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アーパスが立ち寄る村

翌朝日の出前に起きるとシーバスの家には人気ひとけがないので宴会場まで行くと屍がたくさんあった。こりゃ、今日の釣りは無理だな。


誰も起こさずにテントに戻って朝ごはん。砂婆にパンを持ってきてもらって焼いて食べる。昨日のイカがまだお腹の中にいる感じだ。


「今日は釣りすんだろ?」


ヘスティアはトーストのみの朝食を不満げに食べながらそういう。


「みんな飲み潰れているから無理だろうね。今日はのんびりしようか?」


「ならもう一度寝るか」


と二度寝を楽しむ事に。


そして昼前にテントの外から声を掛けられる。


「すまねぇ。今まで寝ちまってた」


「大丈夫。今日はゆっくり休んでたら?」


「いや、もうちょっとしたら釣りに行こう。それでも釣れる場所だからな」


ということでクラマを呼び船を出した。


クラマがいるからポイントまであっという間だ。


「ほら、これを使ってくれ。使い方はわかるか?」


「リールなんてあるの?」 


「よく知ってるな。この村にはこういうのを作る奴がいてな。欲しければ頼んでやるぞ」


土産にちょうどいいな。竿は何でできてるんだろうか?


「竿は虫系の魔物の素材だ。真夏しか捕れないから今から狩に行くのはむりだぞ。まぁ、在庫はたくさんあるだろ」


売ってくれるだけ買って帰ろう。お土産になるかもしれないしな。


と、ポイントに着くと釣り方を教えてくれる。下は砂地だから引っ掛かることはないから安心して釣ってくれとのこと。


餌はクラーケンの残りを細く切った物。


そして何も当たりがないまま時間が過ぎて潮が動き出した頃から釣れ始める。


「おー、キスじゃん。いいサイズだね」


クラマはベラや舌平目とかを釣っているがなかなか本命の甘鯛が来ない。


そして、なんとウェンディがファースト甘鯛を掛けたようだ


「逃がすなよ」


リールを無理矢理巻いてあげてくるウェンディ。


「ほらっ!わたしが一番よっ」


ベチベチベチベチっ


顔のそばで自慢して見せるから甘鯛の尻尾で顔をビチビチされたウェンディ。


「キィーーーっ。魚のくせにっ」


「やめろ。ほら外してやるから」


そして夕方になると甘鯛やホウボウといった魚が入れ食いで釣れたのであった。


晩飯は砂婆が甘鯛の松笠揚げを作ってくれる。


「ウロコを付けたまま食うのか?」


「そうじゃ、甘鯛はこれが醍醐味での」


と、シーバス達もウロコを付けたまま食べる事をしらなかったようだ。開いて干して食べるのが一般的みたいでさほど値段が付かない下魚扱いだった。キスは天ぷらに舌平目はバターで焼いてくれる。


