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でも効率がめちゃくちゃいい

「ごめんね、俺達は田舎者でテーブルマナーをよく知らなくてさ、ナイフとフォークの使い方を教えてくれない?」


自分はなんとなく知ってはいるが、女神ズの為にあえてそうお願いした。テーブルに付いてくれた人にチップとして銀貨1枚を渡すと丁寧に教えてくれる。


「ウェンディ、よく聞いておけよ」


「わかってるわよ」


「ガツガツ食うなよ」


「わかってるわよ」


「食いながら寝るなよ?そのドレスだとおんぶも出来ないんだからな」


「うっさいわねっ。この小姑っ」


店員がテーブルを離れた隙にしつこく注意をする。ここには飯を食いに来たのであって恥をかきにきた訳ではないのだ。


料理は酒抜きで一人銀貨3枚のお任せコース料理。料理を運んで来る度に料理の説明と食べ方を教えてくれる。


正直料理の説明は何を言われているのかさっぱりわからん。が、飯は旨い。


「これ、旨ぇな」


「はしたないですよ、ヘスティア」


「う、うるせぇな。旨いと言っただけだろ」


すぞーっ


「ウェンディ、スープは音を立てて飲んではいけません」


「うっさいわねっ」


見た目だけはとても良い女神ズ。人目を引くのだからちゃんとして欲しい。ちゃんと出來ているのはアーパスだけだ。



「失礼、お嬢様方は外国からお越しですか?」


キザったらしい男が声を掛けて来た。飯中に話しかけてくるとかマナー違反だろ?


「私はアクアで伯爵家の長男・・・」


「うるさい、人間ごときが馴れ馴れしく話し掛けてこないで」


アーパスの一撃。人間ごときって。


「こらアーパス。ごときって失礼だろうが」


「別に構わない。セイと楽しく食べているときに邪魔をされたくない」


「ということです。バチが当たらないうちにお引取りください伯爵様」


「うるさいっ。お前には話し掛けてはいないっ」


バシャっ


あっ・・・


アーパスがバケツをひっくり返したような水を掛けた。表情が乏しいからわかりにくいけど女神ズの中で実は一番短気なのかもしれない。


「セイに偉そうな口をきくな」


「伯爵様、これ以上バチが当たらないうちにお引取りを」


「こんな所で魔法を使うとは何たる無礼な」


「ウンディーネ、捨ててきて」


哀れ伯爵様はウンディーネにずざざざざっと外に運び出されていった。アーパスがバシャっとやった水も持っていったようで床も濡れていなかった。


「セイ、こんな服を着てアクセサリー着けて美味しいご飯食べれて幸せ。ありがとう」


何事もなかったかのようなアーパス。


「どういたしまして」


そして店員にこそっと、こちらへと呼び出された。


「先程のは魔法でございますか?困ります」


「騒がしてごめんね。実はあそこの3人は女神なんだよ。信じられないと思うけど。あれをやったのは水の神様アーパス。外に連れ出したのは眷属のウンディーネ」


「ご冗談を・・・」


「魔法であんなこと出来ると思う?」


「い、いえ・・・」


「アーパスって意外と短気みたいだから怒らせないで。まだ外界に慣れてないんだよ。青髪は風の神様ウェンディ、赤髪は火の神様ヘスティア。ウェンディとヘスティアは一緒に旅をしたりしてるから外界に慣れてるけど、アーパスは最近顕現したばかりでね」


「お客様、本当に冗談ではないのですね?」


「冗談ならいいけどね。ヘスティアとか怒らしたらこの店どころか建物ごと消滅するから」


「人を魔物みたいにいうなよ、そんなことするかよ」


スッと宙を浮いてやってきたヘスティア。


「なんだよ聞いてたのかよ?」


「なかなか帰って来ねぇから何かなと思って見に来たんだよ。他の男も寄って来てるからアーパスがまたやるぞ」


「しょうがないなまったく。ごめん、ちょっと寄ってくるやつを威嚇するけど許してね」


セイはテーブルに戻って寄って来た男共に妖力を込めて凄んだ。


「下がれ、誰の女に手を出そうとしてやがんだお前ら?」


自分で言っておいてなんだが、俺の女とか何を言ってるんだと思う。


ウッと、後ずさった男達は威圧に負けて自分の席に戻っていった


「私はセイの女」


「違うわ」


「でもそう言った」


アーパスちゃん、ちょっと面倒くさいかも・・・。


「冗談」


うん、この娘よくわからん・・・


これ以上いるともっと迷惑がかかりそうなので早めに料理を運んで貰った。デザートは部屋に運んでくれるか聞いたらコクコクと頷いたので早々に退散したのであった。



「ほら、汚さないうちに脱げ」


「また脱がす気かよ?」


「着替えろと言ってるんだ」


セイも脱いで普通の服に着替える。


しかし、落ちこぼれ女神が3人とかこれからどうしよう?先が思いやられる。


「ウェンディ、こっちに来い」


ウェンディには妖力を流す時間を持たないとダメなのでまた手を繋いだ。


「どうしてウェンディとだけ手を繋ぐの?」


「ヘスティアやアーパスにはドカッと妖力を流せるんだけど、ウェンディにはほんの少しずつしか流せないんだよ。だから四六時中こうしてても元の力まで戻せないかもしれなくてね」


「多分神の中でウェンディが一番力を持っている。力が減りすぎてそうなったのかもしれない」


もしかして乾いた山が保水力を無くして水が染み込みにくくなったのと似たような原理なのだろうか?


