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寄り道した国 ウラウド王国

一週間ほど同じような旅を続けた時にそこそこ大きい街というか国を見付けた。アクアへの道程が正しいかどうか確認の為に入国してみることに。


「ここの国になんか用があるのか?」


ヘスティアがなぜ寄り道をするか聞いてくる。


「いや、アクアへの道が合ってるか確認するんだよ」


一応、道なんだろうな?という上を飛んで来たが正しいかどうかわからない。ここまでは正しいはずだけど、この街中からは何本か道が繋がっているから方角さえ分かれば良いのだ。


ここも城壁で囲まれているので門番に冒険者証を見せて入ることに。ぬーちゃんは首に巻き付き、ヘスティアは見えないからウェンディと二人で入国するように見えているだろう。


「ん?なんだこの冒険者証は?初めて見るぞ」


「これ、特別なやつなんだよ。ここに冒険者ギルドはある?」


「あるぞ」


「怪しむなら冒険者ギルドに確認してみてくれたらいいよ。ギルドにはこの冒険者証の通達が入っているはずだから」


「なら悪いけどこの部屋で待機しててくれるか?犯罪歴を確認出来るから正式な物だとはわかるが念のためな」


門番は他の者に事情を伝えてギルドに確認をするようだ。ここでは特に犯罪者扱いされるわけでもなく普通の対応なので嫌ではない。お茶まで出してくれてその門番と話しをする。


「アネモスってめちゃくちゃ遠い所から二人でよく来れたな。しかも一人はお嬢ちゃんだろ?賊とか大丈夫だったか?」


「この辺は賊が多いの?」


「あぁ。各領地から王都へ売りもん運ぶ馬車とかが狙われてな。昼間はめったに出ないが、下手に野営とかしたら狙われるから気を付けな」


一応、寝るときは式神を飛ばして警戒してたけど魔物以外は出ていない。


「しかし、お前は立派な装備に見えるがGランクって見習いにもなれてないってことか?」


「いや、GランクってSランクより上なんだよ。ほら」


と、裏面を見せて説明する。


「じゃ、何か?お前Sランクより強いってのか・・・?」


「ランク上はね。俺はSの人と会ったことがないからどっちが強いとかわかんないよ」


「いや、それでもすげぇな。この国にはBランクまでしかいないみたいだからな」


「ランクアップ制度はどこも同じみたいだけど、魔物の強さが各国で違うみたいだからランクってあんまりあてに出来ないみたいだよ。依頼を受ける時の単なる目安だから」


「はぁー、そんなもんかね」


「あっ、そうそう。ここはなんていう名前の国?俺たちアクアを目指してんだよね」


「アクアか、多分まだまだ遠いぞ」


ということは方角的に合ってそうだな。


「ここはウラウド王国ってとこでな、ウラウド様が治めている国だ。ちょっと不思議な国で王様の姿を目にできた奴はほとんどいないんだ」


「へぇ、国民の前に姿を表さない王様なんているんだね」


「この国が出来てから300年ほどだが、王様はずっと同じ人だと言われててな、王様はエルフかなんかじゃないかと思うぞ。噂では顔に酷い怪我を追ってて人目に付きたくないとも言われている。謎は多いけどのんびりとしたいい国だぞ」


「そうなんだ。門番さんもピリピリしてないからいい国なんだろうね」


「他は違うのか?」


「そうだね。なんかあったらすぐに犯罪者みたいな扱いを受けるよ」


「ここは他国から離れてるからな。賊をやるような奴は目つきや雰囲気が違うからすぐにわかる。そうじゃないやつはすぐに通すようにしてるんだが、お前らはちょっと怪しいというか珍しくてな。引き止めて悪いな」


