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いよいよ扉の向こうへ

翌朝、遺跡に戻ると調査団のテントがたくさん張られている。


「おー、大規模にやるんだねぇ」


「隅から隅まで調べるんだなろうな」 


その様子を眺めていたら調査官のチェックがやってきた。


「もう解決したのですか?」


「いや、いらないって言われたから帰って来た。だから指名依頼取り消しておいて」


「そんな馬鹿なっ」


「いやな、こっちはセイのランクの事も特別ランクの指名依頼が金貨5枚なんて破格だと教えてやったんだがよ、帰れだってよ。もうセイは報酬積まれても受ける気はねぇからな。後はお前さんも気にせず採石場の親方に任せとけ。恐らくもう誰もこの依頼は受けねぇだろうし、あの採石場は閉鎖に追い込まれる」


「こっ、困りますよぉ。あそこは重要拠点なんですよ」


「俺たちゃよそ者だからな。一応依頼は受けて現場まで行って筋は通した。が、断ったのはあっちだ。後はガイアの中で処理してくれ。個人的には一度閉鎖に追い込まれて仕切り直しをすることをオススメしておく。採石場の採算もあるだろうけど冒険者達も命が掛かってるからな。あの親方の管理下にあったら何度でも同じ事を繰り返すぞ」


「そ、そうですか。確かにセイさん達は嫌がらずに受けて下さったのですから。わかりました。そのように報告を上げておきます」


「ちなみにトロール、サイクロプス、三つ目が混ざって採石場に溜まってたからな。討伐するならそれなりの強さの奴が大勢必要になるぞ。どれぐらいの討伐費用になるか見ものだな」


「討伐出来そうですか?」


「慣れたらな。どっかのクランが受けるならS自ら出張った方がいいかもな。じゃなきゃ死人が出るぞ」


と、シーバスは忠告をして話は終わり。セイ達は三度遺跡の中を進んで行った。


「ちょっと待って。ウンディーネ、溜まってる水を捨てて」


と、アーパスが指示するとザーッと水が無くなる。ウンディーネは本当に優秀だ。


そして怨霊もいなくなった道程はただの移動と変わらないので前よりも早く扉の所に到着した。


「ここに魔石をはめ込んでと。動くかな?」


魔石をセットすると扉に何やら模様がパパパパパと浮かび、ここまでの道の天井も明るくなる。


「おーっ、スッゲぇ。システムがちゃんと生きてんじゃん」


セイは近代的なシステムにちょっと感動する。


にょいいいんと音がしてパネルが下から出て来た。


「暗証番号、又はIDコードを入力してください」


そうアナウンスが聞こえて来た。やっぱりセキュリティロックされてるのか。


「セイ、今のは何て言ったんだ?声が聞こえたが」


「今こいつが下からせり上がって来たろ?ここに何かの番号を入力したらこの扉が開くみたいなんだよ」


「番号はわかるのか?」


「いや、ヒントすら無いから全く。何度か間違えたら侵入者を排除する罠が作動するかもしれないから下手に入力しないほうがいいね」


「ということは?」


「今日もここは開けられない。遺跡のどこかに何かヒントがあるかもしれないから戻ろうか。地道に上の階とか調べにないとダメかな」


セットした魔石を外しておく。誰かが勝手に来て触る可能性があるからな。ここまでの何度も往復しているのに邪魔されたくない。


もう怨霊もいないのでここまで来るのは容易なのだ。


「おい塗り壁出て来い」


ドーンと出て来た塗り壁。


「お前、暇なんだよな?ちょっとここで道を塞いでおいてくれ。また俺達も戻って来るから」


話せない塗り壁はその場で周りと同じ石と同化して扉を隠した。知らない人がここに来たら行き止まりにしか見えない。


「セイ、今のはなんだ?」


「壁の妖怪だよ。ここまでやって違う奴らに邪魔されたくないから扉を隠しておくことにした。調査官に何か出てないか聞いて、ヒントも何もなかったら自分たちで探そうか」


外に出て調査団の人達に何が出ているか聞いてみる。


「今の所、これといっためぼしいものは出ておりません」


「本とか書類とかは無い?」


「それはいくつかありますが何が書いてあるのか不明であります」


念の為に見せてもらうと日本語で書かれていた。


異世界人が古代文明を作ったのか。というより千年前以上前の文章としては普通に読める文字だな。時間の概念とかどうなってるんだろうか?タイムスリップとかタイムリープとかそんなやつか?


「シーバス、扉の中で言葉が聞こえたろ?どんな言葉だった?」


「いや、聞いた事がない言葉だったぞ」


なるほど。俺も不思議に思ってはいた。この世界に来て言葉が通じること。文字は見慣れぬがなんか普通に読み書き出来たこと。この世界には無いものが諺に組み込まれていること。


「ウェンディ、言語を理解する能力はお前が授けたのか?」


「なんのこと?」


ウェンディがしたわけじゃないのか。もしかして大神が俺をこの世界に連れて来たことに絡んでるのかもしれん。ということはウェンディを神に戻すという試練というか目的は真の目的ではないのか?


いや、いまそれを考える必要はないな。


とりあえず、ここにあるものに目を通してみよう。


えーと、何だこれ?


