいって言ったじゃん」


「食べるわよ」


「食べる」


「頂きます」


あーっもうっ。


「ヘスティアおかわりするか?」


「おうっ」


というので自分の分をお代わりにあげて、また作ることに。


ぬーちゃんはまだ食べているので砂婆を呼んで材料を持ってきてもらった。



それを受け取って作りながら砂婆と話す。


「砂婆、5キロぐらいのトラフグ20匹あるんだよ。半分は保存するから10匹頼める?」


「おー、それは大きいの。2〜3日寝かした方が旨いがここはいつ出るんじゃ?」


「明日出るつもり」


「なら今晩しかないの。テッチリとテッサでええか?」


「うん、それが食べたい。ダーツ達もフグ食べる?」


「もちろん」


そして皆の分のドライカレーは甘口と辛口に分けて味付け。


「ウェンディ、熱いからこぼすなよ」


「分かってるわよっ、小姑っ」


こいつ・・・


アーパス、オルティアにも渡して甘口は終わり。


ダーツとパールフには辛口。そしてようやく自分の分もよそう。


「俺様の分はねぇのかよ?」


「お前、俺の分もお代わり食っただろうが」


「旨ぇんだよこれ」


「もう無いから俺の半分こしてやるからそれで我慢しろ」


「チェッ」


「おー、旨そうな匂いさせてんじゃねーかよ。俺たちにもくれよ」


チーヌとガッシー登場。


「ヘスティア、全部食っていいぞ」


三度みたびドライカレーを作るセイ。他におかわりいる人を聞いたら全員だと?もう鉄板に山盛り作ってやる。残ったら残ったでいいわもうっ。


案の定シーバスとツバスもやってきて全部売り切れたのであった。


「食うなら最初からまとめて来いよなっ」


何回もドライカレーを作らされてプリプリ怒るセイ。


「なんだよ怒ってんのかよ?」


「ヘスティアには怒ってないよ。初めから食べるって言ってたからね」 


「そっか、へへへへ」


「なんでヘスティアだけいいのよっ」


「お前はお菓子食ってただろうが」


「俺たちゃセイが飯や作ってるとか知らなかったらしょうがねぇだろうが」


「家で食ってきたっていったじゃんかよ」


「カレーは別腹だ」×全員。


「もういいわ。それより今日はシオにフグ釣りに連れてって貰って釣ってきたからそれ食べるけど希望者は?」


もちろんと全員。


「セイ、母さんとシーラも連れてきていいかな?」


「いいよ。他に誰か連れてきたい人いる?」


「そんなに大勢で無理だろ?」


「まぁ、一人頭の食べる分は減るね」


「ならパールフの母ちゃんと妹で打ち止めだな。うちの親父と兄貴も楽しみにしてたからな」


「この湾にはフグはたくさんいるみたいだね。魚をさばくの上手な人いる?細かい仕事をきちっと出来る人」


「うちの母さんはそういう人よ。シーラはそうでもないけど」


「なら、お母さんにフグのさばき方を砂婆に伝授してもらうよ。お客さんには出せないけど自分たちで食べる分には大丈夫かも。念の為に薬は渡しておくから」


「お客さんには出せないの?」


「万が一の事があったら宿全体に影響を及ぼすからね。薬があるとはいえやめといた方がいいよ」


で、場所はシーバスの家の庭でやることになった。この宴会場でやると人が集まるからな。


鍋は4人ワンセットで5台。サカキとクラマにタマモも食べるだろうからな。


パールフのお母さんとシーラは早めに来て砂婆からフグのさばき方を教えて貰っている。ペンの九十九神に詳細イラストを描いて貰っておいた。マニュアルってやつだな。


セイの鍋は女神ズ、オルティアはチーヌガッシー、シーラ鍋。タマモはシオと親父さん、パールフ母。サカキクラマ砂婆ぬーちゃん。シーバスツバスとダーツパールフ。こんな感じだ。


「お、生のフグ旨ぇな。こんなに薄く切れんのかよ?」


「そこは腕の見せ所じゃ。フグの身は硬いでの、そうやって薄く皿が透けるくらいに切るんじゃ」


「このポン酢っておいしいねぇ。それと紅葉おろしって何からできているの?」


「大根をくり抜いて唐辛子と一緒に下ろしたものじゃよ」


テッサは大盛況。鍋が出来る前に白子の炭火焼き。これは量が少ないので切り分けて一人一つ。


「わっ、トロける」


これが何かは教えないでおこう。想像すると嫌だと思うかもしれないからな。


そしてテッチリもウマウマで、シメの雑炊は格別だった。


「これ、宿でだせたらいいのにねぇ」


「やめておくのじゃ。確かにフグは旨いが危険も0ではないからの。他にも旨い魚はあるんじゃ。それを食えばええ」


「似たようなのは何かないかしら?」


パールフ母は宿の調理場に入るつもりなのか一生懸命に聞いてくる。


「カワハギでええじゃろ。同じ食い方ができるし、白子のかわりに肝を使えばいいのじゃ。じゃがな、調味料が問題じゃ。醤油がないじゃろ?ポン酢も醤油にゆずやすだちを混ぜたものじゃしの」


「酒も日本酒か焼酎の方が合うぞ」


とサカキ。確かにそうだろうな。


「それはここで作れないでしょうか?」


「焼酎はなんとかなるが日本酒は米が無いとだめじゃしの。誰が米作りするやつがいるなら可能じゃぞ」


「俺達にも作れるのか?」


「ここは水も豊富だし出来るよ」


マダラがオーガ島で教え終わってるだろうから連れて来るか。それにマダラの能力も必要になるかもしれんし。


漁村開発にまた新たにやることが出来たのであった。



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