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長女参戦

「じゃ、そろそろ行くか。春先にまた戻ってくるわ」


と、シーバス達は家族に伝えて出発することに。リールもお土産用にたくさん発注しておいた。冬の間の仕事がたくさんあって喜んでくれたのだ。


ガイアには急ぐ必要もないので街道を歩いていく。女神ズはぬーちゃんに乗っている。


「なんかセイには世話になりっぱなしだったな」


「俺はシーバス達と一緒だと楽しくて世話してるような気はしてないけどね」


「それでもさ。かぁちゃんの事とか本当に嬉しかったわ。親父と兄貴とも和解出来たしな」


「良かったよね。冬の間に船も出来るんだよね」


「おう。他にも船を無くした奴らも木を提供して貰ったお陰で安く作れると喜んでたぜ」


「あの木はもう使えるの?」


「いや、乾燥させてあるのと交換だ。枝も全部払ってくれてあったから、船大工たちも喜んでたぜ。冬の仕事がたんまりで儲かったってな」


「冬は漁もあんまり出られないんだね」


「内湾で自分たちが食べる魚ぐらいは捕れるけどな。外湾は荒れることが多いから危ねぇんだよ」


「冬の収入はどうしてるの?」


「あんまりねぇぞ。だから貧乏ってこともあるな」


「養殖したらいいのに。冬以外で捕った魚を網に入れといて、冬に売り出せば高値で売れるんじゃない?冬に魚の流通が少ないなら売れると思うよ」


「そんなこと出来んのかよ?」


「海の中にこういう囲いを作って網に張ったらいいだけだよ。餌はやらないとダメだけどね。食べない小魚とか乾燥させて、やるときに水を加えて団子とかにすれば食うんじゃない?」


「それが出来たら大漁で値崩れしそうな時も助かるじゃねーか」


「多分ね。ガイアから帰ったら相談してみたら?宿を本当にやるなら冬の魚の確保も必要だし」


「おー、やることいっぱいあるじゃねーかよっ」


「そう。魚が取れるところはやれることたくさんあるんだよ。シーバス達はいくつまで冒険者をやるつもり?」


「まだ考えてねぇけど、長くてもあと15年ぐらいか?」


「もう40歳超えるじゃない」


ツバスはそんなに長く冒険者をするつもりなのかと言いたいのだろう。


「まぁな。身体の動きが鈍くなってきたらそんなに稼ぐことも出来なくなるだろうし。他の仕事も出来るようになってないとダメなんだよなぁ」


「ま、それはおいおい考えておいたら?Sランクなら剣術教室とか魔法教室とか教える方も出来るだろうし」


「教え方なんかわからんぞ」


「時間あるときにクラマに指導してもらいなよ。クラマは俺の剣術の師匠だし、サカキは体術の師匠だから頼んだら教えてくれると思うよ。ただ厳しいから覚悟は必要だよ」


「セイはいくつから修行してたんだ?」


「4歳ぐらいからだったかな。剣術、体術、陰陽術とか精神修行とかそんなのをずっとやってたよ。当時は嫌だった時もあるけど今は感謝だね」


「そんな小さい頃から師匠に付いて修行してたのかよ。タマモも師匠か?」


「いや、タマモは母親代わりだよ。タマモは何が出来るのか知らないけど、何でもよく知ってるんだよ。俺のいた国の事以外も本当に色々と知っている。よく助言をくれるんだけど意味がよくわかんないんだよね。ずっと後になってから、あー、こういうことだったのかということばっかり」