書類は魔導具の取説だった。なんかバラバラになっているので意味が繋がるように整理していく。


「セイ、お前これが読めるのか?」


「Gランクだからね」


と、都合よく特別ランクを利用する。なぜかそれをすんなり信じるシーバス達。


取説の中に、故障かな?と思った時のQ&Aとかある。それでも解決しないときはサポートセンターまで連絡をか。ということは電話みたいな魔導具もあったんだな。


そしてこれは売り場案内。どうやらここは魔導具量販店だったようだ。各フロア案内とかまである。


昔も魔導具は高級品だったようで、1階は展示と商談スペース。2階以上が売り場か。地下は在庫を置くためのスペースのようだ。ということはあの扉を開けたらまだ大量に魔導具がある可能性が高い。


あ、14〜15階が魔導兵器売り場になっている。そこそこ崩れていたからまだ埋まってるかもしれない。しかし、それにしては発掘された数が少ないな。元からそんなに数が無かったか、国として成り立つ前に盗掘というか持ち出されているのかもしれんな。


「調査団の人、ちょっと聞いていい?」


「はい、なんでしょうか?」


「ここから出た魔導具は棚とかに置いてあったの?それとも瓦礫に埋もれていたりしたの?」


「両方だと聞いております。昔は部屋にあったからしいですが、かなり過去の話のようです」


そうか。ならやはり大昔に持ち出された物が多くて、近年は瓦礫のなかから発掘されたのだな。ダンジョンだと思っていればそれは不思議でもなんでもない。瓦礫が落ちてきたら罠だと思うしな。


フロア案内は15階まで。それより上はサポートセンターや事務所になっていた。他の書類に業務マニュアルみたいな物があった。


あ、扉の解除コードが書かれているわ。


「この書類貰っていい?ダメなら書き写してもいいかな?」


「書き写していただくのは構いませんよ」


ということなので転記していく。


これで何とかなるだろう。



「どうだった?」


「何とかなるかも。今日はここまでにして明日調査に入ろうか」


ということで野営準備をして翌日に控えたのだった。



四度扉の前まで来て塗り壁にのかせて扉のセキュリティコードを入力。


ゴウンゴウンゴウン


「おっ、開きやがったぜ」


「塗り壁、また塞いでおいてくれ」


セイは扉の向こう側にある閉めるスイッチを押した。中からはセキュリティコードもなく、開ける閉じるボタンだけがあった。



そして中に進むと大量の魔導具の在庫が並べられていた。倉庫は頑丈に作られているようで崩れてもおらずどれもホコリをかぶってはいるが棚に綺麗に並べられていた。ご丁寧に種類毎に並べられている。


「すげぇなこれ・・・」


「これどうする?」


「持ち出すの大変だろ?何往復しなきゃならねぇんだ?」


「いるならここに全部仕舞えるけど、こんなに世に出したら魔導具屋が潰れそうだね」


「あぁ、そうかもしれんな」


「ガイアでは出さずに必要な所に設置しようか。村の宿とか魔導具で揃えたらいいんじゃない?薪とか必要なくなるぞ」


「魔石はどうすんだよ?」


「この冬の間、あそこで延々と魔石狩したら?もう他のダンジョンはどうでもいいや。どうせ鉱石とかお宝っていっても金とかプラチナとかでしょ?」


「そ、そりゃそうだがよ」


「なら魔石の方がこれからは重要だね。村でも消費するだろうし、クズ魔石が必要ならゴブリンの巣を見つけて鈴を鳴らして延々と狩ればいいんだよ。大きい魔石はシーバス達が確保しなよ」


「簡単に言ってくれんなよな」


「シーバス達の目的は村への貢献だろ?金やプラチナといったあぶく銭よりこれから稼ぐ方法を作ってやるのがいいと思うぞ」


「なるほど、そうかもしれんな。他のダンジョンでクランのやつと揉めるのも面倒だしな」


「他のクランか。今回は被害者を救出出来たから良かったけど、他のクランもその可能性はある?」


「恐らくねぇな。マッドはイカれてやがったからあんな事になってたんだと思うぞ。駆け出しや弱いやつらはクランでいいように使われているとは思うがな。それが嫌から強くなればいい話ってやつだ」


なら放置で構わないな。ガイアはガイアのやり方がある。


そして魔導具を仕舞う前に何があるかチェックしていく。


おっ、あった。


「それはなんだ?」


「電話だね。離れた場所でも通話が出来る魔導具だよ」


電源は入らないからどこかに魔石を入れる場所ないかな?


と思っても見当たらない。が、近くに充電器みたいな物がある。コードをつなぐ所が無いので非接触型の充電器だろうか?


充電器の底を回すと魔石をセットする所が出て来た。そこに魔石をはめ込み、充電器の上に電話を置くとランプが赤く光った。ビンゴだ。


「動くのか?」


「もうしばらく待たないとダメそうだから人数分やっておこうか」


10台をセットして他の物を物色する。そして業務用の魔導具を発見した。


「これ、鑑定の魔導具だね。液体と固体両方調べられるのだろうか?」


魔石をセットしてスイッチを押す。画面に出て来たのは日本語だこれ。他の人には使えんな。


ティンクルが使っていた鑑定の機械より遥かに小型。というかノートパソコンとよく似ている。ここに物をセットしてエンターか。


試しに万能薬をセットして使ってみた。


レーザーみたいな物がスキャンして解析結果が出る。


画面には万能薬と出た。そして詳細の所を押してみる。キーボードとタッチパネル併用だ。


解析結果はティンクルの機械と同じだが、成分分析まで出た。これ、この素材をこの割合で混ぜたら万能薬が作れるんだろうな。


「なんて書いてあるんだ?」


「万能薬だって。ツバスの言っていた通り魔力回復効果もあったよ。回復量が10000だね。魔法使いは自分の魔力量とか知ってるの?」


「そんなの知らないわよ」


なるほど。ここに回復量が出たということはきっと魔力測定が出来る機械もあるはずだ。


そしてこの在庫部屋には無く、違う場所も探してみるのであった。



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