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高ランクパーティの教えと神の力

そして夜中に外が騒がしくなったので出てみる。


すでにフィッシャーズは外に出ていた。


「なんか出たの?」


「森に近いところにテントを張っていた奴が騒ぎだしたんだ」


「ヘルプには行かないの?」


「それは応援要請が来てからだ。もしくは本当にヤバそうな時だけ。護衛の仕事を受けている奴の邪魔になる」


依頼を受けた奴が護衛対象を守るのが当然で、他の護衛達も応援には入らず、護衛対象を守っている。応援にはいっている間に自分の護衛対象を危険に晒す訳にはいかないのだ。


「何が出てるんだろうね?」


「獣系や虫系ならもうこっちに出てもおかしくないが出てこない所をみると植物系だろう。恐らくキノコ類だろうな」


しかし、なかなか討伐が完了しないようなので様子を見に行くことに。


「エヘヘへ」


「ふははは」


討伐しにいったはずの冒険者3人が恍惚とした顔で座りこんでいた。


「セイ、口と鼻を塞げ。敵は麻薬キノコだ」


言われた通りに口と鼻を塞ぐ。


「あと、下手に切るなよ。粉が飛ぶ」


「じゃ、焼いたらいいの?」


「焼くなら一気に焼けよ。中途半端に焼けると粉を飛ばしてくるし、火力が弱いと焼けた煙にも麻薬の作用がある」


意外と厄介な敵だな。鬼火で焼くか。


そして狐火を無数に出して明るくすると幼稚園児サイズの赤くて鮮やかな色のキノコの群れがいた。


「これ順番に燃やしている間に他の奴の粉が飛びそうだね。一気に消滅させようか」


鬼火でも全部を一気に焼くのは難しそうだ。


「シーバス達はあの冒険者を回収して。ヘスティアにやってもらうから他の奴らが来たら下がらせておいて」


寝ているヘスティアを起こして連れてくる。寝ているところを無理矢理起こされてめっちゃ機嫌が悪い。


「なんだよぉ、ドラゴンでもあるまいしお前らだけで十分だろうが」


「あれを一気に消滅させられんのヘスティアだけなんだよ」


「しょーがねぇな」


ゴウッ


ヘスティアは浄化の炎を出した。辺り一帯が何もなくなったかのように消滅する。力が落ちててもこれだ。なんて恐ろしい。


そしてウンディーネが延焼しないように消滅した周辺をざーーーっと濡らしてくれて完了だ。


「セイ、おんぶ」


セイは眠たくて甘えたモードのヘスティアをおんぶした。


「シーバス、ヘスティアの浄化の炎で倒したからアイテムは出ないから放置でいいよ」



そしてヘスティアを寝かせてから麻薬にやられた冒険者を見に行く。


男1人に女の子二人。うち一人はめっちゃ若い。成人したてだろうか?


「あー、唐揚げの人だ。私にも頂戴。ねー、唐揚げ食べたいのっ」


誰が唐揚げの人だ。


女の子はセイに抱きつく勢いで唐揚げ唐揚げと言い出す。


もう一人の女性は風呂の人だと言ってズルいを連発。男は酒クレクレ攻撃だ。


ガッシーがゴツい剣の柄でドンっと腹を付いて男を気絶させる。そして女性と女の子にもしようとしたのでやめさせた。


「ダメだよ女の子にそんなことしちゃ」


「コイツら麻薬にやられている。力加減出来ずに襲われたみたいになるぞ」


と、ガッシーの言った通りに物凄い力で唐揚げっと言いながら抱きつかれた。


「じゃ、食べさせてあげるからあーんして」


とあーんしたところにポーションを入れた。


「はい、噛んで」


ぷちっ


このポーションは麻薬にも効くのだろうか?肋骨が折れる前に効いて欲しい。


「ダーツ、そっちの女の人にも飲ませて」


フラフラと風呂と言いながらウェンディ達が寝ているテントに近付くのを止めたダーツは無理矢理口にポーションをねじ込んだ。


気絶した男にも口に入れて噛ませてと言ってシーバスに渡すと、口をこじ開けて口に含ませてから顎ガツンと閉じさせた。歯とか折れてないだろうな?


唐揚げ少女はセイに抱き着く力が弱まり寝たような感じになったので、そのまま抱き上げた。


ダーツの方の女性も気を失ったようで襟元を掴んでズルズルと引っ張ってきた。なんて酷い扱いをしてやるのだ。


「ポーション効いたかな?」


「どうだろうな?取り敢えず目を覚ますまで見張ってないとな」


チーヌはツバス達と護衛対象の商人に事情を聞きに行っていた。



「どうだった?」


「あの3台の馬車は乗り合いだな」


「乗り合いってなに?」


「乗り合いってのはな、関係のない奴らが金を分担して護衛を雇うことをいう。普通は馬車一台に付き最低冒険者2人を雇うんだが、今回は3台で3人パーティを雇ったみたいだ。お前が抱っこしてんのは多分まだ駆け出しのEランクだ。残り二人はDってとこかな」