「俺もクラーケンの討伐のときに剣の使い方がダメだと散々言われたわ。アドバイスを試してやっと斬れたって感じだな」


「タマモはクラマの使ってる刀をイメージしてたんじゃないかな」


「そういやクラマは変わった剣を使ってるよな?」


「そう。今日の夜にでも剣の談義をしてみたら?俺が話すよりわかりやすいと思うから」



そしてその夜からクラマとサカキによるフィッシャーズの男達は稽古しごきをされるのであった。



そしてガイアの領主街に明日到着するという夜に異変が発生。


「何勝手に人の国に入って来たのかしら?」


飯を食っていたら金髪美女が突然現れたのだ。顔立ちはなんとなくヘスティアに似ている。


「土の神様かな?」


「そうよ。どうしてわたしが見えるのかしら?私はそこの落ちこぼれ達に話し掛けたのだけど」


「セイ、テルウスだ」


とヘスティアが教えてくれる。


「どうも初めまして。ウェンディ達は力が落ちてましてね。今は神様じゃないから勝手に入って問題ないですよね?」


「私はどうして見えるのかを聞いたのよっ」


おー、ヒステリックな長女だ。どうして見えるかと聞かれてもよくわからん。


「俺の事は見えてますよね?」


「当たり前でしょっ」


「どうして見えてるんですか?」


「見えてるから見えてるのよっ」


「じゃあ、自分も見えてるから見えてるんですよ」


「キィーーーーッ」


あ、やっぱり姉妹だわ。怒り方がウェンディとそっくりだ。このあと攻撃されそうだな。


「テルウス、攻撃を仕掛けてくるなら捕縛するからな」


「神である私を捕縛するですって。やれるもんならやってみなさいよっ」


「式神」


セイは式神でテルウスを捕縛した。これでもう能力も出せない。


「あーっはっはっは。セイにちょっかいかけるからそんなみっともない目にあうんだ。おもしれーっ」


ヘスティア、挑発するのやめなさい。テルウスが般若みたいな顔になってるじゃないか。


セイは地べたに神様を転がしておくのも何なのでマットレスを敷いてそこに寝かせた。


「これを外しなさいっ。バチを当てるわよっ」


「俺達はガイアに用事があるんですよ。それ以外に何もする気は無いので黙って何もちょっかいをかけないと約束してくれるなら術を解きますよ」


「うるさいっ。早く外しなさいっ」


「セイ、ほっとこうぜ。肉が冷めちまうわ」


女神ズは長女のテルウスに冷たい。いきなり上から目線で来られたのもあるだろうけど、反りが合わないのかな?


