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153/323

認定

セイはまったく眠れなかった。ウェンディがいつ起きるかドキドキしっぱなしだったのだ。


が、そのお陰で手を繋ぐだけよりずっとたくさん妖力を流せた。その効果かウェンディが朝飯の時に起きた。


セイは万能薬を飲んで眠気を覚ませてから朝食を食べにいくことに。ここの朝食はブィッフェスタイルで食べ放題のようだ。



「ちゃんと起きれて良かったな。好きなだけ食べられるぞ」


そうウェンディに話し掛けると真っ赤になって顔を背ける。


実はウェンディも起きていた。グッとエネルギーの流れる量が増えて目が覚めたのた。そして自分が半裸で抱き締められている状況を理解した。セイが変な事をしてきた訳ではないことはエネルギーが流れて来ているので理解した。が、恥ずかしくて目を開けられなかったのだ。夜明け前までエネルギーを流し続けたセイはウェンディのバスローブをちゃんと着せて、自分も着直した後に手を繋ぎまたエネルギーを流してくれていたのだ。しかし、半裸で抱き締められてる時とは流れる量は段違いなのも理解した。


そして寝ている場所はベッドの端。自分がいつ寝たのか記憶に無いがセイはいつも端で寝る。くっついていったのは自分なのだ。


前に抱っこされていて驚いたときにいっつもこんなんなんだぞと言われたのが本当だと思った。本当に自分は無意識の時にセイにくっつきにいってるのだ。しかも今回はセイが自分をはだけさせたとも思えない。きっと自分がどちらの服もはだけさせたのだとウェンディは思い恥ずかしくてセイの顔を見れないのである。


「ほら、食べ放題だぞ」


「わっ、わかってるわよっ」


そして各自好きなものを取ってくる。セイはウンディーネの為にたくさん取ってきて食べさせた。ルール違反かもしれないけど結構払ってるからいいかなと思ったのだ。その分セイはあまり食べなかったけど。


「あのパスタっての美味かったよな」


ヘスティアもシーフードパスタを気に入ったようだった。


「あれ作れるのか?」


「多分ね。麺は売ってると思うから買っておこうか」


「へへっ、多めに買っといてくれよ」


「了解」


「あっ、そうだウェンディ」


「なっ、なに?ヘスティア」


「お前風呂に行くときに下着だけしか持ってきてなかったからセイにバッチリ見られたからな」


そんなことをバラすのはやめなさい。知らぬが仏なのだ。いや、神か。


「へっ、ヘスティアもいつも下着みたいな格好じゃないっ」


「神服を下着と一緒にすんなっ」


「あんなの一緒よっ」


そう、ヘスティアの神服と同じ。ヘスティアもあの姿でセイにエネルギー補充してもらってたんだから自分も問題無いと自分に言い聞かせたのだった。



宿をチェックアウトする際にデザートを大量に受け取る。5〜6個ずつ箱に入れられて布で巻かれた氷を付けてくれてある。


「こんなに用意してもらってありがとうね。いくら?」


「こちらは当宿からプレゼント致します」


「え?」


「当宿で支配人をしておりますバーチェルと申します。女神様に当宿をご利用頂き誠にありがとうございます。次回より無料でお好きなお部屋にお好きなだけお泊り下さいませ」


あぁ、あのレストランの人が報告して信じてくれたのか。だが残念だ。もうアクアに来る予定はない。


「付きましてはお泊り頂いた記念にアーパス様のサインなどを頂けると・・・」


「名前書けばいいの?」


「はい。こちらに飾らせて頂きます」


アーパスは名前を書いた。真面目な字だけど小さい。


ウェンディとヘスティアも書こうとするのを、ここはアクアでアーパスの庇護する国だからとセイは二人に書くのを止めさせていた。これはセイの優しさである。ヘスティアのサインと並べられたらウェンディが可哀想だなと思ったのだ。




