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人間相手なら余裕

「この度は命を救って下さりありがとうございました。今回救われた仲間を代表してお礼を申し上げます」


「冒険者なんだからそんな堅苦しい挨拶はいいよ。俺はアネモスの冒険者セイ、こっちはウェンディとぬーちゃん」


「ハバロイといいます。ここのBランクです。セイさんは特別ランクと伺いました。そのような方と出会えて光栄です」


「もう普通に喋って。俺より歳上でしょ?冒険者歴も多分ハバロイの方が上だろうし」


「セイさんはいつに冒険者に?」


「去年の夏だよ。今年20歳になるんだ」


「では同じ歳ですね。しかし、1年足らずで特別ランクとは凄いです」


オッサンかと思ってたら同じ歳とは・・・


「うちは仲間が強いからね。ぬーちゃんとか物凄く強いよ」


「とても愛らしいのにそうなんですね。それにウェンディさんもとても可愛らしくて羨ましい限りです」


じっとしてたらそう見えるんだろうな。


「じゃ、挨拶はここまでにして何か食べに行こうか。ギルマス、美味しい所に連れてって。ここの名産とか食べられるところがいいな」


「名産はトウモロコシだが、そんなものでいいのか?」


「酒と肉も置いてるよね?」


「もちろんだ」


「他の仲間も呼んでいいかな?」


「ん?他にもいるのか?」


「驚かないでね。サカキ、クラマ、タマモ。トウモロコシの名産の国で飯食うか?」


「おう、当たり前だろ?酒も何があるか楽しみだぜ」


「うわっ」


驚くなと言っても驚くよなそりゃ。


皆に紹介して飯屋に移動する。


「はぁ、タマモさんて美人というかなんというか魂を抜かれそうですね」


「ふふっ、抜いてやろうかい?」


ハバロイはタマモに目がハートマークだ。


「タマモさんはお付き合いしている方とかは?」


「いないけど、セイの面倒をみないといけないからねぇ」


「え?」


「あたしはセイの母親代わりなのさ。この子は甘えん坊でねぇ」


「タマモ、初対面の人に昔話は止めろよ」


「ふふふ、そうかい。ならやめておくさね。ここはなんかスッキリとした酒はあるかい?」


「強いのが平気ならトウモロコシの酒がお勧めです」


と、乾杯することになった。


「俺様も飲みてぇぞ」


ヘスティアはお拗ねモードだ。ここで膝に座らせてってのも面倒だよな。もう見えない仲間がいるということでいいか。


「俺は炭酸水を飲みたいんだけど、酒はもう一つ頼んで。あとお皿とかももう一人分」


「まだ誰かいるのか?」


「初めっから一緒にいるんだけどね、みんなには見えてないだろうから紹介してなかったんだ。あ、おねーさん、ここに椅子ひとつ頂戴」


隣に席を増やしてヘスティアを座らせた。


「セイさん、からかってるんですか?」


「いや、からかってなんかないよ。空中に酒とか飯とか消えて見えると思うけど騒がないでね」


夜にかんぱーいという合図で晩飯スタート。ヘスティアに甘いのかと思ってほんの少しトウモロコシの酒を貰うと咳き込んだ。ドワーフの酒を少し薄めた用な感じだ。ウェンディが一気飲みする前に炭酸水で割っておいた。こいつ記憶回路が欠如してるからぶっ倒れそうだ。


