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成金のように買う

「さっきのは何だったんだ?」


「人魂って言ってね、幽霊の一種だよ。あそこに死体があることを伝えに来たんだろうね」


「それをどうしたんだ?」


「成仏させたんだ。もうここはお前たちの世界じゃない、お前たちは死んだんだと理解させるというのかな。もっと強い念を持ってたら、何にやられたか聞けたかもしれない。でもお前らみんな人魂見えたんだな。あんなの初めて見たか?」


「いや、海で何度か見たことがある」


「そうか、もしかしたら小さいうちに知らぬ間に幽霊と接触してたのかもしれんな。幽霊が見える人間って少ないんだよ。ただ強い念を持った幽霊と接触したことがあると少し見えてしまうようになることもあるんだ」


「幽霊と接触?」


「普通は幽霊は人間に触れないんだけどね。お前ら死んだ人が会いに来た事とかないか?」


「あっ・・・」


「あるんだな?」


「じいちゃんの乗った船が行方不明になった時にじいちゃんが家にいたんだよ」


「そうか。孫に最後のお別れに来てくれたんだそれ」


「夢じゃなかったのか・・・」


それぞれに同じような体験があったみたいだな。


「一角幻獣の討伐が終わったらシーバス達の村に案内してくれよ」


「漁村に来るのか?」


「海で亡くなってる人多いんだろ?」


「ま、まぁな」


「まだ村にさまよってるかもしれんから祓ってやるよ。あんまり長い間幽霊が現世にさまよってると悪霊になったりするからな」


「お前、そんな事も知ってるというかできるのか?」


「俺の本業は魔物討伐じゃなしにこういうのだからな。それにこの国でしか捕れない魚がいるなら持って帰りたいし」


お魚ダンジョンにリストを見せても出せない魚がいたから、出せない魚を食わせたら次から出してくれるかもしれない。甘鯛がいるとクラマが喜ぶかもしれん。


と、その時にサカキとクラマがピクッとしてぬーちゃんが毛を逆立てた。


「お前ら飲んでていいぞ。ちょっくらしょんべんしてくらぁ」


「程々にな」


サカキはアクアに入ってから飲んでるだけだ。虫の魔物には興味がないから力が余ってるのだろう。


しばらくするとサカキよりデカいクマを持って帰ってきた。


「なんだよそれっ」


シーバス達が驚く。


「クマだったんだ」


「こいつが犯人ならな。まぁ、クマの習性としちゃあり得る話だ」


クマは用心深い。仕留めた獲物をその場で食べたりはしないことが多い。死んでもアイテムに変わらないので動物だな。


「これ食うか?」


「いや、人食いクマなんかいらない」


「クマの毛皮はこれからのシーズンは高く売れるぞ。それにそれだけ大きければ貴族が欲しがるはずだ」


「じゃ、シーバス達が持って帰りなよ。明日一度戻って商人の身分証とかと報告してきたら?それが終わったら幻獣討伐に行こう」


「いいのか?」


「いいよ」


ということで興が削がれたけど、飲み直していったのであった。


「ウェンディ、お前こっちで寝ろ」


「どうしてよ?」


「御前に妖力を流すからだよ」


ぬーちゃんがいるとはいえ、なんか二人で寝るのは照れるのでヘスティアにも来てもらった。セイはウェンディの手を握る。


「こうやってゆっくりと流すから」


「てっ、手を繋ぎたいならそういえばいいじゃないっ」


「違うわ馬鹿」


なんか手を繋いで寝るのは恥ずかしいけど、極力流し続けないとウェンディの力は回復しない。


仮にヘスティアの1/1000しか流せないとする。ヘスティアを抱きしめて妖力を流し続けて天界に帰れるようになるのに3日掛かるとすれば、ウェンディは3000日かかる。約8年だ。8年間も抱き締め続けられる訳がない。


感覚的には1/1000どころではないだろうから、事実上力を取り戻してやれないことになる。信仰心が戻ったとしても加護の風を吹かせる事が出来なければ意味がないのだ。この手を繋いで妖力を流すのはこれ以上力を落とさない為のものでしかないだろう。でもやらないよりマシだからな。