「天の実をちゃんと食べないから自業自得」


「あんなの食べても美味しくないじゃない」


「あれは力の源。食べないからそうなってる。多分」


「あれってそういうものなの?」


ウェンディは記憶回路に難があるから聞いてても聞いてないと言いたげだ。


「そ、そうだぞ。知らなかったのかよお前」


ヘスティア、君もウェンディが感染ってる癖に知ってるような素振りを見せるな。


「ウェンディ、お前が神でなくなったのは力というかエネルギー不足が原因なのはほぼ間違いない。ヘスティアとアーパスも力を落としたら人間に見えるようになったからな。ヘスティアに妖力を注いだらまた見えなくなったから、お前もエネルギーが回復したら天界へも帰れるようになると思う」


「本当?」


「ただな、お前には妖力が本当に入っていかん。人間みたいになったからかと思ってたけど違うかもしれない。こうしてずっと流し続けてたらもしかしたら流れる量も増えていくかもしれないんだ。恥ずかしくて嫌かもしれんけど我慢してくれ」


「べっ、別に嫌じゃゴニョゴニョ」


「なんだ?」


「うっさいわねっ。しょうがないから手を繋いでおいてあげるわよっ」



コンコン


「デザートをお持ち致しました」


ワゴンに乗せて持ってきてくれたデザートはすごい量があるけどなにこれ?好きなの選べってことかな?


パッとセイの手を離したウェンディは、これとー、これとーとか持って来たやつを全部食べるつもりらしい。


「これ、本当は好きなの選んでってことだよね?」


「えっ、あの、はい」


「全部食べそうだから、追加払うよ」


と、追加代金として銀貨2枚とチップを1枚渡しておいた。


メイドさんは銀貨をもらってホクホク顔で後ほど食器を下げに来ますといいながら紅茶を淹れていってくれた。


「ウンディーネも一緒に食べなよ」


「わーい」


俺はティラミスみたいなのを一つ貰った。


「あ、これ旨いわ」


というと皆に取られてしまった。


ここのデザート美味しかったな。明日ツバス達も食べるかな?


「ちょっとフロントに行ってくるから好きに食べてて」


と、部屋を出てフロントにケーキ類を明日チェックアウト時にテイクアウト出来るか聞いてみる。


「どちらをご準備いたしましょうか?」


「よくわかんないから出来るやつ全部用意しておいて。たくさんあってもアイテムバッグに入るから」


「では、箱と氷も準備致します」


支払いはその時でとなる。さすが高級宿だ。こんな時間だから無理な注文かと思ったけど嫌な顔一つせずに受けてくれた。


しかし、アクアは本当に飯も何もかも旨い。アネモスもこうだったらいいのに。


部屋に戻ろるともう大量のデザートは消えていた。


「さ、風呂に入って来い。広いから3人でも入れるだろ。俺は後からゆっくり入るから。あとウェンディ、風呂で寝るなよ。寝たらマッパのお前を連れて来るの俺だからな」


「ねっ、寝ないわよスケベっ」


こう言っとかないと本当に寝るからな。

今日は少しでも妖力を流していたお蔭かまだ寝てないけどもうすぐヤバイだろう。


で、案の定風呂で寝たウェンディをヘスティアが拭いて連れてきた。


「こいつ、下着しか持ってきてねーんだけどよ」


こら、下着姿のまま連れて来るんじゃない。


部屋にバスローブがあったのでそれを着せておいた。


先に寝ててくれといって風呂に行くとウンディーネがゴボゴボしてくれる。


「私も楽しいけど、アーパスも楽しそう。ジメジメウジウジが減ってよかったわ」


「表情変んないけどね」


「大丈夫。喜んでる喜んでる」


「なら良かったよ。後は時々帰って加護の雨を降らしてくれたら問題なしだね」


「アーパスはちゃんとやると思うよ。真面目だけが取り柄だから」


アーパスは力が少ないと言っていたから天界に戻る力も妖力を注げばすぐに溜まるだろう


「そうだね。アーパスは真面目だよね。あとさ、眷属にリザードマンっているんだよね?」


「いるわよ」


「何してんの?」


 「強い魔物と戦っているわよ。部下を引き連れて湿地で大きい蛇とか海で強い魔物とかアーパスの代わりに倒しているの」


「そいつらには加護の雨は効かないのか?」


「そうみたい。アーパスの力はそんなに強くないから、魔物が育っちゃったら眷属がやるしかないのよね」


「ウンディーネもやるの?」


「時々ね。でも水の中の魔物とは相性が良くないからリザードマンがやるの」


「なるほどねぇ。リザードマン達だけで倒せなさそうな魔物が出たらどうするの?」


「どうしよう?まだそんな事になったことがないからわかんない。アーパスと私と皆で共闘すればなんとかなるんじゃないかな。そのための眷属だし」


「グリンディルがいたらもう少し楽だったのか?」


「多分。あの娘は強かったから」


「確かに。人間になってもファイアドラゴン倒したからね」


「えーっすっごーい。グリンディルはファイアドラゴンを倒せるんだ」


こうしてウンディーネにゴボゴボして貰って話をして部屋に戻るとみな寝ていた。ベッドは一つしかないけど、ダブルを2つくっつけたぐらい広い。


セイはウェンディの隣に寝て頭の下に手をおいて妖力を流しながら寝たのであった。


そしてなんか妖力が流れる量が増えたなと思ったら重くなっていた。またウェンディが乗って・・・


うわっ。


セイがせっかくの高級宿の着心地の良いバスローブを着ないともったいないなと思いそれで寝たのと、ウェンディもバスローブだった事がこの状況を招く。


今、二人のバスローブはほとんどはだけて半裸同士でくっついていた。


ヤバいヤバいヤバい。こんな時にウェンディが目を覚ましたら何を言われるかわかったもんじゃない。


が、この状況は妖力が流れる効率がめちゃくちゃいいのだ。


えーい、ままよ。


セイはウェンディが起きるまでそのまま抱き締めて流せるだけ妖力を流し続けたのであった。



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