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皆が野営するポイント

「だいたいどの辺りにいるか見当付いてる?」


「恐らくこの街道沿いに近いこの山なんじゃないかと思っている。この辺りから虫系の魔物が減って植物系の魔物が多くなるんだよ」


一角幻獣が犯人だとすればこの辺りらしい。


「ウドーとか出る?」


「それもいるけど麻薬キノコとか毒キノコが多くてな、あまり足を踏み入れたくない場所ではある」


「でも植物系の魔物ってそんなに強くないでしょ?」


「素材買い取り報酬が高くないから下手したらポーション代の方がかさむし、毒キノコとウドーのコンボにやられると強い冒険者でもあっさり殺られるからな」


なるほど。割が悪いのか。


「じゃ、アーパスもウンディーネもいるし火魔法主体でやろうか。延焼しそうなら雨か水をかけえ貰えば大丈夫だしね」


「あ、そうか。水の魔法の使い手なら魔力残量考えないとだめだけど、神様と大精霊なら余裕じゃん」


「そういうこと。毒キノコはぬーちゃんに殺ってもらえば問題ないし」


「ぬーちゃんって毒平気なの?」


「ぬーちゃんはあらゆる毒を出せるから毒が効かないんだよ」


「あんた本当に何でもありね」


とツバスに呆れられた。 



出発前に家具屋に寄ってもらって大きいマットレスを購入。アーパスが天界に帰れないから一緒に寝るために必要なのだ。


屋台で昼飯代わりの串肉を食べながら出発した。



「まず街道を走って行こう」


シーバス達は足が速い。森でも早かったけど道なら尚更だ。こっちはぬーちゃんが走ってくれるから楽だけど。


歩いている人や荷馬車をどんどん追い越して行く。アクアとガイアは流通が盛んなのか荷馬車が結構多い。


そして休息ポイントで休憩になったのでお茶にすることに。


「あー、食べてすぐ走ったからしんどかったね」


ツバスは座って首元をパタパタさせながらそう言った。


「前から思ってたんだけどみんなめちゃくちゃ足が速いよね」


「あー、パールフに支援魔法を掛けてもらってるのよ」


「支援魔法?」


「そう、体力強化魔法ってのがあってね、ズルしてんのよ私達」


「ズルとか言わないでよ。普通に走ってたらバテちゃうじゃない」


「冗談よ。パールフがいなかったらこんなに活躍出来てないんだから」


パールフは支援魔法が得意なんだそうだ。他は弱いけど治癒魔法と攻撃魔法が使える。ツバスは攻撃魔法主体で威力はかなりあるらしいが他の魔法はほとんど使えないとのこと。


「へぇ。魔法って色々あるんだね」


「魔法は人それぞれで適正があってね、遺伝するものでもないから自分が魔法を使える事を知らない人もいるわ。魔法が使えるとわかってもちゃんとした魔法学校とかもないから独学だったり、本を読んで自分で勉強したりとかなのよ」