ウェンディは手を繋がれて赤くなっているがセイにはそんなの気が付かなった。


ヘスティアはウェンディだけ手を繋がれているのにちょっと拗ねていた。


そして、アーパスが天界に帰ったふりをしてこっそりとドラゴンのウロコを身に着けていた事をセイは知らなかったのである。



翌日から2日掛けてアクアに戻った。


「街の中に入んないのか?俺達と一緒だと身分証無くても入れるぞ」


「そうなの?」


「あぁ。こう見えてもSクラスは優遇されてるからな」


なら、入るか。酒と調味料の調達しておきたいと思ってたからな。


「了解。じゃ、入るよ。どこに宿が取れるかわからないから、中で解散して明日の朝待ち合わせにしようか?」


「それでいいぞ」


ということになり、シーバス達は違う門から入った。これは貴族用の門らしく行列もなければ顔パスだ。Gランクだったらこんなズル出来たんだとちょっと後悔。


中に入ったところで朝に教会前で待ち合わせにした。


セイはずっとウェンディと手を繋いだままだ。


「街中もこれで歩くの?」


「そうだ」


バカップル再びだ。


「俺様は一人で寂しいじゃねえかよ」


「なら手を繋ぐか?」


「いっ、いいよ恥ずかしいから」


「だろ?」


俺も恥ずかしいのだ。しかし、旅の恥はかき捨てとも言う。どうせアクアの人達とはもう会う事もないだろう。


酒屋に寄っては買い占めていく。庶民街から貴族街の方へ向かって歩き、調味料とかも買い占めていく。高そうな酒屋は当然高い酒もある。これはお土産用だな。調味料というかバルサミコ酢というのがあって葡萄から出来ている酢も買う。めちゃくちゃ高いのもあるけど買っていく。各箇所で売ってくれるだけ買っていった。あとはチーズ関係とか。持ってるお金使い切ってもいいやぐらいの勢いだ。それでも金貨5枚も使ってない。


宿もこの前とは違う所でお城みたいな感じの宿があったのでそこにしてみた。一泊金貨1枚と銀貨20枚。成金たまからまぁいいか。


「今夜のお食事は予約されますか?」


ウェンディのテーブルマナーが心配なのでやめておこうとすると、ハイと返事をしやがった。


タマモ、晩飯堅苦しそうな所で食う?


「遠慮しとくよ。新婚旅行を楽しんで来な」


と、声だけ帰ってきた。新婚旅行ってなんだよ。


「じゃ、3人」


「私も一緒に食べたい」


「わぁぁぁっ。もうびっくりするだろ?」


「お連れ様でございますか?」


「あ、はい。え?」


「ハイ。これ返す」


「アーパスあんた・・・」


「私の力弱いから2日で落ちこぼれられた」


ディナーは4人分の予約になった。それとここはドレスコードがあるレストランのようで服を買いにいくはめに。


時間がないので早く選ばせる。


「わたしだけアクセサリーが無い」


セイは結婚式の時の服で済ませ、3人のドレスと靴を買う。そしてアーパスのアクセサリーを買うのに宝石店に行った。


「これでいい」


これでいいって金貨100枚もするんだけど・・・。


「金貨で支払うのと宝石で支払うのとどっちがいい?」


「宝石?」


「ちょっといいの持ってましてね、今二人が着けてるのと同品質のもの」


「は、拝見できますでしょうか?」


「何色がいい?」


「は?」


「だいたいの色は持ってるから」


「で、ではダイヤモンドを・・・」


透明の中くらいの大きさのを出してみる。


「か、鑑定させてもらっても宜しいでしょうか」


「どうぞ」


そしてしばらく待つと真赤な顔で帰ってきた。


「こちらでっ、こちらでお支払いをお願いいたしますっ」


「あと、二人の何かも付けられる?」


「お好きな物をお選び下さいっ」


「だって、ウェンディ、ヘスティア。好きなの選んでいいみたいだぞ」


「うーん、俺様はこれがあるからいいや。またなんか欲しくなったらセイに作ってもらうし。あのピンクゴールドって奴で作って欲しいんだよな。ここにはねぇみたいだし」


「わたしもー、あれで作って欲しい」


「わかった。ならもういいな?」


「うん」


「ということで、このセットと交換でいいかな?」


「あ、あのピンクゴールドとは?」


「ピンク色した金があるんだよ。残念ながら取引のある宝石屋に全部渡してあるからいま手持ちがなくてね」


「ピンク色した金ですとっ。そんなものがあるのですかっ」


「なんか珍しいらしいね。でも貴金属としてはプラチナや金の方が価値は高いらしいよ」


「い、いえ、そんな珍しい貴金属があればぜひ拝見をっ」


「いや、だからいま手持ちがないんだって」


「いつ頃手に入るかご予定は?」


「アクアから出たらもう来ないと思うから無理かな。ボッケーノまで来たら渡せるけど」


「ボッケーノから来られているのですか?」


「いや、アネモスから。ボッケーノとは比較的近いから行き来はしてるけどね」


「ボッケーノですか。うーんうーん」


「無理しなくていいって。馬車なら片道1年くらい掛かるみたいだし。じゃ、ありがとうね」


「お客様っ。このダイヤ、金貨300枚位の価値がありますっ。何かお釣りの代わりに商品をっ」


「別にいいよ」


「いえ、当店はアクアで名店と言われております。そのような事をしては名が汚れます」


そういうのもあるのか。


「なら、お釣り分として、民間の孤児院に寄付とか差し入れとかしてあげてくれる?子供達はろくに食べれてないみたいなんだよ。俺も寄付したけど、継続的に何か差し入れしてあげるほうがいいと思うから」


「ではお客様のお名前でさせて頂きますっ」


「いいよいいよそんなの。俺はアクアの住人じゃないから、ここの店の名前でしてくれたほうが賛同者が増えるかもしれないからね。じゃ、予約の時間があるから宜しく頼んだよ」


店員が大声で話すもんだから他の客にも丸聞こえだった。


黒髪、青髪、赤髪、水色の髪と芸人かと思われる一行はその店を去って行ったのであった。


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