怒られた後は甘えたい
皆の所に戻ると大変なことになっていた。
「何この人だかり?」
「わ、私達も困ってますぅ。なんでもしますから仲間に入れてくださらなぁい?こんなガキ臭いのより大人の魅力はどうかしら?」
「セイ、愛人希望の冒険者が寄ってきてんだ。どうすんだよこれ?だから一人に情けをかけたら収集付かなくなるって言っただろうが」
女冒険者はいい目に合わせてくれると噂が広まったようでシーバス達もせまられていたので、ツバスとパールフはめちゃくちゃ機嫌が悪かった。
「ねぇ、ほら、崖胸より山は大きい方がいいでしょ」
と、放漫ボディの冒険者がセイの手を取りその山に当てた。
ブチン
「誰が崖胸なのよーーーーっ」
ゴウウウゥ
「バカッ、何やってんだよっ」
「うぎゃぁぁぁっ」
放漫ボディ冒険者や言い寄って来ていた冒険者達を軒並み吹き飛ばしたウェンディ。せっかくためた力を使いやがって。
「うわっ、生でバチ当たるの見ちゃったわ」
とツバスとパールフ。
「オルティア、あんたもセイになんかしようとしたらバチ当たるわよ」
「そ、そんなことしませんっ。さ、されてもいいですけど」
そう言ったオルティアにウェンディはキッと睨んでいた。
「おい、ウェンディ。人間に焼きもちなんて焼くなよ」
「誰が焼きもちなんて焼いてんのよっ。わたしの下僕に手を出そうとしたからでしょっ」
「それが焼きもちだって言ってんだろ?」
「違うわよっ」
ゴウウウゥ
「やりやがったなっ」
ボォぅぅぅ
あーあーあー、
「退散退散」
二人とも加減しているが冒険者広場に炎の竜巻があがったので騒ぎになってしまった。
ザーーーーーッ
二人をびしょ濡れにしたアーパス。
「何すんのよっ」
「迷惑」
冒険者広場で神の力を使った3人。アーパスのは仕方がない。セイはウェンディとヘスティアにコンコンと説教をしていた。
テントとかが燃えた冒険者に弁償金を払っていく。被害を受けなかった冒険者まで並んでいたのをフィッシャーズ達が威嚇してくれた。
怒られて泣き疲れて寝たウェンディとヘスティア。あーもうっ。
早くこの場を去りたいのでウェンディをおんぶ、ヘスティアを抱っこする。
「ぬーちゃん、乗せて」
街中では猫サイズだったのを元に戻って貰ってその上に乗る。ウェンディは久々に力を使ったから疲れたのかもしれない。ヘスティア、お前は起きてるだろ?
「ヘスティア、起きてるならちゃんと普通に座れよ」
「いいじゃねぇかよこのままで」
なぜ今甘えたモードなのだ?怒られた子供がもう怒ってない親に甘えてくるようなものなのか?
「セイ、まさかそれで買い物に行くつもりか?」
「しょうがないだろ?俺だけはずかしいから、シーバスとダーツも二人をおぶれよ」
「やるかバカッ。お前みたいな恥知らずと違うんだ」
誰が恥知らずだ。恥くらい知ってるから言ってんだろが。
めっちゃ注目をあびるのでフィッシャーズ達は少しずつ離れて歩く。全く薄情なやつらだ。
ヒソヒソ
ヒソヒソ
(ハーレム王だって)
誰がハーレム王だ。手の掛かる子供の守りだこれは。
「私だけ寂しい」
一番後ろに乗っているアーパスがそう言うけどもうどうしようもない。
「肩車でいい」
「スカートで肩車なんか出来るか」
「これならいいのね」
ポンっとズボン姿になるアーパス。
「え?神服って形変えれんの?」
「お店でたくさん服を見たから」
「なら服買わなくていいじゃん」
「それとこれは別。買ってもらうのが嬉しい」
アーパスはひょいと浮かんでセイの肩に乗った。
「見晴らしがいい」
大きな子供3人の面倒を見るセイ。
「アーパス、人の背中に足乗せんなよ」
「とても楽。嫌なら抱っこやめればいい」
「うるせぇな。ちょっとこうしてたいんだよ」
そういや、ガイヤに着く少し前からウェンディメインでしかかまってなかったからな。少し寂しかったのかもしれん。
ヘスティアはそのままセイに抱っこされたまま、昼飯の場所まで移動を続けたのであった。
「さ、昼飯食うぞ」
そう言って抱っこ紐とおんぶ紐を解くとウェンディも起きていた。
「アーパスも降りなさい」
「降ろして」
セイはぬーちゃんから降りてしゃがむもアーパスは足が付かないので脇腹を持ち、前に回して降ろす。
「くすぐったい」
「こうしないと下ろせないだろ?」
