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なかなか進まない

セイとフィッシャーズ達は寝ないまま朝を迎える。サカキ達がひょうたんに戻った時に牢馬車が到着。衛兵とギルドの職員がやってきたので、中で捕縛している奴らの回収をしてもらった。


「セイ様、フィッシャーズの皆様。この度のご協力感謝申し上げる」


「夜通しご苦労様です。自白した者の名前と内容はこれに記してありますので渡しておきますね」


「被害にあわれた冒険者達はこちらの馬車に乗って下さい」


と、別の馬車に案内されて行くときに皆からお礼を言われた。


「セイさん、それに皆様方。この度は助けてくれてありがとう」


「うん、総本部長と総務部長に今回の顛末は報告してあるから。色々と相談に乗ってくれると思うよ」


「ウェンディ様。癒やしをありがとうございました。お陰で心が壊れずに済みました」


「うん」


ウェンディはその言葉を聞いて黙って頷いていた。


全員が牢馬車に乗った所で式神を解除する。そして拘束されていない冒険者達も冒険者証を取り上げられて牢馬車と共にガイア王都へと移動していくのであった。


「さて、今日はどうする?」


「そうだね。地下を攻略しようか。なんかファントムが居て扉が行く手を遮ってるらしいよ」


「なんとかなりそうか?」


「ファントムって怨霊の事だと思うから俺とクラマでやるよ。扉は見てみないとなんとも言えないね」


みんな寝ていないのでポーションを全員で飲んで改めて魔導具ダンジョン改め、遺跡の中に入っていったのであった。


女神ズはぬーちゃんに乗り、セイはフィッシャーズと歩く。クラマにも出て来てもらってある。


「セイよ、ここは墓場と似たような空気じゃな」


「そうだね。最近の幽霊ではなくて大昔の人達なんじゃないかな。地震で閉じ込められて餓死か酸欠で死んだんだと思う」


出てくる幽霊は全てが怨霊になっていて、ものすごく苦しんで死んだのだろう。近くにくるとその苦しさを訴えてくるので結構キツイ。


クラマが浄化の風を出して弱体化させたところをセイが祓っていく。一人でやるより早いし楽だ。念の為、フィッシャーズと女神ズには魔除けの護符を張ってあるから襲われる心配はまずない。


しかし・・・


「ウェンディ、いい加減俺のマントを返せよ。ここ冷えるだろうが」


「嫌よ。代わりにわたしのコートを着てればいいじゃない」


なぜ俺がピンクのコートを着ないといけないのだ。


「お前のチンチクリンのコートなんて入る訳ないだろうが」


「誰がチンチクリンなのよっ」


「お前だお前」


「キィーーーーっ」


ウェンディはきっとまだ心が不安がっているのだろう。もしかしたら治癒したときに被害者の心の痛さを共感してしまったのかもしれない。セイのマントを脱がないのは不安のあらわれなのだろう。


「セイ、温めてやろうか?」


「いや、今は動きにくくなるから大丈夫だよ」


「ちぇっ、なんでい。人が気を使ってやったのによ」


「わかってるよ。いつもヘスティアは優しいな」


「へへっ、やめろよぉ」


「ヘスティアが暖かい。そのままにしてて」


アーパスはヘスティアをストーブ扱いしていた。



「おっ、これが扉か。かなりでかいな」


シーバスが言ったように大きな半円の扉で、ここにくる道も半円のドーム状だったのだ。もしかしたらシェルターかなんかにもなってたのか?