「そんなことまでわかんの?」


「こんなケチった依頼を受けてるのと、テントを張る場所が素人同然だ。あんな森の近くにテントを張ったら真っ先に襲われて当たり前だ」


俺たちは休息地のど真ん中にテントを張っている。飯とか皆に見せびらかせるのにそこを選んだのかと思ったら、一番安全な場所らしい。


そして、麻薬キノコにやられていた冒険者の男が目を覚ました。


「お、俺は・・・」


「お前は麻薬キノコにやられてたんだ。それを俺達が助けた。俺達の事は知っているか?」


「は、はい。ありがとうございました。あと二人は・・・」


「もうすぐ目を覚ますと思うから安心しろ。お前がリーダーか?」


「は、はい」


「じゃ、護衛対象とお前と俺たちで今回の報酬の話をしようか」


「はひ・・・」


「シーバス、報酬取んの?」


「あー、セイ。これは俺達に任せておいてくれ。お前はこういうの知らなさそうだからな」


なんかよくわからんけどシーバス達に任せておこう。


そして女性冒険者が目を覚ましたのでダーツがシーバスのところへ連れていく。


「ん、んんんー」


セイに抱かれている女の子も目を覚ました。


「どうだ?気分悪くないか?」


「あっ、唐揚げの人」


正気になってもそれを言うか。


「大丈夫そうだから降ろすぞ」


と、そっと地面に立たせた。


「唐揚げさんが助けてくれたんですか?」


誰が唐揚げさんだ。


「仲間がね。俺は何もしてないよ」


そこへシーバス達が戻ってきた。


「セイ、これが報酬だ。少ないけど取っておいてくれ」


「どれぐらい請求したの?」


「持ち金の半分だ。本来なら全部貰っても足りなねぇんだが無い袖は振れねぇからな」


時々不思議に思う。なぜこんな諺を知っているのだろうか?着物なんかないはずなのに。


半分残してあげたのは、無一文だとアクアに入ってから何も出来ないからだろうと配慮してやったらしい。


袋の中身は銀貨50枚ほどになるようだ。


「本当ならどれぐらいの報酬になるの?」


「だいたいアクアとガイアの行き来の護衛代金は冒険者一人あたり銀貨1枚。それかける日数だ」


そんなに危険な街道でないけど、命懸けで1日中護衛して銀貨1枚しか貰えないのか。


「ちなみにシーバス達なら1日いくらぐらいになるの?」


「この街道なら一日一人銀貨10枚かな。それに俺達は6人パーティでしか受けないから毎日銀貨60枚。そんなに払うやついねぇからもう俺達に護衛を頼む奴なんかいないんだよ」


そうだよね。払う側からすると3人雇って移動に7日間掛かるとして銀貨21枚でも高いと思うし、もらう側からしたら割の合わない仕事だな。ただこうして地道に実績を上げていかないとランクが上がらないらしい。


セイは自分の事を唐揚げさんと呼ぶ女の子のバッグにそっと貰った報酬を入れておいた。


「あの、唐揚げさんのお名前はなんとおっしゃるのでしょうか?私はオルティアといいます。Eランクです」


「俺はセイだよ。魔物が何かわからない時は迂闊に飛び込んじゃダメだよ」


「は、はい。助けて頂いてありがとうございました」


「じゃ、みんなの所に戻っておいで」


と帰らせた。今から唐揚げを揚げてやる気にもならんからな。



シーバス達は低ランク冒険者にコンコンと説教をしていた。報酬は取らなくても良かったがケチるともっと損をするということを商人達に分からせる為と、冒険者達には無茶な護衛を受けると護衛対象も自分も危ない事を分からせる為らしい。後は高ランクと思える奴らがいたらどこにテントを張っているかとか見て覚えろと言ったようだ。



「お疲れ様。お茶でも飲む?」


「セイって、本当にそういうのよく気が付くよね」


「まぁ、お茶くらいは自分でも淹れられるけどね」


「しっかしよぉ、ヘスティア様が神様だってのがよくわかったわ。すげぇなあれ」


「本来の力はドラゴンがたくさんいても、国全体を一発で浄化出来る力を持っているからね」


「おう、お前のお気に入りのウェンディもすげぇんだろな」


お気に入りってなんだよ?


「アーパスが言うには、ウェンディが神様の中で一番力を持っているらしいよ」


「あんな少女みたいな神様がなぁ。人間とは理が違うんだなと実感するぜ」


「そうだな。日頃は子供みたいなもんだけどね」



そしてもう寝ようとなりテントに戻ったセイはウェンディの横に寝転ぶ。スースーと穏やかに寝ているウェンディに腕枕をするとコロンとくっついてきた。


今日のヘスティアの浄化の炎を見て神の力を思い知る。ウェンディのことも普通の女の子みたいな感覚になってきていたが、やっぱりこいつも神様なんだよなと改めて思った。


俺はこうやって微量の妖力を流しているだけで本当にこいつを元に戻してやれるのだろうか?


もし自分に寿命がなくなったら、ウェンディを元に戻さなくても自分達が代わりに魔物の討伐や雨ぐらいはなんとかしてやれるから、ちょっとこのままでもいいんじゃないかと思い始めていたセイの心を改めさせた出来事なのであった。

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