「自分が魔法使えるってどうやったら分かるの?」


「詠唱して少しでも発現したら使えるわよ。火魔法の詠唱を教えてあげるからやってみる?」


と、一番簡単な詠唱を教えて貰ってもセイが魔法を使えることはなかった。


「ダメだね。ポーションを作るときに魔力を注ぐのは出来たっぽいけど」


「へぇ、それバレたら作らされるよ」


「うん、そう思って黙ってた」


そんな話をしてるときにケーキを持ってるのを思い出した。


「あ、これお土産で持ってきてたんだ。食べる?」


「なにそれ?」


「各種ケーキ。泊まった宿のデザートが美味しくてね、ツバス達も食べるかと思って買ってきたんだ」


「うわっ、めっちゃ気が利くじゃん。ほら、シーバス、こういう気遣いがうちの男にも必要なんじゃないの?」


「うるせぇな。食いたきゃ自分で買ってこいよ。セイ、コイツらは女神様じゃないんだからそんなことしてやる必要ねぇぞ」


「ふーん、じゃシーバスは自分で買って食べなさいよ。あんたの分は私が食べてあげるから」


と、ツバスは2つ取った。


「それとこれは別だろうがっ。俺も食べるぞっ。返せっ」


ツバスが持ってるケーキを奪おうと二人でギャーギャーとイチャつく。


「まだたくさんあるから、イチャついてないで好きなの取れよ」


「誰がイチャついてんだっ」


「早くしないとウェンディ達に全部食われるぞ」


女神ズの食べるスピードは早い。それにあまり喋らないガッシーとチーヌも食べるのが早かった。パールフとダーツは大人しくウマウマしている。


俺はロールケーキでいいか、とセイがロールケーキを掴んだらウェンディがスプーンで中のクリームをほじりやがった。


「お前、自分の食ってるだろうが」


「いいじゃない別に。代わりにこれあげる」


と、ショートケーキの一番下の土台を渡してくるウェンディ。綺麗にクリームだけ無いけど舐めはいだんじゃないだろうな?


セイは元ロールケーキとショートケーキであったであろうものを食べたのであった。


お腹が落ち着いたのを待ってまた走る。今日は街道の野営ポイントで野営をするそうだ。



野営ポイントに着くとすでに何台かの馬車が野営準備を始めている。ここに来るまでに追い抜いた馬車もいるからここは満員になりそうだ。野営ポイントは木を伐採したのか広場になっていて、湧き水も出ている場所がある。地面も皆が野営ポイントとして利用するから踏み固められて草が生えていない。



「シーバス、ここで野営するの?」


「そうだぞ」


「人が多いからうるさいね」


「こうやって人が固まってる方が安全だから野営ポイントはどこも同じだぞ」


「そうなんだ」


取り敢えずテントを出して準備をすることに。


「ツバス、俺達は一緒に寝るから風呂の後はそのテントは二人で使っていいぞ」


「え?セイは女神様と寝るの?」


「そう。ウェンディに妖力を流さないとダメなんだよ。二人きりで寝るのもなんだしね。そっちはシーバス達もそこで寝たら?ここ人がたくさんいるから場所空けといたほうがいいんじゃない。テント2つで全員寝られるし」


セイが寝るテントは普通のテントだから大きい。あっちのテントは拡張機能付だから小さいけど中の広さはこれと同じくらいだ。シーバス達のテントはノーマルテント。俺達がいないときは5人が寝て交代で一人が外で見張りをする。野営ポイントは人が多く、他の護衛達が見張りをしているので自分達が見張りを出す必要はない。何かあったら騒ぎになるからとのこと。見張りを出さないと6人ぎゅうぎゅうで寝ないといけないらしい。


「いいのか?」


「どうせ風呂も出すしツバス達が使うからいいよ。シーバス達のテントだと狭いだろ?」


次は飯の準備。角有り焼肉を食べたら冒険者飯なんか食えないというのでまた焼肉だ。フィッシャーズは砂婆特性タレの虜になっているようだ。


当然サカキ達も出て来て宴会になる。


他の人達はスープとパンや、護衛に付いてる冒険者達は干し肉とかを齧っているものも多い。


「護衛ってさ、飯は客が提供?それとも自分で用意するの?」


「依頼によって違うぞ。飯付きなら報酬が下がるから自分で用意するからその分報酬を高くしてくれとか交渉したりな」


へぇ。確か普通に移動したら一週間くらいかかるんだよな?ずっと干し肉とか嫌だろうな。


ここはアクアから来たら2回目の野営ポイント。ガイアから来たら4〜5回目の野営ポイントになるそうだ。ガイアから来た人達からか馬の臭いかわからんけど、そこそこ臭いが漂っている。


「この街道は身体を洗える泉とかあるの?」


「ちょうど中間の所には泉があるぞ。真夏なら水浴びしてもいいが、湧き水の泉だから冷たいんだ」


もう秋だから日が暮れると少し冷えるし、泉に浸かるとか無理だな。きっとみんな身体を拭いて終わりなんだな。


そんな話をしながら焼肉を焼いていく。ご飯は砂婆に持ってきて貰った。辺りに焼肉のタレが焦げる匂いを振りまきながら酒を飲んでいる俺達。すっごい見られてるけど誰かにあげたら我も我もになるからスルーする。護衛に付いてる冒険者は酒も飲めないしな。俺達のテント周りだけ異世界の中の異世界だ。


