遺跡の掃除
「おい、お前ら。今までどんな悪さをしてきたか言え」
「なっ、何もしてねぇっ」
「あっそ。さっきの奴がどうなったか見てたよな?あれなんだと思う?」
「そこの魔法使いがやったんだろうが」
「あれな、火の神様のバチなんだよ。悪しき物は焼かれて消失する。あいつの股間は焼けたというより消滅したんだ。お前ら女の子に悪さしてただろ?」
「しっ、してねぇ」
「嘘つくと次は舌にバチが当たりそうだな。お前が嘘を言ってなければ舌も下も大丈夫だと思うけど、嘘なら両方とも無くなるぞ。覚悟はいいか?懺悔して告白するならちょっとだけ待ってやろう。3・2・・・・」
「もっ、申し訳ありませんでしたぁっ」
二人は土下座して、今までやってきた犯罪を告白する。セイはそれを記録していった。
「他の奴らも何をしてきたか、そいつの名前とランクと知ってるだけ教えろ」
と、知ってる事を話させるが下っ端だからあまりたくさん知らない。
「じゃ、リーダーの所に行く前に知ってそうな奴を教えろ」
遺跡の中は所々に灯りがあるが薄暗い。狐火を出して明るさを確保すると崩れているところも結構ある。今の所魔物は出ていないけど幽霊は多い。悪霊になりかけているものまでいるが今は無視する。ウェンディには結界を張っておいたので集られる事もないだろう。
セイは逆わらしべ長者みたいに次々と上のクラスの奴を締め上げて白状させていった。そして、被害にあっていた女の子の冒険者達を発見し救出する。
「ツバス、パールフ、悪いけどフォロー頼める?」
シーバス達も怒りに震えていた。マッドクランは15階に拠点を設けているらしく、1階から15階まではすべてを取り尽くしてもう何もないから、実質この魔導具ダンジョンはマッドクランの私物のようになっていた。
罪を犯していた奴はすべて調べて式神で拘束していく。女の子に悪さしていた奴はヘスティアが息子本体を焼き切っていった。はじめのヒャッハー達ももう途中で用が無くなったので焼切られている。ちょっとごめんなさいしただけで許される事ではないのだ。
クランのメンバーには女性冒険者もいて、性犯罪に加担する代わりに自分達の身を守っていたようだ。これは判断に迷うので拘束だけにしておく。他のメンバーとも何度か戦闘になりかけたけど、怒りのシーバス達に死なない程度に討伐されていた。
そしてリーダーのいる部屋は明るく王様の部屋みたいになっていた。
「特別ランクとは随分と横暴な事をしやがるみてぇだな」
ふてぶてしそうにそういうリーダーは40歳になってないくらいか?ヒャッハーの親玉らしい雰囲気を醸し出している。
「もう別にお前と話をする気はないよ。死ぬか捕まるかは選ばせてやる」
「ふふん、俺がマッドと呼ばれる意味を知らないらしいな」
ここに来るまでにシーバス達に話は聞いていた。破格の強さと残忍性を持ち、頭も切れるらしい。
「サカキ、遊んで来るか?」
「そうだな。セイ、お前怒ってんだよな?」
「まぁね。聞きたい事が一つだけあるから殺すのは後でね」
「しょーがねぇな。生きていることが嫌になるようにしてやるよ」
と、サカキは悪鬼に戻る。そこまでしなくても十分だろうけど、相手に恐怖を植え付けるつもりなのだろう。
「化け物を連れてやがるからいきがってるわけか。まぁ、こいつの餌食になれよ」
ドゥン
ドゥン
マッドと呼ばれるマイクハイドはショットガンのような魔導具でサカキを撃った。
「へへっ、こいつを食らって生きてるやつなんて・・・」
「銃が俺に効くと思ってんのかよ?舐められたもんだな」
サカキはコキコキと首を回してマッドに近付いていく。
「くそっ、この化け物がぁぁっ」
魔石を込め直して何発も撃つがサカキには効かない。ダメージがあるように見えても瞬時に再生していく。
「さ、セイが暴走する前に俺が始末してやろう」
そう悪鬼が笑うとマッドは震えていく。サカキは一撃を食らわすのではなく、爪で少しずつ皮膚を削いでいく。
「やめろっ やめてくれっ」
「そういう言葉をお前はどれぐらい聞いたんだろうなぁ?聞いたのはこの耳か?」
と右耳を削ぐサカキ。悪鬼の本領発揮だ。悪鬼菅の笑顔で爪で少しずつ皮膚を削がれて心が折れない奴はいない。
「マイクハイド、大型の魔導兵器でたろ?どの国に売った?」
「しっ、知らねえっ」
「サカキ、舌いらんらしいぞ」
「次は口か。ほれ、口を上げろ」
