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未婚だけど子持ち

俺はまだお腹が空いていないので、用事を済ませに出てくると言って宝石店に向かう。


「おや、ご出発はまだでこざいますか?」


「ちょっと色々あって明日出発になったんだよ。悪いけど宝石を入れるこれぐらいのケースをいくつか分けてくんない?」


「はい、かしこまりました」


いくつかケースを分けて貰い、そこにポーションの錠剤を10粒セットにする。


「これは・・・・宝石ではありませんね?」


「これポーションなんだよ。これは店主さんへのプレゼント。もし何かあれば飲んで」


「これがポーションなのですか?」 


「秘密だけど万能薬なんだよ。世には出せないからこっそり持っといて。市販のポーションが効かなさそうな時に使って」


「万能薬ですか。それは珍しい物をありがとうございます」


何かよくわかってなさそうな店主。セイはテーブルを借りて贈り先へ手紙を書く。マリー姫と爺の分は門番に預けておくために錠剤を入れたケースを宝石屋の紙バッグに入れて貰った。


「どなた様へのプレゼントに?」


「姫様と執事さんだよ。あれから仲良くなってね。まぁ、王宮にはよく効くポーションとかあるかもしれないけど気休めに渡しておこうかと思って」


ボッケーノのギルマスとカント、ビビデバビデ、ティンクルの分も用意した。


姫様への献上品と同じものをもらったと聞いてとても貴重な物と気付いた店主は凄く恐縮していた。


次は冒険者ギルドだ。



「こんちはー。ギルマスいる?」


と、呼んで来てもらった。


「お、まだいたのか?」


「しばらくいないから置き土産を持ってきたよ。また大声出すだろうから中身は部屋で確認して。これが何なのかは手紙に内容書いておいたから。あと、近々領主街に戻る信用できる冒険者いる?」


「ああ。なんか火吹きウサギを狩りに来たついでに依頼受けてるやつが何組かいるな」


「じゃ、ギルマスが信用できるパーティに指名依頼出して。同じ物を領主街のギルマスに届けて欲しいんだよ」


「わかった。報酬はいくらにする?」


「相場はどれぐらい?」


「この荷物程度の指名依頼なら銀貨1枚ぐらいだろ。あんまり高くすると何の荷物か気になるだろうからな」


「了解。じゃ、これで宜しくね」


セイは銀貨を支払って城へと向かった。



部屋に戻ったギルマスは何を寄越したのか気になりそそくさとケースを開ける。


「ん?宝石セットかこれは?」


ケースも宝石を入れるもの。入っているのも小さな宝石みたいだ。


どれどれと手紙を読んで


「万能薬だとーーーっ!」


セイの想像通りボッケーノのギルマスは大きな声で叫んだのであった。



城の門番に紙袋を渡すとすぐに届けに行ってくれた。


「姫様にはお会いになられないのですか?」


「さっきの紙袋持ってきただけだからね。じゃ、またねー」


前に俺を追い返した門番だった。あの時とは大違いな対応だな。



ヘスティアが拗ねるからさっさと帰ろう。日も暮れたので空を飛んで戻ったセイ。バビデの所はとても賑やかな宴会だった。



「もう用事は全部終わったんだよな?」


「終わったよ。明日の朝出発するからな」


ティンクルは相当ご機嫌で大笑いしながら飲んでいる。これでストレスも少し解消されるといいな。


ポーションをビビデとバビデとティンクルの分を机においておいてもう寝ることに。肉をガッツリ食ったからかお腹も空いてないし、明日から長旅だから早く寝よう。


ぬーちゃんはみんなの所に食べに行ったのでシャワーを浴びていつもの雑魚寝部屋で一人で先に寝ることに。



「もう寝るのかよ?」

 

寝転んでいたらヘスティアが様子を見に来た。


「あぁ。明日から旅だからね。気にせず食って来いよ」


「いや、もういい。俺様も眠いからもう寝る」


と、隣にコロンと寝転んだ。ヘスティアもなんか疲れてそうだからまたくっついて来そうだな。


「ん、ここに頭を乗せろ」


腕を伸ばして掌を上に向けてそう言うと素直に頭を乗せるヘスティア。ウェンディもヘスティアも女神だけあって髪の毛はすべすべで柔らかく猫を触っているような感じだ。


「俺が寝てしまうまで妖力を流しておいてやるよ」


「うん」


そうして妖力を流しながらセイは寝てしまうのだった。



「ウェンディ、寝るなら向こうで寝ろや」


食べながらウトウトしているウェンディにサカキがゲシゲシと蹴って起こす。


「いったいわねっ。何すんのよっ」


「うるせぇ。毎回毎回飯食いながら寝やがって。寝るならさっさと部屋で寝て来やがれっ」


「もうっ」


セイが一緒にご飯を食べている時はいつの間にかベッドでちゃんと寝ているのに、そう思って寝に行くウェンディ。サカキにゲシゲシされたのと眠いのでとても機嫌が悪い。


ムカムカしたまま部屋に行くとセイがヘスティアに腕枕をしながら寝ているのが目に入った。


ムカっ


「セイはわたしの下僕なのよっ」


腕枕と言ってもセイの掌の上にヘスティアが頭を乗せているだけだのだが。


ウェンディは雑にヘスティアをゴロンゴロンと避けて、そこに自分が納まって寝たのであった。




「重っ・・・」


セイは暗いうちから重みで目が覚める。案の定ウェンディとヘスティアが折り重なる様に乗っていた。


ウェンディのやつ、前より重くなってるぞ。食いすぎてんじゃないのか?


