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閑話 セイが出発した後のボッケーノ

セイ達が出発した直後のボッケーノ。


ーマリー姫様と執事ー


「爺、万能薬とはなんじゃ?」


「はい、物語に出て来るポーションです。どんな怪我、毒、病気にも効くという」


「貴重なのだな?」


「貴重どころではございません。実在するとは思っておりませんでした」


「本物だと思うか?」


「セイ様がわざわざ届けて下さったものですので冷やかしとは思えません」


「わかった。ならばお祖母様に飲ませてみるのじゃ。長年臥せっておるのが治るやもしれん」


「しかし、なぜそのようなポーションがあると大騒ぎになりますぞ」


「こそっと忍び込む手筈を整えれば済むことじゃ」


「王家の隠密に頼むのですか?」


「あやつは妾との約束が守れるならばな。妾が父上と母上に内緒にしろと言えば内緒にするであろうか?」


「では先代の隠密に頼みましょう。歳はいっておりますが忍ぶ技術は陛下の隠密より上でしょうし、何より先代への忠臣が厚く、陛下の隠密にはならなかったぐらいですから」


「では手配を頼む。妾はそやつを知らぬでな」


「かしこまりました」


こうして執事こと爺は夜中に先代王妃の元へと忍び込んだのであった。マリー姫は爺が先代王に使えた隠密であった事を知らないのである。



「パルシー、久しぶりね」


「ご無沙汰しておりますモリーナ様。体調の方はいかがでございますか?」


「大丈夫よ・・・、と言いたい所だけどもうダメね。だから会いに来てくれたのでしょう?」


「いえ、モリーナ様に効くやもしれないポーションをお持ち致しました」


「何を言っているのよ。どの治癒師もポーションも効かなかったのよ、もう寿命だわ。息子も立派に王をやっているみたいだし、思い残す事はもうないわ」


「いえ、ビスクマリア姫様が悲しまれます」


「あなた、マリーの教育係だったわね。どう?ちゃんと成長している?」


先代王妃は先代王が亡くなった後に病に倒れて長年寝たきりであった。治癒士から伝染る病気かもしれないと言われてほぼ幽閉されているような状態であったので、孫達ともほぼ合った事がなく、窓越しで顔を見たきりだ。