まぁ、テルウスがギャーギャー怒ってる間は何を言っても無駄だろうからご飯に戻る。


「セイ、もしかして・・・」


「あぁ、土の神様が来た。縄張りに入ってるから文句を言いに来たんだよ」


「どんな女神さんなんだ?」


「金髪美人だよ。顔立ちはヘスティアと似ていてもっと大人っぽくした感じ」


「へぇっ。やっぱ女神様って美女美少女なんだな」


「そうだね」


「何よ?わたしだけ違うっていいたいわけ?」


「いや、ウェンディも美少女だぞ」


「なっ、なっ、なっ、何よそれっ」


ウェンディはてっきりお前は猿だとか言われると思っていたのに美少女だと言われて真っ赤になる。


「ウェンディとアーパスが同じ系統の顔立ちだよな。テルウスとヘスティアが同じ系統だな」


「止めてくれよ。あんなオバハンと一緒にすんなよ」


「誰がオバサンなのよっ」


ヘスティアの声が聞こえたテルウスがめっちゃ怒ってる。


「オバサンって失礼だぞ。確かに一番年上だろうけど、大人の女性って感じだろ?オバサンじゃないよ」


「あなた、よくわかってるじゃない。そんなちんちくりん達と一緒にしないで」


「誰がちんちくりんなんだよっ。ウェンディとアーパスに失礼だろうがっ」


ヘスティア、君もたいして変わらんのだぞ。


まぁ、女神をいつまでも縛り付けて放置するのもなんだよな。


「テルウス、落ち着いたか?」


「早く解きなさいよっ」


「わかったわかった。一緒に飯は食うか?」


「誰が人間の食べるもんなんてっ」


「そうか?天の実より旨いらしいぞ」


「人間がどうして天の実のことを知ってるのよっ」


「そりゃ、ウェンディ達とずっと一緒にいるからね。ほら、いい匂いだろ?」


香ばしく焼けた肉を鼻の前でゆらゆらさせてみる。


「いっ、いらないわよっ」


「はい、あーん」


「いらないってば」


「そう?」


パクッ


「うっまーっ、香ばしく焼けた肉うっまーっ」


グビグビ


「かぁーっ。焼肉と一緒に飲むシャンパン旨いわっ」


テルウスはちょっとよだれを出した。やっぱり中身はウェンディと変わらん。


もう一度鼻先でゆらゆらさせてみる。


「はい、あーん」


「いらないってばっ」


「一口だけでも食べてみ、早く食べないとなくなるぞ」


「ひっ、一口だけよっ」


落ちた。これでもう大丈夫だ。


ムグムグして目を見開くテルウス。


「じゃ、解くから一緒に食べよ」


と、術を解いてやり、隣に座らせた。


「俺はセイ。テルウスの事が見えてるのは、サカキとクラマとウンディーネ。見えてないのはフィッシャーズ達。みんな仲間だ」


サカキとクラマは軽く手を上げた。拾ったお前が面倒見ろよってな感じだ。


「で、何であんた達はみんな落ちこぼれたのよ?」


「へっへーん、テルウスには関係ねぇだろ?」


「ヘスティアには聞いてないわよっ」


「私はセイの女になった」


アーパス、やめなさい。


「はぁーー?神がそんなこと出来るわけないでしょうがっ」


「だから力を落した。毎日美味しいし楽しい」


「どういうことよ?」


「神の力を落とすと人間にも見えるようになるんだよ。仲間と一緒に飯食ったり飲んだりするためにヘスティアとアーパスはわざと力を落としてんだよ」


「そんなことをしたら元に戻れないじゃないっ」


「別にいい」


「アーパス、テルウスが誤解するだろ?」


「誤解?」


「ヘスティアとアーパスはいつでも神に戻せる。ウェンディはかなり時間が掛かりそうだけどね」


「戻す?」


「そうこうやって力を流してやるんだよ」


とテルウスの手を握って妖力を流そうとした。


何真っ赤になってんだよ?


「か、か、神の手を握ったわねっ」


「どっかに触らないと流せないからね」


「この責任どう取るつもりなのよっ」


「責任?」


「そうよっ。神と人間の間にあ、あ、あ、赤ちゃんが」


「手を握ったぐらいで赤ちゃんが生まれるか馬鹿。そんなこと言ったら俺はどれだけ子沢山になってんだよ」


「え?」


「セイは毎日ウェンディをおぶったり抱っこしたりしてんぞ」


「なんですってぇぇっ、あーーーーっ、隷属の契約なんてしてるのねっ。あなた女神をせ、せ、せ、性奴隷にしてるのねっ」


なんて人聞きの悪い事をいうお姉ちゃんだ。フィッシャーズ達に聞こえてないのが幸いだ。


「するか馬鹿。俺はウェンディのお守りをしているだけだ。こいつは食べたらすぐに寝るからな」


そしてちゃんと敬意をテルウスに話をする。



「本当でしょうね?」


「テルウスなら天界からでも様子を見れるだろ?疑うならガイアにいる間は見とけ」


「わ、わかったわよ。しっかり見てて変な事をしたらバチ当てるわよ」


「ヘイヘイ。シャンパンは飲むか?」


「美味しいのかしら?」


「さぁ?好みがあるからね。飲めなかったら続きは俺が飲むよ」


「わっ、わっ、わっ私と間接キッスを狙ってるのねっ」


久々に間接キッスとか聞いたな。


「そんなもん狙うか。嫌なら飲まなくていいぞ」


「頂くわよ」


グビグビグビグビ。


「あっ、美味しい」


というので飲ませていたら潰れやがった。


こうしてこじらせ系の美人女神テルウスも仲間に加わって行くのである。





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