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スパイスと冒険者広場

「えっ?俺達も呼ばれたのかよ?」


「虫系の魔物の情報提供の報酬くれるらしいから」


「別にあんな情報はアクアの冒険者なら知ってるやつ多いのによ」


「総本部に上がってないから新情報と変わらないんだよきっと」


昼飯前にウェンディ達は屋台の串肉を結構食ったみたいだった。


宿を延泊すると伝えてから昼飯を食う。


「セイ、串肉のスパイス焼っての旨かったから昼飯もそれにしようぜ」


とヘスティアが言ってくる。


「スパイス焼?そういやガイアってスパイスがたくさん売ってるんだよね?」


「そうだな。ヘスティア様が気に入ったんならスパイス系料理を食いに行くか?」


ということでフィッシャーズ達の案内で知ってる店にいく。しかし、この匂いは・・・


「俺達はスープとパンにするけどセイ達は?」


「じゃあ同じのを」


と運ばれて来たのは懐かしい匂い。


「これカレーだよね?」


「カレー?」


「そう」


「いや、スパイススープとしか知らねぇぞ。辛いのが足りなければそこの壺に入っている唐辛子の粉を足せばいいから」


ここはスパイス料理の店の中でマイルドな店らしく、ウェンディとアーパスが屋台の串肉でも辛いのがダメだったようでマイルドな店を選んでくれたようだ。


味は薄いカレースープって感じだな。ちょっと物足りないので辛味を足すが、元の世界の味とは違う。でも懐かしいからいいや。


「どうだ?」


「美味しいけど、なんか足りない気がするんだよね。これはスパイスの調合は店がしてんの?それとも調合したスパイスって売ってる?」


「店ごとにしていると思うが、調合したのも売ってるはずだな。食ったらスパイスの店を見にいってみるか?」


ということでスパイス店に。


おー、なんか漢方薬を売ってる店をみたいだ。いろんな臭いが混ざって目に染みるわ。


スパイスの種類なんて全くわからない。知ってるのはほんの数種類だな。


「すいません、既に調合された奴はおいてますか?」


「どんな感じのですか?」


一口に調合と言っても色々と種類があるらしい。


「スープにするような奴とかある?」


と聞くと何種類か持ってきてくれた。


蓋を開けて匂いを嗅がせてもらう。あっ、これが一番カレーに近い。でも黄色くないな?


「黄色くなるスパイスってありますかね?」


「それならターメリックがいいかもしれませんね」


と、黄色い粉を持ってきて来てくれた。


「これ買うから混ぜてみてもいい?」


「はいどうぞ」


と言われたので混ぜて匂いを嗅いでみる。おー、カレーじゃん。


「これ、何が混ぜてあるの?」


と聞くと、混ぜてあるスパイスを持ってきてくれた。


クミン、コリアンダー、カルモダンだけでカレーの匂いになる。これにまだ何種類かのスパイスを混ぜてあった。自分で調合しても上手くいくとは思えないのでこの調合スパイスにターメリックを足してもらってたくさん買っておく。本場だけあって値段も安かった。



「自分で使うのか?」


「砂婆に作ってもらうけどね。多分俺の知ってるカレーって奴になると思う」


「なら、晩飯にそれを食わせてくれよ」


とヘスティアが言うので、飯は広場で自炊することになった。



「ここ公園?」


「いや、ガイアの地方冒険者達が寝泊まりするような場所だ。それと往復の護衛をしている奴らが待機したりとかだな。金のねぇ奴ら用にこうして場所を用意してくれてんだよ」


ガイアの王都は安宿といってもそこその値段がするようで、宿に泊まると護衛料が飛んでしまうのでこうして野営をするらしい。井戸やトイレもあるから途中の野営よりかは快適で安全みたいだけど。


周りの奴らは自炊したり、串肉を買って酒盛りをしたりしているな。


「地方都市から出てきてる人がこんなにいるけど、依頼がそんなに多いの?」


「討伐系で割の良いのはクランが押えるから、後は街の雑用とかそんなのだな。割は良くないがポイントも貯まるし、何より安全だからな。駆け出しや怪我して討伐系が出来なくなった奴が多いんじゃねーか?」


確かに言われて見ればそんな感じで、なんとなく芸人を見ているようだ。若手で売れるのを夢見て上京して来た奴と夢やぶれてアルバイトで生計を立ててるとかそんな風に見えなくもない。


「セイ、言っておくが物欲しそうにされても飯や酒を分けてやるなよ。一人にそれをやると我も我もになって収集が付かなくなるからな。野営地なら雇い主の手前まだマシだがここはそうじゃねぇからな」