「おぉ、こりゃ旨い。これなら甘鯛も売れるんじゃないか」


シオは商売になりそうで喜ぶ。


「そうだ兄貴、鰹も食い方次第で旨いぞ」


「どうやって食うんだ?」


「生のカツオを皮付きのまま炙って食うんだよ」


「あれ、ポン酢や醤油が無くても塩でも旨いからね。村の郷土料理で食べさせたら観光客とかくるんじゃない?」


「酒はどうすんだよ?ワインには合わなかっただろ?」


「麦から焼酎作れば?酒の作れるなら作れるんじゃない?ここではまったく作ってないの?」


「いや作ってる奴はいるぞ」


「ならワシがそいつに教えてやろう。明日にでも案内せい」


クラマは日本酒と焼酎の作り方を知っているらしい。酒を作ってるやつなら製法を教えて麹を渡せば作れるだろうとのこと。


「こんな所に観光客が来るか?」


「宿、飯、風呂が揃えば来るんじゃない。観光客向けに釣り船出せば遊べるし、後は船が出せない時ように他の事を考えたら行けると思うよ」


現地でしか食べられない新鮮な魚料理は人を呼べるだろう。


「宿か。そいつを建てるには金が掛かるな」


「木とかあれば安くなるかな?」


「おう、そうだろうな」


「じゃ、明日切り出しに行こうか。勝手に木を切っていい場所ある?」


「山ならどこでも大丈夫だ」


「了解。シーバス達は木材港置場の場所確保しておいて。俺達で木を切ってくるよ」


「大丈夫か?」


「問題ないよ。宿が無理だったとしても船とかにも使えるでしょ?」


「そりゃそうだけどよ」


「クラマ、明日は酒の作り方教える前に木を切りに行くからどれを切ったらいいか教えて」


「わかったのじゃ。このあたりの山は余り手入れがされとらんみたいだから、間伐ついでにやるといいわ。ひょうたんに戻ったらかまいたちにも言っておくわい」


「そうだ。アクアの宿で配管が繋がってないのにお湯とか出るの魔導具?」


「そうだぞ。魔石を使ってお湯をだすんだ。ガイアに行けば色々な種類が売ってると思うぞ」


魔石ってそうやって使うんだ。


「魔石ってゴブリンぐらいからしか取れたことないんだけど、他に魔石を落とすやつは何?」


「ゴーレムとかだな。それもガイアにいるぞ。そればっかり出るダンジョンがあるからガイアは魔石と魔導具をたくさん輸出してるんだ」


「了解。ダンジョンなら狩り尽くす心配ないね。大量に取ろうか」


「もしかしてここのためにか?」


「そう。仕入れるほど村にお金無いでしょ?ダンジョンから出るなら遠慮なく取れるし」


「お前にはこの村の事関係ねぇだろうが?」


「いずれシーバス達もここに戻るつもりなんだろ?それの手伝いだよ。村に働き口がたくさんある方が将来の可能性広がるじゃん。シーバス達もこの村になんかしたくて頑張ってんだろ?」


「ま、まぁな」


「ならちょっとだけ手伝うよ。こっちにいられる時間も限られてるし。本当に観光客を呼び込むならアーパスの名前を借りたらいいよ」


「神様の名前?」


「そう。アーパスが立ち寄る村とかにすれば?後はリザードマンが守る村とか」


「そんなこと出来んのか?」


「アーパス、いいよな?」


「セイがそう言うなら構わない」


「だって。ウンディーネを模した風呂とかあるといいよね」


「何々、私のも何かしてくれんの?」


「ガラスかなんかでウンディーネ像を作って風呂に置いといたらいいと思うんだよね、そこからかお湯が出るとか」


「なるほど。こんな美人が入れてくれるお湯とか名物になりそうだな」


「だろ?王都で売れない魚でも旨いやつが他にもあるんだろ?あと前にウンディーネにワサビが生えてるとこから株持ってきてもらって栽培したりとか色々とやれることあるぞ。醤油がないから他の食べ方を考えないとだめだけどな」


「おぉ、なんか上手く行きそうな気がしてきたぞ」


「将来ツバスとなんか店でもやれば?」


「バカッ、何を言い出すんだよっ」


「いや、ダーツとパールフも暫く冒険者を続けるだろうけど、子供が出来たらあちこち行けないだろ?落ち着ける場所を作っとくのもいいんじゃないかと思ってね」


「ダーツ達はともかく俺の事は余計だっ」


「そっか、余計なことだったな。ごめん」


「い、いや。有り難い話だ。でもそっちの事は自分でなんとかするから」


「わかった」


翌日から3日ほど掛けて木を大量に集めていく。乾燥させるのにも日にちが必要だから暫くは使えないだろうけど何年後かには色々と使えるだろう。


そしてクラマは焼酎作りの伝授、砂婆は魚でも料理の伝授を村人にしていった。



「セイ、今日は家でご飯作るから食べて行って」


と、パールフが誘ってくれた。



「へぇ、魚介のスープ?」


「漁師町のスープよ。私達は食べ飽きてるけど家の味ってやつかな。セイはこんなの好きでしょ?」


「パールフ料理上手じゃん」


パールフの作ってくれたのは洋風の魚の鍋みたいなものだ。魚介の出汁が出てて凄く美味しい。女神ズもモリモリ食っている。


「これにはワインも合うからね。他の料理はあんまり知らないけど、お父さんが魚を捕って来てくれてた時はお母さんがよく作ってくれてたのよ」


「家庭の味か。いいね、そういうの。うちは親がいなかったから砂婆の料理が俺の家の料理だね」


「みんな色々とあるわよね。セイは家庭を持つ気はないの?」


「俺には無理だよ。誰かを好きになるとかの感情もよくわかんないし、ウェンディをなんとかしないとダメだしね。もしそれが出来なかったらこいつの面倒をずっとみる約束してるからね」


「だって。シーラ、残念だったわね」


シーラはパールフの妹だ。歳は俺と同じ。


「ちぇっ。せっかく好条件の男だったのに」


「シーラも可愛いからいい人すぐに見つかるよ」


「この村にそんなのいないわよ」


「そのうち来るかもよ。今、シーバス達とこの村を観光地化出来るか話してんだよ」


「観光地化?」


「そう。ここは王都からも近いだろ?一泊二日ぐらいで遊びに来る場所としていいと思うんだよね。宿が出来たらそこで働くとかどう?金持ちとか見付けられるかもよ」


「そんなこと出来るの?」


「多分ね。パールフ達に稼いでもらって出資してもらって建てればいいんだよ。この料理も名物に十分なるよ。めっちゃ旨いし」


「お姉ちゃんお金出して」


「あんたは本当に現金ね、お金出してもいいけど、宿建てるぐらい稼ぐの無理かもしれないわよ」


「ダーツと合わせて出してくれたらいいじゃん」


「もうっ、あんたって子はっ」


パールフはちゃんとお姉ちゃんをしていた。この冬にガイアのダンジョンをじっくり攻略すれば宿を建てるぐらいのお金は稼げるかもしれん。


そして妹のシーラは宿で稼いで金持ちの男を見つける妄想に浸っていくのであった。



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