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世紀末ごっこ

魔導具の出るダンジョンは王都から出てそこそこ距離がある。こちらはぬーちゃんに乗り、フィッシャーズ達は走って一日近くかかった。魔導具ダンジョンは山のようなタイプだ。入り口から上へ登るタイプなのだが地下への階段も発見され、地下への攻略を試みた冒険者達はみなギブアップしたそうだ。


今日はダンジョン近くで野営をする。ダンジョン近くの安宿よりこっちの方がいいだろうとの判断だ。この辺りは魔物が出ないらしいので注意するのは人間だ。盗賊まがいの冒険者がいるらしいからな。


「そんな奴らが来たらどうすんの?」


「冒険者同士の争いは禁止されてるけどな、まぁ、正当防衛だろ」


「もしやっつけても証拠とかないけど大丈夫かな?」


「お前より上のランクはおらんから大丈夫だ。揉めてもお前の言うことが優先される」


「どういうこと?」


「ガイアはランクの上のやつの言い分が通るんだ。貴族と同じような仕組みだな。Sが黒いものを白だと言い張れば白になる」


「酷いねそれ」


「まぁ、やりすぎると密かに調べられてランク剥奪されるからそこまで表だって酷くはねぇけど、クラン内ではどうかはわからんな」


「駆け出しとかがいいように使われるってこと?」


「そうだ。クラン費とか取ってるから少ない報酬がさらに少なくなる。しかしその分依頼失敗のリスクは大幅に減る。失敗しそうなら上の奴らがケツを拭くんだ」


「なるほどね」


言い方を良くすれば保険。悪く言えばみかじめ料みないなものか。


「クランに入ってないやつはいい依頼が受けられないから、クランに入るか入らないかは難しいところだな」


「冒険者はアクアに流れたりしないの?」


「虫系の魔物は危険度が高い割に収入が低いからな。子供の頃から虫に慣れてないとキツイんだよ。誰もがお前みたいに蜘蛛に巣を張らせて簡単に狩れるわけじゃねーからな」


たしかに。鬼蜘蛛がいたらすることがない。虫系の魔物の厄介な所は数の多さだ。戦いは数だよ兄貴というのがよく分かる。



そして朝を迎え、ダンジョンに向おうとしたら世紀末的な奴らがニヤニヤしながら道を塞いでいる。


「ヒャッハー、ここは通さねぇぜ」


おぉ、ザコじゃん。火炎放射器とかもってないかな?


「お前ら面白いな。久々に懐かしい物を見せてもらったよ。サービスに俺もなんかやってやるよ」


セイはヘルムを被り、ドラゴングローブとシューズから爪を出し、それをそいつらの喉元に突き付けた。


「おいお前、オレの名を言ってみろ」 


「へっ?」


ちっ、なんだよ、ノリの悪い奴らめ。


「もういい。お前面白くなくなったわ」


「セーーーイっ」


「お、ツバス。なかなかいいぞ。でもそれはまた違う役の時だから主人公を演じている時にそう叫んでくれ。今は違うやつだからな」


「お前、さっきから何言ってんだ?」


「え?世紀末ごっこ。こいつらそういう遊びをしたいんじゃないの?」

 

「違う、遊びに来たんじゃない。コイツらはマイクハイドクラン。通称マッドクランの奴らだ。俺達に嫌がらせしにきたんだよ」


「そうなの?」


「さっきからゴチャゴチャとなんか言いやがって。そんな女連れで遊びに来るようなところじゃねーぞ。遊びたいなら俺たちが遊んでやるぜ」


と、ウェンディに腕を伸ばした奴にセイは剣を首に当てた。抜刀術を活かした技だ。シーバス達もセイが剣を抜いたのが見えなかった。


「ウェンディに手を出したら殺すぞ」


セイから殺気と妖気が入り混じった物が出てそれを身に纏う。


「ヒッ」


「ぬーちゃん、噛んでいいよ。死ぬ手前のやつ」


ぬーちゃんはセイに言われてコイツらを尻尾で噛んだ。



「セイ、何をした?」


「何日か動けなくした。さ、行こうか。これは正当防衛だよね」


「お、おお・・・」


シーバス達はタチの悪い奴がウェンディに手を出そうとしたときのセイの豹変ぶりに驚いた。いつもは飄々として優しいのにあんなに変わるなんてと。


さすがはサカキ達を従え、神が集まってくる人物なのだと改めて実感したのであった。


(神様達が安心してセイにべったりしている理由がわかったわね)

(そうだな。俺もセイがいつ剣を抜いたのか全くわからんかったわ)


シーバスとツバスがコソコソと話をしているのが聞こえる。ダンジョンから出たら本当の抜刀術をクラマに披露してもらおう。俺のはまだまだだからな。


そしてダンジョン前の検問所みたいな所で許可証を見せて中に入った。


ん?


