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もういいの

ウンディーネがいなくなった隙に風呂から出て着替える。マッパを包まれてたから今更だけど。


寝室に行くとアーパスにジロッと睨まれた。


「ウンディーネに何したの?」


「何もしてないよ」


ウンディーネはまた纏わりついてくる。

ちょっと気を使ったのか纏わりつかれてるのに濡れてないのが不思議だ。


「あなたに付いて行くって言った」


「まぁ、神も大精霊も瞬間移動できるだろ?飯食うときとかなら問題ないんじゃないか?」


「わかった。私もそうする」


ウェンディが選んだ服を着たアーパスは本当に姉妹のように見えるから不思議だな。髪型のせいかちょっと和風にも見えるし。


「タマモ、タマモ、ちょっと出て来て」


「なんだい?」


「アーパスって着物が似合うと思うんだよね。なんか合いそうなのない?」


「そうさね、ちょっと待ってな」


と、しばらく待つと浴衣を持って来た。


「もう夏も終わりだけど、あんたならこれが似合いそうだね」


白地にカラフルな毬があしらわれた浴衣だ。


タマモがあっち向いてなとセイに言って着付けていく。浴衣は比較的簡単に着付けられるらしい。もういいよと言われて振り向くととても可愛らしい。


「どうだい?」


「うん、可愛いよ」


スズちゃんが大きくなったらこんな感じなのかな?と思う。座敷わらしのスズちゃんは大きくならないけど。


「タマモっ、私もこれを着たい」


「俺様もっ」


「いいけど、これは服に比べて動きにくいから一度寝巻き用の浴衣で試しな。それで問題がなければ用意してやるよ」


と、旅館の浴衣みたいなのを持って来て着せ方を教えて二人に着せた。


「あんまり可愛くない」


「寝巻きだからね。それで試してからにしな」


ということで寝ることに。ウェンディとヘスティアをダブルベッドに寝かせて、セイはエクストラベッドに。


「ふふふ、マットになってあげようか?」


「ん?マット?」


「そこに寝転んで」


とベッドに寝転ぶとマットと身体の間に入ってきてウォーターベッドみたいになる。濡れもしないし宙に浮いてるみたいだ。


「どう?」


「慣れたら楽かと思うけど、今は酔いそうかも」


ちょっと船酔いしそうな感覚だ。


「もうっ」


喜んでくれるかと思ったのにそうではなかったので拗ねるウンディーネ。


一番寝やすいのはぬーちゃんに抱きついて寝ることだな。


「俺はこれが一番安心して寝られるんだよね」


と、ぬーちゃんに出て来てもらって一緒にベッドで寝る。


「魔物と寝るの?」


「ぬーちゃんは魔物じゃないよ。フワフワで気持ちいいんだよ」


そして疲れてたのか酒が残ってたのかぬーちゃんに抱きつくとスーッとセイは寝てしまった。


「ふーん。じゃ私もぬーちゃんにくっついてみよ」


ほよほよと姿を人型に変えてセイの反対側に回りぬーちゃんに添い寝するウンディーネ。


アーパスも帰らず、ウェンディ達と3人で寝るようだ。


そしていつものごとく夜明け前に重くて目が覚める。ヘスティアも重くなっているので二人分だろう。


「重いって」


と目を開けると浴衣がはだけた二人。


「うわぁぁぁぁっ」


暗くてはっきりは見てないけど、胸元も足もはだけているのがわかる。慌てて二人に布団をかぶせてタブルベッドに移動するとアーパスは何も着崩れずキチッと寝ていた。外着の浴衣で寝るものなんだけど、寝相って正確が出るのかもしれない。ウジ神とか言われているけど真面目そうだからな。


二人の重みで身体がバッキバキなので風呂に入ってほぐす事に。


ふぅっと浸かっているとウンディーネがいつの間にか風呂の湯と同化していた。


「こんなことも出来るよ」


ゴボボボボと水流と泡を出してくれる。これはジャグジーというやつだろうか?めっちゃ気持ちいい。


「これめっちゃ気持ちいいよ」


ほっこりと笑顔になったセイを見て喜ぶウンディーネ。


「なぁ、何で俺に気に入られようとする?見えてるからか?」


「初めはね。でもこうしてまとわりつくとエネルギーがもらえるの」


あー、ウンディーネもチャージしてきてんのか。


「日頃はどうやってエネルギーを接種してるんだ?なんか食ってる訳じゃないんだろ?」


「自然にエネルギーは供給されるよ。でもこうやってもらえるのは嬉しいの」


「そうなのか。多めに流してやろうか?」


「そんな事出来るの?」


「出来るよ」


とそのまま身体から妖力をドーっと流す。全身密着してるからなのかめちゃくちゃ効率よく流れていく。急速充電ってやつだな。


「すっごーい」


そして良からぬ事が起こる。透明ではあるけどくっきりと人型になったのだ。しかもウェンディとそっくりに。


「な、な、な、何してんだよ?」


「ウェンディの事が好きみたいだからそっくりになってあげたの」


「違うっ」


「だって、ウェンディがくっついて寝に来てた時に抱きしめてたわよ?」


俺はそんな事をしていたのか・・・


「寝ぼけてぬーちゃんと間違えてたんだよ」


そしてウェンディもヘスティアも今日は朝ごはん前に起きた。もしかしたら素肌同士で密着してた時間が長くてエネチャージが効率よかったのかもしれない。ウンディーネは見てたのかもしれないけど怖くて聞けない。


