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カントハウスはセイの理想

くそっ、俺まで割り勘メンバーに入れられてしまった。


まぁ、銀貨10枚程度だけど・・・、いや、ここに座っていただけで10万円も払わされたのか俺は。まるでぼったくりバーだ。


「セイ、その服もドラゴンなんでしょ?」


「そうだよ」


「ならこのマント頂戴っ。これはか弱い魔法使いが身につけてるのがいいと思うの」


どこがか弱いのだ?


「サマンサ、ちゃんと返しなさい。そんな貴重な物を軽々しく頂戴とか言うな」


タンクがまともで助かる。


「ねー、いいでしょう? その代わり私の初めてをあげるから」


「嘘つけっ。お前の初めてなんてとっくになくなってるだろうが」


そんな生々しい話を聞かせないで欲しい。


タンクはイヤーーっと言うサマンサからマントを奪い返しててくれた。


「悪かったな。サマンサは腕はいいんだがこういうやつでよぉ」


「タンクがいつもお守りしてんだね」


「そういうこった。報酬の山分けの割合増やせってんだ」


「何よっ。倒すのは私達じゃないっ」


「詠唱中にお前をガードしてやってんだろうがっ。ガードがなきゃお前は今頃死んでるだろ」


「そんなことないわよっ」


ギャーギャー言い争う二人。


「セイ、離れとけ。ああなったらもうどえらい事になるんだ」


と、名前がわからないメンバーが離れろと忠告してくれる。


「いつもああなの?」


「サマンサが魔法をぶっ放して、タンクがガードする。それが繰り返される。これ以上設備破壊の割勘すんの馬鹿らしいからな」


こう教えてくれた人はまだ泣いてるシャークと残り二人を引き連れて外に出たので俺たちも出ようとしたとしたら


「何をやっとるかーーっ。やるなら外に出てやれっ」


ギルマスが怒鳴って二人をポイと外に捨てたのであった。


「待たせたな。さ、行くか」


「あれほっといていいの?」


「いつもの事だ。あれだけ元気があればもっと狩って来いってんだ」


確かに。


カントに連れられてカントハウスに行く。


「あらぁ、セイくん。よく来てくれたわぁ。ベーコン達が待ってたわよぉ」


「ありがとうございます。それを楽しみに帰って来ました」


「あーっ、にーちゃんきたーっ。ラーラ、にーちゃん来たぞっ」


「わーいっ」


セイはカントハウスで大歓迎されたのであった。



「にーちゃん、ドラゴン狩りどうだったんだ?」


「おー、ちゃんと狩ったぞ。いいもの見せてやろうか?」


「なになになにっ」


「この装備な、ブラックドラゴンの皮から作られてんだよ」


「マシで?スッゲー」


「こら、セイ。うちの子供をからかうな」


「からかってないって。ケビン、ほら見てろよ。へーんしんっ」


ジャキンっ


セイはヘルムを被り、ドラゴンクローと脚の爪を出した。


「うわっ!かっけーーっ」


「だろ?にーちゃんはドラゴンスレイヤーに変身したんだ」


「セ、セイ。お前まさか本当にドラゴンを狩ったのか?」


「そうだよ。ギルマスにお土産があるんだよ。素材は秘密にしておいてね」


ドラゴンの牙剣、ドラゴンソードを渡す。


「これは・・・?まさかこの白い剣はドラゴンの牙で作った剣か・・・」


「当たり!ビビデが相当苦労して作ってくれたんだよ。こんなに硬いドラゴンの牙は初めてだって」


「ドラゴンの牙に違いなんてあるのか・・・。ビビデ程の職人が硬いというドラゴンの牙・・・」


カントはそう呟いたあと動きが止まった。


「えーーっ。父ちゃんだけずるいよ〜。にーちゃん土産くれるって言ってたじゃん」


「これ、ケビン」


奥さんがホンワカとケビンを嗜める。


「ケビンにもあるぞー。ただし使っていいかどうかは父ちゃんの許可をもらってからな。ほら」


「えっ?二つもくれんの?」


「あぁ。短剣はまだ早いかもしれんからナイフも作ってもらったんだ。父ちゃんのと同じ素材だぞ」


「ラーラのは?ラーラのはないのっ」


「ラーラのもあるぞ。ほらこれだ。綺麗だろ?」


「わーっ!また透明の綺麗なやつだーっ。これも宝石?」


「宝石より珍しいぞ。これはドラゴンの涙だ。この前姫様にもあげたからラーラは姫様とお揃いだぞ」


「えーっ、姫様とお揃いなの?すっごーーい」


二人共大喜びだ。


「奥さんってバッグとか作ったりします?」


「えっ、はい。あれば欲しいなとは思ってますけど」


「蛇は大丈夫ですか?」


