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Sランクと楽しく狩り

翌朝、シーバス達と蝉系の魔物採集に向かった。こっちはぬーちゃんに乗って駆けるけどフィッシャーズ達は自らの足で駆ける。アネモスのアイアン達とは比べ物にならない速さだ。


まだいるかもしれないという森に近づくとシャーシャーとクマゼミのような声が聞こえてきた。


「セイ、ラッキーだな。まだ居やがるぜ」


本来6月ぐらいから出始めて8月前半にはいなくなる季節限定の魔物だから相当ラッキーなのかもしれない。シーバス達がいなければ見つけられなかっただろう。


鳴き声のする森に入ると大音響で耳が痛いほどだ。


「ほら、どんどん狩るぞ」


ツバスとパールフの女性二人は魔法使い。高いところにいる蝉を火魔法で倒していってくれる。


「ダーツのその剣は何?」


「これか?レイピアって奴だ。細いから突くように使うんだよ」


「へぇ、折れそうだね」


「まぁ、シーバスが使ってるような普通の剣とまともにやり合ったりすると折れるな。でもな虫系の魔物には結構有効なんだぜ」


「そうなの?」


「そう、例えばこいつだ」


と地面を這うマイマイかぶりみたいな魔物をパスッと突き刺したら液体の袋に変わった。


「こいつの腹を斬ると酸の液体をかけられてな、装備は溶けるし剣もダメになる。身体に掛かれば大火傷だ。その点レイピアなら頭だけとかピンポイントに狙えるんだよ」


「へぇぇっ」


ペンの九十九神に出て来てもらってスケッチと情報を書き加えていく。図鑑にはそこまで詳しく書いてないからだ。


「何だそいつは?」


「これはペンの神様ってところかな。図鑑のスケッチはこいつがしてくれてるんだよ」


「おー、すげぇな」


「ちょっと鬼蜘蛛に手伝わせるから皆ここに集まって」


そして鬼蜘蛛を呼び出して巣を張ってもらう。


「これは俺たちが掛かった罠か?こいつも魔物じゃねーんだよな?」


「ぬーちゃん達も全員そうなんだけど、妖怪って存在なんだよ。魔物ではない特殊な存在だね」


ウェンディとヘスティアは特にすることがないのでキョロキョロと見ていた。


そして蝉系の魔物が地面に落ちてるのを見付けたウェンディは棒でツンツンする。


ブブブブブっ


いきなりその蝉の魔物が暴れだした。


「キャァァァァァッ」


セミファイナルにやられて驚いたウェンディは飛び跳ねて蜘蛛の巣に掛かる。


「お前じっとしてろよ」


「取って、早く取ってっ」


そう叫ぶとスススと鬼蜘蛛が近付いて来たのでまたキャーキャー暴れてグルグル巻になっていった。今日も記憶回路はうまく作動していないらしい。


案の定鬼蜘蛛にべしっとされて外された。


「俺に渡すな。こっちまでにちゃにちゃになる」


そのまま鬼蜘蛛に持たせておいて湯船を出す。


「ウンディーネ、悪いけどお湯入れて」


「いいわよぉ」


とすぐに満タンにしてくれたので気絶しているウェンディを服のまま浸けてジャブジャブ洗い、洗い流しはウンディーネがやってくれた。



「お前、いつもこんなことをしてるのか?」


「哀れだろ?毎回なんだよ毎回」


そしてテントを出して中で着替えろと言っておいた。


ぬーちゃんが蝉系の魔物を追い立て飛び上がらせると次々に巣に掛かっていく。もうスケッチも終わってるので鬼蜘蛛に止めを刺してと指示すると、ぼとぼととアイテムに変わって落ちてきた。お目当ては羽と口だ。他のアイテムに変わったやつもいる。


「これ肉?」


「そうだ。売りもんにはならねぇけど結構旨いんだぞ。オヤツ代わりみたいなもんだな。焼くか揚げるかして塩で食うんだ」


いくつも肉になったので狐火で焼いて塩を掛けてみる。


「あんたファイアボールをそんな使い方できんの?」


ツバスが狐火に興味津々だ。


「これもぬーちゃんとかと同じ妖怪なんだよ。魔法じゃないから言う通りに動いてくれるんだ」


「へぇぇぇっ」


そして焼けたセミ肉を試食。オークやミノタウロスみたいな大きな肉の塊ではなく、1匹に付き拳程度だ。


どれ、ムグムグ。


「エビだね」


「だろ?エビは売りもんだからってくれねぇからこいつをよく食ったぜ」


「シーバス達は海のあるところ出身?」


「王都の隣にある漁村出身だ。みんな幼な馴染みでな。船は兄弟の上が継ぐから冒険者になった。ツバスとパールフは村を出るのに大反対されたけど付いて来やがったんだよ」


「あそこにいたら漁師の嫁にされてこき使われるだけの人生になっちゃうじゃない。せっかく魔法使えたのに」


「そうそう。朝から晩まで網の繕いしてご飯作らされて子供の面倒見る生活が確定しているからね」


「そうなんだね。でもSまで登り詰めたんだから賭けに勝ったって所だね」


「まぁね。でも漁師は網元は裕福だけど雇われ漁師は貧乏だから稼いでもお金渡さないとダメなのよ」


仕送りみたいなのをしてるのか。


もう蝉系の魔物は十分集まったので次の魔物を探しに行くことに。しかしまたウェンディが寝ているので昼飯にすることにした。


「どの虫食べる?食べたいの狩ってくるよ」


パールフがそう聞いてくる。いや、ちゃんとした飯が食いたい。ぬーちゃんも肉ーっと言ってるし。


「俺が肉持ってるからそれ食べよう。黒豚と角有りのどっちがいい?」


「黒豚?角有り?」


「ブラックオークか角有りのミノタウロスの肉だよ。カツサンドかステーキサンドにしよう」


「そんな高級な肉を売らずに食うのか?一塊で強壮剤より高く売れるんだぞ」


「あー、こっちは獣系の魔物が少ないから高いんだね。俺はアネモスにブラックオークが出る山とミノタウロスが出る山を持ってるんだよ。だから肉はいくらでも手に入るから気にしないで」


