表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

141/323

また増えるかもしれない

ここで暴れられたらまた弁償になるから、お会計をして外に出ることに。


「飲み足りねぇぞ」


「山程色んな酒が里にあるだろうが」


「もうねぇぞ」


こいつ・・・


どうやらトウモロコシの酒とかアイテムバッグに入っている分しか残ってないらしい。取り敢えずそれの樽を渡すと里に帰って行った。


「セイ、後は任せたよ。神の相手は得意だろ?」


タマモも面倒臭くなりそうな気配を察知してぬーちゃんとクラマ、砂婆を連れて帰って行ってしまった。薄情な奴らだ。


宿で暴れられても困るので教会の前の噴水に座って話をすることに。


ずざざざと水の音がしたかと思ったらウンディーネが後ろから水の腕を回してきた。


「ふふふ、やっと来た」


「止めろよ。濡れるだろ?」


「離れる時に乾くわよ。全部持っていくから」


そんな事が出来るのか。今濡れているとはいえ涼しくてちょうどいいからそのままにしておく。


「ウンディーネ、何をしているの?」


「くっついているの」


「そう」


なんだこの会話は?


しかし、ウンディーネに纏わりつかれている俺の姿は他の人からどう見えているのだろうか?水に浸かっているように見えるのか?それともこの水はウンディーネだから何も見えていないのかよくわからない。


「で、どうやったら私の眷族になるの?」


「だからならないってば。俺はウェンディともう契約してるんだから」


「あなたが主人で落ちこぼれが下僕。そんな契約どうにでもなる」


「言わないでっ。セイに言わないでっ」


「ウェンディ、セイはもうそんな事はとっくに知ってる。知っている上でそう言ってるんだ」


ヘスティアが俺が契約の事を知っている事をバラした。


「え?セイが契約の事を知ってる・・・」


「ウェンディ、契約での主従関係なんてどうでもいいよ。俺はお前と契約じゃなしに約束をしたんだ。神に戻す契約はもしかしたら難しくなってしまったかもしれないけど、お前を守る約束はちゃんと守る。主従関係とかくだらないことを今更気にすんな」


「い、いいの?」


「契約の事を知っていてもここまで散々面倒見て来ただろ?」


「う、うん」


「なら、そういうこった。何も気にすんな。お前を構うのは別に嫌じゃない」


まだ少し酒が残っているセイは素直にそう言ったのであった。


ウェンディの顔が赤くなったのに気付かないセイはアーパスと話をする。


「俺を眷属にして何をさせるつもりだ?」


「私は何をしても人間は喜んでくれない。雨を降らせろ、やませろしか願って来ない」


「でもちゃんと神のままなんだから皆に信仰心はあるわけだろ?」


「利用されてるだけ」


「あー、そうとるのか。ウェンディなんか加護の風を吹かしても恨まれて信仰してくれなくなったんだぞ?それよりはいいじゃないか」


「虚しい。大神に使命を与えられてやってるけど虚しさしか残らない」


そう言ったあともグジグジと不満とどうせ私なんかとか無表情で言い続ける。うん、ネガティブだな。ウジ神と呼ばれる意味がわかった。


「別に眷属にならなくてもアーパスの偉業は俺がここにいている間に人間に伝えるから。それでいいだろ?」


「でもズルい」


「何が?」


「ウェンディもヘスティアも落ちこぼれの癖に凄く楽しそうだった。私にはそんな楽しいも美味しいもない」


確かにヘスティアが外界に居着いたのも元々は退屈しのぎだったのが天界で一人でいるのが寂しくなったからだよな。ヒトリデいるのが当たり前だったのが皆で楽しく飯食って酒飲むことを覚えたらそうなるわな。


「まぁ、俺達がいる間は飯食いにくればいいんじゃないか?神なら瞬間移動できるだろ?」


「いいの?」


「別にいいよ。だけどな、神の力がどうやったら落ちるかよくわからないんだよ。ヘスティアの力が落ちたのは勝手にアクアに入った罰か?」


「知らない。入っちゃダメとしか教えてもらってない」


アーパスも知らないのか。


「なら、俺たちと長く一緒にいるとお前も落ちこぼれるかもしれないんだぞ」


「落ちこぼれたらウェンディやヘスティアみたいに人間から見えるの?」


「多分な。ヘスティアもアクアに入るまでは人間から見えなかったからな」


「なら私も落ちこぼれてもいい。そんな服も着てみたい。キラキラしたアクセサリーも着けてみたい」


そう言ったアーパスにウェンディとヘスティアがくるっと回って服とアクセサリーを自慢するように見せる。


「私もずっと一緒にいる。私も同じ様なのが欲しい。それで眷属は諦める」


「私もほしいなっ」


セイの顔の横に水の顔を出したウンディーネもおねだりする。


「ウンディーネ、君は液体だろ?服とかアクセサリーとかどうやって身に着けるんだよ?」


「大丈夫♪」


何が大丈夫なのかさっぱりわからん。まぁ、宝石はたくさんあるからいいけど、アクアの宝石屋で見せたら騒ぎになるんじゃなかろうか?


