自分の物は自分で用意
翌朝、他の護衛達がフィッシャーズに話し掛けてくる。
「昨日の魔法凄かったですよね。なんていう魔法なんですか?」
シーバス達がこちらを見るので首を横に振っておく。女神ズがいるとなれば騒ぎになるのは目に見えているからな。
「お前らには使えん魔法だ。参考にならんから気にすんな」
そしてオルティアと名乗った女の子がこそっと話しかけてくる。
(あの・・・、私のバッグにお金が・・・)
(それ返しておくからアクアに着いたら皆に返しておいて)
(そ、そんなダメです)
(フィッシャーズ達には内緒ね。多分俺が怒られるから)
(いいんですか?)
(いいよ。そのお金は報酬が欲しいから取った訳じゃなくてお前たちへの戒めだから)
(でも)
(今回の事は教訓としてちゃんと学んでね。そうしないと簡単に死ぬから)
(はい。ありがとうございました)
そして皆が朝飯を食っている所に戻ると、
「お前、報酬返したんだろ?」
「なんだよ、バレてたの?」
「バレバレだ。まぁ、ヘスティア様が得た報酬だし、一旦受け取ったから使い道はお前の自由だからな」
「反省してたようだからね。今回の事を学んで死なないように活躍してくれたらいいと思うよ」
「まぁな」
朝はアジの干物定食と豆腐の味噌汁。ウェンディとヘスティアは豆腐を俺の味噌汁に入れていた。味がしないのが嫌らしい。フィッシャーズ達は味噌汁自体は旨いけど、豆腐は味がしないと言っていた。美味しいといったのはアーパスだけだった。
「さ、片付けたら山の方に向かうか」
荷馬車もゾロゾロとアクア方面とガイア方面に別れて出発していく。オルティア達もこっちに大きく手を振って出発していった。
皆がいなくなってから山に向かう。昨日出た麻薬キノコや毒キノコ類が多いのかしょっちゅう出てくる。
「毒キノコはぬーちゃん宜しくね。クラマ、俺は麻薬キノコを殺るから援護お願い」
念の為、口をタオルで覆い、クラマに風を出して貰ってこっちに粉が飛んで来ないようにしてから斬っていく。アイテムに変わった麻薬も確保しておいた。
「どうするんだそれ?」
「こっちにしまっておくから問題なし。治外法権って奴だよ。この中は違う国というか里に繋がっていてね、サカキ達の住処なんだよ」
「もうお前の説明はなんかわからんけど、大丈夫ってことだな?」
「そう。ポーション研究者に渡して何かに使えるか調べてもらうよ。もしかしたら中毒性を無くして痛み止めポーションとかになるかもしれないし。なんにも使えなかったらヘスティアに浄化してもらうから」
「ボッケーノへの持ち込みは違法じゃないのか?」
「さぁ?もし違法だったら姫様に許可貰えるか聞いてみるよ」
「お前、本当に何でもありだな」
「まぁね」
毒キノコは無害のキノコになったやつも多いから昼飯はキノコを食べる事に。
ベーコンとキノコのパスタにしてみる。バターとオリーブオイル、塩胡椒ガーリックと唐辛子で味付け。ウェンディとアーパスには唐辛子抜きにしておいた。
「お、旨いな」
「本当だ。パスタってあんまり好きじゃなかったけどこれは美味しいね」
「パールフはパスタ嫌いだったの?」
「売れない魚とかで昼飯にパスタばっかりだった時期があるのよ」
「へぇ、海鮮パスタとか美味しそうだけどね」
「それはもう毎日毎日毎日毎日・・・」
パールフは軽いトラウマになっているようだ。
「さて、こっからどう登るかだな。思ってたより険しいから持ってる道具じゃ無理そうだ」
「なら、飛んで行こうか。何回か往復したら全員登れるしね」
ぬーちゃんに鵺に戻って貰って飛んでもらう事に。
「うおっ。ぬーちゃんが変身したぞ」
「変身というかこれが本来の姿。尻尾を触ると即死級の毒が出るから触らないでね」
まずセイと女神ズが高台の所に行き、続いてシーバス達を運んでくれるぬーちゃん。
「セイ、我はこのままでいいのか?」
「何が出るかわからないからそのままで」
と言って妖力を流しておく。
「セイよ、ここは色々とおるぞ」
クラマが言う通り早速黒豚が出てきたのでサカキも呼ぶ。キノコ類の討伐の時は呼ぶまでもなかったのだ。
「お、肉か。鵺、全部狩るぞ」
サカキはぬーちゃんと狩りに行った。
「俺達もやるか。しかし、こんな高台に獣系の魔物が嫌がるとは驚きだな」
クラマはフィッシャーズ達の援護に入るようなのでセイは女神ズとお留守番。
今夜はここで野営になるかな?とテントの設営をしていく。ここは中腹なのでさらに上に行くのは明日にしたほうがいいだろう。
ぬーちゃんがせっせと肉を運んで来る。角有りもいるようなので、黒豚と角有りを自分達用にして、ノーマルやピンク、角無しは売るか孤児院に寄付だな。
砂婆に出て来て貰って、二人で黒豚をせっせとネギマにしていく。今日の晩飯は黒豚のネギマだ。これだけだと足りないだろうから角有りも串に指して牛串に。ネギマは塩、牛串は大根おろしポン酢がいいかな。ついでにキノコも焼くか。みんな良く食うしな。セイは二人では追いつかないと式神を出してスピードアップをした。
「手伝う」
「ん?別にいいよ」
「やってみたい」