待ち合わせの約束をした教会前に行くとフィッシャーズとギルマスが居た。


「良かった。また戻って来てくれて」


「どうしたの?」


「これはお前に持っていてもらう」


とギルマスから冒険者証を渡された。


「どういうこと?」


「本部長はクビになる見込みだ」


「え?」


「アクアのギルマス達が総本部に本部長を告発したんだってよ。総本部から人が飛んできて本部長を更迭したそうだ」


と、シーバスが説明してくれる。


「で、クビになるの?」


「あぁ。特別ランクを剥奪する権限もなく、犯罪を犯したわけでもないお前から特別ランクを剥奪した事で職権濫用罪が適応された」


「他にも横領とかなんかやらかしてたの?」


「いや、それはない。嫌な性格はしているが不正は他にはなかった」


「じゃあ、クビはやり過ぎじゃない?」


「ん?お前は怒ってはいないのか?」


「別に。ムカつきはしたけど身分証がなくなって不便だと思ったぐらいで。だからクビは取り消してあげてよ。本部長も家族とかいるんじゃないの?」


「そりゃあな。しかしペナルティ無しってのは通らんと思うぞ」


なるほど。


「なら、現場に出てCランクになれたら本部復帰とかどう?」


「は?」


「現場の苦労を知った人が本部に戻ればギルマス達もやりやすくなるかもよ」


「それでいいのか?」


「いや、これ結構キツイ罰だとは思うよ。魔物相手に戦った経験のない人がCランクになるのって。本部長はもうそんなに若くないだろうし」


「それはそうかもしれんな」


「今のは思い付きの提案だけど実際にどうするかはギルドに一任するけどクビはやめてあげてね」


ここは社会保障の無い世界だ。自分の事で一家が路頭に迷うとか勘弁して欲しい。ウェンディに悪さしたとかなら許さんけど、自分の冒険者証を取り上げたくらいで人の人生を狂わしたくない。



「セイ、あのクマは早速貴族が欲しいと申し出て高値で売れたぞ。それとガイアの商人の身分証の件は調査中だが恐らくこれの報酬ももらえるはずだ」


「良かったね」


「お前の報酬の取り分は半分でいいか?」


「こっちは虫の魔物の素材全部もらってるからいらないよ。お土産も手に入ったし、アクアの酒とか調味料とかも大量に買ったから満足だよ」


「わかった。あと質問なんだが女の子が一人増えてんだけど?」


「あ、そうそう。この娘はアーパス。わざと力を落として皆に見えるようにしたんだよ」


「私はセイの女」


まだ言ってる。


「アーパス様たと・・・」


「教会の像ともステンドグラスとも似ても似つかない私にがっかりした顔。可愛いと言ってくれたのはセイだけ」


「シーバス、ちゃんと挨拶してやれよ。お前たちの国の神様なんだぞ。ほらギルマスも」


しばらくフリーズしたまま動かないギルマスとフィッシャーズ。


そして


「ははぁー、アーパス様。いつも加護を与えて下さりありがとうございます」


と土下座をした。


「うむ、良きにはからえ」


「やめろやめろ。人が見てんだろうが。大騒ぎになるだろ」


もうざわつかれているので皆を立たせてギルドへと移動したのだった。



そして、セイの冒険者証を本部長が取り上げたとこから今までの経緯をちゃんと聞いておいた。


「他のギルドのギルマスも皆でヤバい橋を渡ってくれたんだね。ありがとう」


「いや、礼を言われる筋合いはない。こちらは詫びを入れないとならない立場だ。秘密を守れなくてスマン」


「それはもういいよ。あのポーションはそのうちボッケーノの研究者が作り出してくれるんじゃないかな」


「研究者ってセイに素材依頼かけている人か?」


「そうそう。自分で作り出すって意気込んでほとんど飲まず食わずで風呂にも入ってなかったから来る前に飯食わして風呂に入れてから来たんだよ。物知りだし熱心だからそのうち製法見付けるんじゃないかな?」


「お前風呂好きだな」


「だって気持ちいいし、人間臭くなるの嫌じゃん。男はまぁあれだけど、女の人が人間臭いとかなんかね」


風呂に入れない状況であれば仕方が無いが入らないのはダメだ。風呂に入らない人は元の世界にはほとんどいなかったからそういうものだとインプットされているセイ。妖怪達は風呂に入らなくても臭くならないから余計に気になるのかもしれない。種類によっては特有の臭いがあるのもいるけど。


「ん?女の人?お前が風呂に入れたポーション研究者は女か?」


「そうだよ。小柄な人でねウェンディより小さいよ。これを言ったら怒るけど」


フィッシャーズ達は顔を見合わせる。


セイが連れている神様は皆小柄だ。ヘスティア様が少し二人より背が高いがそれでも小さくて綺麗可愛い。そしてウェンディ様より小柄だというポーション研究者を風呂に入れてきただと?


セイは待ち合わせ場所に来た時からずっとウェンディ様と手を繋いでいる。アーパス様の事も女神像やステンドグラスより可愛いと言ったらしい。


なるほど、セイはそういうのが好きなんだ。


セイは知らぬ間にロ○コン認定をされたのであった。


ちなみにツバスは165cmくらいでこの世界の標準。パールフは170cmを超えるくらい。どうりでセイは自分達に興味を示さないはずだと妙な納得をして、今日の狩りの打合せをギルマスを交えてするのであった。



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