「お、こいつぁなかなかイケるじゃねーか。セイ、これを樽ごと買え」


「ドワーフの酒が大量にあるだろうが」


「それはそれ、これはこれだ」


「ワシも炭酸水を貰うか。小娘のやつがうまそうじゃわい」


なら俺様もということで炭酸水を追加。


そしてバットとハバロイは空中に食べ物や飲み物が消えていく様を驚いて見ていた。


「セイさん、何がいるんだ?」


「神様だよ。火の女神。ハバロイも見えたら良かったのにね。小柄だけど半裸美人なんだぞ」


「エロい目でみんなっ」


「服を買ってやっただろ?ちゃんとそれ着ろよ」


「燃えたら勿体ねぇじゃねえかよ?」


「燃えたらまた買ってやるから」


「ほんとかっ。なら明日買いに行こうぜ」


「じゃあーわたしもー」


「お前、着てない服が大量にあるだろうがっ」


と言っているのに押し切られた。


「タマモ、明日俺達は賊討伐にいくから宜しくね」


「たまにはセイが選んでやりな」


タマモに拒否されてしまった。この前ぐったりしてたからな。


サカキとクラマはバットと酒談義を始め、ハバロイは半裸という言葉にモンモンとしていた。


ここの名産のトウモロコシを使った料理はコーンクリームコロッケやトウモロコシの唐揚げ、コーンスープ、サラダにはヤングコーンとか入っている。どれも旨い。


ウェンディはコーンクリームコロッケが気に入ったのか何回もおかわりをしている。砂婆はこういうの作らないからな。


そして一通り食った後に賊のアジトの話を聞く。


「この街から離れた所に岩場があって、そこを根城にしているようだ。夜はあちこちに散らばり、明け方に戻ってくる。そこまでは確認出来た」


「虫使いって何?」


「虫のテイマーだと思ってくれ。どうやって操っているのかまではわからんがいつの間にか毒に犯されていた」


「ここまで戻って来れたということは即死毒じゃないんだね?虫は本当の虫の?それとも虫の魔物?」


「いや、どっちどころか虫だと思うというだけだ。今は治っちまったが、あちこちに小さな歯型が残ってた。多分アリかなんかじゃないかと思う」


アリか。厄介だな。おそらくアリなら大量にいるはずだし地面に降りると危険かもしれない。


「賊は生け捕り?それとも生死問わず?」


「出来れば生け捕りが有り難い。特に虫使いはな」


「生け捕りにしたら牢とかでも虫使うかもよ?」


「その恐れもあるが情報が欲しい」


「了解。なら一眠りしたら夜明け前にそこに行ってみるよ」


「え?もう行くのか?」


「あまり時間無いしね」


「ここからだと今から出ないと夜明けには間に合わんぞ。昼間に下見に行って明後日の夜明けを待とう」


「いや、もし毒持ちのアリなら地面に降りるとヤバいから空から何とかするよ」


「は?」


「ぬーちゃんが飛べるから大丈夫。場所だけ教えてくれたら討伐してくるよ」


「相手は武装しているし、何人いるかもわからんのだぞ?」


「相手は人間だろ?」


「そうだが」


「なら武装してようが何してようが問題無いよ。ここにいるメンバーなら誰でも一人で殲滅出来るから」


「その嬢ちゃんもか?」


「ウェンディは加減が出来ないから人間の相手をさせるわけにはいかないね。全員どっかに飛ばされて生きてるか死んでるかすら分からなくなるから」


「嬢ちゃんは魔法使いか?」


「そう、そんな感じ。加減の出来ない風使いって感じかな」


「名前もウェンディだしな。風の神様みたいだな」


「そう、こいつは風の神様ゴニョゴニョなんだよ」


口に食いかけのコーンクリームコロッケを入れたまま寝ているウェンディを見て誰も信じなかった。



飯はギルマスが奢ってくれた。サカキ達がアホほど飲んだけど、トウモロコシの酒は結構安くてそんなに高額では無かったみたいだ。


ウェンディの口からコーンクリームコロッケを出すのがとても嫌だ。クリームかよだれかわからん。


最後に口を拭き拭きしてからおんぶする。ヘスティアが寝てしまわなかったのが幸いだ。先に宿にウェンディを寝かせてヘスティアも寝ろと言っておく。


「タマモ、俺はギルドで場所の確認をしてくるから二人を見ておいて」


護衛をタマモに頼んでギルドへと向かって場所を確認。走って半日ほどなのでぬーちゃんならすぐだな。


セイは風呂に入って少し仮眠をしてからぬーちゃんと賊のアジトに向かったのであった。



翌朝タマモは機嫌が悪かった。あと宜しくと書かれた手紙とお金を受付が部屋に持って来たからだ。


族の討伐している間に服を買いに連れてってとの事だと理解したからだ。


「もうお金全部使ってやるさね」


セイが多めに渡したお金は金貨10枚。タマモは全部使う事にしたのであった。


「ほら、あんた達。いつまで寝てんだい?あたしはセイみたいに優しくないからね」


それでも起きない二人にタマモは元の妖狐に戻ってガジガジと噛んで起こしたのだった。

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