「別に宝石と服はいいんだけど、似合うのとかわからないんだよ。服はともかく宝石はボッケーノまで戻ったら信用出来る店があるけど」


「じゃあボッケーノまで我慢する」


「ボッケーノに入って落ちこぼれたらどうすんだよ?」


「別にいい」


もう言うことを聞かなそうなので女神本人の判断に任せることにした。服のサイズはウェンディとほぼ同じ感じだから、ウェンディ用に買った服を選ばせるか。



「えーっ、アーパスにあげるの?」


「山程あるだろうが。どうせ買うだけ買って着ないくせに」


そう言うとプクッとむくれたが、ウェンディもヘスティアもアーパスが羨ましがる気持ちは理解したようで、宿に帰ってから一緒に服を選んでやるようだった。


女神ズが服を選んでいる間に風呂に入るセイ。


はぁー、ここのバスタブは広くていい。猫脚のバスタブなんて初めてだな。


貴族が入るような花柄模様の入ったバスタブは金の猫脚で支えられているようなデザインだ。寝転ぶようなスタイルで浸かるとツルンと滑って溺れそうになるけど浸かり心地はなかなかに良い。不思議なのは水の出る蛇口とお湯の出る蛇口には配管が繋がってない。どういう仕組みなんだろう?


マジマジと不思議な蛇口を見ているとふふふっと笑い声が聞こえた。幽霊の気配はない。


「その声はウンディーネだろ?人が風呂に入ってんの覗くな」


「覗いてなんかないわよ。ここにいるもの」


「うわぁぁぁぁっ」


バスタブのお湯全体がウンディーネだった。ウンディーネは液体だから女、男、それ以外にも何でも型を作れるようだ。


「男型だったらいいのね?」


ウンディーネは上半身の人型を作ってそう言う。でもそんな髭面のロッキューな姿で女言葉で話さないで欲しい。ママーとか歌ってしまいそうだ。


もう、ウンディーネは妖怪と同じ存在だと思うことにした。初めて型になった時が女型だったのと声が女声なので女性扱いをしたが実際は形を変えるスライムと変わらん。


「ウンディーネはお湯でも冷たい水でもどっちでも大丈夫なのか?」


「もちろん。水蒸気にもなれるわよ」


「それ凄いな。温度も自由自在か?」


「そうよ」


ウンディーネが旅に同行してくれたらちょー便利だろうな。


「ちなみにさ、精霊は他の国に入っても大丈夫なのか?」


「別に何も言われてないから問題ないんじゃないかしら?」


「ここにイフリートが来ても大丈夫か?」


「火の精霊?」


「そうそう」


「イフリートってヘスティアの眷属でしょ?あなたが呼んでも来るの?」


「俺の声は聞こえるらしいよ。イフリートが来ても問題無いならヘスティアの事を聞きたいんだよ」


「じゃあ呼べば?私も他の大精霊を見てみたい」


ということでイフリートを呼んだ。


「お呼びでございますかご主人様」


「そんな事を言ってたらまたヘスティアにしばかれんぞ」


そう言うとビクッとしてキョロキョロする。


「ヘスティア様はどちらに?」


「隣の部屋にいるぞ。勝手にアクアに入った罰なのか力が落ちて天界にも帰れないし、人間にも見える様になったんだよね」


「やはりこの気配はヘスティア様ですか。随分と力が落ちていらっしゃる」


「これ元に戻せると思うか?それとも罰だと思うか? ボッケーノでヘスティア信仰が無くなったわけじゃないだろ?」


「恐らく。罰なのか何なのか私にもわかりません」


「あんたがイフリート?」


「お前は?」


「ウンディーネよ」


「おお、水の大精霊か。ということは?」


「アーパスも隣にいるぞ」


「セイ様、さすがにございます」


何がさすがなのかさっぱりわからない。


「イフリート、まだしばらくボッケーノには帰らないから万が一ドラゴンが出そうな兆候があったらすぐに知らせに来てくれ。帰るのに一ヶ月は掛かるから、お前とサラマンダーでその間食い止められるよな?」


「ファイアドラゴンと戦うと周りに多大なる影響が出ると思われます」


同属性だから決着が付き難いのかもしれんな。


「ボッケーノに帰ったら、ウェンディの眷属を探し出して協力態勢を組んでくれないか?」


「シルフィとですか?ドラゴンとは相性が悪いかもしれません」


「別に倒さなくていいよ。強い風を吹かせられるなら近づけないようにしてくれるだけでお前も楽に戦えるだろ?人のいないところに飛ばしてもらって心置きなく戦うとか、数が出たら複数を相手にするより単体にしてもらったほうが楽に戦えるだろうし」


「なるほど、さすがはセイ様にございます」


太鼓持ちイフリートはそう持ち上げた。


「ふーん、他のところって精霊同士で協力したりするのね?」


「まぁ、ウェンディとヘスティアは一緒にいるし、両国は比較的近いしな。それとイフリート、アネモスにワイバーンとか出てアネモスの人間が倒せなさそうなら手伝ってやってくれな」


「かしこまりました。両国を見てきます。では」


イフリートはとても忠実だ。ヘスティアの教育かわいがりのせいかもしれない。


「あなた、神の眷属まで使役したの?」


「いいや。イフリートとは一度戦ってから仲良くなったんだよ」


「なら私とも戦ったら仲良くなれる?」


「ウンディーネと戦ったら俺は負けるよ。湖でも死にかけたからね」


「ふふふ。なら私のお願いを聞いてくれる?」


その髭面で顔を近付けて来ないで、なんかとても嫌だ。


「何?」


「あちこち旅してる時に一緒に行っていい?」


「それ、俺が許可する問題じゃなくてアーパスの許可がいるんじゃない?」


「じゃあ聞いてこよっと♪」



グリンディルが言ってた通りウンディーネ自由な大精霊だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