片手で顔を掴み両方の奥歯が折れるくらいの力で顔を締める。
「ひゃめめ ひゃめめっ」
「セイが質問したろ?早く答えろよ」
「ガ、ガーミウルス」
総長が睨んだ通りだな。
「サカキ、もういいわ。こいつらはギルドに突き出すからそこまでだ」
「相変わらず甘ぇな。ま、暴走しなかった褒美に止めておいてやるか」
と言ったサカキは顔面を爪でザッと引っ掻いておくのであった。
「シーバス、今日はこれで終わりだね」
「お、おぉ。一日でクランの一つを潰しちまったなお前」
「こいつらは賊と変わらんよ。一応全員殺してはいないからガイアの法で捌いてもらうよ」
拘束している奴らはそのままにして、マッドだけを引きずっていく。階段もそのまま引きずっていくからかなりのダメージを受けただろう。Sランクまで上り詰めてそれを汚した罪は重い。
外にいる入場を許可している奴に状況を伝えると顔が青くなった。こいつも加担していたのか。
だが証拠がないのでこっそり式神を貼り付けておいた。
「悪いけど、俺達はここで見張ってるからギルドの人を呼んで来てくれない?」
「かっ、かしこまりました」
担当の二人は馬に乗って走っていった。
「クラマ、サカキ。ウェンディ達の護衛宜しく。タマモ、ギルド本部に行って今の現状を総長に伝えて」
「セイ、式を付けたんだろ?あたしがそっちを調べておいてやるさね。あんたが本部に行きな。その方が話は早いだろ?」
「ならそっちは宜しく。誰とつながってるか泳がせて」
「わかってるよ。任せておきな」
と、タマモは妖狐に戻り消えていく。
「ウンディーネ」
と呼ぶと来てくれたので、被害にあっていた女性冒険者の洗浄をお願いしておいた。
「ウェンディ、お前の治癒は心にも効くか?」
「わかんない・・・」
「そうか。でもそう願いを込めてやってやってくれないか」
「わかった」
セイはテントやバスタブを出してからぬーちゃんと本部に飛んでいく。ついでにマイクハイドとこいつが使ってたショットガンを持っていくことに。マイクハイドは式神に繋がれて血まみれのまま宙ぶらりんた。
総本部に到着すると周りの人から騒がれる。ガイアのSランクが血まみれの上、式神に縛られているから当然だな。
「犯罪を犯した冒険者を捕まえてきたんだけど、これはどこに報告すればいいかな?」
もう時間外のようなので警備のような人に聞いてみる。
「そ、それはもしやマイクハイド・・・。あなたは一体・・・」
セイは冒険者証を見せて名乗った。
「魔導具ダンジョンで不正を見つけたから捕縛した。こいつをここに捨てて行ってもいいけどもう死ぬかもよ。証言を聞きたいなら誰かに取り次いで」
「はっ!かしこまりましたっ」
しばらく待たされた後に総務部長のマッケンジーがやってきた。
「セイ、マイクハイドを捕縛した・・・・のは本当のようだな。中に連れて入ってくれ」
マッケンジーは他の者に指示をしてポーションを持ってきてマイクハイドに飲ませていた。これでもう死なないかな。
セイはマイクハイドを引き渡したあと式神を解除して報告をすることに。
「そんなことになっていたのか・・・」
「ガイアのやり方に口を出す気は無いけど、ここまで放置していたのはギルドにも責任あるんじゃないの?」
「その通りだ。おい、誰か担当ギルドのギルマスと総長を呼びに行ってくれ。緊急事態だ」
総長達を待っている間にダンジョン入場の許可証をチェックしている人達も加担していた恐れがあることを告げる。
「なんだと?」
「確証はないけどね。今俺の仲間が尾行しているからここに来る前にどこかに寄ったら確定だと思う」
「そんなことまでしてくれているのか」
「俺たちが入って直ぐにクランの奴らに絡まれたし、中の出来事を報告したら顔が青ざめたからね。まぁ、マッド達がやってたことを知ってたのは間違いないと思うよ」
「わかった。ならギルマスも加担していた恐れがあるな」
「そうなの?」
「担当ギルドがそいつらを派遣しているからな」
「尾行結果の報告はするけど処分や取り調べは任せるよ」
「わかった」
そしてしばらく待った後、総長となんかゾロゾロ人がやってきた。ゾロゾロの人達はマイクハイドの所へ行き、総長はこちらにやってくる。
「手間を掛けたな。悪いがもう一度話を聞かせてくれ」
総長の応接室に行き、セイは事の発端からまた話をするのであった。