ウェンディとヘスティアは起きた時に掛け布団の中で自分達があられもない姿になっているのに気付いて真っ赤になっていた。タマモはこうなることを予想して浴衣を着せたんだな。二人が浴衣を気に入ってしまったら毎回毎回着付けをさせられるのが嫌だったのだ。タマモの狙い通りそれから二人は浴衣を着たいと言わなくなった。



アーパスとウンディーネも朝ごはんを食べたいと言うのでルームサービスというものを頼んだ。めっちゃ高い。


パン、スクランブルエッグ、ジュースで銅貨50枚ですと?


皆食べたりないようなので、砂婆に朝食を持って来てもらったのだった。



街に出て教会に行くことに。何か情報がないか調べたいのだ。


ドアが開いてるので中に入るとそこそこお祈りに来ている人もいるので見学させてもらう。ここのアーパス像も美しくスタイルのいい像が祀られていた。


「全然似てないよねー」


ウンディーネ、君は眷属なんだからもっと敬いなさい。


アーパス像の隣には女性像とワニの戦士みたいなのがいる。


「これは何?」


とウンディーネに問いかけたつもりが


「リザードマンです。アーパス様の眷属ですよ」


「うわぁぁぁぁっ。びっくりした」


「クスクス、驚かせて申し訳ございません」


返事をしたのは神官だった。


「外国の方ですか?」


「あ、はい。アネモスから来ました」


「まぁ、随分と遠いところからいらっしゃったのですね。水の神様へのお祈りありがとうございます」


「あ、いえ。お祈りに来たのではなくちょっと神話とかに興味がありまして、何か聞かせて頂けたり、本を読ませて頂けたらなと思ってまして」


「そうでしたか。ではこちらへどうぞ」


教会の図書室みたいな所に案内してくれた。



「このあたりの本が神話関係になります。持ち出しは出来ませんがここでお読み頂くのは自由ですのでごゆっくりどうぞ」


神話関係の本を読んでみることに。


内容はこの世界の成り立ちから書かれているけどヘスティア曰く嘘だそうだ。


それを聞いていっぺんに読む気を無くす。元の世界での歴史をタマモが嘘だと言ったのと同じだからだ。


「本当の事は何か書かれていないのか?」


「ねぇな。合ってるのは大地、水、火、風の順番に神が現れたって所だけだ」


「そうか。なら、読むだけ無駄だな」


神の加護がどういうものかも書かれていない。


「お前たちを元に戻すような記述もないね」


「そりゃそうだろ。俺たちですら理由がわかんねぇんだからよ」


残念ながら教会にヒントになるようなものは何も無かった。本を読むのも早々にやめてその部屋を出るともういいのですか?と聞かれた。


「はい。残念ながら参考になるものがなくて」


「そうですか」


「ちなみに神官さんは神の加護ってどのようなものかご存知ですか?」


「はい、アクアは水の神様の恵みによって豊かに作物が実り、飢えることなく暮らしていけるのです」


「神の加護ってそれだけじゃないんですよ」


「え?」


「神の加護の本来の意味は魔物の弱体化というか人間より強い魔物が出ないようにするものなんです。アクアはアーパスが頻繁に加護の雨を降らせているから強い魔物に襲われていないのですよ」


「そんな話は初めて聞きます」


「でしょうね。こちらの本にもそのような事は書かれていなかったので。アーパスは雨を降らせろ、やませろしか言われないと嘆いてますよ」


「ちょっ、ちょっ、ちょっ、何を仰るのですか?神様が嘆いているとは失礼なっ」


「いや本当に。自分は利用されているだけで虚しいと言ってましたからね。街の人々も雨を降らせ続けたりずっと降らせなかったりで気まぐれな神だとも言っていましたから。キチンと神の加護の事を理解してそのことを感謝して喜ばないと加護がなくなりますよ」


「キィーーーーッ。余所者にそんな失礼な事を言われたくありませんっ」


神官は侮辱されたと取り、怒ってしまったようだ。


「ね、教会の神官ですらこれだからもういいの」


「わぁぁぁっ。お前天界に戻ったんじゃないのかよ」


いつの間にか隣にいたアーパス。何の気配もなく突然隣にいるのはやめて欲しい。


「もういいのとか言うなよ。ちゃんとお祈りしてくれてる人がこんなにいるじゃないか」


「普通の雨は勝手に降るから私がやらなくても問題ない。人間が望んでいるのは作物が実る雨だけだから」


「いや、それでもさぁ」


「行こ」


とアーパスは手を繋いでセイを教会から連れ出し、神官は突然一人芝居を始めたセイを訝しげに見送ったのであった。







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