扉を開ける為の取っ手はなく、何らかの装置で動いていたように思える。


「セイ、開かねぇなら溶かしてやろうか?」


とヘスティアが言ってくる。


「いや、下手に壊して防犯装置が働いたり、崩れたりしたら危ないから開ける方法を探してみるよ」


皆は防犯装置という物を知らないようで説明をしていく。


「はぁ、侵入者避けの罠みたいな物ってことだな?」


「そう。正しい手順を踏まないとダメかもしれないんだよね。スイッチとかなんかないかな?」


と皆で手分けして探して行くと魔石がはめ込まれている所を発見。


「この扉を自体が魔導具なんじゃねーかな?この魔石が空になってるからな」


「なるほどね。それかなり大きな魔石だよね」


「おぅ。流石にここまで大きいのは持ってねぇな。どうする?」


ここに来るまでに手動で開けられる扉もあり道も何本かに別れていた。とりあえず大きな道を選んでやってたのがこの大きな扉だ。


「一度外に出て、魔石を入手してからまた来る?」


「そうするしかねぇだろうなぁ」


「魔石の出る魔物がいるダンジョンだっけ?そこに行くのが手っ取り早いかかな」


「ここまで大きいの出るかどうかはわからんぞ」


ゴブリンから取れる魔石は小指のさき程度の魔石。クズ魔石と呼ばれるそうで魔道具を動かすにはいくつも必要らしい。ランタンに入っているのもそのサイズだ。家電みたいな魔導具を動かすにはピンポン玉ぐらいのものが必要だそうだ。で、ここに入れてあるのは握りこぶしサイズのが3つ。クズ魔石をたくさん詰め込んでもいけるそうだが専用の回路が必要になるとのこと。そしてダンジョンから出る魔石はクズ魔石かピンポン玉サイズのがほとんどだそうだ。しかもなかなか落ちないらしい。


「効率良さそうで良くないね」


「相手が普通の魔物ならまだ良いけど、相手がロックゴーレムとかだからなぁ。俺達にはあまり向いてない魔物なんだよ」


「強いの?」


「剣で岩を切ってたらどうなる?」


「あー、剣向きの魔物じゃないんだ」


「そういう事。魔石ダンジョンを攻略している奴らはハンマー使いとか坑夫のツルハシとか使ってんだよ」


「なるほどね」


サカキなら素手でなんとかなるし、メラウスの剣なら斬れるけどフィッシャーズ達と共闘だしな。


「ま、とりあえず一回外にでよ」


と、一応マッピングみたいなものをしておいてから外に出ることに、


「セイ、ここにはまた来るの?」


「そのつもりだよ。なんかあるのかアーパス?」


「また寄ってきているから浄化しておいてあげる」


と、戻りながら歩くとその後ろに浄化の雨を降らせてくれる。


「これで水が乾くまで近寄って来れないし、今いるのも浄化されるから」


素晴らしい。ウェンディと違ってちゃんと神様の能力を任意で出せるのか。


「アーパス、凄いじゃん」


「これでも神だから」


そしてヘスティアは崩れそうな場所を焼き固めていってくれる。


「神様パワーってやっぱりすげぇよな」


と、シーバス達がアーパスとヘスティアを褒め称える。


「わっ、わたしにもそれぐらいできるわよっ」


「馬鹿やめろっ。お前は何もしなくていい」


「だって、わたしも褒め称えられたいのっ」


「いいから、お前は何もするな。ここに一緒にいるだけでいいから」


せっかくちまちまと力を注いでいるのに無駄使いしようとすんなよな。



そして外に出て飯タイム。


ツバスとパールフがニヤニヤした後にはぁーっとため息を付く。


「疲れたのか?」


「いいえ。ウェンディが羨ましいなあって」


「何が?」


「だってさぁ、お前はそばにいてくれるだけでいいとか私達も言われてみたーい」


「は?誰がそんなことをウェンディに言ったんだ?」


「何言ってんのよっ。今戻りしなにセイがウェンディに言ってたじゃない」


「俺は何もするなと言っただけだぞ」


「違うわよ。一緒にいるだけで良いって言ってたわよ。ねぇ、それプロポーズ?プロポーズなの?」


「ちっ、ちっ、ちっ違うわバカッ。こいつは力が減ってるから力の無駄使いをすんなと言っただけだ。なんで俺がウェンディにプロポーズなんかしないとダメなんだよっ」


「いいからいいから、照れなさんなって。おかしいと思ってたんだよねぇ。セイはみんなに優しいけど、ウェンディには特別甘いもん」


「ちっ、違うわっ。こいつが一番手が掛かるからだろうが」


「何よ?下僕の分際でわたしの事をそんな目で見てたわけ?」


「あほかっ。猿のくせして調子に飲んなっ」


「キィーーーーっ。誰が猿よっ」


「そうやってキーキー怒るところだっ」


「猿っていう奴が猿なのよっ。やーいセイの猿ーっ」


「誰が猿だこらぁっ。この口か?この口がそんないらんことを言うのかっ。だいたいお前がいっつもいっつも世話かけっ放しだから変な誤解を招くんだろうがっ」


「やめへよぉっ。ほっへはをひっはらないでっ」


「セイ、イチャつくのは後にして飯食おうぜ。魔石取りにいく時間なくなるぞ」


「誰がイチャついてんだよっ。縁起でもないことをいうなっ」


「神に向かって縁起でもないってなんなのよっ」


「うるさいっ。この疫病神っ」


「キィーーーーっ」


シーバス達は、はぁやれやれと言った顔でスープの準備をしていくのであった。



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