「ここ、ダンジョン?」


「そうだぞ」


いや、これは違うような気がする。


中に入って肉の塊を出して置き、食っていいぞと言ってみる。が、肉は消えなかった。


「シーバス、ここダンジョンと違うわ。この中で人が死んだらどうなる?」


「死んだらそのままだぞ」


「だろうね。ちょっと歩きながら話そうか」


と、人がいるので中に進み、人から離れた時に話をする。


「ダンジョンは魔物の一種って聞いたことある?」


「あぁ、そうらしいな」


「ダンジョンからお宝や肉が取れる魔物が出るのは人を食う為の撒き餌なんだよ」


「どういうことだ?」


「ダンジョンから取れる肉は人間には栄養になるんだけど、魔物とか人間とことわりの違う者たちには栄養がほとんどないんだよね」


「意味がわからんぞ?」


「多分俺が出せるエネルギーとかが魔物の糧になってる。ダンジョン外の魔物や人間にはそのエネルギーがあって、ダンジョンはそれを食うんだよ。より強い人間や魔物の方が栄養価が高いからダンジョンが成長するたびによりそういう奴らを引き寄せる為にお宝を出すんだ。でも出せるのは素材やダンジョンが知っている魔物だけ。魔導具みたいな複雑な物を出せるって不思議だなと思ってたんだよね」


「つまり?」


「ここは遺跡だろうね。大昔に滅んだ文明の遺跡で魔導具はその時に使われていた道具なんじゃないかな。ダンジョンなら同じものがリポップするけど、魔導具はリポップする?」


「いや、近いところは取り尽くされてて何も無いらしい」


「なら間違いないと思うよ。ちょっと待って最終確認してみるから」


と、セイは床に手を付けて妖力を流してみるが流れない。これは確定だろう。


「妖力が流れないからダンジョンじゃないのは確定だね」


「お前、もしかして他のダンジョンにもそんなことしてやがんのか?」


「まぁ、それはおいおい話すよ。ダンジョン攻略の根本を覆すような話だからね」


と、魔導具ダンジョンと呼ばれた遺跡の中を進んでいく。とても人工的な作りだ。



「これはこれはアクアのSランクの方々ではありませんか」


と、なんか胡散気な奴がヒャッハーな奴らを引き連れて近寄ってきた。多分マッドクランのやつらなんだろうな。


「なんか用か?」


と、シーバスはぶっきらぼうに答えた。


「どちらへ?ここから上はうちのメンバーが頑張ってくれているので何もありませんよ」


「上はお前たちがいるのは知ってるよ。俺達は下に行くから気にすんな」


「ほう、難攻不落の地下へ女子供連れで行くつもりですか。それは大変ですね。そちらのお嬢ちゃんたちは武器もお持ちでないようですからうちで保護しておきましょうか?」


「お構いなく」


「大人しく言ってやってる間に置いてけよ」


と急に態度が変化する。


「お前たちはSといってもアクアのS。うちの頭のSとは格が違うんってのわかってんだろうが」


「お前、俺よりランク下だろ?」


「これは頭から言葉だ。俺は代行だ」


「ほう、ランクの上からの命令は絶対なんだな?」


「それがガイアの常識だ。知らんとは言わさんぞ。ここはアクアじゃねーからな。ほら、さっさと渡せ」


「だとよセイ。お前の命令は絶対だそうだぞ」


「そ、ならお前ら全部脱げ」


「はぁぁぁっ?何言ってんだお前は」


とヒャッハーな奴らが顔を近付けて来たので防具と服を斬って脱ぐ手間を省いてやる。


「なっ、何しやがんだてめえっ」


「ここじゃランクが上の奴の言うことが絶対なんだよな?ならお前ら全員俺に従え。俺はGランク、特別ランクだ。余所者ではあるがSより上だからな。それとも死ねと命令してやろうか?」


「そんなランクある分けねぇだろうがっ」


と股間を押さえながら吠えるヒャッハー二人。しかし代行だといった胡散臭い男はカタカタと震えだした。


「お前は知ってるようだな。ほらさっさと脱げよ」


と命令するとズボンをさっと下げた。


「汚ねぇもん見せんなっ」


あっ


ジュッ


「ぎゃぁァァァァっっ」


あーあ、ヘスティアが焼きやがった。ビビデバビデは毛ですんだけど、今回は本体を焼きやがった。ヘスティアの炎で焼かれたからもうポーションでも治せんかもしれん。ま、バチだと思っておこう。今の様子じゃ女の子に悪さしてきただろうからな。


息子が消失した胡散臭い男はその場で失神した。


「ヒィぃぃぃっ」


ヒャッハー二人は股間を強く押さえて尻もちをつく。今度はケツ焼かれるぞ。


「おい、お前達のリーダーの所に連れていけ。話しがある」


他国の事には首を突っ込むまいと思っていたがこれはタチが悪い。このままほっておくとそのうちウェンディ達になんかするかもしれんからな。


「セイ、クランの頭になんかするのか?」


「そうだね。ウェンディ達においたするかもしれないから潰しておくよ。サカキ、クラマ、タマモ、みんな出てきてくれ」


と、メンバーを揃えてヒャッハー達に案内させることにしたのであった。


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