「山持ってんの?」


「一つは金貨5枚、もう一つは管理が出来ないからって貰ったんだよ。山を買うお金より税金が大変でね」


「あんたなんか色々と普通じゃないわよね?」


「そう。俺は普通じゃないんだよ」


そしてみんなステーキサンドと言ったので里で砂婆にたくさん作ってきて貰った。


フィッシャーズとぬーちゃんはそのままいったけど、ウェンディとヘスティアの分を4つに切って食べやすくしていく。


「何してんの?」


「食べやすく切ってる。こうしないとウェンディがちゃんと食べられないんだよ」


そう説明しているとテントからウェンディが起きてきて、大きいままのステーキサンドを齧ってまた中身を落とす。


「ほらウェンディ。こっちを食え」


と切ったヤツを渡すと食べさしを返してくる。


「ヘスティア、わざとすんなよ」


大きいのを手に取ったヘスティアに釘を刺す。なぜこんな事で対抗しようとするのだ?


「いっつもそんな世話を焼いてんの?」


「な、子守だと言ったろ?」


「う、うん。よくわかった」


良かった。理解してくれる人が現れた。


「美味しい」


「わぁぁぁっ。アーパス、気配もなく隣にいるのやめてくれ」


「ご飯の時に来てもいいって言った」


「そうだけど。それよりその大きいの食べにくいからこっちを食べろ」


「セイ、アーパス様が来てんのか?」


「隣で食ってる」


「その齧った後はもしかして?」


「そう、アーパスが齧った跡だ」


セイはウェンディとアーパスの食べさしを食べるはめになった。ウンディーネは大きくても一口だ。



「角有りのお肉ってこんなに美味しいのねぇ」


パールフがうっとりしてそう言う。


「野営して晩御飯に焼肉でもする?」


「さんせーっ」


ということで虫の魔物狩りを再開して夜まで狩り続けたのであった。



そして焼肉の始まり。魔物は鬼蜘蛛の巣でガードされているから安心して食べられる。寝るときも見張りはいらないと言ったので全員飲むようだった。


「狩りに出て、こんなに旨い飯を食って酒も飲めるとかすげぇよな」


「うちは毎晩こんなんだよ。稼いだ金はほとんどサカキ達の酒代になるから」


「嘘つけっ。鬼殺しとかドワーフの酒は貰いもんだろうが」


とサカキは言うけど、本当にサカキ達の酒代とウェンディ達の服とかにしかお金を使ってないのだ。後はめし代。


「よぅ、あんたクラマだったよな?もしかして今食ってるのはマギョロか?」


「そうじゃ。こいつで一杯やるのは格別での。セイ、アジの干物も焼いてくれ」


「ハイハイ」


「マギョロなんて見たことしかねぇぞ」


「ガッシーも漁村出身なんだろ?何で食ったことないんだ?」


「高値で売れるからに決まってんだろ。マギョロはかなり遠くまで出ないと捕れないし、バクチみたいな漁になるからな。捕れても食わしてくれることなんてねぇぞ」


「この前食べた店でもメニューになかったよね?」


「貴族街のレストランなら食えるぞ。庶民の店にはおいてねぇ」


「そうなんだね。ならマギョロ食べる?たくさん持ってるから死ぬほど食べればいいよ」


「マジか?そんな捕れるとこあんのか?」


「アネモスに秘密の場所があってね」


クラマは里に戻って砂婆にマギョロの盛り合わせを作ってもらってきた。そしてワサビと醤油での食べ方の説明と日本酒のことを語りだしたのであった。


「私もあれ食べてみたい」


とアーパスがいうので、各部位をもらってきて食べさせてみる。マリー姫みたいにワサビをほんの少し付けて食べさせた。


「んーっ、んーっ」


少しのワサビでもジタバタするアーパス。


「口から息吸って、はい、鼻から出して」


とスーハーさせると落ち着いた。アーパスに箸の使い方を教えるとすぐに使えるようになり自分で食べだす。少しワサビを付けてはんーっんーっの後に息を鼻から出してを繰り返す。癖になったようだ。


「このワサビの味知ってるかも」


「そうなの?」


「ちょっと取ってくるね」


とウンディーネは何処かに消えてしばらくしてからワサビを持って来た。


「こっちにもあんの?」


「山の沢にたくさん生えてるわよ」


へぇ。


「シーバス、ワサビの味好きか?」


「おう、マギョロも旨ぇし、ワサビも旨いわ」


「このワサビは山の上の沢に生えてるって。いまウンディーネが捕ってきてくれたんだよ。栽培は難しくかもしれんけど、冷たい湧水が出てるところなら栽培出来ると思うぞ」


「マジか?」


「あぁ。誰かに作らせたら売れるんじゃないか?」


「そうかもな。辛味ラディッシュより旨いぜ」


ホースラディッシュのことかな?


「肉とかに付けて食べるやつ?」


「そうだ。ガイヤから入ってくるんだ」


「もしかしてスパイス各種もガイヤから入って来るやつ多い?」


「そうだな。多いぞ」


ガイヤはもういいかと思ったけど、スパイス系の買付だけ行くか。お土産にもなりそうだしな。



そして夜遅くまで宴会は続いたのであった。



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