アーパスが手伝ってくれるらしいので手が汚れにくいキノコ担当にした。やはり正確が真面目なのか物凄くきっちりと刺していく。
「暇だから俺達もやるぜ」
ヘスティアもウェンディもアーパスにつられて手伝ってくれるようだ。もう好きにやらせよう。
大量の串が出来たけど、誰が刺したか一目瞭然だ。アーパスのはキチッと機械でやったの?って感じ。ヘスティアのは無理矢理刺したと言わんばかりにモリモリ。ウェンディのはまぁ、幼稚園児に手伝って貰ったと思っておこう。
そしてもう食べると言い出したので先に風呂に入らせる。食ったら絶対に寝るだろうからな。
そしてフィッシャーズ達も戻って来た。
「もう飯の準備か?」
「ウェンディ達は風呂に入ってるよ。ツバス達も入って来たら?」
「あー、こうやって狩りの後にちゃんとお風呂に入れるのって幸せよね〜。あんた達もちゃんと入りなさいよっ」
「シーバス達も先に入って来なよ。また馬扱いされんぞ」
「セイ、お前いつも肉をどうやって保存してるんだ?俺達も結構狩ったんだけどよ?」
「じゃ、こっちで凍らせておくよ」
「氷の魔法使いがいんのか?」
「ユキメって娘がいてね、そいつが全部やってくれているんだ。ユキメが氷漬けにするとほとんど劣化せずにずっと保存出来るから」
「そいつも女か?」
「んー、女型っていう方が正しいかも。サカキ達と同じ妖怪だからね。美人ではあるよ」
「へぇ。その娘は出て来ないのか?」
ここは山の中腹で結構肌寒い。ここなら呼んでも大丈夫だろうけど前にタマモに怒られてから呼んでないんだよな。
「会いたいの?」
「そりゃあ美人と言われちゃなぁ」
仕方がない。
「ユキメ、出ておいで」
「はーいっ。やっと呼んでくれたのねっ」
いきなりベタベタしてくるユキメ。
「またタマモに怒られんぞ。ほら、紹介するからちゃんと挨拶しろ」
とフィッシャーズの男連中にユキメを紹介する。
「本当に美人だな。顔立ちはアクアの奴らと違うけど、すげぇ綺麗だ」
「ふーん、シーバスはこういう娘が好みだったんだ」
「うわぁぁぁぁっ。ツバス、いつの間に風呂から出たんだよっ」
「今よ。セイ、この娘は誰?」
ツバスはちょっとトゲのある感じで聞いてくる。
「こいつはユキメ。肉とか氷漬けにしてくれてるんだよ。ユキメ、シーバス達の狩ってきた肉を保存しておいて。それは俺のとは別にしておいてね」
「セイがそう言うならやっておいてあげる」
「いつも悪いな。じゃ」
「もうっ。また都合の良い女扱いするっ」
「じゃあ、ここで飯食っていくか?」
「うんっ♪」
(タマモ、出て来て)
「おや、ユキメ。あんたセイに呼ばれたのかい?」
ビクッ
「そ、そうよっ」
「そうかい。ならあたしも今日はここでご相伴にあずかろうかね。シーバス達もいいかい?」
「喜んでっ」
そこへサカキ達が帰ってきた。クラマはシーバス達の戦いぶりを見てサポートは不要とサカキ達に合流したらしい。
で、大量の肉を持って帰ってきたのでセイは仕分けする。
「何を分けたんだ?」
「ん?黒豚と角有り肉は自分達用。他のは売ってもいいし、孤児院に寄付してもいいかなって」
「一番高く売れるのを食うのか?」
「そう。美味しいのから食べたいじゃん。稼ぐのは他の方法で考える」
「そうか、セイは宝石とか他に稼ぐ方法持ってるんだったな」
「ダンジョンのお陰だね。アクアにはダンジョンは無いの?」
「アクアにはないが、ガイアにはあるぞ」
「何が出るか知ってる?」
「いくつかあって、目玉のダンジョンは魔導具だな」
「魔導具?そんなものが出るダンジョンがあるの?」
「そうだぞ。そこから出た魔導具を参考にして各種魔導具が作られてんだよ。まだ他にも眠っているらしいと言われてるがな、地下は魔物が多すぎて探索出来ていないんだ」
「地下は?って事は地上にも伸びてるの?」
「あぁ、上下に伸びている。山みたいになってんだよ」
「へぇ」
どんなダンジョンか興味があるな。上手く交渉出来たら便利な魔導具がもらえるかもしれん。
「ガイアは冒険者ギルドの総本部があるから冒険者も多いんだよね?」
「多いぞ。Sの奴らも5〜6組はいるんじゃねーかな?Aランクも多いしよ」
さすが一番歴史のある国だ。
「早く焼いてよ」
ウェンディ達が風呂から出て来て腹減ったと言うので飯にすることに。サカキ達に何が出るかわからんから飲むのを程々にしとけと言っておくが焼け石に水だろう。
ユキメはシーバス達の所へタマモが連れて行く。こっちは女神ズの世話をしないといけないらしい。
ドサドサと網に串肉を置いて焼いて行くことに。
自分で刺した物は自分で食べて貰おう。焼くのも自分でやれ。
しかし、ウェンディがセイの隣に座り焼けるのを待つ。
「これぐらい自分で焼けるだろ?」
と言っても聞く耳を持たずにニコニコとセイの顔を見るので二人分を焼いて行くことに。
「ほら、焼けた・・・」
焼けたぞと言おうとしたときにセイが刺した串肉から食っていくウェンディ。俺にお前が刺したグチャグチャのを食えと言うことか?
なんだよこれ?なぜ、肉肉ネギネギとかの順番なんだよ?と思いつつもセイはウェンディが刺した串肉を食べていった。
ウェンディはそれをニコニコしながら見ているのであった。