「了解」


また唐揚げさんとか呼ばれたくないからな。


砂婆に出て来てもらってカレーの相談をする。


「匂いはカレーじゃな。セイは店の味を物足りないと感じたんじゃな?」


「そう、何が足らないかわかんないんだよね」


「恐らく出汁と塩じゃな。普通のカレーで良いか?」


「うん。普通のが食べたい」


「じゃ、チキンカレーにしてやるわい。カツもいるか?」


「うん」


そして結構待たされて砂婆が鍋にカレーとお櫃にご飯を入れて持ってきてくれた。


「いまカツを揚げてやるでの」


カレーの鍋を弱狐火で保温しておく。めっちゃカレーの匂いだ。


「なんだよそれ?めちゃくちゃ旨そうな匂いしてんじゃねーか」


「俺が言ってたカレーって奴だよ。カツカレーにしてもらうからちょっと待って」


サカキ達が出てきたので他の奴らに飯と酒を分けるなと伝えておく。タマモもカレーの匂いにつられて出てきて皆とラッキョウをつまみにビールを飲みだした。


「セイ、これは何?」


「ラッキョウ。カレーの付け合せだよ」


アーパスもラッキョウが気に入ったのかポリポリと食べている。


ガーハッハッハッハ


もうサカキ達は宴会モードだ。


周りからはシーバスの忠告があった通り物欲しげに見る奴らがたくさんいる。それに当てつけるように旨そうに酒を飲むサカキ。俺はとても居心地が悪い。


「ほれ、揚がったぞ」


と、砂婆がサクサクとカツを切ってくれるのでタマモがご飯をよそってカツを乗せていく。


「カレーは好きなだけ自分でかけな」


と言うので女神ズの分にカレーを掛けていく。自分のも掛けたはずなのに一つ足りない?あ、テルウス来てるじゃん。と、もう一つ追加した。フィッシャーズ達には好きに掛けて貰った。


ガッシーよ、君はキレンジャーか?


大食いチャレンジみたいな掛け方をしているガッシー。お代わりすればいいのに。



「おっ、こりゃ旨ぇ。昼間のよりこっちの方が旨ぇよ」


ヘスティア絶賛。辛さはウェンディとアーパスに合わせて控えめにしてあるので、辛さを増したい人は唐辛子を自分で足してもらう。


セイもようやく一口食べる。おー、お家カレーだ。めっちゃ旨い。


「砂婆、何を入れたの?」


「鶏ガラと塩胡椒、リンゴとハチミツ、それに小麦粉じゃ。昔食べたのに近付いたじゃろ?」


「うん、旨いよ」


皆も旨い旨いと絶賛だ。これはスパイスを大量に買って里に預けておかなければ。しかし、ビールってあんまり好きじゃなかったけど、カレーとビールって合うんだな。


お代わりは辛口にして卵の黄身を乗せよう。ご飯に白身を混ぜてかき混ぜてから思いっきり辛口カレー、その上に黄身を乗せてと。


黄身をちょいと潰すとトロッと流れ出して実に旨そうだ。


「頂戴♪」


とウェンディが先に卵の所にスプーンを刺したのでほとんど黄身を持って行かれる。


「ウェンディ、これめっちゃ辛口だぞ」


「ふぇーひ、ふぇーひ!? んんんーーーっんふっんふっ」


ほらな、辛さが後から来るんだよ。


「勝手に人のを食うからだぞ。ぬーちゃん、ごめん牛乳もらってきて」


辛いのは水より牛乳を飲んだ方が収まるのだ。


ゴッゴッゴッと飲んだウェンディは少し落ち着いたようだった。


さて、お代わりを・・・


残りはヘスティアとテルウスに食われていた。


「自分達でお代わりすればいいだろ?」


「なんかお前の食ってるのが旨そうに見えんだよ」


「テルウスもか?」


「どんな味かなって試しただけよ。それに残したら間接キッスになっちゃうじゃない」


なら、人の物を食うなよ。


ヘスティアとテルウスと自分には同じもの、ウェンディとアーパスには辛さをまさずに月見カレーをお代わりする。フィッシャーズもそれを見て同じようにして食っていた。もう生卵には拒否反応がないみたいだった。


そして、あれだけあったカレーがなくなった頃。


「唐揚げさんっ」


と声をかけてきたのはオルティアだっけ?麻薬キノコにやられた駆け出し冒険者だった。


「その節はお世話になりました」


「無事に帰ってきたんだね」


「はい。ここが常駐の宿です。何を食べてたんですか?」


「スパイス料理だよ」


じーっと物欲しそうにするけどもう残ってはいない。


「残念ながら売り切れだよ」


「そうですか・・・」


と、口に指を咥える。


「いつも何食べてんの?」


「串肉とかお金が無いときは途中で摘んだ食べられる草とかです」


草食ってる?


「シーバス、駆け出しとかそんななのか?」

 

「そうだぞ。武器を買い替えるのにも金を貯めなきゃなんねーし、食いもんなんざ食えりゃいいって感じだったな」


「そうそう。あんなにまた魚ー?って思ってたのがそれすら食べられなかったわよね」


そうか。これが普通なのか。


でも食べざかりの女の子が草食ってるとか可哀想だよな。


するとこそっと砂婆が余りのカツを紙に包んで渡してきた。


「みんなにバレんなよ」 


と手渡すとめっちゃ嬉しそうな顔をする。


「いいんですか?」


と言いつつしっかりと握って離さない。


「余り物だけどね。テントの中で食べな」


「はいっ」


と俺を唐揚げさんと呼ぶ女の子はスキップして帰っていったのであった。



「セイ、情けかけんなっていったろうが」


「あれぐらいの歳のオナゴが腹を空かせてるとか忍びないからのう。男なら自分で稼げと思うが女は栄養つけとかにゃいい子供を産めんでの」


砂婆はそう笑っていた。妖怪なのにそういう事に詳しい砂婆なのであった。



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