「いや、別にいいよ。こうしてお茶も出してもらってるし。このお茶変わってるけど美味しいよね。初めて飲んだよ」


「とうもろこしのヒゲ茶だ。庶民のお茶だが香ばしくて俺も好きなんだよ」


これがヒゲ茶か。そう言われてみればとうもろこしの味がしてるわ。


「この国はなんの神様を祀ってるの?」


「夜神様だ」


「ヨルガミ?」


「そうだ。夜は仕事も終わって開放されるだろ?それに感謝するってことじゃねーかな?それにいいことすんのも夜だしよ」


さらっと下ネタをぶっ込んでくる門番。


「お前ら夫婦なんだろ?こんな子供みたいな奥さんもらうとか先が楽しみでいいな」


こいつは延々このままだ。成長期なんてはるか昔に終わってる。


「俺たちはパーティ仲間で夫婦じゃないよ。それにこいつは子供みたいなもんだ」


「嬢ちゃんいい指輪してんじゃねーかよ?お揃いのアクセサリーもすげぇ高そうだ」


「手に入れたセットの指輪がこの指にしか入らなかっただけだよ」


「へぇ、まぁ、二人でずっと旅してりゃそのうちな」


そう言ってへへへと笑う門番。男同士の普通の会話って大体こんなのかな?



「ギルマスを連れて参りました」


「は?確認だけでいいと言っただろうが。誰がわざわざギルマスを連れて来いと言った?」


「そ、それが」


ゴニョゴニョと耳打ちする門番の部下らしき人。


「なんだとぉぉぉーー」


「はい、このような部屋でヒゲ茶を出すような方ではありません」


カタカタカタカタと青くなる門番。


「セイ様っ。大変失礼致しました」


「どうしたの急に?」


「はっ、Gランクの方が上級貴族と同等の身分だとは知らず大変申し訳ございません」


「え?上級貴族と同等の身分?なにそれ?初耳なんだけど」


「特別ランクのセイとはお前か?」


「そうですけど、ここのギルマスさん?」


「俺はウラウド本部のバットだ。国への通達はまだ行き渡ってないから失礼な対応を許してやって欲しい」


「いや、別に許すも何も失礼なんてされてないよ。お茶出してもらって喋ってただけだし」


「連れていっていいか?」


バットと名乗ったギルマスは門番にそう伝える。


「はい。宜しくお願い致します」


敬礼する門番に手を振ってサヨナラし、バットに連れられてギルド本部へ。



「改めて自己紹介させてもらう。ウラウド王国冒険者ギルド本部でギルドマスターをしているバットだ」


「ご丁寧にありがとうございます。俺はセイ、こちらはウェンディとぬーちゃん」


ぬーちゃんもいつもの姿に戻らせた。


「見かけぬ使い魔だな?お前はテイマーなのか?」


「いや、ぬーちゃんは仲間で使い魔じゃないよ。言語も理解してるし。ね、ぬーちゃん」


「うーん」


「まさか魔物が言葉を話すとは・・・」


「まぁ、それは置いといて。わざわざ迎えに来てくれてありがとうね。ここにはアクアへの道程が合ってるかどうか寄っただけなんだよ。アクアに向かう方角だけ教えてくれる?」