セイは酒を飲まずにご飯をガッツリ行くことに。


「砂婆、青紫蘇と赤紫蘇のふりかけ頂戴」


焼肉には紫蘇ご飯が旨いのだ。


「それなんだ?」


とシーバスが聞いてくる。


「青紫蘇と赤紫蘇。ハーブの一種だよ。青紫蘇はマギョロの刺し身にも付いてただろ?」


セイは青紫蘇をぽんと軽く叩いてから細かくちぎり、赤紫蘇のふりかけを掛けたご飯の上に乗せていく。


「おー、あれか。草かと思って食わなかったぜ」


「これ、魚にも肉にも合うんだよ。黒豚のバラ肉を塩コショウで焼いてワサビ乗せて青紫蘇で包んで食べてみ」


「私やってみよ」


とツバスが挑戦。ツバスは好奇心旺盛だ。


「うわっ、めっちゃ美味しい。いくらでも食べられそう」


「ま、タレでも塩でも好きに食べて」


「私もそれ食べてみたい」


とアーパスが言うので同じものを用意してやる。


んーっんーっとワサビを楽しみながら食べるアーパス。これも気に入ったようだ。


焼肉のタレをたっぷり付けて紫蘇ご飯をもりもり食べるセイ。ウェンディもヘスティアも同じ物を食べたいというから作ってやる。


「おかわりっ」


ワンコ蕎麦ならぬワンコ飯になるウェンディとヘスティア。自分が食うヒマないわっ。


「もう自分でやれよ」


とやらせてやっと食べられるようになった。


先にご馳走様して風呂の準備。


「ウンディーネ、宜しくね」


「はーい」


「これウンディーネの分ね」


と、ケーキを一箱おいておいたのを出す。


「ヤッタァ。甘いの美味しいよね。私の分を取っといてくれたの?」


「そう。今日なにしてたの?」


ウンディーネはついさっき来たのだ。


「リザードマンの所に行ってたの。手伝ってって言われたから海にね」


ケーキを消すように食べていくウンディーネ。人型じゃなかったらスライムと間違えるかもしれん。


「強い魔物だったの?」


「昼間は深いところの底にいる魔物でね、上にまであげて欲しいって言われたから私は運んだだけ」


「どうすんの?」


「周りの水ごと上まで持ってきてからざぱって落としただけ。後はやってくれたわよ」


なるほど。それなら俺達でもやれるかもな。


そしてゴボゴボしてもらって先にゆっくりと風呂を堪能した。


「みんな風呂どうする?」


男連中はまだ飲むなか、女性陣だけ先に風呂に入り、昨日あまり寝られていないウェンディは風呂でダウンしたのでパジャマに着替えさせられてヘスティアに連れて来られていた。


「お前らどうすんだ?もう風呂片付けるぞ」


とセイは飲み中のシーバス達に声をかける。


「俺達はもういいわ。一日二日風呂に入らんでも死なんからな」


ということなのでバスタブを片付けて就寝することに。 


今日買った大きなマットレスで女神ズと4人で就寝。ぬーちゃんはひょうたんに帰ってしまった。俺がウェンディに妖力を流し続けるからひょうたんで回復したいのだろう。


ヘスティアとアーパスにも妖力を流してやろうかと言うと消えそうだから嫌だと言われたので、ウェンディの頭を手の上に乗せて寝たのであった。二人が寝たあとにウェンディがコロンとこっちにくっついて来たので少し流れる量が増えた。でも半裸どうしとは比べ物にならんな。しかし脱がす訳にもいかん。他にたくさん流れる方法はないもんかな?


「がーはっはっはっ」


「サカキ、お前そんな酷ぇことしてたのかよっ」


飲んで喋る男連中はうるさいね。テントの中でも隣でしゃべってんのかと思うぐらいだ。周りの迷惑も考えろ。


他の荷馬車の護衛をしている冒険者達はフィッシャーズの事を知っているのか文句は言ってこないけど、次からは他の人達と離れて野営したほうが良さそうだ。


セイはウェンディに妖力を流しながらそう思ったのであった。

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