それを聞いてウェンディがビクッとするけど暴れんなよと言っておく。


「大丈夫よ」


「じゃ、これ。加工はカントにお願いしてね。多分余った皮の買い取りもしてくれると思うから」


「凄い立派な皮だけど何の魔物かしら?」


「多分、ビッグポイズンスネイクだと思うんだけど、魔物図鑑にも白いのは載ってないんだよ。変異種か単なる色違いかわからないけど、でも良いものだとバビデが言ってた」


カントは剣を持ったままフリーズして、子供達は小躍りして喜んでいた。



「よっ、飲もうぜ」


そこにサカキが出て来て、ようやくカントの時が動き出した。


晩御飯中はケビンとラーラとずっとお話。魔物図鑑の話や姫様の事とか話した。


奥さんとサカキは楽しそうに飲んでいるがカントはほとんど話さなかった。


そして、一緒に風呂入ろうと言われてケビンとラーラと3人で入る。手でやる水鉄砲とか教えて風呂ではしゃいだ後に寝かせにいった。結婚とかまるで考えた事がなかったけど、奥さんが出来て子供が生まれたらこんな感じなのだろうか?


いや、俺には子育てなんて無理だろうな。どうやっていいか全くわからない。もし自分と同じような能力があればサカキやクラマ達がやってくれたように教える事も出来る。そう、教えてもらった事しか自分には教えてあげられないのだ。普通に育つ子供なんてどんな風にしてあげればいいかわからんからな。


それに俺には手の掛る子供(ウェンディ)がすでにいる。


風呂から出てケビン達を寝かせて戻るとこっちの子供(女神)達も寝ていたので寝かせにいく。二人共ともドワーフの酒をそのまま飲んだらしい。というか、カントが俺と話したいだろうとサカキが飲ませたって感じだな。サカキって大雑把に見えてこういうのをさらっとするんだよな。







「それ、本当にブラックドラゴンの装備なんだな」


「そう。ヘスティアが熱を出しても燃えない服を作るためにブラックドラゴンの血を捕りに行ったんだけどね、結局血は使わずにファイアドラゴンの皮で作ったんだよ。そっちの方が遥かに熱に強いってことで」


「お前が土産だとさらっとくれたこの剣、何のドラゴンだ?」


「エンシェントドラゴン。この世界に一匹しかいないらしいよ」


「なっ、そんなのがいるのかっ。まさか討伐したのか?」


「いや、なんか大神の眷属らしくて殺しちゃダメらしいから逃した。俺とウェンディがエンシェントドラゴンにちょっかいかけられた時にその牙とか、俺の手袋と手袋に付いてる爪とか切ったんだよ。さっきラーラに上げた奴はそいつの涙の結晶。なんに使えるかしらないけど綺麗でしょ」


「おっおっおっおっ、お前そんなもんをよこしたのかっ」


「まぁ、誰も信じないだろうからガラス玉とでも思うでしょ」


「ケビンのナイフと短剣もエンシェントドラゴンのか?」


「そうだよ。将来冒険者になるならいい武器になるでしょ。あと俺が使ってたワイバーンの装備もケビンにあげるよ。イフリートの炎にも一回は耐えられるから重宝すると思うよ。俺より大きくなるならマントしか着れないかもしれないけど」


「お、お前・・・」


「ケビンがドラゴンを倒せるようになるぐらい強くなればボッケーノも安泰だね。あとこんなのもあるんだよ。さっきギルドで大騒ぎしてたのもこれが原因でね」


と、ウロコの盾を見せる。


「これはエンシェントドラゴンのウロコ。まずこれを壊せる魔物はいないと思う。これの加工は人間では俺しか無理だから、希望の形のとかあったら手伝うよ」


「そんなものまで持っとるのか」


「バビデが防具はその時に手に入る最高の物を身に着けろと言ったからね。ケビンが冒険者になるにはまだ数年あると思うから預かっておいてあげて。加工する時には手伝うから」


「なぜ、これほどの事をこんないち地方都市のギルマスの家族にしてくれる?」


「ここの家が羨ましいからかな?可愛くて優しくて料理上手な奥さんにまっすぐ育っている子供に立派なお父さん。俺の理想だよ。ずっと幸せに暮らして欲しいと思うんだ」


「やっだぁ〜、もうっセイくんったらぁ」


どすうっ


いつの間に間合いに入ったのだ奥さん?

しかもブラックドラゴンの服でもそこそこ効いたぞ。


「理想の家か。そんな事を言ってくれるんだなお前は・・・」


この奥さんが俺の母親だったらあんな目で見られることはなかったんだろうなと思う。


ギルマスはそれ以上何も聞かず、ただありがとうと言った。

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