「そうか、アクアはこの地図でいうとこの方面だ」


大雑把な世界地図みたいなので教えてくれた。予定通りの方向だから迷っていないようだ。


「ありがとう。じゃぁ、ちょっと街を見てから出発します」


「ちょっと待ってくれ。少し時間をくれんか?」


「アクア方面の虫系の魔物の素材回収依頼を受けててね、秋までに行かないと捕れなくなるから急いでんだよ」


「そこをなんとか。族の討伐依頼を受けてるんだがうちの冒険者どもじゃ太刀打ち出来てないんだ」


「賊ってそんなに強いの?」


「虫使いがいるようでな、討伐に向かった奴らが知らぬ間に毒にやられて何人も死にかけている」


「虫使い?」


「一人の冒険者が死にそうになりながらその情報を掴んで来た。可愛そうだがもうダメだろう」


「ということは生きてるんだね?毒消しポーションは?」


「うちにあるやつは効かなかった。マヒ毒と腐る毒が混ざっているみたいでな」


「そいつの所に案内して。俺が持ってるポーションなら効くかもしれない」



ギルマスは半信半疑で病院のような所に連れて行く。


「コイツらだ」


10人近く寝かされている冒険者達。生きていながら腐敗臭が漂わせている。


「おい、口を開けろ」


うぅっと苦しそうな声をあげて口を開ける男の口にポーションを入れた。


「頑張って噛め」


プチっと音がしたので口の中で液体になったんだろう。これで効いてくれるといいんだけど。


そしてしばらくすると呼吸が安定して、色がどす黒く変色していた皮膚が段々と元の色に戻っていく。


「これなら効くようだね。他の人にも飲ませて」


ウェンディとギルマスと3人で手分けして飲ませて行く。



「こ、これは奇跡か・・・」


全員が回復して眠りに入ったようだ。体力回復効果もあるだろうからすぐに目を覚ますだろう。


「もう大丈夫そうだね。族の居場所はわかってんの?」


「あぁ、詳しくはあいつが目覚めたらもう一度確認する」


「了解。なら、今日はここで一泊して明日討伐を手伝うよ。風呂付きのオススメ宿を教えて」


ギルマスのバットに宿まで案内してもらって部屋をシングルとツインの2部屋とった。毎晩二人に乗っかられているので一人でゆっくりと寝たいのだ。風呂もあるので応2泊分。貴族向けの宿らしくてそこそこ高いがしれた金額だ。街では酒とか仕入れたいし、名物があれば食べてみたいしな。


「じゃ、街中を見て回るから夜にでもギルドに行こうか?」


「いや、ここに奴を連れて来る。目が覚めないようならそれを知らせに来る」


「了解。じゃ、晩御飯一緒に食べる?いいところ知ってたらそこで食べよ」


「わかった。じゃ、夜にな」


この世界の時間の約束はアバウトだ。朝、昼、夜を基本に前か過ぎを付けるぐらいでいい。何時何分とか一応あるけど時計を持ってる人が少ないからだ。慣れたらこれで十分だと思う。



そして街に繰り出したセイは屋台の焼きトウモロコシをいくつも巡ってウェンディとヘスティアとぬーちゃんに食べさせたのであった。


「味付けがいまいちー」


「どこも塩ベースだからな」


「おい、あんちゃん。うちのトウモロコシに文句でもあんのかよ?朝もぎたての一番いいやつ使ってんだぞ」


「いや、トウモロコシ自体は美味しいよ。いつも食べてた調味料と違うからちょっと物足りなかっただけ。茹でトウモロコシなら塩だけでもいいんだけど。焼くとどうしてもね」


「ん?なんか違う味付けあんのかよ?」


「生まれ故郷の調味料があってね。それでちょっと焼いてみてくれる?」


「構わんけど味見させてもらうぞ」


「いいよ。おっちゃんの分もお金は払うから」


1本銅貨2枚だから店の商品買い占めても大丈夫なくらいだ。


焼けてきたトウモロコシに醤油を垂らしてもう一度焼く。里で作ってる醤油は混ぜもの無しでちゃんと熟成させている醤油だ。焼くと安い醤油とは比べ物にならないほどいい匂いがするのだ。


「仕上げにバターをちょいちょいと。これがよく食べてた味付け」


「いい匂いしてやがんな?俺の分まで金払って貰っていいのか?」


「いいよ。さ、食べよ」


ヘスティアは俺の後ろに隠れてフーフーしながら食べている。マントに醤油付けないでね。


「おいしー」


「本当だ。こりゃ旨ぇ。これなんて調味料だ?」


「醤油っていうんだけどね、悪いけど分けるほど量は持ってないよ」


匂いにつられてなんだなんだと人が寄ってきた。そして同じ物をくれと注文が入ったのだ。


「その調味料はどうやって作ってるんだ?」


「よく知らないけど、大豆と塩から出来てると思うよ。あと醤油になるために酵母とかの菌が必要だからここでちゃんと作れるかはわかんないや」


「塩と大豆だな?ちょっと皆で作ってみるわ」


だんだん騒ぎになってきたのでその場を退散した。何十年後かにここで醤油が出来てるかもしれんな。


そして夜になり、ギルマスとアジトを発見した冒険者が宿にやってきたのであった。




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