「はい。私の力不足と可愛さのあまり甘やかせてしまいました」


「あらそうなの?ならワガママに育ってそうね」


「はい。面目ございません。しかし、素晴らしい出会いがあり、姫様はすっかり変わられました。元々聡明な姫様でしたので見違えるように立派に成長されることでしょう」


「素晴らしい出会い?」


「はい、このポーションもその方から頂きました。万能薬という物語に出て来るポーションです。ぜひお試しを」


「あら、そんな素晴らしい方なら私もお会いしてみたいわね。パルシーがそこまでいう方なら気になるわ」


「そのお方は1年ほど留守にされるようですが、お戻りになられたらモリーナ様がお会いになりたいとのことをお伝え致します」


「じゃあ、あと1年は生きていないとダメね。わかったわ。そのポーションを頂戴」


パルシーはモリーナの口に万能薬を入れた。


「それを噛んで下さい」


プツと音がして口の中でポーションが弾けた。


「明日、同じ時間に参りますのでそのままお休み下さいませ」


「ふふっ、何だか身体が軽くなったような気がするわ。ありがとうねパルシー」


「ではお休みなさいませ」



ーバビデ工房ー


「ティンクル、セイが何か置いていったけど何かわかるか?」


「それは万能薬だ。一粒で屋敷を買ってもお釣りがくるぞ。というかこの世に存在しているのかどうかわからん代物だ」


「は?」


「入手先は教えて貰えなかったが、こうして存在するのだ。私は自らの手で必ず同じ物を作り出して見せる」


「それは無理かもしれんのぅ」


ビビデがそう呟いた。


「無理と思ったら出来るものも無理になるのたぞ」


ビビデの無理という言葉に反発するティンクル。


「ワシもそう思っておった。しかしな、セイは特別じゃ。あやつのやることは人間の範疇を超えておる」


「どういう意味だ?」


「あいつの装備はどんな物か知っているか?」


「お前たち兄弟が作ったとは聞いている」


「ブラックドラゴンの防具とメラウスの剣と言えば信じるか?」


「なんだそれは?」


「他にもドラゴンのウロコの盾やら、ファイアドラゴンのマントとかもあるぞ」


「何を言っているのかさっぱりわからん」


「ポーション屋にわかりやすくいうと、全身この万能薬で揃えているということじゃ」


「なんだとーーーっ」


「セイは火の神ヘスティア様と風の神ウェンディ様の駕籠を受けとる」


「ウェンディ?まさか」


「そうじゃ。あの嬢ちゃんは風の神様なんじゃよ。力が落ちてワシらにも見えとるがヘスティア様はお姿は見えんが確かにいる。昨日もここで一緒に飯を食っておったぞ。セイがさっさと寝に行ったからすぐにそっちへ行ったみたいじゃがな」


「からかってんだよな?」


「ドワーフがこんな冗談を言うと思うか?」


「た、確かに」


「ワシらはセイの口添えでヘスティア様の力の一部を授かった。お陰で昔より遥かにいいものが作れるようになったんじゃよ。セイのメラウスの剣はヘスティア様が直々に焼入れした真のメラウスの剣。この世に1本しかない剣じゃぞ」


「ブラックドラゴンのフル装備とかファイアドラゴンのマントとかもな」


「お前ら二人共セイに口添えしてもらったのか?」


「そうじゃ」


「ズルいぞーーーっ」


「ワシらはヘスティア様御用達店じゃからな」


「クソっ。なんて羨ましい。私も加護を受ければ万能薬を作れるかもしれん」


「帰ってきたら聞いてみるがええ。ヘスティア様が気に入るお前しか作れない何かを創り出せるなら可能性はあるかもしれんぞ。あとは信仰を強く持つことじゃな」


「うむ。もしくは・・・」


「もしくは?」


「セイを私の旦那に出来ないだろうか?あれはいいぞ」


「まさか惚れたのか?」


「いや、非常に便利だ。手に入らない素材もしれっと持っているし、何より面倒見がいい。旦那になれば私の世話を焼いてくれるのではなかろうか?」


「お前最低だな。もうさっさと帰って研究でもしてろっ」


「セイが帰ってきたら口添えを頼むっ」


そう叫んでいるティンクルを二人は追い返したのだった。



ーカントハウスー


「またセイの野郎がとんでもないものをよこしやがった」


「あら、セイくんから?また宝石?」


「これは万能薬らしい。市販のポーションが効かないようならこれを使えと手紙に書いてあった」


「あらぁ、何にでも効くポーションなんて凄いわねぇ。何かお返ししなくっちゃ。ベーコンでいいかしら?」


「お前、ベーコンってなぁ・・・。これ売ったらいくらになると想ってるんだ。国どころか世界中が大騒ぎになるぞ」


「セイくんのくれるものって売れないようなものばかりじゃない。宝石もそうだけどあの白蛇の皮も大騒ぎになっちゃったし」


「田舎でもダメだと言っただろうが」


「その代わり領主に残りの皮を高額で買い取ってもらったじゃない」


「領主はあの皮で作ったものを王室に献上するらしいぞ」


「なら領主も高いお金払っただけの見返りはあるでしょ。ベーコンはぁ、あっ、セイくんの肉ってブラックオークだったわね。あなた、ブラックオークの肉をたくさん手配かけといてね」


「ったくお前は」


「頑張ってたくさん作っておかなきゃ」


「1年くらい帰って来ないみたいだぞ」


「平気よ。保存魔法掛けとくから」


「それ、子供には内緒にしとけよ」


「わかってるわよ」


そうして奥さんはせっせとベーコンとハムを毎日セイの為に作り続けるのであった。




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