ランチはパスタ屋だ。フィッシャーズ達は軽くワインを飲みながら食べていた。
「この後どうすんだ?」
「俺達は作って貰ってる物があるからそこに行って出来てたら受け取りする。その後はスパイスとかの買い物かな」
「お菓子も買って」
はいはい。
「そこって魔導具屋?」
「趣味でやってるような店だからパールフが欲しい物は無いと思うよ」
「そっかぁ、なら私達は冒険者向けの魔導具ショップと布団を買いに行くわ」
「布団?」
と、シーバスが聞き直す。
「そう。セイが使ってるのと同じ布団と分厚いマットレス、それにアイテムボックスと拡張テントを買うの」
「テントなら同じテントで寝りゃいいだろうが」
「あんた達が風呂に入らないからでしょっ」
「セイ達と離れたらお前らも風呂に入れんだろうが?」
「それはそうだけど」
「風呂も一人用ならお湯の魔導具があれば入れるんじゃない?」
「あっ、そうだねっ」
ということでツバスとパールフは二人でお買い物にいくらしいのでオルティアも連れて行ってもらうことに。
「シーバス達はどうする?」
「そうだな。今夜は宿に泊まらにゃならんだろうから、部屋押さえてくるわ。もう混んでる時期だから泊まれるかどうか探さねぇとな」
「もし無理そうなら王都の外で泊まろうか」
「だな。決まったら電話するわ」
「じゃ、お願いね」
とそれぞれ分かれて行動する。
「こんちはー」
「お、来たか。出来てるぞ」
「おー、ありがとう。業務用を2つも作ってくれたの?」
「まぁな。こっちが貰い過ぎても悪いからな」
「気を使わなくてよかったのに。でも嬉しいよ」
「へへっ、そうか。なら作ったかいがあったわ」
業務用が2つ、普通サイズが1つだ。
「俺達は明日ガイヤを出発するよ」
「そうか。気を付けてな。また来ることはあるか?」
「そうだね。また来るよ」
「また訳のわからん物があったら取っといてやるからよ」
「ありがとうね。これ、あげるから市販のポーションが効かない怪我とか病気とかになったら飲んで。口の中で噛めばいいタイプのポーションだから」
「へぇ、怪我と病気に効くポーションなんてあるんだな。高いんじゃないのか?」
「あちこち回ってるとこいうのが手に入るからね。ただ珍しいものだから内緒にはしておいて」
「そうか。またよけいにこっちがもらっちまったな」
「たくさんあるから気にしないで。アクアで流行病があったからこっちにも来るかもしれないし。咳が止まらくて熱がでる病気なんだよ。ほっといたら死ぬからね」
「おう、分かった。そんときゃありがたく使わせてもらうわ」
と、ここでヘンリーとはお別れ。また何か掘り出し物があればいいな。
その後は酒、お菓子を買い、スパイス屋へ。
「おっ、ちゃんと作って貰えたのかよ?」
「もちろん。明日帰ることになったから買えるだけ買って帰るよ」
「おー、ありがてえ。あれからセイカレーがめちゃくちゃ売れててな、こちらもホクホクで年を越せるってもんだ。明日出るんならあるだけ持ってきな」
と、店の品を買い占める勢いで購入。調合する暇が無いので、各種調合レシピまでくれた。セイカレーのレシピのお返しだそうだ。
スパイス屋を出たらピリリッと電話が鳴る。
「宿は二部屋しか空いてねぇんだけどどうする?」
「広いの?」
「いや、別れて泊まってぎりぎりだな」
「それなら外で野営しようか」
「分かった。なら、西門で落ち合おうぜ」
という事で今日も野営することになり、門で落ち合った後に来たときの下町で飯を食うことにした。
「来た時の店にいこうか」
「同じ店に行くのか?」
「そう。本当に宿屋をやることになったら、他にも店が必要だと思うんだよね。あの店の人を引き抜けないかな?村に食堂はある?」
「村の奴がやってるけどまぁ、余所から来る人向けじゃねぇな。漁師が愚痴を言いに行くようなところだ」
「宿でずっと飯を食うのもアレだし、いくつか気軽に食べられる店とかお買い物出来る店とか必要だと思うんだよね。あそこの店は魚料理上手だったしいいかなと思うんだけど」
「わざわざガイヤから来てくれるか?」
「ダメ元で聞いてみたら?まだもしもの話になるけどね」
「そうだな。声だけ掛けてみるか」
そうして猫獣人のお姉さんのいる店に晩御飯を食べに行くのであった。