二人を避けて起き、グッグッと屈伸をする。ぬーちゃんもいつの間にか横で寝ていたので起こして出発することに。


「朝ごはんはー?」


「暗いうちに街の外まで飛んで、日が昇ったら食べようか。ここで食べてたら歩いて外に出ないとダメだから面倒だろ?」


ビビデバビデティンクルは飯の所で寝ているので、ポーションセットをそれぞれの頭の横に置いておく。これが何かはティンクルが説明するだろう。サカキ達はいないからひょうたんに戻ってるな。


起きないウェンディとヘスティアをぬーちゃんに乗せる。ヘスティアが重くなってるけど、どんだけ爆睡してんだよ?


ウェンディが太ったのかと思っていたが、ヘスティアの重みが足されていただけだった。


ウェンディを片手でおんぶするように持ち、反対の手でヘスティアを支える。


「ぬーちゃん、俺掴まってないからゆっくり飛んでね」


ぬーちゃんはセイを落っことさないようにそろっと空を駆け出し、セイ達一行はボッケーノを後にしたのであった。



空をゆっくり駆けていくぬーちゃん。セイは二人を落っことさないように持っているけど、自分は足のみで身体を支え、片手おんぶ片手抱っこはなかなかに辛い。砂婆にお願いして、おんぶ紐と抱っこ紐を作ってもらおう。


日が昇ってしばらくしてから下に降りて朝飯に。


砂婆にアジの干物定食を作ってもらった。


「ほら、二人共起きろ。飯だぞ」


ウェンディはむにゃむにゃ言いながら起きたがヘスティアは起きない。昨晩結構妖力を流したんだけどな。


「砂婆、抱っこ紐とおんぶ紐って作れる?」


「こやつらのか?」


「そうそう。長旅の途中でこんなことが続くと思うから」


「結婚もしとらんのにいきなりこんなに大きな赤子を持つとは先が思いやられるわい」


紐は簡単な物で良ければすぐに出来るとのことなので、ウェンディには自分で飯を食わせ、ヘスティアの分は干物をほぐしてご飯に混ぜておにぎりにしておいた。


ウェンディが食べ終わる頃、砂婆が紐を持ってきて、こう使うんじゃぞと教えてくれた。ぬーちゃんの上で支えるだけなので本当に紐だけだ。


「何よそれ?」


「これをしておいたら後ろで寝ても落ちないだろ?」


「嫌よっ。そんな赤ちゃんみたいなの」


「これから一ヶ月くらい毎日ずっと飛び続けるだろうが。今回はグリンディルもいないから寝たら落っこちるぞ」


「飛びながらなんて寝ないわよっ」


「嘘つけっ。いつも寝てだろうが」


ぬーちゃんにまずヘスティアを乗せておいて、ウェンディと乗る。ウェンディが油断した隙にさっと紐を後ろに回して自分にくくり付けた。


「なっ、何すんのよっ。離してよっ」


「こら、暴れんな。俺に掴まってるのと変わらんだろうが。なるべく早く行きたいからぬーちゃんにも飛ばしてもらうつもりだからな」


後ろで暴れて頭をポカポカ叩いて来やがるのでヘルムを被って防御。ヘスティアにも紐をクロスに掛け・・・


半裸のヘスティアに紐をクロスにかけるととても悪いことをしているような気がする。これは見てはいけない光景なのかもしれない。


赤いマントの前を閉めて、その上から紐をかけて準備完了。ヘルムのシールドを降ろしてぬーちゃんにスピードを上げて貰うと風よけにもなってちょうどいい。


スピードを上げると風が巻き込むのか後ろのウェンディがうぷうぷ言っているので、マントの中に潜らせておいた。


いつもの倍以上のスピードで飛ぶぬーちゃん。これなら予定より早く付けるだろう。しばらくそのまま飛んでいると俺に掴まっていたウェンディの手がダランとなる。ほら見ろ寝たじゃないか。ウェンディが寝ると同時にヘスティアが起きた。


「もう出発してんのか?」


「ああ、とっくにな」


「お前、寝ている女神を縛るとかとんだ変態行為してやがんな」


「落っこちるからだろうが。起きたなら外すぞ」


「いや楽だからこのままでいい。飯は?」


「アイテムボックスにおにぎりが入ってるからそれを食べろ」


結構なスピードで飛んでいるから、ぬーちゃんの毛から手を離すと危ない。


ヘスティアはアイテムボックスからおにぎりを出して食べる。


「これ、旨ぇな」


「干物をほぐして入れてあるから塩加減もちょうどいいだろ」


ペロッとおにぎりを食べたヘスティアはセイに持たれかかってくる。


「こら、前かがみになってないと空気抵抗をまともに受けるだろうが」


「涼しくてちょうどいいや。誰だよマントの前を閉めたやつは?」


そう言ったヘスティアはマント前を開けて素肌で風を受けた。半裸に紐を掛けられている自分がどんな姿かよくわかっていないのだろう。


セイはヘスティアの方を見ないように前だけを向いていたのであった。









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